ヘンリー・ミラーの作品は読んだことがないが、あるエッセイでお勧めされていたので、読んでみた。大文豪の往復書簡はよくあるが、ラブレターだけで構成されている本というのが面白い。
ヘンリー・ミラーは恋多き男性で、生涯に5回結婚した。その最後の妻、ホキ徳田への300通に及ぶラブレターを時系列で追った本だ。ヘンリー・ミラーがキャバレーで弾き語りをするホキに惚れるところから本は始まる。やがて、求婚、結婚、別居、離別へと進んでいく。映画「ブルー・バレンタイン」を思い出す流れだ。愛の芽生えと、それを保とうとする努力、離別。人間は3年で恋愛感情から醒めるという。このヘンリーの愛の軌跡にも、人間の心のうつろい、他人に対する期待、愛から醒めてやっと分かる相手の本質…などが伺え、共感できる人は多いと思う。ヘンリー・ミラーはホキに東洋の神秘を期待したが、離別の時に、「その瞳の奥には単なる空間しかない」と気付く。それでもヘンリーは「ホキ、あなたは自由でいなさい。そのままでいい」と伝える。それまでは、ヘンリーはホキに抱く期待、イメージがあったようだ。愛から醒めたヘンリーは、初めてホキの本質を見抜き、そのままのホキを受け入れる。ただのラブレター集といえばそれまでだが、300通のラブレターから選んでいると思うので、最後の手紙をこれにした著者はえらいと思う。
この本の面白いところは、ヘンリーとホキの個性の強さでもある。ヘンリーは金にうるさく、手紙にもネチネチとお金のことを書く。また春画に目がなく、知り合いの日本人から教えてもらったエロチックな日本語をちょくちょくと手紙に挟んでくる。それもなんの脈絡もないところで。ホキもホキで、そこまでヘンリーに愛されようと、手紙を返すのはたまにだけ。文学にそこまで興味もないので、大文豪のラブレターといえど開けもしないことも多かったらしい。ヘンリーの手紙の合間に挟まれる、ホキのインタビューが大変に面白い。ホキはけして冷たい女ではなく、むしろやさしい魅力的な女だとわかる。人の肩書きに食いついたりしない、若くて頭がよく、魂の自由な女だ。ものの価値を安さや高さ、ブランドで決めたりせず、本当に自分の好きなものを選ぶこと、、それが二人の共通点だった、と冷静に語ったりもする。
とにかくこの本は思ったよりも面白かった。古本しか売ってないようだが、一見の価値あり。結局この二人、離婚したわけだが、明るい本だ。ヘンリーのお茶目さ、ホキの天衣無縫は、本棚に入れて、たまに読みたくなる代物だ。
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ヘンリー・ミラーのラブレター: ホキ・徳田への愛と憎しみの記録 ペーパーバック – 1982/8/1
- 本の長さ294ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1982/8/1
- ISBN-104062001802
- ISBN-13978-4062001809
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1982/8/1)
- 発売日 : 1982/8/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 294ページ
- ISBN-10 : 4062001802
- ISBN-13 : 978-4062001809
- Amazon 売れ筋ランキング: - 628,047位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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