藤本ひとみという作家の本を、ずっと読んできた者としては、
もっと有名な本になってもいいのにな……という気にさせられる。
たしか直木賞の候補だったと思う。
だが、審査員の評価は得られなかった。
どこを読んでるのだろうなというような評し方だった。
大いに疑問だ。
王領司のころから読んできた者としてはジャンヌを題材とした作品群の、いわば完成形を目指した作品であったと思うし、たんにジャンヌを聖女として綺麗に飾るのではなく、歴史の闇の部分である娼婦の愛と救済に焦点を当てた傑作なんである。
ライトノベルというかジュブナイルでデビューし、人気を得た藤本ひとみがここまでジャンヌを研究して、何度も世に送り出してきた経歴に密かな敬意を感じている。
ロマンチックな表現に、残虐で過酷なストーリー。
薄っぺらで醜い人物にはほとんど焦点が当たらず、気高く、美しく、信念を持った者たちが現れる。
主人公のジャンヌは賢さと肉体で、成り上がっていく。
だが、どこかに癒せない渇きがあり、そこに人間のサガがあらわとなる。
さて、何が起こるか……。
お読みいただきたい。
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ジャンヌ・ダルク暗殺 単行本 – 2001/11/20
藤本 ひとみ
(著)
平和は、戦いでしか創れない!
神の声に従う処女と野望に燃える娼婦、悪をきわめた将軍たちがおりなす熾烈な歴史絵巻。
はたして神は、誰を支持するのか。
外に出たとたんに、丘の向こうで閧(とき)の声が上がった。それを聞くと、ジャンヌは、もう自分を抑えることができなかった。餌をついばむ鶏や家鴨を蹴散らし、羊の群の真ん中を突っ切って、夢中で丘を駆け上がった。
フランス軍は、総くずれであった。思い音を立てて次々と落馬した重騎兵たちは、泥沼となった地面に埋まり、立ち上がろうとしてあがいた。その間を、イングランド軍の歩兵が歩きまわり、斧を振り下ろしては止めを刺していく。様々な形の盾や剣、旗が雨に打たれ、血に染まり、踏みにじられて泥の中に沈んでいた。
(本文より)
神の声に従う処女と野望に燃える娼婦、悪をきわめた将軍たちがおりなす熾烈な歴史絵巻。
はたして神は、誰を支持するのか。
外に出たとたんに、丘の向こうで閧(とき)の声が上がった。それを聞くと、ジャンヌは、もう自分を抑えることができなかった。餌をついばむ鶏や家鴨を蹴散らし、羊の群の真ん中を突っ切って、夢中で丘を駆け上がった。
フランス軍は、総くずれであった。思い音を立てて次々と落馬した重騎兵たちは、泥沼となった地面に埋まり、立ち上がろうとしてあがいた。その間を、イングランド軍の歩兵が歩きまわり、斧を振り下ろしては止めを刺していく。様々な形の盾や剣、旗が雨に打たれ、血に染まり、踏みにじられて泥の中に沈んでいた。
(本文より)
- 本の長さ512ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2001/11/20
- ISBN-104062109875
- ISBN-13978-4062109871
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
聖処女ジャンヌをめぐる野望と陰謀のドラマ。フランス救国の乙女ジャンヌ・ダルクの陰で活躍する娼婦ジャンヌ。激動の時代に生きた二人のジャンヌの運命をドラマチックに描く歴史長篇小説。『小説現代』連載を単行本化。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2001/11/20)
- 発売日 : 2001/11/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 512ページ
- ISBN-10 : 4062109875
- ISBN-13 : 978-4062109871
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,054,636位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 256,742位文学・評論 (本)
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2015年5月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ものすごくキリスト教の神を批判しているけどそっちを批判する前にシャルル7世とかを批判した方がいいんじゃないんでしょうかと思いました。
ブルゴーニュ公の捕虜になったジャンヌ・ダルクはイギリス側に引き渡されたのはフランス側が保釈金出さなかった所為だと思います。死んでから復権裁判起こしてもようはジャンヌ・ダルク見殺しにしたんじやないですかね。
戦争は人間の業故に起こるんでしように何もかも神の責任にしてる感じ受けました。
すくなくとも純粋にジャンヌ・ダルクが信仰によって神の意を受けてフランスを勝利に導き戦争を終わらせたとか思っている人には読むには不向きな解釈です。
読んで最後不快になりました。
著者のジャンヌダルク像も面白いですけど国内内戦でダメージ受けて食料事情も裕福な農家でもそんながっしりした身体つきになれるほどよかったかはちょっと疑問です。
フィクションなのでこのへんは突っ込みいれるところではないですが。
それから娼婦ジャヌの拷問シーンが見所って書いてある人もいるんですが神は娼婦なんか作らなかったら良かったんだとか言ってますが食べていけない少女たちの弱みに付け込んで娼婦に仕立て上げた人にそんな事いう筋合いなんてないと思います。
娼婦を作っていってるのは娼婦ジャンヌさんです。
神の意志でもなく自分の意志と考えで生きていけっていうよくあるテーマなんだと思うけど娼婦ジャンヌの正義もいまいち援交で補導された女子高生が自分体をどうしようが勝手でしょうと言う程度の正義にしか私は思えませんでした。多分この著者の考え方が私と全く合わないんでしょう。
最下級娼婦の産まれって事らしいのですが字も書けるしなんかそれほど苦労しているという感じが見受けられなかったし。
あと当時のヨーロッパ情勢については本当に詳しく調べ尽くしたんでしょうけど批判している当時キリスト教がどうだったかについてはあまり調べてないんじゃないかと思いました。普通にジル・ド・レが娼婦ジャヌに聖書について知ってるか尋ねてるんですけど当時は聖書もラテン語から翻訳されてなくて全てラテン語で礼拝してたらしいし普通に知るわないですよね。
今でこそダビンチコードとかでマグダラのマリヤとか有名になりましたけど聖書に数カ所しか出てこない名前がジル・ド・レから普通に出でくるのもおかしくないでしょうか。
キリスト教徒にはオススメしませんカトリックの聖女の話なのにキリスト教すごく批判してるから。
それから最後の方で「神が間違うなら自分も一度くらい間違えてもいい」という台詞にであってすごく疑問になりました。
散々神を批判しているくせにそれを棚に上げて自分は間違えてもいいなんて傲慢なんじゃないでしょうか。
以下ネタバレです。
私は最初フィクションだし娼婦ジャンヌが聖女ジャンヌを暗殺しようと思ったのですが、それとは違ってジル・ド・レのセリフで神によるジャンヌ・ダルク暗殺だという意味でああそういう意味だったのかとむしろ納得しかけました。イエス・キリストの殉教も神による計画だとキリスト教ではされているし。フランスの人々を内戦から救うためにジャンヌ・ダルクの犠牲が神の計画だったんだと思いかけたんですがその後娼婦ジャンヌの神なんていないんだよっていうセリフにえ?ってなりましたむしろ神がいないということにすごく説得力あって・・・・いえ題名をジャンヌダルク暗殺にしているんだから神による暗殺のままでよかったんじゃなかろうか著者は神は無言だかいないんだっていう解釈なんでしようけども。ジャンヌ・ダルクの神の声を完全否定されててとりあえずすごくむなしくなったのと高評価されすぎていると思ったので☆1つで。
ブルゴーニュ公の捕虜になったジャンヌ・ダルクはイギリス側に引き渡されたのはフランス側が保釈金出さなかった所為だと思います。死んでから復権裁判起こしてもようはジャンヌ・ダルク見殺しにしたんじやないですかね。
戦争は人間の業故に起こるんでしように何もかも神の責任にしてる感じ受けました。
すくなくとも純粋にジャンヌ・ダルクが信仰によって神の意を受けてフランスを勝利に導き戦争を終わらせたとか思っている人には読むには不向きな解釈です。
読んで最後不快になりました。
著者のジャンヌダルク像も面白いですけど国内内戦でダメージ受けて食料事情も裕福な農家でもそんながっしりした身体つきになれるほどよかったかはちょっと疑問です。
フィクションなのでこのへんは突っ込みいれるところではないですが。
それから娼婦ジャヌの拷問シーンが見所って書いてある人もいるんですが神は娼婦なんか作らなかったら良かったんだとか言ってますが食べていけない少女たちの弱みに付け込んで娼婦に仕立て上げた人にそんな事いう筋合いなんてないと思います。
娼婦を作っていってるのは娼婦ジャンヌさんです。
神の意志でもなく自分の意志と考えで生きていけっていうよくあるテーマなんだと思うけど娼婦ジャンヌの正義もいまいち援交で補導された女子高生が自分体をどうしようが勝手でしょうと言う程度の正義にしか私は思えませんでした。多分この著者の考え方が私と全く合わないんでしょう。
最下級娼婦の産まれって事らしいのですが字も書けるしなんかそれほど苦労しているという感じが見受けられなかったし。
あと当時のヨーロッパ情勢については本当に詳しく調べ尽くしたんでしょうけど批判している当時キリスト教がどうだったかについてはあまり調べてないんじゃないかと思いました。普通にジル・ド・レが娼婦ジャヌに聖書について知ってるか尋ねてるんですけど当時は聖書もラテン語から翻訳されてなくて全てラテン語で礼拝してたらしいし普通に知るわないですよね。
今でこそダビンチコードとかでマグダラのマリヤとか有名になりましたけど聖書に数カ所しか出てこない名前がジル・ド・レから普通に出でくるのもおかしくないでしょうか。
キリスト教徒にはオススメしませんカトリックの聖女の話なのにキリスト教すごく批判してるから。
それから最後の方で「神が間違うなら自分も一度くらい間違えてもいい」という台詞にであってすごく疑問になりました。
散々神を批判しているくせにそれを棚に上げて自分は間違えてもいいなんて傲慢なんじゃないでしょうか。
以下ネタバレです。
私は最初フィクションだし娼婦ジャンヌが聖女ジャンヌを暗殺しようと思ったのですが、それとは違ってジル・ド・レのセリフで神によるジャンヌ・ダルク暗殺だという意味でああそういう意味だったのかとむしろ納得しかけました。イエス・キリストの殉教も神による計画だとキリスト教ではされているし。フランスの人々を内戦から救うためにジャンヌ・ダルクの犠牲が神の計画だったんだと思いかけたんですがその後娼婦ジャンヌの神なんていないんだよっていうセリフにえ?ってなりましたむしろ神がいないということにすごく説得力あって・・・・いえ題名をジャンヌダルク暗殺にしているんだから神による暗殺のままでよかったんじゃなかろうか著者は神は無言だかいないんだっていう解釈なんでしようけども。ジャンヌ・ダルクの神の声を完全否定されててとりあえずすごくむなしくなったのと高評価されすぎていると思ったので☆1つで。
2004年5月3日に日本でレビュー済み
中世ヨーロッパが、ことさら詳しく描写されている。
ジャンヌダルクが主人公ではないが、
彼女を取り巻く人々の物語が、
フィクションではあるけれどおもしろい。
ジャンヌダルクが主人公ではないが、
彼女を取り巻く人々の物語が、
フィクションではあるけれどおもしろい。
2003年11月19日に日本でレビュー済み
架空の人物を主人公とし、その人物を通して歴史の表舞台に立つ人物を鮮やかに描き出す、藤本作品の魅力がいっぱいつまった作品です。
今回の主人公は、神を一途に信仰する聖なる乙女ラ・ピュセルと同名ながら、神を信じず、己の力のみでのし上がろうとする、したたかな娼婦ジャンヌ。度々危機に陥りながらもありったけの力、知恵、時には自分の体まで投げ出して危機を乗り越え、立ちあがるその強さは、意志薄弱で寵臣の言いなりになる王太子シャルルや、神への信仰はあついが世俗のことは全く眼中にないラ・ピュセルとは対照的です。
がっしりした体つきの、いかにも農民の娘らしいジャンヌ・ダルク像は、「聖なる乙女」「救国の天使」といった神々しいイメージからはほど遠いのですが、実際はそんな娘だったのかも、という気にさせられました。彼女が聞いたという「神の声」とは何だったのか、どのようにして「神の使い」に仕立てられ「奇跡」を起こしたのかなど、こういう解釈もあるのかと、非常に興味深く読めました。
今回の主人公は、神を一途に信仰する聖なる乙女ラ・ピュセルと同名ながら、神を信じず、己の力のみでのし上がろうとする、したたかな娼婦ジャンヌ。度々危機に陥りながらもありったけの力、知恵、時には自分の体まで投げ出して危機を乗り越え、立ちあがるその強さは、意志薄弱で寵臣の言いなりになる王太子シャルルや、神への信仰はあついが世俗のことは全く眼中にないラ・ピュセルとは対照的です。
がっしりした体つきの、いかにも農民の娘らしいジャンヌ・ダルク像は、「聖なる乙女」「救国の天使」といった神々しいイメージからはほど遠いのですが、実際はそんな娘だったのかも、という気にさせられました。彼女が聞いたという「神の声」とは何だったのか、どのようにして「神の使い」に仕立てられ「奇跡」を起こしたのかなど、こういう解釈もあるのかと、非常に興味深く読めました。
2001年12月12日に日本でレビュー済み
藤本ひとみは何度となくジャンヌダルクを題材として小説を書いているが、毎回違った視点で興味をそそるものが多い。
今回はジャンヌという女性を二人登場させている。一人は有名な敬虔なキリスト教徒のジャンヌダルク(小説ではラ・ピュセルと呼ばれているが)、もう一人は神を信じぬ地を這って生きている娼婦のジャンヌ。二人は王太子を介して知り合い、生活をともにするようになる。ラ・ピュセルの死をも恐れない敬虔さに戸惑い、憎悪を覚えるジャンヌはラ・ピュセルを操り自分がのし上ろうと謀るのだが・・・・藤本ひとみの心理的描写は圧巻。
今回はジャンヌという女性を二人登場させている。一人は有名な敬虔なキリスト教徒のジャンヌダルク(小説ではラ・ピュセルと呼ばれているが)、もう一人は神を信じぬ地を這って生きている娼婦のジャンヌ。二人は王太子を介して知り合い、生活をともにするようになる。ラ・ピュセルの死をも恐れない敬虔さに戸惑い、憎悪を覚えるジャンヌはラ・ピュセルを操り自分がのし上ろうと謀るのだが・・・・藤本ひとみの心理的描写は圧巻。