デビュー作なだけあって、三津田作品の魅力が凝縮されてる。ただミステリとホラーの融合といっても、なんだかんだ本格ミステリな刀城言耶シリーズと比べるとホラー寄り。あと民俗ネタはない。
解釈次第でホラーにもミステリにも読める点では、カーの『火刑法廷』が作風としては近いかもしれない。
前半は三津田信三の遍歴を楽しめたり、乱歩や連城三紀彦について作者と語り合っているような面白さもあったが、後半は怖すぎて何度も声が出た。そして末文まで凝ったメタ構成。大オチには全く気づかけずひっくり返った。
無駄に長い文章や無駄に複雑な構成に伏線を仕込むからタチが悪い(褒めてる)。
あと相変わらず擬音が上手い。デビュー作から擬音が満載。擬音って濫用すれば稚拙な文章に見えちゃうんだけど、バランスとオリジナリティが絶妙なんだろうな。にちゃり。
ただ相変わらず見取りがわかりにくすぎる。見取り図ありの文庫版を強く進める。『凶鳥の〜』で見取り図なしの講談社ノベルス版を買った時はあまりにも意味不明すぎて文庫版を買い直したものだ。
そんなわけで賛否別れるのもわかるが、個人的には大傑作だった。
あと何気に解説が素晴らしい。三津田作品と半村良の作品を比較した評論は初めて見た。目からウロコだった。どうして伝奇SF好きな自分が三津田信三にハマったかが教えられたようで、ちょっと感動した。
もちろんジャンル自体はミステリとSFで全く違う。
でもSFと歴史、ミステリとホラーと相反するジャンルの融合。オカルトや神話、怪奇小説や民俗学の薀蓄。現実の要素やメタ構造を使ったリアリティ演出。日常の世界から非日常の世界へするっといつの間にか移ってしまう世界……
こう比べると半村良と三津田信三は作風がそっくりなわけで、両氏がドツボなわけだ。
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ホラー作家の棲む家 (講談社ノベルス ミG- 1) 新書 – 2001/8/1
三津田 信三
(著)
- 本の長さ302ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2001/8/1
- ISBN-104061822004
- ISBN-13978-4061822009
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
「怪奇小説」の執筆を目論む編集者の三津田は、偶然発見した人形荘に住むことに。が、身に覚えのないホラー大賞への応募原稿、執筆を始めた連載小説の制御不可能な展開、愛読者との付き合い等、日常は怪異に淫していく。
著者について
三津田信三(みつだしんぞう)
編集者。主な企画に、『ワールド・ミステリー・ツアー13』シリーズ、『日本怪奇幻想紀行』シリーズ、《ホラージャパネスク叢書》(以上、発行:同朋舎/発売:角川書店)など。
編集者。主な企画に、『ワールド・ミステリー・ツアー13』シリーズ、『日本怪奇幻想紀行』シリーズ、《ホラージャパネスク叢書》(以上、発行:同朋舎/発売:角川書店)など。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2001/8/1)
- 発売日 : 2001/8/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 302ページ
- ISBN-10 : 4061822004
- ISBN-13 : 978-4061822009
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,616,280位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年12月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作家本人が実名で現実の肩書をもって登場するだけでなく登場人物も同様で現実なのかフィクションなのかわからないゾクゾク感が楽しい。
新書版へのこだわりがありユーズド品を探して購入した。
新書版へのこだわりがありユーズド品を探して購入した。
2009年10月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
民俗学的伝奇ホラーと本格との融合で知られる作者のデビュー作。本作を読むと、当初は乱歩風の怪奇幻想味を嗜好していた事が窺える。H.ヘイクラフト「娯楽としての殺人」の名称を自作名として扱ったり、初歩のミステリ論を熱く展開したりと、遊びとも気負いとも取れる試みが微笑ましい。本作の趣向は英国風ゴシック・ホラー、そして一人称と同人誌連載の小説のカットバックで描かれる叙述形式。
<私・三津田信三>は雑誌編集を続けながら、作家としてデビューもしている。発端は、友人からの連絡。<三津田信三>を一人称の主人公とする作品をペンネーム津口と言う者が、ある賞に応募していると言う。住所も本物と同じだが、私には覚えがない。そして、ここから私がある西洋館(人形荘)に住み始める経緯が語られる。それに加え、同人誌に連載する事になった小説(作中作)の内容がカットバックで入る。私の体験と、人形荘をモデルにした作中作から、その館が英国から移築したもので、「忌まわしい」雰囲気を漂わせている事が強調される。「英国幽霊屋敷」本中の具体例も紹介される。作中作では四人家族と言う設定だが、これは上述の具体例の一つと同一。そして、人形荘に"津口"が訪れる。この作中作の意図は何なのか ? 更に、津口から私の元に天井裏に続く秘密の扉の鍵が届く...。そして、私のファンと言う若い女性綾子が登場して人形荘を訪れる。素直に捉えれば「綾子=津口」であり、館の元所有者であると共に幽霊であり、(霊力で)作中作を書かせた、との想像が浮かぶ。正統派幽霊小説なら、こうなる所だが...。
作中作の意図も説明され、ドールハウスを中心とするホラー味との間で融合が図られるが、後年の「...の如き...もの」シリーズと比べると、今一つ冴えない。怪異現象が主に作中作で起こりインパクトが弱い点と、作者の趣味の押し付けが強過ぎる点が原因だろう。
<私・三津田信三>は雑誌編集を続けながら、作家としてデビューもしている。発端は、友人からの連絡。<三津田信三>を一人称の主人公とする作品をペンネーム津口と言う者が、ある賞に応募していると言う。住所も本物と同じだが、私には覚えがない。そして、ここから私がある西洋館(人形荘)に住み始める経緯が語られる。それに加え、同人誌に連載する事になった小説(作中作)の内容がカットバックで入る。私の体験と、人形荘をモデルにした作中作から、その館が英国から移築したもので、「忌まわしい」雰囲気を漂わせている事が強調される。「英国幽霊屋敷」本中の具体例も紹介される。作中作では四人家族と言う設定だが、これは上述の具体例の一つと同一。そして、人形荘に"津口"が訪れる。この作中作の意図は何なのか ? 更に、津口から私の元に天井裏に続く秘密の扉の鍵が届く...。そして、私のファンと言う若い女性綾子が登場して人形荘を訪れる。素直に捉えれば「綾子=津口」であり、館の元所有者であると共に幽霊であり、(霊力で)作中作を書かせた、との想像が浮かぶ。正統派幽霊小説なら、こうなる所だが...。
作中作の意図も説明され、ドールハウスを中心とするホラー味との間で融合が図られるが、後年の「...の如き...もの」シリーズと比べると、今一つ冴えない。怪異現象が主に作中作で起こりインパクトが弱い点と、作者の趣味の押し付けが強過ぎる点が原因だろう。
2008年8月5日に日本でレビュー済み
三津田信三のデビュー作「ホラー作家の棲む家」を改題し、
改訂された「完全版」として文庫化されたもの。
まず、なんといっても「忌館」は怖い。
暗闇への畏怖が、見てはならないものへのあくなき好奇が、全体を覆っている。
本の中に本が登場する手腕は、夢野久作「ドグラ・マグラ」を髣髴とさせつつも、
交互に差し込まれる小説の中の小説と、小説の中の現実は、
次第に境界線が失われてゆき、読者は作家の目眩ましに遭う。
それゆえ、ラスト間際の「謎解き」は難解を極めている。
じっくり腰を据えないと先述した「目眩まし」に翻弄されるからだ。
本文後に追記された「跋文」そして「西日」まで完璧な構成になっているが、
これらは決して解題ではなく、謎はより深くなる。そんな点も見逃せない。
また、この小説は作者「三津田信三」の体験記として綴られているため、
本文内には実際に活躍している作家や評論家の実名も出てくる。
しかし、「そうではない作家」の名前もしれっと紛れ込んでいる。
どこからどこまでが虚なのか実なのか。
翻弄されることを楽しむのも、また一興。
それにしても三津田氏は、ほんとうに乱歩が好きなんだなぁと思った。
乱歩が好んで記していた言葉「うつし世は夢 夜の夢こそ真」、
これがこの小説のテーマなのではないだろうか。
吸い込まれるような真っ暗な夜空や、暗闇の茂みが姿を消しつつある現代に、
三津田信三が執拗なまでに表現した「闇」はどこまでもいとおしく、
そして恐れおののくべき存在だと思った。
改訂された「完全版」として文庫化されたもの。
まず、なんといっても「忌館」は怖い。
暗闇への畏怖が、見てはならないものへのあくなき好奇が、全体を覆っている。
本の中に本が登場する手腕は、夢野久作「ドグラ・マグラ」を髣髴とさせつつも、
交互に差し込まれる小説の中の小説と、小説の中の現実は、
次第に境界線が失われてゆき、読者は作家の目眩ましに遭う。
それゆえ、ラスト間際の「謎解き」は難解を極めている。
じっくり腰を据えないと先述した「目眩まし」に翻弄されるからだ。
本文後に追記された「跋文」そして「西日」まで完璧な構成になっているが、
これらは決して解題ではなく、謎はより深くなる。そんな点も見逃せない。
また、この小説は作者「三津田信三」の体験記として綴られているため、
本文内には実際に活躍している作家や評論家の実名も出てくる。
しかし、「そうではない作家」の名前もしれっと紛れ込んでいる。
どこからどこまでが虚なのか実なのか。
翻弄されることを楽しむのも、また一興。
それにしても三津田氏は、ほんとうに乱歩が好きなんだなぁと思った。
乱歩が好んで記していた言葉「うつし世は夢 夜の夢こそ真」、
これがこの小説のテーマなのではないだろうか。
吸い込まれるような真っ暗な夜空や、暗闇の茂みが姿を消しつつある現代に、
三津田信三が執拗なまでに表現した「闇」はどこまでもいとおしく、
そして恐れおののくべき存在だと思った。
2022年7月8日に日本でレビュー済み
著者のデビュー作ということで覚悟していましたが
優に2/3はあるかとすら思われる
本筋に関係ない描写や蘊蓄には読んでいて苦笑してしまいました。
本筋にどっぷり浸かりたい派の自分にとってはちょっと合わなかったです。
ホラーとしても実際の怪異に見舞われるのは本当に終盤です。
ただ追い詰められる描写はこの頃から健在で読んでてハラハラしました。流石。
著者のホラー描写を純粋に楽しみたいなら短編集や単発のお話の方がおすすめかも。
優に2/3はあるかとすら思われる
本筋に関係ない描写や蘊蓄には読んでいて苦笑してしまいました。
本筋にどっぷり浸かりたい派の自分にとってはちょっと合わなかったです。
ホラーとしても実際の怪異に見舞われるのは本当に終盤です。
ただ追い詰められる描写はこの頃から健在で読んでてハラハラしました。流石。
著者のホラー描写を純粋に楽しみたいなら短編集や単発のお話の方がおすすめかも。
2010年6月21日に日本でレビュー済み
創作と実話がごちゃ混ぜになってるような雰囲気です。
主人公に感情移入していないにもかかわらずゾッとしました。
この人、いっぺん病院に行ったほうがいいのでは?とも思いました。(作者の方ごめんなさい)
作者のルーツに纏わるような話もたくさん出てきましたが、私は三津田さんが好きになってから読んだので興味深く読めました。
文庫には後日談のオマケも付いてて、大変楽しめた?一冊でした。
主人公に感情移入していないにもかかわらずゾッとしました。
この人、いっぺん病院に行ったほうがいいのでは?とも思いました。(作者の方ごめんなさい)
作者のルーツに纏わるような話もたくさん出てきましたが、私は三津田さんが好きになってから読んだので興味深く読めました。
文庫には後日談のオマケも付いてて、大変楽しめた?一冊でした。
2007年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
語り手がミステリ編集者という設定のため、
随所に、ホラー・ミステリの名作についてなどの記述があります。
熱心な読書家ではない私などには、
「次はこれを読んでみたいな」と思わせてくれました。
ストーリー自体は、子供の扱いに目を覆いたくなりましたが、
文章も読みやすく、そこはかとなく品が感じられ、
展開もそれなりに工夫されていて、飽きることはありませんでした。
登場人物の名前(命名理由はありますが)が読みにくく、
そこが気になったりしましたが、ホラー作品では名前に凝るものなのでしょうか?
ともあれ、面白く読めて、今後の読書の手引きにもなってくれて、満足の一冊でした。
もう古書でしか入手できないとしたら、もったいないなと思います。
随所に、ホラー・ミステリの名作についてなどの記述があります。
熱心な読書家ではない私などには、
「次はこれを読んでみたいな」と思わせてくれました。
ストーリー自体は、子供の扱いに目を覆いたくなりましたが、
文章も読みやすく、そこはかとなく品が感じられ、
展開もそれなりに工夫されていて、飽きることはありませんでした。
登場人物の名前(命名理由はありますが)が読みにくく、
そこが気になったりしましたが、ホラー作品では名前に凝るものなのでしょうか?
ともあれ、面白く読めて、今後の読書の手引きにもなってくれて、満足の一冊でした。
もう古書でしか入手できないとしたら、もったいないなと思います。
2021年11月23日に日本でレビュー済み
刀城言耶シリーズから読み始めた身としては、残念ながら合いませんでした。
先に、蛇棺葬、百蛇堂を読んでしまったため、穿った見方となり、読む順番を間違えたのもあるかと思います。
ただし、上記2作品よりはデビュー作のこちらの方が精度が高いと感じました。
他の方も書いてますが、編集者ならではの忙しい業界の話、他の作家の作品の話やホラー映画の話など興味のある人には面白い蘊蓄が多い。
そのため、ひたすら物語のみを追っていきたい人としては主筋から外れてしまう部分は読むのが辛くなるのでは?と思いました。
蘊蓄にお腹いっぱいで、自分はそういった部分は飛ばし読みしてしまいました。
作者自身の名前や体験などで物語が進む、という興味深い設定であるのに、その作者の蘊蓄が多いため別口で司馬遼太郎さんのようにエッセイを書いたほうがいいのでは?とも感じました。
怖さで言ったら【のぞきめ】、秀逸さで言ったら【水魑の如き沈むもの】の2冊が好きな自分としては、蛇棺葬、百蛇堂と同じく再読はしませんが、三津田ファンで未読の方は、デビュー作品ですので一度は読んでもいいと思います。
先に、蛇棺葬、百蛇堂を読んでしまったため、穿った見方となり、読む順番を間違えたのもあるかと思います。
ただし、上記2作品よりはデビュー作のこちらの方が精度が高いと感じました。
他の方も書いてますが、編集者ならではの忙しい業界の話、他の作家の作品の話やホラー映画の話など興味のある人には面白い蘊蓄が多い。
そのため、ひたすら物語のみを追っていきたい人としては主筋から外れてしまう部分は読むのが辛くなるのでは?と思いました。
蘊蓄にお腹いっぱいで、自分はそういった部分は飛ばし読みしてしまいました。
作者自身の名前や体験などで物語が進む、という興味深い設定であるのに、その作者の蘊蓄が多いため別口で司馬遼太郎さんのようにエッセイを書いたほうがいいのでは?とも感じました。
怖さで言ったら【のぞきめ】、秀逸さで言ったら【水魑の如き沈むもの】の2冊が好きな自分としては、蛇棺葬、百蛇堂と同じく再読はしませんが、三津田ファンで未読の方は、デビュー作品ですので一度は読んでもいいと思います。