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仮装人物 (講談社文芸文庫 とB 1) 文庫 – 1992/9/1

4.5 5つ星のうち4.5 7個の評価

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 講談社 (1992/9/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 1992/9/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 393ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4061961926
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4061961920
  • カスタマーレビュー:
    4.5 5つ星のうち4.5 7個の評価

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徳田 秋声
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上位レビュー、対象国: 日本

2011年2月5日に日本でレビュー済み
徳田秋声は明治時代から日本自然主義文学の代表作家として『新世帯』『爛』『あらくれ』『奔流』といったいぶし銀の作品群を発表していたが、地味な作風なので大衆からはそっぽを向かれてさして本が売れず、大正時代は生活のために通俗小説を書き散らしていた。昭和になってしばらくして起死回生の二つの名作、『仮装人物』(実際にはこの長編の2年前に『死に親しむ』という短編の傑作が書かれており、これが秋声復活の端緒といえる)と情報局の圧力により未完のまま筆を絶った『縮図』を書き遺して大東亜戦争中に死去した。彼が亡くなった昭和18年には自然主義の盟友島崎藤村も死去しており、戦前文学が実質的にここで終焉したという見方ができる。わたしが彼の最高傑作と評価する『仮装人物』は、50代で妻に先立たれた秋声が作家志望の20代の美女と2年間実体験した愛欲の諸相を描きこんだ私小説であり、『足迹』や『黴』といった初期作品のそっけない文体から離れ、プルーストの影響を受けた豊潤な筆致と寄せては返す波のような玄妙な構成により記憶の彼方から浮かび上がった変転きわまりない女と翻弄される自身を怜悧冷徹に描ききっている。そのテクストの芸術的完成度の高さにおいて、これは岩野泡鳴の『五部作』や近松秋江の『黒髪三部作』を凌ぐ、情痴を題材とした日本私小説の最高峰ではないかと思う。
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