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経済史の理論 (講談社学術文庫) 文庫 – 1995/12/4
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20世紀を代表する理論経済学の巨匠ヒックスが、「市場の勃興」を中心に世界経済史の道筋を理論的に解説。古代地中海世界の都市国家で活躍した商人がその交易活動によって「市場の浸透」の第一局面を開拓。続いて古代ローマにおける貨幣や法の整備、中世イタリアの銀行など信用制度の発達による中期の局面を経て、産業革命期の近代で市場経済が支配的になったとした。現代経済社会の理解に必携の名著。
- ISBN-104061592076
- ISBN-13978-4061592070
- 出版社講談社
- 発売日1995/12/4
- 言語日本語
- 寸法10.8 x 1.3 x 14.8 cm
- 本の長さ320ページ
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商品の説明
著者について
【J.R ・ヒックス】
1904年英国ウォリックシャーに生まれる。オクスフォード大学卒業。マンチェスター大学教授を経てオクスフォード大学教授。現代の代表的な理論経済学者で、著書は『価値と資本』『経済学の思考法』『ケインズ経済学の危機』など。1972年ノーベル経済学賞受賞。1989年没。
【新保博】
1923年東京生まれ。1947年慶応義塾大学経済学部卒業。神戸大学経済学部教授を経て、神戸大学名誉教授、中京大学教授。主著に『近世の物価と経済発展』『近代日本経済史』など。
【渡辺文夫】
1932年東京生まれ。名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。中京大学経済学部教授。
1904年英国ウォリックシャーに生まれる。オクスフォード大学卒業。マンチェスター大学教授を経てオクスフォード大学教授。現代の代表的な理論経済学者で、著書は『価値と資本』『経済学の思考法』『ケインズ経済学の危機』など。1972年ノーベル経済学賞受賞。1989年没。
【新保博】
1923年東京生まれ。1947年慶応義塾大学経済学部卒業。神戸大学経済学部教授を経て、神戸大学名誉教授、中京大学教授。主著に『近世の物価と経済発展』『近代日本経済史』など。
【渡辺文夫】
1932年東京生まれ。名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。中京大学経済学部教授。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1995/12/4)
- 発売日 : 1995/12/4
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 320ページ
- ISBN-10 : 4061592076
- ISBN-13 : 978-4061592070
- 寸法 : 10.8 x 1.3 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 310,871位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 203位経済史 (本)
- - 1,004位講談社学術文庫
- - 57,586位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年9月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世界的碩学の名著です。原著は、A Theory of Economic History, 1969ですが、今なお読み継がれるべき一冊です。市場組織と非市場組織(例えば、官僚制)の生成とその諸原理につて碩学の深い洞察を垣間見ることができるか一冊です。話題は、広範囲にわたりますが、特に今日では制度論ないしは制度分析の分野において取り上げられることの多い諸問題についてのヒックスの先見性と博覧強記には脱帽するばかりです。
2011年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
300ページほどの比較的短い一冊であるが(しかりなんで経済学の本って長いのが多いのだろうか)、古代の市場の勃興から、産業革命までの人類の歴史を扱っている、野心的な一作である。訳者解説によれば、著者の自信作の一つであるそうだ。
「市場って何?」「経済ってなに?」「産業革命ってなに?」という、実は世の中の人が答えられない疑問に正面から答えようとしている。特に感銘を受けたのは、「産業革命」と題された九章。
<純粋の商人の場合は買入れるものと売るものが物理的に同一の形態であるが、職人は買ったものを形を変えて売っている。職人と商人の違いはこれだけである。取扱う素材に「労働を加える」ということについては、商人もまた買入れたものよりも売るものに、より高い価値をもたせようとして、「労働を加える」(かれが雇っている事務員や倉庫係の労働を含めて)---つまり、顧客はより効用のある時と場所で商品を手に入れることができるから、その商品はより高い価値をもつことになるのである。このように経済的には手工業と商業とはまったく一致している。>(pp. 238-39)
この件についてはいろんな人がいろんなことを言っているが、ここまでシンプルに分かりやすく説明してもらったことはなかったね。しかし、商業と工業を分ける要素が一つあるという。
<しかしながら、今日では工業と商業が完全には一致しない点が一つある。(…)商人の資本は主として運転資本、ないしは流動資本---回転される資本---である。(…)工業が手工業段階にとどまるかぎり、手工業者や職人の地位は商人のそれとそれほど異ならなかった。たしかにかれは道具をもっていたけれども、かれが使用する道具は、必ずしも高価なものではなかった。(…)固定資本が中心的地位を占めたとき、あるいはしめはじめたとき、まさに「革命」が起こるのである。>(pp. 239-40)
経済学では定説なのかもしれないが、ぼくがこれまで読んだ本の中では、こんなクリアカットで説得力のある説明に出会ったことはなかったなあ。それで、著者の説明は、当然のごとく、長期の資本の調達が容易になってきていた、当時の金融環境について触れ、産業革命の背景について説明している。当たり前のことではあるが、大きな機械(まさに「固定の」資本)を使って大工業を行おうと思ったら大きな資金が必要となる。本書に書いてあるわけではないが、普通に考えると、大きな資金を使って事業をやろうと思ったら、やり方はおそらく二つしかない。例えば1000億円くらいの事業を想像してみる。iPhoneをつくったアップルは偉いが、あそこの中に入っているすんごい半導体を作るにはすんごい設備投資が必要であり(半導体産業は百億、千億単位の巨額の設備を必要とする)、すんごい設備投資を可能にするためには当然金融業が発達していないといけないのである。ジョブズは天才かもしれないが、iPhone大好きなおたくな青年が、iPhoneでFacebookのデモ呼びかけ情報を見て「ウォール街をぶっこわせ」とかいうデモに反対するのは(そういう人がいるかどうか知らんが)、必ずしも筋が通っていないような気はする。
話がそれた。大きな事業をするという方法の話。一つは、国のような大きな単位で強制的に税金を集めて、国の元首が事業を行うという方法。ピラミッドも万里の長城もこうしてできた。これは王様がいけていれば、大したものができるかもしれないが、競争が働かず、現代風に言うところの事業内部のガバナンスも存在しないため、必ずしもいい事業ができるとは限らない。もうひとつの方法は、自発的に貯蓄という形で集まった世の中の余剰資金を、金融機関が事業家に融資(ないし出資)するという方法。お金持ちがせっせと自分で蓄財して自己資金で大事業をやるという方法もなくはないが、普通に考えればこれは効率が悪いことこの上無い。
このように、産業革命の大きな本質の一つが、流動資本から固定資本中心の産業への、バランスシートの内容の変化にあるとすると、金融セクターの成長が産業革命の重要な側面の一つだったと言えるはずなのだが、そういうことってちゃんと習ったことなかった。内燃機関の発明がなんちゃらとか、そういう説明を覚えるよりも、こっちの方が世の中に出て必要な知識だと思うのだが。そういう風に社会の教科書も変えた方がいいんではないんでしょうか。
経済の変化の仕方については興味があっていろいろ本を読んでいるが、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』に並ぶくらい、示唆にあふれた一冊。ダイアモンドの方が読み物として抜群におもしろいが、こちらも再読に値する一冊。
「市場って何?」「経済ってなに?」「産業革命ってなに?」という、実は世の中の人が答えられない疑問に正面から答えようとしている。特に感銘を受けたのは、「産業革命」と題された九章。
<純粋の商人の場合は買入れるものと売るものが物理的に同一の形態であるが、職人は買ったものを形を変えて売っている。職人と商人の違いはこれだけである。取扱う素材に「労働を加える」ということについては、商人もまた買入れたものよりも売るものに、より高い価値をもたせようとして、「労働を加える」(かれが雇っている事務員や倉庫係の労働を含めて)---つまり、顧客はより効用のある時と場所で商品を手に入れることができるから、その商品はより高い価値をもつことになるのである。このように経済的には手工業と商業とはまったく一致している。>(pp. 238-39)
この件についてはいろんな人がいろんなことを言っているが、ここまでシンプルに分かりやすく説明してもらったことはなかったね。しかし、商業と工業を分ける要素が一つあるという。
<しかしながら、今日では工業と商業が完全には一致しない点が一つある。(…)商人の資本は主として運転資本、ないしは流動資本---回転される資本---である。(…)工業が手工業段階にとどまるかぎり、手工業者や職人の地位は商人のそれとそれほど異ならなかった。たしかにかれは道具をもっていたけれども、かれが使用する道具は、必ずしも高価なものではなかった。(…)固定資本が中心的地位を占めたとき、あるいはしめはじめたとき、まさに「革命」が起こるのである。>(pp. 239-40)
経済学では定説なのかもしれないが、ぼくがこれまで読んだ本の中では、こんなクリアカットで説得力のある説明に出会ったことはなかったなあ。それで、著者の説明は、当然のごとく、長期の資本の調達が容易になってきていた、当時の金融環境について触れ、産業革命の背景について説明している。当たり前のことではあるが、大きな機械(まさに「固定の」資本)を使って大工業を行おうと思ったら大きな資金が必要となる。本書に書いてあるわけではないが、普通に考えると、大きな資金を使って事業をやろうと思ったら、やり方はおそらく二つしかない。例えば1000億円くらいの事業を想像してみる。iPhoneをつくったアップルは偉いが、あそこの中に入っているすんごい半導体を作るにはすんごい設備投資が必要であり(半導体産業は百億、千億単位の巨額の設備を必要とする)、すんごい設備投資を可能にするためには当然金融業が発達していないといけないのである。ジョブズは天才かもしれないが、iPhone大好きなおたくな青年が、iPhoneでFacebookのデモ呼びかけ情報を見て「ウォール街をぶっこわせ」とかいうデモに反対するのは(そういう人がいるかどうか知らんが)、必ずしも筋が通っていないような気はする。
話がそれた。大きな事業をするという方法の話。一つは、国のような大きな単位で強制的に税金を集めて、国の元首が事業を行うという方法。ピラミッドも万里の長城もこうしてできた。これは王様がいけていれば、大したものができるかもしれないが、競争が働かず、現代風に言うところの事業内部のガバナンスも存在しないため、必ずしもいい事業ができるとは限らない。もうひとつの方法は、自発的に貯蓄という形で集まった世の中の余剰資金を、金融機関が事業家に融資(ないし出資)するという方法。お金持ちがせっせと自分で蓄財して自己資金で大事業をやるという方法もなくはないが、普通に考えればこれは効率が悪いことこの上無い。
このように、産業革命の大きな本質の一つが、流動資本から固定資本中心の産業への、バランスシートの内容の変化にあるとすると、金融セクターの成長が産業革命の重要な側面の一つだったと言えるはずなのだが、そういうことってちゃんと習ったことなかった。内燃機関の発明がなんちゃらとか、そういう説明を覚えるよりも、こっちの方が世の中に出て必要な知識だと思うのだが。そういう風に社会の教科書も変えた方がいいんではないんでしょうか。
経済の変化の仕方については興味があっていろいろ本を読んでいるが、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』に並ぶくらい、示唆にあふれた一冊。ダイアモンドの方が読み物として抜群におもしろいが、こちらも再読に値する一冊。
2013年10月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
農業の誕生と言う1点から産業革命までを描き出してしまった凄い本。
ヒックス先生自身の脚注も充実しており、これがさり気なく現代まで
カバーしています(出版が1969年なのにこれは凄い)。
著者の名前を不朽の物としたIS-LM的な内容は出てきませんが
「銃・病原菌・鉄」の経済学バージョンみたいな内容で、これが中古で
1000円以下というのは凄い事です。(自分には7000円ぐらいの価値があった)
塩野七生とか司馬遼太郎とかの本を100冊読むより、これ1冊を読んだ方が
余程知見が得られると思います。
平易で万人に読めるので是非。
ヒックス先生自身の脚注も充実しており、これがさり気なく現代まで
カバーしています(出版が1969年なのにこれは凄い)。
著者の名前を不朽の物としたIS-LM的な内容は出てきませんが
「銃・病原菌・鉄」の経済学バージョンみたいな内容で、これが中古で
1000円以下というのは凄い事です。(自分には7000円ぐらいの価値があった)
塩野七生とか司馬遼太郎とかの本を100冊読むより、これ1冊を読んだ方が
余程知見が得られると思います。
平易で万人に読めるので是非。
2003年10月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
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2013年8月7日に日本でレビュー済み
ケインズ経済理論(のIS・LM曲線)解釈で学説史にその名を刻む天才的巨匠・ヒックスが、それまでの経済史理論の主流(マルクス経済学的解釈)に替わるべく、1969年(!)に著した「古典」です。今更書評というのもおこがましいのですが、最近の経済史読書を通じ、どうしても本書への思いを綴りたくなりました。
ヒックスは本書で、市場経済を歴史的に(今風に言えば経路依存的に)形成される制度であると見なし、「商人」を媒介とした交換経済の発展過程として描写しています。「専門化した商人」は慣習経済・指令経済の中から起こり、制度的要因(財産権・契約の保護)に支えられる「第一局面」、貨幣・法・信用といった制度に支えられて非商業的な分野に市場が浸透する「中期の局面」を経て、株式会社(有限責任会社)制度がもたらした巨大信用創造に支えられる設備投資→高固定資本比率を特徴とする近代工業の勃興に至ると説かれます。また、それら4つの局面の担い手は、信用創造の規模に応じ、個人商人→商人団→都市国家→国民国家と変遷してきたと整理されています。
全くの独断ですが、本書の究極的価値は、商業における利益均霑(All-round advantage)の議論を提起した点にあると思っています。利益均霑とは「自発的取引参加者が全て何らかの利益を得ている」という原則であり、市場経済を形成した商人的経済(商業)は、この性格故自律的に勃興・発展できたものと考えられます。前近代の工業・農業は、必ずしも全参加者に利益が均霑しておらず(誰かが“搾取”されており)、この点において商業に経済的な相対優位性があったものと言えるでしょう。
こうしたヒックスの商人経済の勃興・発展のアイデアは、アブナー・グライフに代表される歴史の制度経済学的分析における自己拘束的(self-enforcing)制度の考え方を連想させます。否、むしろグライフの方がヒックスのアイデアに多大なインスピレーションを得ていたのではないかと妄想したくなります。
上記の意味で、ヒックスの経済史理論は、40年以上前のアイデアにも関わらず(近代工業勃興過程の記述には多少の議論はあるにせよ)全く古びていないと思います。★5つ以上付けたい所です。
ヒックスは本書で、市場経済を歴史的に(今風に言えば経路依存的に)形成される制度であると見なし、「商人」を媒介とした交換経済の発展過程として描写しています。「専門化した商人」は慣習経済・指令経済の中から起こり、制度的要因(財産権・契約の保護)に支えられる「第一局面」、貨幣・法・信用といった制度に支えられて非商業的な分野に市場が浸透する「中期の局面」を経て、株式会社(有限責任会社)制度がもたらした巨大信用創造に支えられる設備投資→高固定資本比率を特徴とする近代工業の勃興に至ると説かれます。また、それら4つの局面の担い手は、信用創造の規模に応じ、個人商人→商人団→都市国家→国民国家と変遷してきたと整理されています。
全くの独断ですが、本書の究極的価値は、商業における利益均霑(All-round advantage)の議論を提起した点にあると思っています。利益均霑とは「自発的取引参加者が全て何らかの利益を得ている」という原則であり、市場経済を形成した商人的経済(商業)は、この性格故自律的に勃興・発展できたものと考えられます。前近代の工業・農業は、必ずしも全参加者に利益が均霑しておらず(誰かが“搾取”されており)、この点において商業に経済的な相対優位性があったものと言えるでしょう。
こうしたヒックスの商人経済の勃興・発展のアイデアは、アブナー・グライフに代表される歴史の制度経済学的分析における自己拘束的(self-enforcing)制度の考え方を連想させます。否、むしろグライフの方がヒックスのアイデアに多大なインスピレーションを得ていたのではないかと妄想したくなります。
上記の意味で、ヒックスの経済史理論は、40年以上前のアイデアにも関わらず(近代工業勃興過程の記述には多少の議論はあるにせよ)全く古びていないと思います。★5つ以上付けたい所です。