さすがに大ヒットしただけあって面白かった。驚くほど残忍な連続殺人事件が起こるのは定型として、検屍官という仕事の特殊さ、過酷さ、そして、警察を含む司法組織全体を巻き込んだ政治権力争いの徒労感がてんこ盛りで、これじゃ普通にプライベートとか崩壊するわな、と思わせる。実際、主人公の女性はバツいちの一人暮らし。なついている10歳の姪っ子がいるが、それは、その母親(つまり自分の妹)がどうしようもないだめんずウォーカーだから、という設定はリアル。
《「ラルフの前のボーイフレンド。くず物置場に行っては、空びんを銃で撃ってた。すごく遠くからでも当たるんだから。おばさんなんかできないでしょう」》
この二行だけでもうダメすぎる。10歳の女の子にそんな行為を自慢するラルフも、そんなんと付き合う妹さんも。でも、いるでしょ、こういう人たちって。すごく、いる。いそう。
さらには一連の事件を通して、職場における女性差別問題、メディアの倫理問題、アメリカの連続殺人犯の闇の心理など、幅広い社会問題に触れている高コスパ推理小説でもあります。残念ながら、その諸々の問題は25年以上経った今も未解決のままだけれど。
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検屍官 (講談社文庫) 文庫 – 1992/1/8
パトリシア・コーンウェル
(著),
相原 真理子
(翻訳)
襲われた女性たちは皆、残虐な姿で辱められ、締め殺されていた。バージニア州都リッチモンドに荒れ狂った連続殺人に、全市が震え上がっていた。犯人検挙どころか、警察は振回されっ放しなのだ。最新の技術を駆使して捜査に加わっている美人検屍官ケイにも魔の手が――。MWA処女作大賞受賞の傑作長編。1992年週刊文春ミステリーベスト10(海外部門)第1位。(講談社文庫)
MWA処女作大賞受賞の本格長編ミステリーリッチモンドを震え上がらせた連続強姦殺人事件に敢然と立向かう女性検屍官ケイ・スカーペッタの前に思わぬ障害が! 最新の技術を駆使して迫真の推理が展開する
MWA処女作大賞受賞の本格長編ミステリーリッチモンドを震え上がらせた連続強姦殺人事件に敢然と立向かう女性検屍官ケイ・スカーペッタの前に思わぬ障害が! 最新の技術を駆使して迫真の推理が展開する
- 本の長さ504ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1992/1/8
- 寸法10.8 x 2 x 14.8 cm
- ISBN-104061850695
- ISBN-13978-4061850699
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商品の説明
著者について
【パトリシア・コーンウェル】
ノースカロライナ州のダビドソン・カレッジを卒業。警察担当記者、バージニア州検屍局のコンピュータープログラマーを歴任、本書で作家としてデビューした。なお、MWA、CWA処女作賞の同時受賞は彼女が初めてである。
ノースカロライナ州のダビドソン・カレッジを卒業。警察担当記者、バージニア州検屍局のコンピュータープログラマーを歴任、本書で作家としてデビューした。なお、MWA、CWA処女作賞の同時受賞は彼女が初めてである。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1992/1/8)
- 発売日 : 1992/1/8
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 504ページ
- ISBN-10 : 4061850695
- ISBN-13 : 978-4061850699
- 寸法 : 10.8 x 2 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 220,127位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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トップレビュー
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2016年6月4日に日本でレビュー済み
2023年5月20日に日本でレビュー済み
もう30年も前の作品だからなのかも知れないが、「残虐な姿で辱められ」というその姿がそれほど残虐だとも思えない、という点は割り引くとしても、物語の中程で「真犯人は主人公の身近にいる」と判断せざるを得ない手がかりを幾度も散りばめるにもかかわらず、最終的に判明する犯人が「その人」であるというのはかなり肩透かしな印象を持つ。確かに「被害者に共通する要素」が指し示すのは「その人」でしかないとしても、ならば随所で示された「手がかり」は一体何だったのか、ということになりかねない。何だったのかと言えばある人物の奸計ととなるのだろうが、その奸計自体がただ物語を錯綜させるためだけに持ち込まれたような印象がある。語りそのものは力強いからこそ却って「創作技巧」が目立つ結果となったのは残念。
2015年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
10年振りくらいに読み返しましたが 、いいですね。初期の作品からよかったので、引き込まれてファンになりました。
2010年3月16日に日本でレビュー済み
鮮烈のデビュー作にして大人気シリーズの一作目にあたります。止むことのない残虐非道な連続殺人に、女性検屍官のケイ・スカーペッタが
最新技術を駆使した科学捜査で奮闘します。
作者自身、警察担当記者や検屍局のコンピュータープログラマーとして勤務していたことから、とても豊富な知識が特徴のシリーズですね。
尚且つ、それを堅苦しくなくクリアに用いているので、とてもスピーディーで読みやすい。
あくまで個人的に思うのだが意外にありそうでない作風かもしれません。本書は1990年作だが、この20年の時流に乗って科学捜査を扱う
ミステリーは増えましたが、特にアメリカの場合それは付随にすぎなくて、往々にして整合性のないアクションシーンの連発に陥るきらい
は否めない。が、本作は主人公ケイの繊細な心理描写や、仕事場の脇役たちを丁寧に描いているのでリアリティがありながら奥行きがある
のです。
合理的な利便さをもろに作品に反映させておきながら、一方で母性すら描いてしまう。。これをタテとヨコの線にしてきりむすぶ所に
コーンウェルの独創性と力量を感じさせます。我が道をゆく女流推理作家ですね。カッコ好い。
最新技術を駆使した科学捜査で奮闘します。
作者自身、警察担当記者や検屍局のコンピュータープログラマーとして勤務していたことから、とても豊富な知識が特徴のシリーズですね。
尚且つ、それを堅苦しくなくクリアに用いているので、とてもスピーディーで読みやすい。
あくまで個人的に思うのだが意外にありそうでない作風かもしれません。本書は1990年作だが、この20年の時流に乗って科学捜査を扱う
ミステリーは増えましたが、特にアメリカの場合それは付随にすぎなくて、往々にして整合性のないアクションシーンの連発に陥るきらい
は否めない。が、本作は主人公ケイの繊細な心理描写や、仕事場の脇役たちを丁寧に描いているのでリアリティがありながら奥行きがある
のです。
合理的な利便さをもろに作品に反映させておきながら、一方で母性すら描いてしまう。。これをタテとヨコの線にしてきりむすぶ所に
コーンウェルの独創性と力量を感じさせます。我が道をゆく女流推理作家ですね。カッコ好い。
2018年8月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
このシリーズは発売当初からほとんど読んでいます。
駅のそばに本屋さんがあり、よく立ち寄っていたので発売されるとそこに積んであり、見つけるとすぐ買っていました。
今回キンドル版が出ていたので読んでみましたが、登場人物のスカーペッタ、マリーノ、ルーシー、ベントンは覚えていましたが、内容は全く覚えていませんでした。
読んで直して、このシリーズはもっと面白かったはずなのにという感じで、またこのシリーズを読みたいという感覚にはなりませんでした。20数年経ってこちらの感性も変わったのかもしれません。
駅のそばに本屋さんがあり、よく立ち寄っていたので発売されるとそこに積んであり、見つけるとすぐ買っていました。
今回キンドル版が出ていたので読んでみましたが、登場人物のスカーペッタ、マリーノ、ルーシー、ベントンは覚えていましたが、内容は全く覚えていませんでした。
読んで直して、このシリーズはもっと面白かったはずなのにという感じで、またこのシリーズを読みたいという感覚にはなりませんでした。20数年経ってこちらの感性も変わったのかもしれません。
2015年4月14日に日本でレビュー済み
シリーズを通してのレギュラーな登場人物は四人で、 この四人がそれぞれ 私生活でうまくいかない。結婚してもうまくいかず、人との付き合い方において どこか性格的に問題を抱えているように見える。 その四人が 難問事件に際して 連携して挑んでいく。が、事件の猟奇性は、この四人にたいして とてつもない心理的負担をかけ、心を虫食(むしば)んでいるのではないかと 思わせるところがある。 残忍な犯罪者と戦う過程で、自分たち自身がその悪の影響を受けてしまうのではないか という問題意識が随所に出てくる。例えば、それは、典型的に Lucyの変貌に 出ている。あるいは、Marinoや Bentonがシリーズを追って疲れた姿を見せるようになる。悪と戦うには 悪と接しなければならない。であるがゆえに、それぞれの心を病ませ、お互いの人間関係をぎすぎすしたものにしていく。
モンスターのような犯罪者との戦いは 四人にとって さまに 消耗戦だ。
けれども、自分たちの生活や心を犠牲にしながらも、いわば肉を切らして相手の骨を切るかのようにして、悪魔のような犯罪者に立ち向かっていく 姿勢が 感動的ですらある。
ナイフは どうしてdrawerの中に置かれていたのか。tableの上にあるはずの Matt's knifeが drawerのなかで見つかった。
この部分が謎が 作品の中では 説明されないで終わってしまった。
モンスターのような犯罪者との戦いは 四人にとって さまに 消耗戦だ。
けれども、自分たちの生活や心を犠牲にしながらも、いわば肉を切らして相手の骨を切るかのようにして、悪魔のような犯罪者に立ち向かっていく 姿勢が 感動的ですらある。
ナイフは どうしてdrawerの中に置かれていたのか。tableの上にあるはずの Matt's knifeが drawerのなかで見つかった。
この部分が謎が 作品の中では 説明されないで終わってしまった。
2010年7月31日に日本でレビュー済み
作者のデビュー作で、その後のシリーズの端緒となったもの。女性検屍局長ケイを語り手兼ヒロインにした作品で、今でこそ検屍官を主人公にした小説・ドラマが目に付くが、本作はその"はしり"と言って良いだろう。そこを差し引いても欠陥が目立つ。
男性社会の中での40歳の女性検屍局長と言う孤立的立場。叩き上げの刑事との確執。離婚して独身だが、地区検事とは愛人関係にある。扱う事件はサイコ・キラーによる女性連続殺人。余りにもルーチン化した設定に加え、作者の前職がプログラマーと言う事もあって、法医学的描写より計算機に係わる描写の方が多かったり、40歳の検屍局長にしては情緒不安定だったりと違和感を覚える。アメリカの法制度には詳しくないが、検屍局が事件の責任を負う訳ではないだろうから、事件解決に賭けるケイの姿勢に釈然としない物を感じる。また、検屍局のセキュリティ・システムが余りに脆弱過ぎるのも奇異。
にも係わらず、本作が辛うじて読み物となっているのは、作者がリッチモンドと言う南部の地方都市を丹念に描いている事と、担当刑事マリーノの現実主義と渋さが上記の欠点を(ある程度)カバーしているせいだと思う。脇の人物の描写も木目細かい。それにしてもケイは魅力に乏しい。独善的で被害者意識が強い上に感情抑制が効かない。シリーズ化されたのが不思議に思える。実は本作の主人公はマリーノで、ケイはピエロ役の語り手であるとの印象を受けたが...。連続殺人のミッシング・リング発見のキッカケも使い古されているもので、この点でも新規性を感じない。
法医学上の知識が事件解決に役立っておらず、何のために検屍官を(見かけ上の)ヒロインとしたのか意図不明。連続殺人の細部が全て説明されない点にも不満が残る。法医学ミステリと呼ぶには余りにも貧弱な内容。
男性社会の中での40歳の女性検屍局長と言う孤立的立場。叩き上げの刑事との確執。離婚して独身だが、地区検事とは愛人関係にある。扱う事件はサイコ・キラーによる女性連続殺人。余りにもルーチン化した設定に加え、作者の前職がプログラマーと言う事もあって、法医学的描写より計算機に係わる描写の方が多かったり、40歳の検屍局長にしては情緒不安定だったりと違和感を覚える。アメリカの法制度には詳しくないが、検屍局が事件の責任を負う訳ではないだろうから、事件解決に賭けるケイの姿勢に釈然としない物を感じる。また、検屍局のセキュリティ・システムが余りに脆弱過ぎるのも奇異。
にも係わらず、本作が辛うじて読み物となっているのは、作者がリッチモンドと言う南部の地方都市を丹念に描いている事と、担当刑事マリーノの現実主義と渋さが上記の欠点を(ある程度)カバーしているせいだと思う。脇の人物の描写も木目細かい。それにしてもケイは魅力に乏しい。独善的で被害者意識が強い上に感情抑制が効かない。シリーズ化されたのが不思議に思える。実は本作の主人公はマリーノで、ケイはピエロ役の語り手であるとの印象を受けたが...。連続殺人のミッシング・リング発見のキッカケも使い古されているもので、この点でも新規性を感じない。
法医学上の知識が事件解決に役立っておらず、何のために検屍官を(見かけ上の)ヒロインとしたのか意図不明。連続殺人の細部が全て説明されない点にも不満が残る。法医学ミステリと呼ぶには余りにも貧弱な内容。
2010年2月7日に日本でレビュー済み
翻訳をされた相原真理子さんの訃報を先ほど偶然目にしました。ご冥福をお祈り申し上げます。
このシリーズが出版された当時、初版本を手に入れたくて何冊も本をあさったことを思い出しました。読み返してみたいと思ってます。
このシリーズが出版された当時、初版本を手に入れたくて何冊も本をあさったことを思い出しました。読み返してみたいと思ってます。