ミステリとしての評価よりも、やはり青春小説として評価したい傑作です。
私がこれを最初に読んだのは確か二十歳くらいの頃で、主人公の、女子高生時代の森カオルさんに、これでもかというくらい感情移入して読みました。栗本さん、どうして私のことを知っているの?! と言いたいくらい、ドンピシャでした。まるで自分のことを言われているように感じてしまったのです。
今の少年少女達に、教えてあげたいです。栗本薫という人が、ここにいるということを。大人の欺瞞に嫌悪感を持ち、社会に違和感を持ち、しかしそれがどういうことか分からず戸惑い、自分をもてあまして困っている若い人達に。貴方達のことを貴方達以上に分かってくれる、ある種の賢者とも言える人がここにいる、ということを。
私は勿論、カオルさんのような文才もないし、行動力もない、駄目で引っ込み思案な子供っぽい娘でしたが、そうした「社会に対してどう折り合いをつけたら良いか分からない」という感覚を、いつも感じて困っているような娘でした。そんな私に、ある種の「答え」を提示してくれた小説だったのです。
トリックはともかくとして、クライマックスはとても迫力があります。面白いと思えるか、共感できるかどうかは人によるとは思いますが、私の中では、栗本作品のベスト3には入れたい作品です。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
優しい密室 (講談社文庫 く 2-5) 文庫 – 1983/8/1
栗本 薫
(著)
名門女子高の校内でチンピラの他殺死体が発見された。しかも現場は密室だった!?お上品な平和にはあきあきしていた森カオルは勇躍、事件の渦中へ……名探偵伊集院大介とワトソン役カオルが邂逅し事件の謎をとく好評シリーズ第2弾。著者自らの高校生活が色濃く投影され女高生の心理が躍如と描かれた秀作。
- 本の長さ278ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1983/8/1
- ISBN-104061830805
- ISBN-13978-4061830806
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1983/8/1)
- 発売日 : 1983/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 278ページ
- ISBN-10 : 4061830805
- ISBN-13 : 978-4061830806
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,512,841位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
別名に中島梓。東京生まれ。
早稲田大学文学部卒。1977年中島梓名義の「文学の輪郭」で群像新人賞評論部門を受賞。
1978年『ぼくらの時代』で江戸川乱歩賞受賞。以後、作家・栗本薫、評論家・中島梓を使い分けて多彩な文筆活動を展開する。
小説作品は、ミステリ、SF、時代小説、耽美小説と多岐にわたる。1979年よりスタートした、ライフワークともいうべき一大長篇ロマン「グイン・サーガ」は、2005年に100巻を達成したが、2009年著者病没により130巻が最終巻となった。著書は『弦の聖域』、『魔界水滸伝』、『真夜中の天使』など、400冊を超える。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年3月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年8月11日に日本でレビュー済み
森カオルの高校時代の物語。
森カオルが,栗本薫の分身であることは,小説を書いているというくだりからわかる。
また,伊集院大介も,栗本薫の分身かもしれない。あるいは単なる憧れなのだろうか。
栗本薫の配偶者に会ったことがないのでわからない。
本書は栗本薫らしさがでていてベスト16にはいります。
栗本薫さんは女子校だったのでしょうか?
表現が現実的ですね。
伊集院大介は早稲田大学の文学部ということは
栗本薫さんと同窓という事ですね。
ネタは手元にあるものを使っているようで、賢いなと思いました。
伊集院大介の透明感がでていて、
一人称の女子高生はちょうど栗本薫さんらしい、
小説を書いている学生で、
役者が揃ったという感じで読みやすかったです。
栗本薫さんが好きな人なら、べすと10にははいらなくても、ベストのいくつかにははいると思います。
森カオルが,栗本薫の分身であることは,小説を書いているというくだりからわかる。
また,伊集院大介も,栗本薫の分身かもしれない。あるいは単なる憧れなのだろうか。
栗本薫の配偶者に会ったことがないのでわからない。
本書は栗本薫らしさがでていてベスト16にはいります。
栗本薫さんは女子校だったのでしょうか?
表現が現実的ですね。
伊集院大介は早稲田大学の文学部ということは
栗本薫さんと同窓という事ですね。
ネタは手元にあるものを使っているようで、賢いなと思いました。
伊集院大介の透明感がでていて、
一人称の女子高生はちょうど栗本薫さんらしい、
小説を書いている学生で、
役者が揃ったという感じで読みやすかったです。
栗本薫さんが好きな人なら、べすと10にははいらなくても、ベストのいくつかにははいると思います。
2017年11月6日に日本でレビュー済み
今は女流作家となったヒロインが,学生時代を振り返り,回想の形で進められますが,
職業だけでなく,『カオル』という名前に著者自身が重なってしまい,まず抵抗感が….
また,一時間目,二時間目…という章題も,中身は実際のそれに沿っているわけではなく,
ただの番号と単位であることには,学校という舞台に合わせたにしてもスッキリとしません.
内容の方は,『青春ミステリ』と謳いつつも,それぞれがハッキリしている印象で,
日々への鬱屈と,それを打破できない自身への苛出ちが描かれる青春パートに対して,
そちらにページが割かれたために事の起こりが遅く,後日談での長く,強引な説明など,
雑な部分が気になるミステリパートと,いささかバランスが悪かったように感じられます.
とはいえ,自分という存在と居場所に戸惑い,賑やかな教室の中に埋もれていた少女が,
ふとしたきっかけを得て変わっていく姿は,ギラギラ,そしてキラキラと眩しく映ります.
さすがに八十年代の作品ということで,表現や文化に時代の差があるのは否めませんが,
陰キャと陽キャ,スクールカーストなど,言葉こそ出ないものの,今と変わらない様子や,
先の時代を見越していたような問題の提起には,何かと感心をさせられるものがありました.
職業だけでなく,『カオル』という名前に著者自身が重なってしまい,まず抵抗感が….
また,一時間目,二時間目…という章題も,中身は実際のそれに沿っているわけではなく,
ただの番号と単位であることには,学校という舞台に合わせたにしてもスッキリとしません.
内容の方は,『青春ミステリ』と謳いつつも,それぞれがハッキリしている印象で,
日々への鬱屈と,それを打破できない自身への苛出ちが描かれる青春パートに対して,
そちらにページが割かれたために事の起こりが遅く,後日談での長く,強引な説明など,
雑な部分が気になるミステリパートと,いささかバランスが悪かったように感じられます.
とはいえ,自分という存在と居場所に戸惑い,賑やかな教室の中に埋もれていた少女が,
ふとしたきっかけを得て変わっていく姿は,ギラギラ,そしてキラキラと眩しく映ります.
さすがに八十年代の作品ということで,表現や文化に時代の差があるのは否めませんが,
陰キャと陽キャ,スクールカーストなど,言葉こそ出ないものの,今と変わらない様子や,
先の時代を見越していたような問題の提起には,何かと感心をさせられるものがありました.
2008年2月11日に日本でレビュー済み
本書のベストセリフ
「誰でも、やっぱり、どんなふうに思われようと、
自分自身でいるほかはないのだ。
自分自身でいることを、人からうけ入れてもらうためには、
いよいよ自信をもって、自分をさらけ出し、
それで気にくわぬ人間には、
近づかないでもらうほかはない。
全世界の人間に、
全部好意をもってもらうわけにはいかないのだ」
本格推理としては、手掛かりの出し方がややアンフェアというか、
手掛かり出してない謎もあるし、
偶然の要素が介入しているし、
満点は付けられないが、
青春小説として素晴らしい傑作である。
女子高生の一人称視点だが、
少年が読んでも共感出来ると思う。
時代を超越した普遍の倫理観を賛美しているので、
老若男女誰が読んでも共感出来るお話である。
本書を面白くないと言う奴は、
人間でないケダモノだと認定します。
「誰でも、やっぱり、どんなふうに思われようと、
自分自身でいるほかはないのだ。
自分自身でいることを、人からうけ入れてもらうためには、
いよいよ自信をもって、自分をさらけ出し、
それで気にくわぬ人間には、
近づかないでもらうほかはない。
全世界の人間に、
全部好意をもってもらうわけにはいかないのだ」
本格推理としては、手掛かりの出し方がややアンフェアというか、
手掛かり出してない謎もあるし、
偶然の要素が介入しているし、
満点は付けられないが、
青春小説として素晴らしい傑作である。
女子高生の一人称視点だが、
少年が読んでも共感出来ると思う。
時代を超越した普遍の倫理観を賛美しているので、
老若男女誰が読んでも共感出来るお話である。
本書を面白くないと言う奴は、
人間でないケダモノだと認定します。
2007年3月27日に日本でレビュー済み
伊集院大介の若き頃の話ですが、語りのメインは森カオルで、彼はむしろ脇役です。
話の半ばまで来ないと事件が起きないのですが、この物語にかぎってはそれもありかなあと思います。カオルのやや独りよがりな推理が女子高生っぽいので、これを好きになれるかどうかで評価が分かれるかもしれません。
話の半ばまで来ないと事件が起きないのですが、この物語にかぎってはそれもありかなあと思います。カオルのやや独りよがりな推理が女子高生っぽいので、これを好きになれるかどうかで評価が分かれるかもしれません。