『刑務所物語』がとても面白かったので、同じ作者が書かれたこちらを読みました。
釈放される「明日」がある『刑務所物語』に対して、死刑囚が主人公の『真幸くあらば』。
きれいなタイトルだなと思ったのですが、なんと処刑前の有間皇子の歌「磐代の浜松が枝を引き結び真幸くあらばまた帰り見む」からとられているんですね。
愛と赦し、贖罪、宗教、政治、学び、絵を描くということ、生と性と死。
真摯で深くて、時に赤裸々で。
これはすごい本なので、たくさんの方に読んでもらいたいなと思います。
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真幸くあらば 単行本 – 1998/10/1
小嵐 九八郎
(著)
死刑確定──その日からみんなの心が1つに!
絞首台(バタンコ)の日がすぐそこに。初めて人を愛することを知った若き死刑囚は獄中養母と秘密通信。教誨師、看守、実母も国家に奪われる命の意味を噛みしめる。
淳より
1992年5月1日。
少し急ぎます。
この頃、病的な食欲でかえって疲れています。でも、この短い通信にふさわしくないので、カット。
決して泣きを入れて、気を引こうなどと思いません。今朝の9時頃、8人か9人の靴音が舎房全体にいっせいに轟き、ぎくりとしました。代議士か法務省の偉い人の視察みたいなものでしょう、肝臓が汗を垂らしてちょっぴり小さくなった感じです。だから、急ぎたいのです。
正直いって茜さんの告白は、はじめ驚きました。次に、情けない人間同士という感情がでてきました。そして、いまは、そうやって悶悶とする茜さんがもっと好きになりました。おれの場合、男として女の人を、から、それを含んで、人間が人間へという気持ちが人間へという気持ちです。
聞かせて欲しい。好きになってはいけないのかと。
返事を、早く、早く知りたい。
「茜」より
’92・5・14
いまは答えられないのです。
許して。
絞首台(バタンコ)の日がすぐそこに。初めて人を愛することを知った若き死刑囚は獄中養母と秘密通信。教誨師、看守、実母も国家に奪われる命の意味を噛みしめる。
淳より
1992年5月1日。
少し急ぎます。
この頃、病的な食欲でかえって疲れています。でも、この短い通信にふさわしくないので、カット。
決して泣きを入れて、気を引こうなどと思いません。今朝の9時頃、8人か9人の靴音が舎房全体にいっせいに轟き、ぎくりとしました。代議士か法務省の偉い人の視察みたいなものでしょう、肝臓が汗を垂らしてちょっぴり小さくなった感じです。だから、急ぎたいのです。
正直いって茜さんの告白は、はじめ驚きました。次に、情けない人間同士という感情がでてきました。そして、いまは、そうやって悶悶とする茜さんがもっと好きになりました。おれの場合、男として女の人を、から、それを含んで、人間が人間へという気持ちが人間へという気持ちです。
聞かせて欲しい。好きになってはいけないのかと。
返事を、早く、早く知りたい。
「茜」より
’92・5・14
いまは答えられないのです。
許して。
- 本の長さ322ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1998/10/1
- ISBN-104062094673
- ISBN-13978-4062094672
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
死刑確定-その日からみんなの心がひとつに。初めて人を愛することを知った若き死刑囚は、獄中養母と秘密通信。看守や実母も国家に奪われる命の意味を噛みしめる。奇跡のヒューマン小説。
著者について
1944年秋田県能代市生まれ。歌人としても活躍。著作に『清十郎』(文藝春秋)、『おらホの選挙』『いっさい、一妻ブルース』(ともに講談社)、’95年に『刑務所ものがたり』(文藝春秋)で吉川英治文芸新人賞を受賞。歌集として『叙事がりらや小唄』(短歌研究社)、第2歌集『おわりとね』(角川書店近刊予定)など著作多数。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1998/10/1)
- 発売日 : 1998/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 322ページ
- ISBN-10 : 4062094673
- ISBN-13 : 978-4062094672
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,842,063位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 44,131位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
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2019年10月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原作の方がもっと細かくてストーリーが綿密だった。
映画を先に観たので、尾野真千子のイメージで読んでいた。
死刑制度について、宗教について、深く考えさせられた。
いい作品だなと思う。読んでよかった。
映画を先に観たので、尾野真千子のイメージで読んでいた。
死刑制度について、宗教について、深く考えさせられた。
いい作品だなと思う。読んでよかった。
2016年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
金額が金額なもので商品の状態を若干懸念していましたが、コンディションは
全く問題ありませんでした。到着も早かったです。又、注文したいです。
全く問題ありませんでした。到着も早かったです。又、注文したいです。
2009年12月17日に日本でレビュー済み
「真幸くあらば」と言うタイトルは、万葉集の有間皇子の「磐代の浜松が枝を引き結び真幸くあらばまた還り見む」と言う歌から引かれています。
それは、この本の主人公が南木野(榊原)淳と言う死刑囚であり、その「獄中養母」である榊原茜に出会うことにより、「死」までの限られた期間の「生」をしっかりと全うしようとする姿を捉えているからです。
更に、「解説」に丁寧に書かれている様に、「エロイーズ」「新エロイーズ」を踏まえた熱烈なラブ・ストーリーでもある訳です。
しかも、それぞれ宗教や身分と言う障害があるのに対し、本書は国家、権力と言う障害がある訳です。
従って、この本は単なるラブ・ストーリーではなく、「死刑」において国家が人を殺す権限がどこにあるのか?とか、死刑囚の人権の問題とか、様々な問題が投げかけられます。
宗教的にも、「殺人」が何故罪なのか?と言う素朴な疑問が投げかけられます。
戦争と言う場においては「国家」と言う名で「殺人」が正当化され、「死刑」と言う名で「国家」が「殺人」をするのと、どう峻別するのかと言う訳です。
様々な問題を提起しながら、主人公二人の秘密の往復書簡が交換される形で、この本は構成されています。
その書簡の間を繋ぐのは、教誨師である牧師が関係者との会談です。
榊原茜の正体が語られるあたりから一気に物語は急展開します。
このあたりの構成の上手さは、「新エロイーズ」の挿入の仕方と共に素晴らしいと思います。
それは、この本の主人公が南木野(榊原)淳と言う死刑囚であり、その「獄中養母」である榊原茜に出会うことにより、「死」までの限られた期間の「生」をしっかりと全うしようとする姿を捉えているからです。
更に、「解説」に丁寧に書かれている様に、「エロイーズ」「新エロイーズ」を踏まえた熱烈なラブ・ストーリーでもある訳です。
しかも、それぞれ宗教や身分と言う障害があるのに対し、本書は国家、権力と言う障害がある訳です。
従って、この本は単なるラブ・ストーリーではなく、「死刑」において国家が人を殺す権限がどこにあるのか?とか、死刑囚の人権の問題とか、様々な問題が投げかけられます。
宗教的にも、「殺人」が何故罪なのか?と言う素朴な疑問が投げかけられます。
戦争と言う場においては「国家」と言う名で「殺人」が正当化され、「死刑」と言う名で「国家」が「殺人」をするのと、どう峻別するのかと言う訳です。
様々な問題を提起しながら、主人公二人の秘密の往復書簡が交換される形で、この本は構成されています。
その書簡の間を繋ぐのは、教誨師である牧師が関係者との会談です。
榊原茜の正体が語られるあたりから一気に物語は急展開します。
このあたりの構成の上手さは、「新エロイーズ」の挿入の仕方と共に素晴らしいと思います。