巻頭に、大人になった「かつての読者」から、本書の愛読者でした、と聞かされることがよくある、と書いてあります。まあ、これは連載作品だったわけですから、夢中になって読んでいた少年というのも確かにいたでしょう。それは「連載作品」としての価値です。
そして、その話を持ち出して、吉川先生は、「少年小説を書くのが好きである」とか、楽しいものが少ない世の中で少年の夢を痩せさせないためのものだとか、遠まわしに「いまの少年」もファンになるであろうとか、そんなようなことを書いておられる。その自信は一体、どこから来るのか。
この作品は、話が途中でそれて、そればかりになり、本題はどうでもよくなって、一部キャラは消えたまま終わる、とても雑な作品であります。本題を捨て、子供受けのいいシーンを繋いでいればいいだろうというスタンスがありありと見て取れます。「好きだから真摯に書いた」のではなくて「楽だから好き」ということなのかな?
とても思い入れがあって書かれたとは思えません。少なくとも完成された作品ではない。
むかしの、「鉄人28号」とか、武内つなよしとか堀江卓などの、「連続でリレー風に事件が起こる」漫画を読むと、新しい事件を起こすことに必死で、先行する事件がうやむやになったり、辻褄があわなくなったり、伏線が忘れられたりすることが、よくあります。しかし、そういう漫画も子供たちの間で大人気で、いまやレジェンドとなっています。それは、辻褄がおかしくても、とにかく、いま見てる活劇が面白いから夢中になるわけです。本作の価値や人気というのも、そういう性質のものであって、決して「完成度の高いジュブナイル」ではありません。
「宮本武蔵」を批判されたときの反論などからもうかがわれますが、吉川先生というのは、どうも自作の欠点というのを認めないような気がしますね。本作も、たとえば「いま読むと稚拙で瑕疵も多いが、子供たちを楽しませようと精一杯工夫したものである。皆さんも童心にかえって、夢の世界で遊んでほしい」くらいに言ってくれればよいものを。吉川ファンしか知らない作品だ、というならまだしも、これが単独で名作扱いされてるのだから、ネームバリューというのは恐ろしいものです。無名な作家がポツンと書いたら、別に「突然変異的な孤高の名作」とは言われず、ただ歴史の影に消えていったでしょう。
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神州天馬侠(一) (吉川英治歴史時代文庫) 文庫 – 1989/12/5
吉川 英治
(著)
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大正末から昭和初めの「少年倶楽部」の目ざましい躍進期に、その中心読み物となったのが、佐藤紅緑の諸作と『神州天馬侠』である。織田・徳川の連合軍に滅ぼされた武田勝頼の遺子・伊那丸が、忠義の士に護られて、健気にもお家の再興をはかる。しかし、戦国群雄の圧力の前には――。当時、子供も大人もこの小説に熱狂した。今も、その底力を保ちつづける大衆児童文学の記念碑。
- 本の長さ382ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1989/12/5
- 寸法10.8 x 1.5 x 14.8 cm
- ISBN-104061965786
- ISBN-13978-4061965782
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1989/12/5)
- 発売日 : 1989/12/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 382ページ
- ISBN-10 : 4061965786
- ISBN-13 : 978-4061965782
- 寸法 : 10.8 x 1.5 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 498,954位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1892年神奈川県生まれ。様々な職業を経た後、作家活動に入る。国民文学作家と称され、今も読み継がれている作品が多い。1962年没(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 新装版 三国志(三) (ISBN-13: 978-4062761888 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年11月22日に日本でレビュー済み
『神州天馬侠』はむかし夢中になって読んだ少年小説のひとつで、最近あらためて読み直し懐かしさのあまり感銘を新たにしました。
大人になって読み返すと、ストーリー展開には粗削りな部分もあるようですが、それでも子供時代に一度は夢中になって胸躍らせて読んだ作品というのは忘れ難いもので、当時と変わらぬ懐かしい感動をよみがえらせることが出来ました。
例えば映画『ゴジラ』などにしても第1作は、率直にいって現代人から観たら特撮技術もストーリーもずいぶん稚拙な内容ではありましょうが、それでも往年のファンならばけっして初期作品を否定し貶めたりはせず、古典的名作として敬意を払います。
度重なる執筆依頼にやむなく無理を押して応じた結果として、「僕は若い頃につまらない作品を書き過ぎた」と後年に吉川英治(故人につき敬称略)自身も反省を込めて述懐しておりますが、往年のファンからすれば、若い頃の未成熟な作品をあげつらい批判する気持ちにはなれません。
わが国で最初の代表的な国民作家として『新・平家物語』『親鸞』『私本太平記』『源頼朝』『新・水滸伝』『新書太閤記』など幾つもの素晴らしい時代小説の名作を遺してくださった苦心と努力の業績に対して、今でも心からの感謝と畏敬の気持ちがございます。
すっかり馬齢を重ねた現在となっても、自分にとって『神州天馬侠』がとても懐かしい、けっして色褪せない珠玉の感動作であることに変わりはありません。
大人になって読み返すと、ストーリー展開には粗削りな部分もあるようですが、それでも子供時代に一度は夢中になって胸躍らせて読んだ作品というのは忘れ難いもので、当時と変わらぬ懐かしい感動をよみがえらせることが出来ました。
例えば映画『ゴジラ』などにしても第1作は、率直にいって現代人から観たら特撮技術もストーリーもずいぶん稚拙な内容ではありましょうが、それでも往年のファンならばけっして初期作品を否定し貶めたりはせず、古典的名作として敬意を払います。
度重なる執筆依頼にやむなく無理を押して応じた結果として、「僕は若い頃につまらない作品を書き過ぎた」と後年に吉川英治(故人につき敬称略)自身も反省を込めて述懐しておりますが、往年のファンからすれば、若い頃の未成熟な作品をあげつらい批判する気持ちにはなれません。
わが国で最初の代表的な国民作家として『新・平家物語』『親鸞』『私本太平記』『源頼朝』『新・水滸伝』『新書太閤記』など幾つもの素晴らしい時代小説の名作を遺してくださった苦心と努力の業績に対して、今でも心からの感謝と畏敬の気持ちがございます。
すっかり馬齢を重ねた現在となっても、自分にとって『神州天馬侠』がとても懐かしい、けっして色褪せない珠玉の感動作であることに変わりはありません。