読了に時間がかかったが、それは豊富な資料を駆使し情報量が多く、ギッシリまとめられていて飛ばし読みできなかったためだ。出会えたことを心から感謝したい本。
とくに織豊政権の成立を、武家支配と民衆自治の抗争史という観点から、両者の実力を図も交えて丁寧に説明しつつ捉え直す視点に目を開かされた。では徳川幕藩体制はそれらをどう取りまとめて長期安定政権を確立したのか、また自らを「王孫」と規定した民衆の強さと、それゆえに王たちの取引によって体制に絡めとられ易いもろさなど、江戸〜近現代の日本を考える上でも大いに示唆的である。
さいごの朝鮮侵略の章は、秀吉の意図を日本国内の状況のみならず宣教師関連の資料、当時の国際関係などからも浮き彫りにしており圧巻。さらに現地の調査も踏まえ、今まであまり触れられなかった朝鮮王朝支配の脆弱さや問題点をはっきり指摘している点など、たいへん新鮮かつ公平で他のレビューに見られる「一方的」といった評価はまったく当たらない。
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天下統一と朝鮮侵略 (講談社学術文庫) 文庫 – 2005/10/8
藤木 久志
(著)
中世末~近世初めの激動の歴史を描き直す。天正四年安土築城を画期とする石山戦争から朝鮮侵略に至るひと筋の道。一向一揆をつぶし侵略へと展開する統一権力とは何か。民衆の視点からの織豊政権研究の成果
- 本の長さ472ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2005/10/8
- ISBN-104061597272
- ISBN-13978-4061597273
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2005/10/8)
- 発売日 : 2005/10/8
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 472ページ
- ISBN-10 : 4061597272
- ISBN-13 : 978-4061597273
- Amazon 売れ筋ランキング: - 604,674位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年5月6日に日本でレビュー済み
著者によれば(というかこの種の歴史学者に共通する認識として)日本は中華秩序の従属国として存在し続けたと規定したいらしい。
次の一節がその強弁を物語る。(日明の講和交渉の中で日本側が朝鮮の頭ごなしに朝鮮南部割譲を条件にした外交形式は)「朝鮮が中国を宗主と仰ぎ藩属する国であり、朝鮮の救援要請を受けた中国軍が日本軍を海岸に叩き落とすまでに追い詰めたという現実のほかに、日本の中世国家もまた中国を中心とする東アジア秩序によってささえられたという、伝統的な従属意識がなかったとはいいきれない」
と「いいききれない」といいつつ、後段では
「(西洋勢力の手が及ぶ情勢の中で)日本中世国家の解体を果たすためには、伝統的にこの国家をささえてきた中国・北京を中心とする東アジア秩序に反逆し、いわば北京上洛をなしとげることは、日本の新しい支配階級がみずからの国家を樹立していくための緊急な課題であった。その北京上洛という発想が、中国への従属意識に深く根差していたことは、いうまでもない」
と「いうまでもない」と断言する。
なんで北京上洛の構想が伝統的な従属意識によるものと断言できるのか。外交形式に従属意識がなかったと「いいきれない」のにだ。また朝鮮頭ごなし外交がなぜ従属意識につながるのか論理的な説明がない。そうあってほしい、そうあったほうがふさわしいという主観、歴史学を修辞によってプロパガンダに利用する、そっちへの関心が深い著者の性向がみてとれる。
それにしても講和交渉の段階では「中国軍が日本軍を海岸に叩き落とすまでに追いつめたという現実」はなかったのだけど。この修辞をぜひとも文中に紛れ込ませたかったのだろう。
同書では李舜臣の「制海権」についても触れ、物資兵糧の日本からの補給が困難になっていたと「定説」で修飾している。
次の一節がその強弁を物語る。(日明の講和交渉の中で日本側が朝鮮の頭ごなしに朝鮮南部割譲を条件にした外交形式は)「朝鮮が中国を宗主と仰ぎ藩属する国であり、朝鮮の救援要請を受けた中国軍が日本軍を海岸に叩き落とすまでに追い詰めたという現実のほかに、日本の中世国家もまた中国を中心とする東アジア秩序によってささえられたという、伝統的な従属意識がなかったとはいいきれない」
と「いいききれない」といいつつ、後段では
「(西洋勢力の手が及ぶ情勢の中で)日本中世国家の解体を果たすためには、伝統的にこの国家をささえてきた中国・北京を中心とする東アジア秩序に反逆し、いわば北京上洛をなしとげることは、日本の新しい支配階級がみずからの国家を樹立していくための緊急な課題であった。その北京上洛という発想が、中国への従属意識に深く根差していたことは、いうまでもない」
と「いうまでもない」と断言する。
なんで北京上洛の構想が伝統的な従属意識によるものと断言できるのか。外交形式に従属意識がなかったと「いいきれない」のにだ。また朝鮮頭ごなし外交がなぜ従属意識につながるのか論理的な説明がない。そうあってほしい、そうあったほうがふさわしいという主観、歴史学を修辞によってプロパガンダに利用する、そっちへの関心が深い著者の性向がみてとれる。
それにしても講和交渉の段階では「中国軍が日本軍を海岸に叩き落とすまでに追いつめたという現実」はなかったのだけど。この修辞をぜひとも文中に紛れ込ませたかったのだろう。
同書では李舜臣の「制海権」についても触れ、物資兵糧の日本からの補給が困難になっていたと「定説」で修飾している。
2020年3月14日に日本でレビュー済み
本書は、1975年に小学館から刊行された「日本の歴史」第15巻「織田・豊富政権」を底本としています。
前半は、信長と本願寺との戦いを通して各地で起こった一向一揆を主に紹介しています。
後半は、秀吉の農民政策で過酷な年貢に苦しみ、朝鮮侵略にまで巻き込まれた農民たちを紹介しています。
どうやら、苦しめられ耐え忍んだ農民、あるいは耐えられずに逃げた農民たちを紹介したかったようです。
前半は、信長と本願寺との戦いを通して各地で起こった一向一揆を主に紹介しています。
後半は、秀吉の農民政策で過酷な年貢に苦しみ、朝鮮侵略にまで巻き込まれた農民たちを紹介しています。
どうやら、苦しめられ耐え忍んだ農民、あるいは耐えられずに逃げた農民たちを紹介したかったようです。
2007年3月25日に日本でレビュー済み
純粋に日朝関係の歴史を知りたく購読したが、説明できない虚無感に襲われた。織田政権の対宗教団体政策にしろ、豊臣政権の対中国政策にしろ、敗者の側からの見解としてはおおいに利用できる。が、まるでなんでもかんでも日帝が悪と主張されている人々と国の見解と何も変わらない論調に辟易する。数値などに資料価値はあるが、論の進め方に嫌悪感が残る。
2009年3月15日に日本でレビュー済み
この時代のうねりを強く感じながら理解できる。織田,豊臣,徳川の国取物語よりもずっとリアルで面白い。特に検地が天下統一した豊臣から各領地への強制の形を取りつつ,各領地では支配体制の確立につながり,これが「武士を利害を共有する政治勢力にしたてる」様の記述は読み応えがある。一方,室町・戦国期に寺門という利益共同体が一向宗を核に強固に形成された事情がよくわからなかった。