なんと素晴らしい短編集だろう。
その完成度の高さに驚かずにはいられない。
私はもともと安岡章太郎氏のファンであり、「海辺の光景」のあの有名は著作集を読んで以来、
そのほとんど『麻薬的』な面白さ、オカシミの虜になった。
しかし、あの当時の暗く滑稽な内容をはらんだ作品群は、特異性ばかりが突出しており、どこか荒削りの感が否めず、
オーソドックスな文学的価値からすると必ずしも手放しで賞賛できないところがあった。
むろん、それがこの著者の魅力であり、面白さではあるのだけれども……
しかしこの「走れトマホーク」はどうか。
収録されている短編たちは、どれもとてつもなく完成度の高い作品ばかりである。
とりわけ「瀑布」のラストは、現実の中の虚妄を描くとされる著者の持ち味がもっとも洗練されたかたちであらわれ、
文学作品の持ちうる限りのエネルギーを一気に放出させ、巨大で奥行のある普遍的なひとつの思想をうきぼりにさせる。
実に見事だった。
むろん退廃的な感じとある種のオカシミで満ち溢れた安岡文学のエッセンスはそのままである。
第三の新人の「巨星」であるとされる著者が巨星たる所以が
この作品群の結実でさらに高らかに公然と示されたわけである。
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走れトマホーク (講談社文芸文庫 やA 1) 文庫 – 1988/6/6
安岡 章太郎
(著)
奇妙でユーモア溢れるアメリカ旅行記「走れトマホーク」。身辺私小説仕立ての「埋まる谷間」「ソウタと犬と」。中国の怪異小説家に材を取る「聊斎私異」など多彩な題材と設定で構成されながら、一貫する微妙な諧調――漂泊者の哀しみ、えたいの知れない空白感。短篇の名手の円熟した手腕が光る読売文学賞受賞作。表題作を含む9篇を収録。
- 本の長さ277ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1988/6/6
- 寸法10.8 x 1 x 14.8 cm
- ISBN-104061960199
- ISBN-13978-4061960190
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1988/6/6)
- 発売日 : 1988/6/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 277ページ
- ISBN-10 : 4061960199
- ISBN-13 : 978-4061960190
- 寸法 : 10.8 x 1 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 888,804位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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