ルネサンスは,日本の教科書ではルネスンス時代の人々が,ルネサンスを明確に意識していたような感じで書かれているが,当事者たちは格別意識していなかったのではないか?西欧で教育を受けたせいか,ルネサンスとして意識されたのは,「ルネサンス」と言う造語を作った19世紀フランスの歴史家Jules Michelet(1798- 1874)がこの時代を「ルネサンス」と呼んで以来と考える.その後スイスの歴史家・文化史家・文明史家のCarl Jacob Christoph Burckhardt(1818-1897)が,「イタリア・ルネサンスの文化」で「ルネサンス」という言葉を広めて初めて「ルネサンス」という言葉が知られるようになった.この二人がいなければ,「ルネサンス」は今でも格別の扱いは受けていないように思われる.
大学院修了後「ルネサンスの文化史上の位置と意義―ルネサンスは文化史上特別なものか?」と言うタイトルで,ルネサンスは中世と断絶しているのではなく,むしろの中世の延長と考えるのは正しいのではないか,と言う視点から論文を書いたが,その際この本はギリシアやアラビアの影響を受けた西欧の科学的側面の発達が大いに参考となった.
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十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫) 文庫 – 2006/9/8
伊東 俊太郎
(著)
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中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する12世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。
アラビア世界から西欧へ
中世の眠りを覚ます 創造的文明移転の時代
中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する12世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。
アラビア世界から西欧へ
中世の眠りを覚ます 創造的文明移転の時代
中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する12世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2006/9/8
- 寸法10.8 x 1.3 x 14.8 cm
- ISBN-104061597809
- ISBN-13978-4061597808
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2006/9/8)
- 発売日 : 2006/9/8
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 320ページ
- ISBN-10 : 4061597809
- ISBN-13 : 978-4061597808
- 寸法 : 10.8 x 1.3 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 34,226位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2022年4月22日に日本でレビュー済み
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もう少し、オスマントルコのことを書いてほしかった。日米和親条約の元は、オスマントルコと欧米との不平等条約から来ています。勿論、オスマントルコが上で、欧米が下に見られ結ばされた条約です。そのことが一切触れられていないのが残念です。
2014年1月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大変役にたちました。バグダードの知恵の館での翻訳作業、シチリアのパレルモでの翻訳作業、イベリア半島のトレドでの翻訳作業などを上手につなげた名著だと思います。
2023年1月4日に日本でレビュー済み
この本は自分は学校の授業で先生が配った紙に紹介されていた本の中の一つでした。なのでこれまで講談社学術文庫などは名前も知らなかったのでこの本は印象的な一冊になっています。また、ルネサンスに何がどのように影響をしていたのかといった考察が書かれておりルネサンスに対する意識が変わりました。そもそも知識がほとんどない自分にとって、この本は以降本を読んでいくための礎にも自分のなかでなったと思います。繰り返し読みたくなる本です。
2018年4月24日に日本でレビュー済み
十二世紀のルネサンスと言えば、ハスキンズの書物が有名だが、この本では、特にイスラム世界からの影響に焦点を当てて、十二世紀ルネサンスの新たな側面を紹介している。
スペイン、シチリア、そして北イタリアの3つのルートに分けて、それぞれの特徴を解説している。
講義内容を基にして書かれているので、表現が分かりやすく読みやすい。
中でもシチリアからのルートの部分が、特に興味深かった。
スペイン、シチリア、そして北イタリアの3つのルートに分けて、それぞれの特徴を解説している。
講義内容を基にして書かれているので、表現が分かりやすく読みやすい。
中でもシチリアからのルートの部分が、特に興味深かった。
2019年3月19日に日本でレビュー済み
著者は比較文明史や科学史が専門の元東大教授で、1984年に岩波市民セミナーで7夜にわたり本書標題で講義したものが基となっている。一次資料として古代ギリシャ語やラテン語、アラビア語等の写本や手稿からの引用が多く、またあまり馴染みのない人物が頻出するなど気楽な読み物ではないが、語り調の文章はやさしく明晰で丁寧に読めば著者の意を理解することはできる。
第1講の「十二世紀ルネサンスとは何か」では、14-15世紀の文芸・美術等の古典復興期に先行して、哲学・科学等の分野においては12世紀にビザンティン・アラビア文明経由の復興期があったとする。第2講の「十二世紀ルネサンスのルートと担い手」では、レコンキスタ中のイベリア半島でトレドを奪還するとアラビア文献のラテン語への翻訳学校ができた。一方シチリア島にノルマン王国が建国されると、ノルマン人、アラブ人、ギリシャ人は平和裏に暮らし、アラビア語やギリシャ語からラテン語への翻訳が盛んに行われた。第6講の「シチリアにおける科学ルネサンス」では、著者の学位論文でもあるユークリッドの「与件」(幾何学「原論」の続編)の文献学的研究について述べる。ここではその後の研究の進展も含みアップデイトされており、学問の最前線を垣間見ることができ興味深かった。第7講の終わりでは、西欧文明のギリシャ、ローマを起点とする3,000年の連続的単一発展説は神話に過ぎず、ビザンティン文明やアラビア文明との交流があったからこそ12世紀以降の西欧の離陸があったと纏める。
大学の講義でも同じことだが、時に話が脱線するところは面白かった。西洋中世史における「アラビア問題」と日本古代史における「朝鮮問題」の類似、追放ユダヤ人の学問的貢献に関して「強制されたエクソダス」による文明移転の話は印象に残る。また、立場を変えて見た歴史書として「アラブが見た十字軍」と「イスラームから見た『世界史』」を思い出した。
第1講の「十二世紀ルネサンスとは何か」では、14-15世紀の文芸・美術等の古典復興期に先行して、哲学・科学等の分野においては12世紀にビザンティン・アラビア文明経由の復興期があったとする。第2講の「十二世紀ルネサンスのルートと担い手」では、レコンキスタ中のイベリア半島でトレドを奪還するとアラビア文献のラテン語への翻訳学校ができた。一方シチリア島にノルマン王国が建国されると、ノルマン人、アラブ人、ギリシャ人は平和裏に暮らし、アラビア語やギリシャ語からラテン語への翻訳が盛んに行われた。第6講の「シチリアにおける科学ルネサンス」では、著者の学位論文でもあるユークリッドの「与件」(幾何学「原論」の続編)の文献学的研究について述べる。ここではその後の研究の進展も含みアップデイトされており、学問の最前線を垣間見ることができ興味深かった。第7講の終わりでは、西欧文明のギリシャ、ローマを起点とする3,000年の連続的単一発展説は神話に過ぎず、ビザンティン文明やアラビア文明との交流があったからこそ12世紀以降の西欧の離陸があったと纏める。
大学の講義でも同じことだが、時に話が脱線するところは面白かった。西洋中世史における「アラビア問題」と日本古代史における「朝鮮問題」の類似、追放ユダヤ人の学問的貢献に関して「強制されたエクソダス」による文明移転の話は印象に残る。また、立場を変えて見た歴史書として「アラブが見た十字軍」と「イスラームから見た『世界史』」を思い出した。
2014年11月30日に日本でレビュー済み
「ヨーロッパ/アラブ」というと、「進んだヨーロッパ」と「発展の遅れるアラブ圏」という枠組みで語られがちである。
確かに現在においてそのような面はあるかもしれない。しかし、12世紀においては状況は真逆だったのである。
我々は、科学というものはすべてヨーロッパで発展したものだと思いがちだが、本書はそうした認識を一変させてくれる。
古代ギリシャの様々な知的遺産、哲学者アリストテレスの膨大な著作や、あるいは数学者ユークリッドの洞察など、こういったものはギリシャからローマへの引き継ぎの段階であまり上手くいかず、さらにゲルマン人の侵入とともに資料保存のレベルで大きな混乱が生じた。
そのため、古代ギリシャの知見はヨーロッパには引き継がれなかったのである。
これに対し、アラブ圏はこれらの知見の多くを引き継ぎ、さらに独自の発展を遂げさせた。
世界最初の大学はアラブにおいて作られたものだし、巨大な研究施設もアラブには作られていた(アル・マムーンによる「知恵の館」)。
アラブにおける科学の発展は、同著者の 近代科学の源流 で扱われている。
12世紀には、レコンキスタによりスペインがヨーロッパに入り、またシチリア島もヨーロッパ圏になった。
その過程で、膨大なアラブ圏での研究成果の書籍が一気にヨーロッパに入り、これが12世紀ヨーロッパでの知的勃興を起こすのである。
ベーコンやトマス・アクィナスといった偉大な成果は、すべてこれらを下敷きにしているものである。
アラブからの知識移動の名残として、さまざまな語に「アラビア語のラテン語訳」が残っている。
例えば「Algebra(代数)」は、「アル(アラビア語の定冠詞)+ジャブル(「形を整えること」というアラビア語)」の音訳であり、実はこれはアル・フワーリズミーというアラブの研究者の本のタイトルの一部なのである。
他にも「zero」「alchol」「coffee」はアラビア語由来というのだから驚きである。
最後二講はいささか細目に入りすぎていて冗長なのだが、全体としては非常に面白い。
アラブに対するイメージを覆してくれるし、ヨーロッパの知がどのように発展したのか、という問いに斬新な視座を与えてくれる良書である。
確かに現在においてそのような面はあるかもしれない。しかし、12世紀においては状況は真逆だったのである。
我々は、科学というものはすべてヨーロッパで発展したものだと思いがちだが、本書はそうした認識を一変させてくれる。
古代ギリシャの様々な知的遺産、哲学者アリストテレスの膨大な著作や、あるいは数学者ユークリッドの洞察など、こういったものはギリシャからローマへの引き継ぎの段階であまり上手くいかず、さらにゲルマン人の侵入とともに資料保存のレベルで大きな混乱が生じた。
そのため、古代ギリシャの知見はヨーロッパには引き継がれなかったのである。
これに対し、アラブ圏はこれらの知見の多くを引き継ぎ、さらに独自の発展を遂げさせた。
世界最初の大学はアラブにおいて作られたものだし、巨大な研究施設もアラブには作られていた(アル・マムーンによる「知恵の館」)。
アラブにおける科学の発展は、同著者の 近代科学の源流 で扱われている。
12世紀には、レコンキスタによりスペインがヨーロッパに入り、またシチリア島もヨーロッパ圏になった。
その過程で、膨大なアラブ圏での研究成果の書籍が一気にヨーロッパに入り、これが12世紀ヨーロッパでの知的勃興を起こすのである。
ベーコンやトマス・アクィナスといった偉大な成果は、すべてこれらを下敷きにしているものである。
アラブからの知識移動の名残として、さまざまな語に「アラビア語のラテン語訳」が残っている。
例えば「Algebra(代数)」は、「アル(アラビア語の定冠詞)+ジャブル(「形を整えること」というアラビア語)」の音訳であり、実はこれはアル・フワーリズミーというアラブの研究者の本のタイトルの一部なのである。
他にも「zero」「alchol」「coffee」はアラビア語由来というのだから驚きである。
最後二講はいささか細目に入りすぎていて冗長なのだが、全体としては非常に面白い。
アラブに対するイメージを覆してくれるし、ヨーロッパの知がどのように発展したのか、という問いに斬新な視座を与えてくれる良書である。
2011年2月6日に日本でレビュー済み
この時期の本はあまりないので情報量という面では役に立つ
筆者は科学史専門なせいか内容が12世紀ルネサンスの中でもアラビア学術の流入の経路に集中していて、社会、政治、経済、文化面にはほとんどふれてない
さらに十字軍を過小評価しすぎである。筆者はスペイン、南イタリアルートを重視しているがこのルートは12世紀のはるか前から存在しているわけで
12世紀まさに十字軍の時代に急に知識人達が東方の学術に興味を持ち殺到するのは西欧全体にインパクトを与えた十字軍の影響なしにはありえない
さらにアラビアを美化しすぎな面もある、十字軍を狂信的な集団と切って捨てるがそもそもイスラム初期も狂信的な集団であったわけだし
十字軍と同時期にも狂信的なムワッヒド朝がキリスト教徒やユダヤ教徒に過酷な弾圧をしており、インドでも狂信的なイスラム集団が仏教寺院を破壊しているわけで
また十字軍諸国家も現地勢力と手を結んだり通婚したりして何も戦争ばかりやっていたわけではない、筆者は文化史専門なので軍事史にうといみたいだ
本書は25年前なので西欧中心史観に対するアンチテーゼが多く、アラビアの影響を強調するあまり各論が薄くなっているとも思う
自分としてはアラビアの影響はとっくにわかっていることなのでそこを強調するよりもっと突っ込んだところが知りたかった
例えば、イスラムのアベロエス主義とは何か、それがどう具体的にトマス・アキナスに影響したか、また光学、機械論からどう近代科学に結びつかれたかとか
さらにアラビアの影響を強調したいせいか北方の武勲詩を無視しすぎである、どちらかというとこちらの方がメジャーな作品が多い
トゥルバドゥールに関しても、詩の形式や楽器面で東方の影響があったとしても、肝心な核となる音楽理論面(音階やハーモニーなど)に関して全くといっていいほど東方の影響を受けていないということに触れていない。この時代の教会音楽におけるポリフォニーの発展にも全く触れていない
そういう訳で本書は12世紀ルネサンスの社会全体の動きというより主にアラビアの影響、特に科学史に関することに集中していてる。
それをわきまえた上で読めばいいと思う。
ただアラビア・ルネサンスの項目は面白いし、ローマ人がギリシャ文献を全然ラテン語に訳さなかったことが後の文化暗黒時代の原因になったことなど面白いことも書いてある。
さらにイスラムにおけるアラビア科学の弾圧、衰退などの経緯も書けばよりアラビアからヨーロッパへの科学の移動がわかってよかった思う
筆者は科学史専門なせいか内容が12世紀ルネサンスの中でもアラビア学術の流入の経路に集中していて、社会、政治、経済、文化面にはほとんどふれてない
さらに十字軍を過小評価しすぎである。筆者はスペイン、南イタリアルートを重視しているがこのルートは12世紀のはるか前から存在しているわけで
12世紀まさに十字軍の時代に急に知識人達が東方の学術に興味を持ち殺到するのは西欧全体にインパクトを与えた十字軍の影響なしにはありえない
さらにアラビアを美化しすぎな面もある、十字軍を狂信的な集団と切って捨てるがそもそもイスラム初期も狂信的な集団であったわけだし
十字軍と同時期にも狂信的なムワッヒド朝がキリスト教徒やユダヤ教徒に過酷な弾圧をしており、インドでも狂信的なイスラム集団が仏教寺院を破壊しているわけで
また十字軍諸国家も現地勢力と手を結んだり通婚したりして何も戦争ばかりやっていたわけではない、筆者は文化史専門なので軍事史にうといみたいだ
本書は25年前なので西欧中心史観に対するアンチテーゼが多く、アラビアの影響を強調するあまり各論が薄くなっているとも思う
自分としてはアラビアの影響はとっくにわかっていることなのでそこを強調するよりもっと突っ込んだところが知りたかった
例えば、イスラムのアベロエス主義とは何か、それがどう具体的にトマス・アキナスに影響したか、また光学、機械論からどう近代科学に結びつかれたかとか
さらにアラビアの影響を強調したいせいか北方の武勲詩を無視しすぎである、どちらかというとこちらの方がメジャーな作品が多い
トゥルバドゥールに関しても、詩の形式や楽器面で東方の影響があったとしても、肝心な核となる音楽理論面(音階やハーモニーなど)に関して全くといっていいほど東方の影響を受けていないということに触れていない。この時代の教会音楽におけるポリフォニーの発展にも全く触れていない
そういう訳で本書は12世紀ルネサンスの社会全体の動きというより主にアラビアの影響、特に科学史に関することに集中していてる。
それをわきまえた上で読めばいいと思う。
ただアラビア・ルネサンスの項目は面白いし、ローマ人がギリシャ文献を全然ラテン語に訳さなかったことが後の文化暗黒時代の原因になったことなど面白いことも書いてある。
さらにイスラムにおけるアラビア科学の弾圧、衰退などの経緯も書けばよりアラビアからヨーロッパへの科学の移動がわかってよかった思う