小説内の主人公は作者、「軍地」は竹内好、「中国文化研究会」は作者が青年時代に上海で加名した中日文化協会である。支那文学に惹かれながら日中戦争に兵士として参加させられた作者の矛盾した運命と屈折した思いが、この私小説の根底を作っていることは他の作品と共通している。
ストーリーとしては、いつソ連や中国が攻めてくるか分からない、だからこそ米国の進駐軍がのさばっていた戦後まもなくの混沌とした社会状況が背景。で、典型的な右も左も、もっと複雑で中途半端な主人公とその恋人達も、日中混血児も、中共も国民党も、そして世間の日本人も、皆がドロドロした殺意を胸に生きていることを描いている。
作者は一人で戦中・戦後の日中問題を背負い込んだ小説家だったのだと思うが、そんな彼が残した歴史資料としても重要なこの作品が、日本人の中国コンプレックスが日増しに大きくなっている今の時代に、こともあろうに文庫で絶版中である。日本の出版事情には呆れ果てる。
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風媒花 (講談社文芸文庫 たB 1) 文庫 – 1989/3/1
武田 泰淳
(著)
- 本の長さ346ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1989/3/1
- ISBN-104061960407
- ISBN-13978-4061960404
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1989/3/1)
- 発売日 : 1989/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 346ページ
- ISBN-10 : 4061960407
- ISBN-13 : 978-4061960404
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,341,635位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年7月2日に日本でレビュー済み
『風媒花』(武田泰淳)は、戦後日本 - 戦後処理が未決の占領下、日本の国体さだまらぬなか、社会主義のソヴィエト連邦、共産主義の中華人民共和国、自由民主主義のアメリカ、戦前の国体を維持しようとする少数の日本人が、4つの異なるイデオロギーの脅威のもと、どの理念が覇権をにぎり、戦後日本の国是となるかという不安定な政情のなか、生死をかけてうごめく群像の姿を当時の風俗を交えながら描いた作品です。
日中戦争に従軍し日本に帰国した峯三郎。官憲の眼をくぐり「中国研究会」に所属し大衆小説を書き妻の蜜枝を養う。そこに妻の弟でロシアの覇権を信じる守、峯の元情婦桃江、富豪で中国人の母を持つ蜜枝の元夫三田村が、この研究会を自らのイデオローグのおき場所として生活しています。中心は帝大に籍をおいていた支那研究の老大家鎌原智雄、父の名声に押されて政治活動にかりだされようとする文雄。陸軍刑務所で兵士生活の大半を過ごしアジテーションが得意な評論家軍地。新聞社の西と高校教師の原、大学講師の梅村、失業者の中井、会社員の黒田などが雑居します。
話は老大家鎌原智雄の死とその長男文雄の墜落死から急展開します。老大家鎌原や峯の知らないうちに会員の誰かが秘密裏にどんどん膨らませていった新中国反対に対する攻撃的な「中国研究会」の示威活動。その一環とも思えるPD工場における青酸カリ混入未遂事件。軍地が画策する台湾上陸作戦。日本の中ロアの占領下にあった日本において生きる峯とその妻たちは一市民として如何に行動しこの事態をくぐりぬけてゆくか。
日中戦争に従軍し日本に帰国した峯三郎。官憲の眼をくぐり「中国研究会」に所属し大衆小説を書き妻の蜜枝を養う。そこに妻の弟でロシアの覇権を信じる守、峯の元情婦桃江、富豪で中国人の母を持つ蜜枝の元夫三田村が、この研究会を自らのイデオローグのおき場所として生活しています。中心は帝大に籍をおいていた支那研究の老大家鎌原智雄、父の名声に押されて政治活動にかりだされようとする文雄。陸軍刑務所で兵士生活の大半を過ごしアジテーションが得意な評論家軍地。新聞社の西と高校教師の原、大学講師の梅村、失業者の中井、会社員の黒田などが雑居します。
話は老大家鎌原智雄の死とその長男文雄の墜落死から急展開します。老大家鎌原や峯の知らないうちに会員の誰かが秘密裏にどんどん膨らませていった新中国反対に対する攻撃的な「中国研究会」の示威活動。その一環とも思えるPD工場における青酸カリ混入未遂事件。軍地が画策する台湾上陸作戦。日本の中ロアの占領下にあった日本において生きる峯とその妻たちは一市民として如何に行動しこの事態をくぐりぬけてゆくか。
2016年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容はまあまあ。文体とストーリーが古いと感ずる。人間関係も戦後直ぐのイデオロギー的つながりで興ざめした。
2016年2月12日に日本でレビュー済み
1950年代の政治情勢が背景にあり、作家本人とその友人たちがモデルと思しき面々が「新中国」やら「革命」やらを語り合う、"政治私小説”という趣向。
特に、複数の登場人物からの軍地=竹内好へのポレミークは読み応えあり。
戦前の支那浪人の流れを汲む右翼大物の威圧感あり、台湾・国民党政府へのアプレ青年の渡航計画あり、アメリカ資本兵器工場(?)での毒薬投下事件あり、と賑やかだが、作品としては失敗作。
主人公・エロ作家峯のキャラが立たず、恋人の蜜枝と女インテリ桃代(この名前がすでにアレだが)はやや類型的。
特に、複数の登場人物からの軍地=竹内好へのポレミークは読み応えあり。
戦前の支那浪人の流れを汲む右翼大物の威圧感あり、台湾・国民党政府へのアプレ青年の渡航計画あり、アメリカ資本兵器工場(?)での毒薬投下事件あり、と賑やかだが、作品としては失敗作。
主人公・エロ作家峯のキャラが立たず、恋人の蜜枝と女インテリ桃代(この名前がすでにアレだが)はやや類型的。