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山ん中の獅見朋成雄 単行本 – 2003/10/1
舞城 王太郎
(著)
福井県・西暁の中学生、獅見朋成雄から立ち上がる神話的世界。ついに王太郎がその真価を顕し始めた。
ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ、これぞ最強の純文学!
僕の首の後ろにも、他人よりもちょっと濃いめの産毛が生まれたときから生えていて、これが物心ついたころから僕の抱えた爆弾だったのだけれど、十三歳になってすぐのある晩、自分の鎖骨をこすっていて、そこにいつもとは違う感触を感じてうつむいて、首元に赤くて長くてコリコリと固い明らかな鬣の発芽を確かめたとき、それまでは祖父と父と同じように背中に負ぶっているつもりだった爆弾が、気づけば僕だけ胸の上にも置かれていたと知ってショックで、その上さらにその導火線にとうとう火が点けられたのを実感して、僕は絶望した――(本文より)
ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ、これぞ最強の純文学!
僕の首の後ろにも、他人よりもちょっと濃いめの産毛が生まれたときから生えていて、これが物心ついたころから僕の抱えた爆弾だったのだけれど、十三歳になってすぐのある晩、自分の鎖骨をこすっていて、そこにいつもとは違う感触を感じてうつむいて、首元に赤くて長くてコリコリと固い明らかな鬣の発芽を確かめたとき、それまでは祖父と父と同じように背中に負ぶっているつもりだった爆弾が、気づけば僕だけ胸の上にも置かれていたと知ってショックで、その上さらにその導火線にとうとう火が点けられたのを実感して、僕は絶望した――(本文より)
- 本の長さ261ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2003/10/1
- ISBN-104062121131
- ISBN-13978-4062121132
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
福井県・西暁の中学生、獅見朋成雄から立ち上がる神話的世界。ついに王太郎がその真価を顕し始めた。ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ最強の純文学。『群像』掲載を単行本化。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2003/10/1)
- 発売日 : 2003/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 261ページ
- ISBN-10 : 4062121131
- ISBN-13 : 978-4062121132
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,278,658位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 29,718位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年8月10日に日本でレビュー済み
主人公の青年がなぜか山で相撲や書道をするという世界観に前半は冗長な感じでしたが、別世界に入ってからはあれよあれよと物語が展開し、引き込まれていきました。キーワードを挙げると、たてがみ、パラレルワールド、女体盛り、食人と、訳がわからないように見えますが、物語はしっかり収まっており、40代後半のおじさんでも十分楽しむことができました。
2013年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アインデンティティの確立の話なのかな、と思っていたら、途中からカニバリズムネタが放り込まれ、一体これまでの話と何の関係が?とわからなくなっちゃったんですが、
「いいもんを追求するのに加減してどうするんや。加減なんて結局自己満足の発露やで」
「違う。節度を守ることこそが美や」
この会話でちょっとわかったような気がしました。
美を追求する上での「本能、直感」と「理性、節度」との相克。これは作者自身の創作における悩みを表してるんじゃないでしょうか。自然(山、獣)→本能。人→理性。本作において作者は「人でも獣でもなく」「成長の過程にある」成雄くんに自分を重ね、作家としての方針(アイデンティティ)を模索していたのかもしれません。
独特って言われてますが、実際は相当に先行作家の影響下にある作家ですからね。
全体の話をしますと、文章は舞城氏の割には落ち着いています。明らかにエンタメを捨てて純文学に走ってます。いつものドライブ感を求めて読む人には物足りないでしょう。真面目に書きたかったのはわかるんですが私としても読んでてあまり楽しくはなかったので、星三つということで。
「いいもんを追求するのに加減してどうするんや。加減なんて結局自己満足の発露やで」
「違う。節度を守ることこそが美や」
この会話でちょっとわかったような気がしました。
美を追求する上での「本能、直感」と「理性、節度」との相克。これは作者自身の創作における悩みを表してるんじゃないでしょうか。自然(山、獣)→本能。人→理性。本作において作者は「人でも獣でもなく」「成長の過程にある」成雄くんに自分を重ね、作家としての方針(アイデンティティ)を模索していたのかもしれません。
独特って言われてますが、実際は相当に先行作家の影響下にある作家ですからね。
全体の話をしますと、文章は舞城氏の割には落ち着いています。明らかにエンタメを捨てて純文学に走ってます。いつものドライブ感を求めて読む人には物足りないでしょう。真面目に書きたかったのはわかるんですが私としても読んでてあまり楽しくはなかったので、星三つということで。
2004年6月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本は長編小説のスタイルをとった禅の「公案」ですね。
京極夏彦の「鉄鼠の檻」を読んだ直後に読めばすぐに思い至るはずです。
公案には論理的なアプローチは通用しません。
この本も論理的な思考によっては読み解けません。
したがってこの本に対して「意味が分からない」という批判をするのは的外れです。
わざと意味が分からないように書いているからです。
この本を「公案」だと看破せずに、普通の小説だと思って読むと苦痛を味わうかもしれません。
しかし理解した上で読めば作者の凄さが感じられるかと思います。
京極夏彦の「鉄鼠の檻」を読んだ直後に読めばすぐに思い至るはずです。
公案には論理的なアプローチは通用しません。
この本も論理的な思考によっては読み解けません。
したがってこの本に対して「意味が分からない」という批判をするのは的外れです。
わざと意味が分からないように書いているからです。
この本を「公案」だと看破せずに、普通の小説だと思って読むと苦痛を味わうかもしれません。
しかし理解した上で読めば作者の凄さが感じられるかと思います。
2005年2月9日に日本でレビュー済み
とても面白く一気に読みました。
「煙か土か食べ物」「好き好き・・」を読み終えた時にも感動しましたが、また違う深い感動を覚えました。
人と動物の違いは何か。欲望や情熱を追求し高めていったところに芸術や文化があるのだとすれば、
お行儀良く美しく文化的に行えば、酒池肉林も人肉を食することさえも
文化的でありうるのではないか・・。
あらゆる常識やタブーやルールが意味を成さない世界で、
淡々と全てを丸呑みにして自分らしくあることに拘って生きようとする少年。
人間であるとは?
罪とは?という問いかけに、とても熱い想いを感じました。
「煙か土か食べ物」「好き好き・・」を読み終えた時にも感動しましたが、また違う深い感動を覚えました。
人と動物の違いは何か。欲望や情熱を追求し高めていったところに芸術や文化があるのだとすれば、
お行儀良く美しく文化的に行えば、酒池肉林も人肉を食することさえも
文化的でありうるのではないか・・。
あらゆる常識やタブーやルールが意味を成さない世界で、
淡々と全てを丸呑みにして自分らしくあることに拘って生きようとする少年。
人間であるとは?
罪とは?という問いかけに、とても熱い想いを感じました。
2007年1月28日に日本でレビュー済み
やっぱり舞城って、ただのぶっ飛び作家じゃなく、相当の筆力持ってる!と改めて感心した一作。
擬音センスは宮沢賢二ばりに巧い。
擬音センスは宮沢賢二ばりに巧い。
2016年11月27日に日本でレビュー済み
背中に馬のような鬣が生えている高校生の獅見朋成雄(しみともなるお)。
書道の師匠を殺害せんとした犯人を追い、山中の異空間(?)の村落へ彷徨い込んでしまうという、筒井康隆風の不条理系の物語。
陸上のオリンピック候補という成雄のキャラクター設定が、ストーリーにそれほど活かされていなかったりと、暴走し発散する思考を無理矢理、作品世界に押し込めた印象がある。舞城作品に慣れていなければ、途中で投げ出してしまうだろう。慣れていても終始つかみどころが見つからず、苦戦を強いられてしまった。
書道の師匠を殺害せんとした犯人を追い、山中の異空間(?)の村落へ彷徨い込んでしまうという、筒井康隆風の不条理系の物語。
陸上のオリンピック候補という成雄のキャラクター設定が、ストーリーにそれほど活かされていなかったりと、暴走し発散する思考を無理矢理、作品世界に押し込めた印象がある。舞城作品に慣れていなければ、途中で投げ出してしまうだろう。慣れていても終始つかみどころが見つからず、苦戦を強いられてしまった。
2003年10月13日に日本でレビュー済み
ミステリから純文学へと越境を開始した舞城王太郎の「純文」作品。
背中に鬣(たてがみ)を持つ異形の主人公、獅見朋成雄。成雄は友人?のモヒ寛を殺害しようとした犯人を見つけようと山に潜むが、謎の男を追ううちに杉のトンネルを潜り抜けて見たこともない村にたどり着く。そこで成雄は鬣を剃られ、苗字を失って、屋敷の風呂番として働くようになるが、屋敷で見たのはなんとも奇妙な風習だった…
この作品は、未成熟な主人公が、異界に行き、成長して還るという、典型的な「行きて帰りし物語」(大塚英志『物語の体操』)で、意図したものかどうかわからないが『千と千尋の神隠し』のパロディになっている。
パロディであることの是非はともかく、物語は薄っぺらい。著者には妙に倫理的なところがあって、最近、この時代に生きる倫理を問うような作品を立て続けに発表しているが、どれも倫理観が空回りしている。
本書も同じで、物語が倫理を語るための具にされているようで、人物や事物の描写に愛情がなく、読むのが辛くなるほど味の薄い文章が続く。人物の内面の変化もよくわからない。主人公の迷いや決断のようなものが説得力をもって伝わるかたちで表現されないので、物語が平板な印象を受ける。結局主人公が成長したのかどうかもわからないし、カタルシスもない。著者の想像力も、『千と千尋』に多くを負うもので、評価はできない。
また、中途半端に展開されている「なぜ人を殺してはいけないのか」というテーマも、社会的には無意味。そういう問いかけが出ない社会をつくるにはどうしたらいいのかと!いうテーマの方が建設的だ。世の中の残酷さを描きたかったのかも知れないが、それも中途半端。
結局何をしたいのか、一体誰を対象に書いたのか、不思議な作品。現代文学の最先端なのだろうが、その先端は袋小路であることを認識させる。次回作に期待。
背中に鬣(たてがみ)を持つ異形の主人公、獅見朋成雄。成雄は友人?のモヒ寛を殺害しようとした犯人を見つけようと山に潜むが、謎の男を追ううちに杉のトンネルを潜り抜けて見たこともない村にたどり着く。そこで成雄は鬣を剃られ、苗字を失って、屋敷の風呂番として働くようになるが、屋敷で見たのはなんとも奇妙な風習だった…
この作品は、未成熟な主人公が、異界に行き、成長して還るという、典型的な「行きて帰りし物語」(大塚英志『物語の体操』)で、意図したものかどうかわからないが『千と千尋の神隠し』のパロディになっている。
パロディであることの是非はともかく、物語は薄っぺらい。著者には妙に倫理的なところがあって、最近、この時代に生きる倫理を問うような作品を立て続けに発表しているが、どれも倫理観が空回りしている。
本書も同じで、物語が倫理を語るための具にされているようで、人物や事物の描写に愛情がなく、読むのが辛くなるほど味の薄い文章が続く。人物の内面の変化もよくわからない。主人公の迷いや決断のようなものが説得力をもって伝わるかたちで表現されないので、物語が平板な印象を受ける。結局主人公が成長したのかどうかもわからないし、カタルシスもない。著者の想像力も、『千と千尋』に多くを負うもので、評価はできない。
また、中途半端に展開されている「なぜ人を殺してはいけないのか」というテーマも、社会的には無意味。そういう問いかけが出ない社会をつくるにはどうしたらいいのかと!いうテーマの方が建設的だ。世の中の残酷さを描きたかったのかも知れないが、それも中途半端。
結局何をしたいのか、一体誰を対象に書いたのか、不思議な作品。現代文学の最先端なのだろうが、その先端は袋小路であることを認識させる。次回作に期待。
2012年2月8日に日本でレビュー済み
文章のドライブ感という点では、舞城氏の他作の方が一気に読ませるスピード感がある。この世に暴力や悪が存在してしまうことのどうしようもなさを描いた素晴らしい作品を沢山モノにしてきた舞城氏だが、本作は「食」と「エロス」を通して人間という生き物を描こうとした作品だ。(「食」だって、人間が避けることのできない一つの暴力=快楽だ。)
キャラクターの設定(例えば主人公が変わった名前で、背に鬣(たてがみ)が生えていること)など細部にあんまり必然を読み取れなかったことが個人的には残念。また、ネタバレになるので詳しく書けないが、主人公の「一線」の超え方はとても軽くって、そこに敢えてドラマや葛藤を込めないことで新しさを狙った点は分かるが、それ故にラストで描かれた「解放への疾走」も軽くなっちゃってる。
以上の点で星は一つ削ったが、それでも作家の実験の意図は十分に伝わってくる作品だ。
キャラクターの設定(例えば主人公が変わった名前で、背に鬣(たてがみ)が生えていること)など細部にあんまり必然を読み取れなかったことが個人的には残念。また、ネタバレになるので詳しく書けないが、主人公の「一線」の超え方はとても軽くって、そこに敢えてドラマや葛藤を込めないことで新しさを狙った点は分かるが、それ故にラストで描かれた「解放への疾走」も軽くなっちゃってる。
以上の点で星は一つ削ったが、それでも作家の実験の意図は十分に伝わってくる作品だ。