第5巻「無花果少年と桃尻娘」。侮ってはいけない。これは素晴らしい作品だと途中からわかった。
自分は、ゲイじゃない磯村くんが、ゲイの木川田くんをどういうふうに、どういうレベルで、好きなのかが、最初はよくわからなかった。しかも、第4巻で「そういう」関係にならなかった木川田くんと磯村くんが、第5巻の最初から、「そういう」関係になってしまうのはなぜなのか。
答えは(多分)、磯村くんは、LGBTのバイセクシャルなんだと思う。この第5巻で、磯村くんは、自分がバイセクシャルであることに自覚的になっていくのだ。
久し振りに会った榊原さんは、磯村くんを変わったという。
「木川田くんと、どこまで行ったの?」
磯村くんは、平気な顔して平気ですごいことを言う。「行くとこまで行っちゃったよ」
「木川田くんのこと、好きなの?」
「好きだよ」
つまり、磯村くんは自身がバイセクシャルであることを、いつの間にか自覚している。だから彼は「変わった」のだ。
だから磯村くんが、榊原さんに伝えるのだ。田中くんもバイセクシャルだということを。
「だってさァ、君(榊原さん)は彼(利倉くん)が好きなんだろ? 君は彼が好きで、彼も君が好きで、もう一人の田中くんは、君の彼も君のことも、どっちも好きなんだろう? だったら、みんな好きなんだから、それでいいじゃない」
磯村くんと田中くんの会話。
「利倉くんのこと、好きなの?」僕は前にも何回か言った筈のことを、また田中くんに訊いた。
・・・
「きみのはやっぱり、〝幸福〟っていう訳でしょ?」
僕がそう言ったら、田中くんは少し遠慮しながら「うん……」て言った。
磯村君のモノローグ。
「田中くんはやっぱり〝もう一人の僕〟で、僕だってやっぱり〝もう一人の田中くん〟だとは思うんだ。」
第5巻では、ゲイの木川田くんがすべきことを見つけて多忙になり、磯村くんと田中くんがバイセクシャルに覚醒するという急展開な内容だから、榊原さんも負けているわけにはいかず、作者は利倉くんの実家に乗り込ませて女中をさせようとする。ここに作者の悪意を感じるなあ。
専業主婦の嫁=SEXつきの女中、という構図だと作者は指摘したいのだろう。
第4巻目までの磯村君はバカだったけど、第5巻目で急速に大人に成長している。第4巻目で作者によって不当にバカのレベルにまでおとされていた木川田君も急速に大人に成長して「男っぽくなった」と言われる。
「桃尻娘」シリーズも、第5巻目で磯村君と田中君のバイセクシャルとしての覚醒があるので、ひとつのピークだと思う。でも、わからないひとにはわからないのだろうな。
バイセクシャルというのは、ある意味、もう一種の人類愛なのかもしれないとまで、自分は思ってしまう。
(2018年から話題になっているテレビ朝日「おっさんずラブ」の主人公の(田中圭演じる)春田くんも、バイセクシャルだと思う。最新作「リターンズ」で、春田くんはちずさんに「春田は人類愛の人だね」と言われるシーンがある。)
この本が何十年前の作品かよくわからないが、きわめて斬新な設定とストーリー展開だと思う。終わり方もすがすがしい。傑作だ。
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無花果少年と桃尻娘 (講談社文庫 は 5-6) 文庫 – 1991/6/1
橋本 治
(著)
無花果少年(ボーイ)と桃尻娘 (講談社文庫) 文庫 – 1991/6 橋本 治 (著)
- 本の長さ501ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1991/6/1
- ISBN-104061849301
- ISBN-13978-4061849303
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1991/6/1)
- 発売日 : 1991/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 501ページ
- ISBN-10 : 4061849301
- ISBN-13 : 978-4061849303
- Amazon 売れ筋ランキング: - 318,947位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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![橋本 治](https://m.media-amazon.com/images/I/01Kv-W2ysOL._SY600_.png)
1948年東京生まれ。東京大学在学中に駒場祭のポスターで話題を集めるが、イラストレーターから小説家に転身。小説・評論・戯曲・古典の現代語訳・エッ セイ・芝居の演出など、ジャンルにとらわれず精力的に活動。『双調平家物語』で第62回毎日出版文化賞を受けるなど受賞歴多数。小林秀雄賞選考委員(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 桃尻娘 (ISBN-13: 978-4591117552 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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4 星
オネエであられた作家さん。
瓜売小僧の方で磯村くんと木川田くんに魅せられた人は、こっちの方も読んだらよいと思います、少し出てきます。執筆されたこの橋本治という作家さん、いわゆるオネエの方であったようですね。ゲイの作家、オネエの作家、としては、草分け的な存在と言えるくらいの方ではないでしょうか。あまり自身でそのことを公には言われなかったようですが。ですが、後書きを読んでいると、「キャピキャピしたオネエ感」がよく伝わってきます。もう亡くなられたようですよね。謹んでご冥福をお祈り致し申し上げます。
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2011年5月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昔購入していたこのシリーズをもう一度読みたくてそろえていました。
懐かしくてよかったです。
懐かしくてよかったです。
2022年6月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
瓜売小僧の方で磯村くんと木川田くんに魅せられた人は、
こっちの方も読んだらよいと思います、少し出てきます。
執筆されたこの橋本治という作家さん、
いわゆるオネエの方であったようですね。
ゲイの作家、オネエの作家、としては、
草分け的な存在と言えるくらいの方ではないでしょうか。
あまり自身でそのことを公には言われなかったようですが。
ですが、後書きを読んでいると、
「キャピキャピしたオネエ感」がよく伝わってきます。
もう亡くなられたようですよね。
謹んでご冥福をお祈り致し申し上げます。
こっちの方も読んだらよいと思います、少し出てきます。
執筆されたこの橋本治という作家さん、
いわゆるオネエの方であったようですね。
ゲイの作家、オネエの作家、としては、
草分け的な存在と言えるくらいの方ではないでしょうか。
あまり自身でそのことを公には言われなかったようですが。
ですが、後書きを読んでいると、
「キャピキャピしたオネエ感」がよく伝わってきます。
もう亡くなられたようですよね。
謹んでご冥福をお祈り致し申し上げます。
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瓜売小僧の方で磯村くんと木川田くんに魅せられた人は、
こっちの方も読んだらよいと思います、少し出てきます。
執筆されたこの橋本治という作家さん、
いわゆるオネエの方であったようですね。
ゲイの作家、オネエの作家、としては、
草分け的な存在と言えるくらいの方ではないでしょうか。
あまり自身でそのことを公には言われなかったようですが。
ですが、後書きを読んでいると、
「キャピキャピしたオネエ感」がよく伝わってきます。
もう亡くなられたようですよね。
謹んでご冥福をお祈り致し申し上げます。
こっちの方も読んだらよいと思います、少し出てきます。
執筆されたこの橋本治という作家さん、
いわゆるオネエの方であったようですね。
ゲイの作家、オネエの作家、としては、
草分け的な存在と言えるくらいの方ではないでしょうか。
あまり自身でそのことを公には言われなかったようですが。
ですが、後書きを読んでいると、
「キャピキャピしたオネエ感」がよく伝わってきます。
もう亡くなられたようですよね。
謹んでご冥福をお祈り致し申し上げます。
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