本書は,山田風太郎作品中最高のキャラクターである柳生十兵衛三部作(「魔界転生」「柳生十兵衛死す」)の第1部です。
(もちろん単独で読んでもOK)
忍法帖シリーズでありながら忍法よりも剣術が主となる作品ですが,これがべらぼうに面白いのです。
山田風太郎は,史実を上手くアレンジし,自分の小説とすることが非常に上手で,本作においてもベースは史実にあります。
藩政に興味を示さず、その貪欲な性格から金集めに熱中して重税を敷いた会津藩藩主加藤明成と
不仲になった家老堀主水が1639年一族郎党を率いて若松城から立ち去ったことを理由に,一族
共に処刑されたという史実をもとに,処刑された主水らの娘らが,柳生十兵衛の助けをかり復讐を
果たすという,波瀾万丈な物語となっています。
風太郎の描く加藤明成は,その淫虐ぶりが凄まじく,女性読者にはどぎつすぎるかも知れませんが,
命がけの復讐劇も「おれは面白かった」と笑い飛ばす柳生十兵衛の爽やかさによって読後感がとても良くなっています。
そして何よりも山田風太郎の文体が素晴らしい。
忍法帖シリーズの入門編としてもお奨めの作品です。
ただし,忍法対忍法の戦いが読みたい方は,甲賀忍法帖や忍法八犬伝などから入られるといいかも知れません。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
柳生忍法帖 上 (KODANSHA NOVELS SPECIAL ヤK- 7 山田風太郎) 新書 – 1994/6/1
山田 風太郎
(著)
鎌倉東慶寺(とうけいじ)、男子禁制の山門を血で染めた「会津七本槍」の七剣鬼。暗愚な藩主加藤明成を使嗾(しそう)し、硬骨の家老堀主水一族を鏖殺した暴虐に今天誅が! 万斛(ばんこく)の恨みに燃える堀家の女7人を助くべく、徳川千姫の命により、柳生十兵衛御見参!
- 本の長さ345ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1994/6/1
- ISBN-104061817426
- ISBN-13978-4061817425
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
鎌倉東慶寺、男子禁制の山門を血で染めた「会津七本槍」の七剣鬼。暗愚な藩主加藤明成を使嗾し、硬骨の家老堀主水一族を鏖殺した暴虐に今天誅が! 万斛の恨みに燃える堀家の女七人を助くべく、徳川千姫の命により柳生十兵衛見参!
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1994/6/1)
- 発売日 : 1994/6/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 345ページ
- ISBN-10 : 4061817426
- ISBN-13 : 978-4061817425
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,560,949位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1922年、兵庫県生まれ。東京医科大学卒業。47年、「宝石」新人募集に応募した「達磨峠の事件」がデビュー作。48年「眼中の悪魔」で第2回探偵作家 クラブ賞短編賞を受賞。その後「甲賀忍法帖」を始めとした忍法帖シリーズなどを精力的に発表した。2000年、日本ミステリー文学大賞受賞。01年7月死 去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 八犬傳 下(新装版) (ISBN-13: 978-4331614044)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2011年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2007年5月18日に日本でレビュー済み
会津藩、加藤氏の改易と家来堀主水との対立の史実を元に、領主に撃たれた従臣たちの家族(女7人)が、柳生十兵衛や沢庵和尚の力をかりて恐ろしき武芸の使い手たちに復讐をするという物語。
山田風太郎ワールド炸裂です。
とにかく自らの手で復讐を遂げんとする、女たちを見守る十兵衛の格好いい事。そして沢庵和尚や天界上人他の歴史上の人物もいい味だしています。
その他、敵たちの業のすごさと、それをとりまく登場人物、一級の娯楽作品です。
山田風太郎ワールド炸裂です。
とにかく自らの手で復讐を遂げんとする、女たちを見守る十兵衛の格好いい事。そして沢庵和尚や天界上人他の歴史上の人物もいい味だしています。
その他、敵たちの業のすごさと、それをとりまく登場人物、一級の娯楽作品です。
2012年1月21日に日本でレビュー済み
この作家の才能はなんなんだ一体? まさに天才。
今から50年近く前の作品なのに、古臭さが一切ない。
ここで本作のあらすじを語るのは簡単ですが、
なにも前情報を得ずに読むことが一番楽しいので、語りません。
が、これだけは断言できます。
損はしません。絶対に損はしません。
本を買うお金、読むのに費やした時間や集中力、
といった掛け替えのないものを差し出した分以上の、
面白さと感動を得られることを、私はここで神に誓えます。
しかし、文庫で上下合わせても千円ほどでしょう。
千円でこれほどの傑作エンターテイメント小説が読めるとなると、
1,800円する映画代がほんとに高く感じでしまいます。
ちなみに本作は漫画化されており、そちらも素晴らしい出来です。
Y十M(ワイじゅうエム)〜柳生忍法帖〜(1) (ヤングマガジンコミックス)
今から50年近く前の作品なのに、古臭さが一切ない。
ここで本作のあらすじを語るのは簡単ですが、
なにも前情報を得ずに読むことが一番楽しいので、語りません。
が、これだけは断言できます。
損はしません。絶対に損はしません。
本を買うお金、読むのに費やした時間や集中力、
といった掛け替えのないものを差し出した分以上の、
面白さと感動を得られることを、私はここで神に誓えます。
しかし、文庫で上下合わせても千円ほどでしょう。
千円でこれほどの傑作エンターテイメント小説が読めるとなると、
1,800円する映画代がほんとに高く感じでしまいます。
ちなみに本作は漫画化されており、そちらも素晴らしい出来です。
Y十M(ワイじゅうエム)〜柳生忍法帖〜(1) (ヤングマガジンコミックス)
2011年7月12日に日本でレビュー済み
著者の十兵衛ものである。
そして、本作の十兵衛は、何とも格好いい。
夫たちの敵討ちを決意した夫人たちの、まさに助太刀として活躍する。
しかしてそのポリシーは、極力自分がトドメをささない。
最後の決めは、できるだけ女性群にまかせる。
その意気や良しなのだが、それがしばしば危機を招くことにもなる。
そして、ハラハラドキドキの種になるのである。
本作で嬉しいのは、若干のネタバレになるのを勘弁してもらうが、女性軍が最後までひとりも欠けない、ということだ。
普通、この手の話は、次々と犠牲者を出しつつ、一つずつ敵討ちが達成されるものである。
しかし本作では、女性軍以外で犠牲者は出るのだが、女性軍は最後まで全員がそろって敵討ちが達成される。
だから、読後は実に爽やかである。
本作を「魔界転生」の前に読んだので、山風十兵衛にすっかり嵌ってしまった。
だから、「魔界〜」も「柳生十兵衛〜」も、全て目を通している。
一般的には、映画化もされた「魔界〜」の十兵衛のほうが、アクションも多いし、強いしで、評価が高いかもしれない。
しかし私は、本作の十兵衛が一番好きだ。
思いやり、という暖かいものを、本作の十兵衛はしっかりと持っている。
そして、本作の十兵衛は、何とも格好いい。
夫たちの敵討ちを決意した夫人たちの、まさに助太刀として活躍する。
しかしてそのポリシーは、極力自分がトドメをささない。
最後の決めは、できるだけ女性群にまかせる。
その意気や良しなのだが、それがしばしば危機を招くことにもなる。
そして、ハラハラドキドキの種になるのである。
本作で嬉しいのは、若干のネタバレになるのを勘弁してもらうが、女性軍が最後までひとりも欠けない、ということだ。
普通、この手の話は、次々と犠牲者を出しつつ、一つずつ敵討ちが達成されるものである。
しかし本作では、女性軍以外で犠牲者は出るのだが、女性軍は最後まで全員がそろって敵討ちが達成される。
だから、読後は実に爽やかである。
本作を「魔界転生」の前に読んだので、山風十兵衛にすっかり嵌ってしまった。
だから、「魔界〜」も「柳生十兵衛〜」も、全て目を通している。
一般的には、映画化もされた「魔界〜」の十兵衛のほうが、アクションも多いし、強いしで、評価が高いかもしれない。
しかし私は、本作の十兵衛が一番好きだ。
思いやり、という暖かいものを、本作の十兵衛はしっかりと持っている。
2016年5月2日に日本でレビュー済み
徳川初期に起こった会津藩主従の争いという、史実に沿った復讐譚の時代伝奇で、最初「尼寺五十万石」のタイトルで地方紙に連載された。
登場する実在キャラは主役の柳生十兵衛、敵役の会津藩主・加藤明成、会津藩家老で明成と対立し退転する堀主水、沢庵和尚、千姫、天海など。
創作キャラは復讐に立ち上がる堀家ゆかりの女性7人と、復讐の対象となる会津七本槍の七人衆、その首領・芦名銅伯など。
上巻では江戸、下巻では会津を舞台に物語が長々と展開する。実在キャラは多いもののプロットは完全フィクションで、ほとんど漫画(ありえない!! の連続)。物語としての厚みはまったくない。
堀側の7人の女性は一人も死なず敵は全滅するという、風太郎には珍しい勧善懲悪ストーリーなので話がなんとなく締まらない。さらに長すぎてもたれ、飽きが来る。残酷描写が多く、エログロ・サディズムの風味が効いているのが救いか。かろうじてB級作品だが、Cランクに近いと思う。
不可解なのはタイトル。作中には忍者も忍法も出てこない。主役・柳生十兵衛は全編出ずっぱりだが、柳生は剣法だ。物語では十兵衛が堀家の女性七人衆を鍛えて復讐を成就させる。しかし女性陣に叩き込む体術は本格忍法ではなく、使われるときも例の「忍法○×」というつぶやきがない。
敵側にも忍者は登場しない。忍法も銅伯が使う一つだけ(忍法というより妖術)。その銅伯にしても、忍者というより森宗意軒的な妖人だ。会津槍七人衆の得意技は武術の延長で忍法ではない。したがってタイトル「柳生忍法帖」は不合理。
十兵衛を主人公とする長篇はほかに「魔界転生」「柳生十兵衛死す」があるが忍法帖の名称を使っていない。私見ではこの3作品は「十兵衛三部作」としてまとめるべきで、忍法帖に数えない方がいい。
特に“忍法帖の最高傑作”とよく言われる「魔界転生」は、内容からいって忍法帖ではないし(妖人・妖術は出てくるが、忍者・忍法は登場しない)、タイトルも「おぼろ忍法帖 → 忍法魔界転生 → 魔界転生」と改題を繰り返し、結局「忍法」の二文字を外している。著者自身がシリーズに入らないと考えていたのではないか。
登場する実在キャラは主役の柳生十兵衛、敵役の会津藩主・加藤明成、会津藩家老で明成と対立し退転する堀主水、沢庵和尚、千姫、天海など。
創作キャラは復讐に立ち上がる堀家ゆかりの女性7人と、復讐の対象となる会津七本槍の七人衆、その首領・芦名銅伯など。
上巻では江戸、下巻では会津を舞台に物語が長々と展開する。実在キャラは多いもののプロットは完全フィクションで、ほとんど漫画(ありえない!! の連続)。物語としての厚みはまったくない。
堀側の7人の女性は一人も死なず敵は全滅するという、風太郎には珍しい勧善懲悪ストーリーなので話がなんとなく締まらない。さらに長すぎてもたれ、飽きが来る。残酷描写が多く、エログロ・サディズムの風味が効いているのが救いか。かろうじてB級作品だが、Cランクに近いと思う。
不可解なのはタイトル。作中には忍者も忍法も出てこない。主役・柳生十兵衛は全編出ずっぱりだが、柳生は剣法だ。物語では十兵衛が堀家の女性七人衆を鍛えて復讐を成就させる。しかし女性陣に叩き込む体術は本格忍法ではなく、使われるときも例の「忍法○×」というつぶやきがない。
敵側にも忍者は登場しない。忍法も銅伯が使う一つだけ(忍法というより妖術)。その銅伯にしても、忍者というより森宗意軒的な妖人だ。会津槍七人衆の得意技は武術の延長で忍法ではない。したがってタイトル「柳生忍法帖」は不合理。
十兵衛を主人公とする長篇はほかに「魔界転生」「柳生十兵衛死す」があるが忍法帖の名称を使っていない。私見ではこの3作品は「十兵衛三部作」としてまとめるべきで、忍法帖に数えない方がいい。
特に“忍法帖の最高傑作”とよく言われる「魔界転生」は、内容からいって忍法帖ではないし(妖人・妖術は出てくるが、忍者・忍法は登場しない)、タイトルも「おぼろ忍法帖 → 忍法魔界転生 → 魔界転生」と改題を繰り返し、結局「忍法」の二文字を外している。著者自身がシリーズに入らないと考えていたのではないか。
2014年12月12日に日本でレビュー済み
柳生十兵衛かっこいい! ストーリーもキャラクターも想像の範疇を超えて展開します。ボスキャラもエグ味たっぷり!
2010年3月22日に日本でレビュー済み
「忍者」に対する見方が変わります。
人間であるのに人間のものではない術を使う。
しかもその現実離れした術から逆算するに、忍者に生まれついた時から想像を絶する苦労、まさに死と紙一重で会得したであろう忍術。
忍者は生まれた時からその一生を術のためだけに生きてきたと言っていい。
その術を使う瞬間以外はずっと潜んで常に歴史の陰で術を磨いている。
相当な忍耐力だろう。
だから忍法を使う瞬間が異様に輝く。この時のために生きてきたようなものだから。
そして使う瞬間はどちらかが死ぬ時に等しい。
究極まで磨き上げた術もお互いの勝負ではどちらかが生き残り、どちらかは死ぬ。
こいうった忍者の生き方だけでももう充分にロマンだし興味を惹かれる。
もちろん山田風太郎の作品の楽しさは、忍者だけではなく、(むしろ忍者は私の個人的好みというだけで)
歴史、戦術、ファンタジーとそれぞれの分野の小説を読んでいるかのような深みもある。
人間であるのに人間のものではない術を使う。
しかもその現実離れした術から逆算するに、忍者に生まれついた時から想像を絶する苦労、まさに死と紙一重で会得したであろう忍術。
忍者は生まれた時からその一生を術のためだけに生きてきたと言っていい。
その術を使う瞬間以外はずっと潜んで常に歴史の陰で術を磨いている。
相当な忍耐力だろう。
だから忍法を使う瞬間が異様に輝く。この時のために生きてきたようなものだから。
そして使う瞬間はどちらかが死ぬ時に等しい。
究極まで磨き上げた術もお互いの勝負ではどちらかが生き残り、どちらかは死ぬ。
こいうった忍者の生き方だけでももう充分にロマンだし興味を惹かれる。
もちろん山田風太郎の作品の楽しさは、忍者だけではなく、(むしろ忍者は私の個人的好みというだけで)
歴史、戦術、ファンタジーとそれぞれの分野の小説を読んでいるかのような深みもある。