戦前戦中の租界地としての上海についての記録かと思い手に取ったが期待は裏切られた。もちろん上海が「魔都」であった時代をふまえてその魔性が現代(…といっても私が読んだのは著されて15年近く経てからになるが…)にも息衝いていることを示唆する、そういうタイトルかと思われるが、まさに現代上海の記録である。
しかし裏切られたのはテーマだけであった。内容はこれはこれで十分に満足できるものであった。魔都が魔都たりえたのは、それが時代の要請であっただけではなく、もちろん列強諸国の諜報戦の最前線であったためだけでもなく、それ自身がそういう素養を秘めた地であったからである。つまり50年を経てやはり魔都は魔都であり続けるのだ。
上海人は中国人の中でもまた特別な地域性を持っているとして書かれているが、一方ではそれは中国人の国民性を煮詰めて濃縮しそのエキスを搾り取ったかのごとく、際立った中国国民性の持ち主たちではなかろうか。上海自体がデフォルメされた中国の縮図といってよいかもしれない。雑多な町並み、はびこる不正、犯罪、徹底的な利己主義、前衛性、保守性、排他性、パワフルなまでの生活力と高齢化社会、一貫してそうで多様な混沌とした社会で生きる人々と日本人がうまく共存できたとき、国レベルでも隣国中国ともっとうまくやっていけるに違いない。国交の実験場としては、あまりにハイレベルな難題ではあるが。。。そういう課題をつきつけられたような一冊であった。
新聞記者出身のルポタージュであるだけに裸の上海についての記述は迫真性があり面白かった。旅行ガイドブックではなく、またマクロな文化考察の対象としての上海ではなく、普段日本国内にいてはなかなか垣間見ることのできない管理社会中国のミクロでリアルな上海を知るにはお勧めの書である。また、著述後15年経た上海がどれほど変化し、また変化していないのか非常に興味をそそられるのではなかろうか。
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魔都上海: 中国最大都市の素顔 単行本 – 1996/3/1
佐々木 理臣
(著)
誰も書けなかったカネと権力の百態百様
張りめぐらされた監視網、腐敗と拝金主義と差別の極みのなかで、人々は「豊かな中国人」へ盲進している。新聞に書けなかった迫真ドキュメント・28話!
上海は常住人口1350万人、流動人口300万人をかかえる中国最大の都市だ。ひしめく自転車、リヤカー、路線バス。大きな荷物をかかえたお上(のぼ)りさんたちが、ピカピカのリムジンでご出勤の「富裕階級」の豪華さに目を丸くする。夜の帳(とばり)がおりると、「香港を抜いた」とさえ言われるまばゆいネオンの繁華街は買い物の市民、観光客、物売りらでごった返す。上海在住の日本人は約3700人、日系進出企業は2400件、海外からの旅行者は年間100万人を超えた──。殺到する外資を貪欲にのみこみ膨張するこの街の正体はいったい、なんだろう。社会主義体制と保守的な体質が癒着して起こるさまざまな軋轢(あつれき)や「権力と金の取引」のありさまは、想像もできないスケールと激しさだ。「パンドラの箱」の封印が解かれ、飛び出した欲望の「悪魔」が理性と秩序の「希望」を追い散らしているような街──。(本文より抜粋)
張りめぐらされた監視網、腐敗と拝金主義と差別の極みのなかで、人々は「豊かな中国人」へ盲進している。新聞に書けなかった迫真ドキュメント・28話!
上海は常住人口1350万人、流動人口300万人をかかえる中国最大の都市だ。ひしめく自転車、リヤカー、路線バス。大きな荷物をかかえたお上(のぼ)りさんたちが、ピカピカのリムジンでご出勤の「富裕階級」の豪華さに目を丸くする。夜の帳(とばり)がおりると、「香港を抜いた」とさえ言われるまばゆいネオンの繁華街は買い物の市民、観光客、物売りらでごった返す。上海在住の日本人は約3700人、日系進出企業は2400件、海外からの旅行者は年間100万人を超えた──。殺到する外資を貪欲にのみこみ膨張するこの街の正体はいったい、なんだろう。社会主義体制と保守的な体質が癒着して起こるさまざまな軋轢(あつれき)や「権力と金の取引」のありさまは、想像もできないスケールと激しさだ。「パンドラの箱」の封印が解かれ、飛び出した欲望の「悪魔」が理性と秩序の「希望」を追い散らしているような街──。(本文より抜粋)
- 本の長さ362ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1996/3/1
- ISBN-104062080788
- ISBN-13978-4062080781
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
張りめぐらされた監視網、腐敗と拝金主義と差別の極みの中で、人々は「豊かな中国人」へ盲進している。誰も書けなかった、カネと権力の百態百様・迫真のドキュメント28話を収録。
著者について
1949年、東京都生まれ。早稲田大学政経学部在学中、国交正常化前の1971年、中国を訪問旅行。卒業後の1974年、毎日新聞社に入社。大阪社会部を経て東京本社へ。1985年から86年にかけて1年間の中国人民大学留学ののち、87年中日新聞社(東京本社)に移る。特報部で活躍した後、香港支局長、上海支局長に。現在、外報部デスク。1996年、東京新聞に連載した「素顔の上海」が大好評を得る。他に共著として『嫌われる援助──世界銀行・日本の援助とインド・ナルマダ・ダム』(築地書館)、『中国動乱の構図』(東洋経済新報社・共訳)などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1996/3/1)
- 発売日 : 1996/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 362ページ
- ISBN-10 : 4062080788
- ISBN-13 : 978-4062080781
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,249,851位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 181位アジアの世界経済
- - 281位中国の地理・地域研究
- - 398位中国の経済事情
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