アメリカ大統領政治の舞台裏を明かす、という試みは初めてではないだろう。しかし、つい最近まで権力の中枢にあった人々についての当事者の証言となればいやでも興味はわく。ましていろいろな意味で、あれだけ問題の多かったクリントン政権についての話となればなおさらだ。著者のジョージ・ステファノポロスは、そうした読者の期待を裏切らない。 『ホワイトハウスの赤裸々な人たち』（原題『All Too Human: A Political Education』）は著者がクリントンの大統領選挙戦に加わってから、ホワイトハウスに在職した政権1期目までのエピソードが克明につづられている。噴出する政治スキャンダルをめぐるマスコミとの攻防や議会共和党との駆け引きの描写は、この政権が何度も危地に陥りながら、しぶとく立ち直ってきた軌跡の再現だ。クリントンのこうした危機への対処能力にはたしかに驚嘆を禁じえない。一方、ホワイトウォーター疑惑では、ヒラリーの意外な不器用さが傷を大きくしたことも改めて明らかにされた。
こうしたホワイトハウスでのできごとを通じて著者は当初、「民主党大統領としてはルーズベルト以降初めて2期目を務めた大統領のハッピーエンドの物語」を語るつもりだったという。ところが、著者のクリントンに対する見方は、モニカ・ルインスキー事件を契機により複雑なものへと変わった。単純な批判というわけでもない、その何ともやり切れない思いをエピローグで実感を込めて語っている。（白川 楓）
内容（「MARC」データベースより）
陰謀、裏切り、リーク…。世論調査とメディアがつくる現代アメリカ政治の現実とホワイトハウスの権力ゲーム。政権内部の権力抗争の全てを、側近中の側近が描くインサイド・ストーリー。
著者について
【ジョージ・ステファノポロス】
1961年、アメリカ合衆国マサチューセッツ州に生まれる。コロンビア大学に進み、ローズ奨学金を受けオックスフォード大学で神学修士号を受ける。民主党リベラル派のマイケル・デュカキス、民主党下院院内総務リチャード・ゲッパートなどの下で働き、91年にクリントンの大統領選挙広報の副責任者となり当選に貢献。クリントン一期目の大統領補佐官となる。クリントン再選後、辞職。現在、コロンビア大学客員教授のほか、ABCニュースのコメンテイターも務める。
【大地舜】
青山学院大学卒。米国のオピニオン誌「ニューパースペクティブス・クオータリー」東京駐在員。「グローバル・ビューポイント」（ロサンゼルス・タイムス・シンジケート）東京駐在員。訳書に『神々の指紋』『天の鏡』（翔泳社）のほか、『不沈・タイタニック』（実業之日本社）、『魔法の糸』（実務教育出版）、『世界の危険・紛争地帯体験ガイド』（講談社）、『神々の声』（飛鳥新社）、著書に『沈黙の神殿』（PHP研究所）がある。
