これまで読んだ忍法帖の中でも異様な雰囲気を持った作品。舞台が全盛期の佐渡の金山で、悪の親玉大久保長安とその取り巻きが西洋科学に通じそれを実践している。いつもながら当時の状況に関する綿密な調査に基づいて(本当に勉強になる!)、予断を許さないストーリーが展開する。多彩なキャラクター、炭坑・赤玉城などの特異な場面設定、主人公六文銭とくの一朱鷺の次第に高まる連帯感など魅力は多いが、なんと言っても主人公の正体と暗躍の動機が最後まで明かされないのがいい。
物語は美しくもショッキングな結末を迎えるが、この国が経験した260年にも及ぶ閉鎖的で自己充足的な時代の意味について考えさせられる。
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銀河忍法帖 (KODANSHA NOVELS SPECIAL ヤK- 18 山田風太) 新書 – 1996/5/1
山田 風太郎
(著)
- 本の長さ374ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1996/5/1
- ISBN-104061818945
- ISBN-13978-4061818941
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
サイエンスを駆使し、江戸幕府を支える稀代の天才・大久保長安。そんな彼の前に現れた無頼者・六文銭の鉄は長安麾下の伊賀者と愛妾を次々に殺していく。鉄の正体は? 荒俣宏の解説がついた再刊。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1996/5/1)
- 発売日 : 1996/5/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 374ページ
- ISBN-10 : 4061818945
- ISBN-13 : 978-4061818941
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,289,489位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1922年、兵庫県生まれ。東京医科大学卒業。47年、「宝石」新人募集に応募した「達磨峠の事件」がデビュー作。48年「眼中の悪魔」で第2回探偵作家 クラブ賞短編賞を受賞。その後「甲賀忍法帖」を始めとした忍法帖シリーズなどを精力的に発表した。2000年、日本ミステリー文学大賞受賞。01年7月死 去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 八犬傳 下(新装版) (ISBN-13: 978-4331614044)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年12月7日に日本でレビュー済み
忍法帖長編の中で屈指の面白さ、文句のない傑作だ。主役は創作キャラ「六文銭の鉄」だが、本当の主人公は敵役として出ずっぱりの大久保長安であり、もっと言えば長安の合理的精神。
風太郎好みのマッドサイエンティスト的妖人として、しばしば忍法帖に登場する大久保長安だが、ここではその魅力が炸裂している。実に面白い。長安の口から語られる気宇壮大な日本の科学的発展プログラムは、時に家康の国政への根本的批判となり、さらには歴史に通底する日本人の非合理性への批判となって現代にまで及ぶ。
大久保石見守長安(ながやす)は武州八王子三万石領主。徳川幕府草創期において蔵相、通産相、運輸相、建設相、軍需相をかねる存在だった。
武田家の猿楽師の家に生まれ、信玄の下で税務財政に才能を発揮、特に鉱山開発に天才を示し「甲金」を生み出す。
武田滅亡のあと家康に見出され、佐渡では精錬に水銀を利用したアマルガム法を初めて採用。世界的にも最先端の精錬法だったが、どのようにして習得したかは不明・・・。
風太郎の小説はいつも結末部が素晴らしいが、本作のラストの凄まじさはちょっと形容のしようがないほど。オチとしては「忍びの卍」、短篇「変化城」と同系列だが、日本人の根幹に触れるところがあって味わいはさらに複雑であり、いろいろと考えさせられてしまう。エンタテイメント時代小説でここまでの読後感を残すストーリーはほかにないだろう。
それにしても徳川家康というのは不思議な運の持ち主だ。幕府開設とほぼ同時に佐渡金山が発見され、そこに長安という天才的なエンジニア/プロデューサーが居合わせるのだから。そして徳川専制270年の基盤は佐渡(と、大阪城から奪ったという秀吉の財宝)なしには築けなかったろうから。
風太郎好みのマッドサイエンティスト的妖人として、しばしば忍法帖に登場する大久保長安だが、ここではその魅力が炸裂している。実に面白い。長安の口から語られる気宇壮大な日本の科学的発展プログラムは、時に家康の国政への根本的批判となり、さらには歴史に通底する日本人の非合理性への批判となって現代にまで及ぶ。
大久保石見守長安(ながやす)は武州八王子三万石領主。徳川幕府草創期において蔵相、通産相、運輸相、建設相、軍需相をかねる存在だった。
武田家の猿楽師の家に生まれ、信玄の下で税務財政に才能を発揮、特に鉱山開発に天才を示し「甲金」を生み出す。
武田滅亡のあと家康に見出され、佐渡では精錬に水銀を利用したアマルガム法を初めて採用。世界的にも最先端の精錬法だったが、どのようにして習得したかは不明・・・。
風太郎の小説はいつも結末部が素晴らしいが、本作のラストの凄まじさはちょっと形容のしようがないほど。オチとしては「忍びの卍」、短篇「変化城」と同系列だが、日本人の根幹に触れるところがあって味わいはさらに複雑であり、いろいろと考えさせられてしまう。エンタテイメント時代小説でここまでの読後感を残すストーリーはほかにないだろう。
それにしても徳川家康というのは不思議な運の持ち主だ。幕府開設とほぼ同時に佐渡金山が発見され、そこに長安という天才的なエンジニア/プロデューサーが居合わせるのだから。そして徳川専制270年の基盤は佐渡(と、大阪城から奪ったという秀吉の財宝)なしには築けなかったろうから。