どうしても祖父文豪幸田露伴、母幸田文を意識せずに純粋・単純に著述家青木玉を見るってことは難しい。
本人も、書かせるマスコミ・出版社もそれを意識せざるをえないし、読むほうも頭において文章を見てしまう。
3つの部に分かれるが、1番目の「手もちの時間」は1999年日経の金曜夕刊に半年間連載されたものだが、
玉さんの折々の風景描写といえるような文章で、整った美しい日本語を択んで書かれているが、それが逆に
対象との距離感を感じさせて、書かれたことがすとんと胸に落ちてこない。
最後の「つながり」に祖父・母の思い出、小石川の生活風景などが描かれるが、やはり書く玉さんのほうも、
読むこちらも肌に感じる温もりがそれぞれの文章に感じられてよいが、本全体としてみた時にやはり「小石川の
家」や「帰りたかった家」に感じられた「書いておきたい・残したい」という切実感は薄く、普通のエッセイ集との
印象を受けた。
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手もちの時間 単行本 – 1999/11/1
青木 玉
(著)
●暮しを見つめる最新随筆集68篇
過ぎた時の折々の想いと懐しい風景
手もちの時間を彩るあれこれ
それにしても、昔は寒かった。母の手にはつま切れがきれ、私の耳や手には霜やけがたえなかった。夜廻りの拍子木がカチ、カチ、カチカチと音を刻んで近付いてくる。家の角から横町に向って、火の用心と声を掛けて又、遠退いてゆく。しみじみ外の寒さが思われる。刺子の半纏を羽織っても拍子木を持つ手はつめたかろう。寒さが寂しさに感じられるときであった。──本文より
過ぎた時の折々の想いと懐しい風景
手もちの時間を彩るあれこれ
それにしても、昔は寒かった。母の手にはつま切れがきれ、私の耳や手には霜やけがたえなかった。夜廻りの拍子木がカチ、カチ、カチカチと音を刻んで近付いてくる。家の角から横町に向って、火の用心と声を掛けて又、遠退いてゆく。しみじみ外の寒さが思われる。刺子の半纏を羽織っても拍子木を持つ手はつめたかろう。寒さが寂しさに感じられるときであった。──本文より
- 本の長さ233ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1999/11/1
- ISBN-104062098679
- ISBN-13978-4062098670
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
それにしても、昔は寒かった。母の手にはつま切れがきれ、私の耳や手には霜やけがたえなかった…。深く柔らかなまなざし。過ぎた時の折々の想いと懐しい風景。手もちの時間を彩るあれこれ。暮らしを見つめる随筆68篇を収録。
著者について
1929年幸田文長女として東京に生れる。1949年東京女子大学国語科卒業。1959年結婚。1995年『小石川の家』で芸術選奨文部大臣賞受賞。著書に『幸田文の箪笥の引き出し』『帰りたかった家』『なんでもない話』がある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1999/11/1)
- 発売日 : 1999/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 233ページ
- ISBN-10 : 4062098679
- ISBN-13 : 978-4062098670
- Amazon 売れ筋ランキング: - 709,799位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 11,181位近現代日本のエッセー・随筆
- - 67,525位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2004年7月1日に日本でレビュー済み
良くも悪くもマイルド。
頭にも心にも負担なく読めるが、読後感がなにも残らない。
最後の文が弱い文章が多いように思う。
「捨て目」などの今はない言葉に接せられるのは嬉しい。
母(幸田文)、祖父(幸田露伴)に関する情報もこの本では薄い。
幸田文の担当編集者のひとりが、若くして失明する話が出てくるが、このひとが「台所のおと」の「呼ばれる」のモデルだろうか。
頭にも心にも負担なく読めるが、読後感がなにも残らない。
最後の文が弱い文章が多いように思う。
「捨て目」などの今はない言葉に接せられるのは嬉しい。
母(幸田文)、祖父(幸田露伴)に関する情報もこの本では薄い。
幸田文の担当編集者のひとりが、若くして失明する話が出てくるが、このひとが「台所のおと」の「呼ばれる」のモデルだろうか。
2001年10月17日に日本でレビュー済み
飼っていた猫のこと、酒の肴のこと、季節の風物詩のこと、作者はいつもなんでもない日常のことをさらりと書く。でも一度彼女の文章を読むと我知らずとひきこまれついつい最後まで読んでしまう。
私達が忘れてしまった美しい日本語で書き綴られた文章も素晴らしい。
秋の夜長の寝物語にはふさわしい作品です。
私達が忘れてしまった美しい日本語で書き綴られた文章も素晴らしい。
秋の夜長の寝物語にはふさわしい作品です。
2003年11月18日に日本でレビュー済み
幸田露伴の孫にして幸田文の一人娘、青木玉さんのエッセイですが、「手持ちの時間」「過ぎた時」「つながり」と大きく3分類されています。
その中でも「過ぎた時」は子供の頃の思い出話もあり、特に「お菓子と子」のエピソードは洋菓子屋さんとのやりとりが「小石川の家」を彷彿とさせます。
お使い道はなんでございましょう、お嬢ちゃまのご注文はこれでございますね…という、番頭さんの言葉の美しさにも古きよき日本が感じられました。
「つながり」のエピソードも幸田露伴や幸田文にまつわるものが多く、幸田家3代目の青木玉というエッセイストはこんな環境で形成されてきたんだなあ…ということがうかがわれる良作だと思います。
その中でも「過ぎた時」は子供の頃の思い出話もあり、特に「お菓子と子」のエピソードは洋菓子屋さんとのやりとりが「小石川の家」を彷彿とさせます。
お使い道はなんでございましょう、お嬢ちゃまのご注文はこれでございますね…という、番頭さんの言葉の美しさにも古きよき日本が感じられました。
「つながり」のエピソードも幸田露伴や幸田文にまつわるものが多く、幸田家3代目の青木玉というエッセイストはこんな環境で形成されてきたんだなあ…ということがうかがわれる良作だと思います。