〇40歳にもなろうとする年に、しかも1944年に満州に渡るというのは、どんな気分だったのだろうか。その後の歴史を知る者としては、どこか身を捨てるような道行に思えてならない。
〇ふるさとの岡山でなくても、もっと気候のいい、身の置き所が他にあったのではないのか? なぜこんなどこか思い詰めた、無惨な方へ傾いていくような歩き方で進んでいったのか?
〇軽みとか、飄逸とか言うが、読んでいる間は、寒寒として、何もないような、殺伐とした気分にずっと取り憑かれていた気がする。簡単に人が死ぬわけでもないのに、軽々と命が砂埃と一緒に掃き寄せられているみたいだ。
〇だから木山捷平は、人生の甘さも苦さも噛み締めたような、通りのよい人間讃歌の人ではなく、どこか、おかしなところのある人だ、それがなんなのか、今はまだよくわからない。
〇ペーソスでお茶を濁したりしない、いや、多少はするかもしれないが、それだけでは、どうもないのだ。
〇このP+D BOOKSというのは、軽くて、字が大きくて、表紙の色が変わっていて、あとがきも、解説もなく、ぷつんと一つ作品を切り離してきたみたいでとても清々しい。でも、ぼくは、どうしても講談社文芸文庫版を読んでみたかった、吉本隆明が解説を書いている。
〇読んでみると、確かにそうだ、と思わせられる記述に出会う。この「大陸の細道」から滴り落ちたような作品として吉本は短篇「苦いお茶」を挙げている。「引揚者精神」というべき巨きな影への嫌悪と否定、と書いていたかと思うが、ぼくは、そうは思っていなかったのだ、肯定かと思っていたのだ。ぼくは、木山捷平が戦争末期に渡満する前から持っていた、そして帰還してからもあった、影について知りたいと思う。
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大陸の細道 (講談社文芸文庫 きC 1) 文庫 – 1990/8/1
木山 捷平
(著)
- 本の長さ293ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1990/8/1
- ISBN-104061960938
- ISBN-13978-4061960930
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1990/8/1)
- 発売日 : 1990/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 293ページ
- ISBN-10 : 4061960938
- ISBN-13 : 978-4061960930
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,018,944位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年4月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
木山捷平氏は、日々の生活で起こったことを平易な文章で書いています。いわゆる私小説家ですが、K氏などと違って、なんとなくおもしろく書いているところが良い点です。
本作は、M農地開発公社嘱託として満州で生活した時の内容となっています。敗戦が濃厚なのに、なぜ渡満したかというと、実は満州にはお酒がたくさん残っていたからでした。寒さと病気で、たいへんな苦労をしましたが、少しも暗さを感じさせません。ちょっと艶っぽいお話もあります。芸術選奨受賞作。
なお没後、多くの作品が講談社文芸文庫におさめられました。奥さんの功績が大きかったようです。
本作は、M農地開発公社嘱託として満州で生活した時の内容となっています。敗戦が濃厚なのに、なぜ渡満したかというと、実は満州にはお酒がたくさん残っていたからでした。寒さと病気で、たいへんな苦労をしましたが、少しも暗さを感じさせません。ちょっと艶っぽいお話もあります。芸術選奨受賞作。
なお没後、多くの作品が講談社文芸文庫におさめられました。奥さんの功績が大きかったようです。
2019年9月18日に日本でレビュー済み
作家の生家が近いので、作品をダブらせて呼んだ。なかなか手に入らない物をありがとう。