『闇の太守』シリーズ第三作目。舞台は越前一乗谷を出て、織田信長の天下布武に沿った形で新展開。
朝倉義景を見限った妖人是界が次に目をつけたのは織田信長と木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)。宿敵是界を追いかける贄塔九郎以下の御贄衆、養父飯田仁右衛門の仇と信じて明智光秀を追いかける疾風、恩師富田勢源の仇と信じて贄塔九郎を追いかける秋月小次郎の、三者三様の動向が描かれるのでありますが……うーん、風呂敷を広げた余りに全体に散漫になってしまった印象。前巻は疾風を中心に据えていたのでストーリーがすっきりしていたからね。
ところで、光秀から嘘の情報を吹き込まれた秋月小次郎が贄塔九郎を恩師の仇と決め込んでいるのはいいとして、疾風が光秀を養父の仇と決め込んでいるのはよく考えると思い込みでしかないような。直接暗躍したのは鵺と百舌で、飯田仁右衛門の失脚に光秀はそれほど関与してないのでは……。
御贄衆は新たに琵琶法師の石神面と双子の子月卯日が参加するものも、前巻から引き続き登場のメンバーも含めて活躍らしい活躍は描かれず、人数の多さを持て余してしまった模様。是界の一味も、鵺、百舌、前巻では疾風の前に立ちはだかる宿敵的存在だった閻魔冥官が案外にあっけなく退場してしまい、第三勢力として登場した花鈿衆の気まぐれな若様蘭奢丸に存在をすっかり食われてしまっているのであります。
それにしてもこの小説、登場人物が次々に小物化していくのはいかがなものか。宿敵是界は、前巻の冒頭以来となる再登場と思いきや、盲目の富田勢源には幻術が通じず追い詰められ、木下藤吉郎にはいいようにあしらわれる始末で、宿敵の役まわりとしてはあまりに物足らない。ついでにいえばこの人、一巻の内島為氏や山本勘助のようにてっきりヤマタノオロチが転生した魔物なのかと思っていたら、贄塔九郎とは同族の裏切者だったのね。
明智光秀も登場するたびにだんだん小悪党化していく始末でして、出番は短いながらも存在感があった一巻目の導入部と比較すると同一人物とはとても思えないぐらい。キャラクター描写のみならず、物語のスケール自体が大幅に小さくなってしまったような……。
金ヶ崎からの撤退中の織田信長・木下藤吉郎への襲撃には失敗したものの、巻き返しを図り、京都の本能寺への再襲撃に御贄衆が向かったところで次巻に続く。
蛇足ながら、現在では偽書説が有力な『武功夜話』がベースになっている辺りに時代の流れを感じさせられます。
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闇の太守 3―長編時代伝奇ロマン 梟雄の巻 (講談社ノベルス ヤE- 3) 新書 – 1989/4/1
山田 正紀
(著)
- 本の長さ225ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1989/4/1
- ISBN-104061814281
- ISBN-13978-4061814288
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1989/4/1)
- 発売日 : 1989/4/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 225ページ
- ISBN-10 : 4061814281
- ISBN-13 : 978-4061814288
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,594,235位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2009年2月16日に日本でレビュー済み
2巻までのキャラが複雑に絡み合い死闘を展開する中に、
新たな第三勢力も現れて物語りはさらにヒートアップ!
忍法合戦も山田風太郎に匹敵する面白さ。
戦国大名は全て残忍な殺人鬼であるという歴史認識も素晴しい!
サイコパスの戦国大名を英雄扱いする人格障害者は反省するヨロシ。
新たな第三勢力も現れて物語りはさらにヒートアップ!
忍法合戦も山田風太郎に匹敵する面白さ。
戦国大名は全て残忍な殺人鬼であるという歴史認識も素晴しい!
サイコパスの戦国大名を英雄扱いする人格障害者は反省するヨロシ。
2007年1月22日に日本でレビュー済み
越前国の大名 朝倉家の危機に忽然と姿を現した闇の太守 贄塔九郎とその一党の御贄衆。家中の心ある者と力を合わせて、根の国の裏切り者 是界や明智光秀らと戦うが、一度傾いた家運はなかなか立て直せない。さらなる惨劇を求めて、今まさに時代の寵児になろうとしている織田信長、木下藤吉郎らに接触する是界。御贄衆と同じく根の国の名門 花鈿衆(かでんしゅう)とその棟梁 蘭闍丸(らんじゃまる)も抗争に加わり、激しさと複雑さを増す戦いの中、闇の太守は是界を追い詰めることができるのか?
前作では紹介程度にとどまっていた御贄衆の面々が、その奇怪な技を使って活躍するのがなんとも楽しい。使う技が、体から死臭をだして敵の戦意を喪失させたり、死体に集る虫を操ったりと、不気味なものが多いのですが、敵側も負けず劣らず気味の悪い技を繰り出してくるので、まぁ良しとしましょう(?)。また、本書で初登場、闇の太守と敵対する蘭闍丸がなかなかに良い味を出していて、次作最終巻へ向けて盛り上げ役を担ってくれています。
闇の太守 贄塔九郎、朝倉家の呪われた姫君 疾風、剣士 秋月小次郎、花鈿衆棟梁 蘭闍丸、さらには是界に明智光秀と、互いに信頼、不信、敵意、胸に秘めた淡い想いなどなど様々な思いを抱きながら怒濤のクライマックスへ向けての前哨戦の新シリーズ二作目、ここまで大きく広げた物語にどう結末をつけるのか、次作がとても楽しみです。
前作では紹介程度にとどまっていた御贄衆の面々が、その奇怪な技を使って活躍するのがなんとも楽しい。使う技が、体から死臭をだして敵の戦意を喪失させたり、死体に集る虫を操ったりと、不気味なものが多いのですが、敵側も負けず劣らず気味の悪い技を繰り出してくるので、まぁ良しとしましょう(?)。また、本書で初登場、闇の太守と敵対する蘭闍丸がなかなかに良い味を出していて、次作最終巻へ向けて盛り上げ役を担ってくれています。
闇の太守 贄塔九郎、朝倉家の呪われた姫君 疾風、剣士 秋月小次郎、花鈿衆棟梁 蘭闍丸、さらには是界に明智光秀と、互いに信頼、不信、敵意、胸に秘めた淡い想いなどなど様々な思いを抱きながら怒濤のクライマックスへ向けての前哨戦の新シリーズ二作目、ここまで大きく広げた物語にどう結末をつけるのか、次作がとても楽しみです。