昔の西洋では、人間の上には神がおり、人間の下には獣がいた。今日ではそれらを圧して機械がいる。本書は、「考える機械」であるコンピュータと多くの関わりを持つ人々(コンピュータ・ゲームで遊ぶ子供やハッカー、プログラマーや人工知能の研究者等様々)400人以上に対する膨大なインタビューを元に、新しい世代がどの様にしてコンピュータに関わり、向き合い、自己や人間や生物や心について新しい観念を作り上げているかを論じたものである。
原題は"The Second Self"で初版が1984年。以来「心の理論」や比較認知科学等、心の観念を巡る様々な考え方も発達し、またコンピュータ社会について論じた社会学者も大勢いるが、今だに本書はその先駆的意義のみならず新鮮なアクチュアリティーを失ってはいない。その強さは「人間とは何か」「心とは何か」と云う素朴だが根本的な問いに対して、本書が飽くまで当事者達の現場の感覚を失わず且つその先を見通し乍ら真摯に論じているところから来ているのだろう。幾つもの専門領域の狭間で些か取り残された感のある本書の様な観点について、是非今一度考え直してみてはどうだろうか。誰彼言わず何等かの形でコンピュータに関わる全ての人に読んで欲しい本である。
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