ジグムント・フロイト・・・エーリッヒ・フロム・・・マイケル・マコビー
と言った、ネオ・フロイディアン、所謂「フロイド左派」の一本筋の通った系列の
社会心理学の一般書である。タイトルは、大出版社の講談社が最近、新書を中心に
中小の出版社から出版されても、タイトルの付け方次第でベストセラーに
為って仕舞う本が多いので、こんな風にしたらしい。
しかし、内容的には大学の1,2年の一般教養の社会心理学の教科書・参考書に
しても良いくらいの「真っ当」なものである。
晩年期フロイトの人格分類の論文に基づき,『自由からの逃走』で
有名なE・フロムが肉付けをし、更に1990年代の新しいタイプの
起業家や経営者の人格モデルについて、マコビーが考察すると言う形である。
尚、1950年代と言う戦後アメリカの状況については、リースマンの
『孤独な群衆』も参考にされている感が有る。
本書の原題に為って居るナルシシスト人格について、フロイトは
自分自身もそうだったと考えて居たらしい。このナルシシスト人格者は
基本的に「自己充足的」であり、例えば、其れが何であっても、「其れに
意味があるか無いかを決めるのは、結局は自分自身なのだ」と言う認識で
生きて居る。其れ以外のパーソナリティの者が、この「自己充足的な」パーソナリティの
持ち主に対して感じる魅力と言うのは、丁度「人間が猫に対して感じる魅力」に
似ているとの事である。
具体例は幾つも挙げられているが、ヒトゲノムの解読で有名なセレーラのCEOの
人生等、興味深い。ハイスクール以前から、学校なんか大っ嫌い。
高校卒業と同時に家出同然で軍に入隊して、ヴェトナムで衛生兵として
従軍。帰国してからは軍の奨学金で医学部に行くも、医者は自分の
生きて行く道では無いと判断して、政府から補助金を受けてバイオ研究のNPOを
始める。此処で基礎研究をして、セレーラを起業。
こんな感じである。就職活動なんぞに「人生を賭けて仕舞って居る」生き方
なんぞとは、全然、別物である。
そもそも、就活などが、マーケティング人格者の典型的な生き方であり、
他者が自分をどれだけ高く評価してくれるか、詰まり「他人が自分と言う
人間をどれだけ高く『買って』くれるか。逆に言えば、どれだけ自分と言う
人間を他人に、高値で売り付けられるか」と言う価値基準で生きて居る訳である。
このマーケティング人格については、フロムの本に詳しい。と言うよりも
1950年代から、アメリカではこう言うタイプのパーソナリティが
急速に増加し、「マーケティング人格」と言う概念を作ったのが
エーリッヒ・フロムだった。丁度『セールスマンの死』などが象徴的である。
IMO...in my opinion...
「歴史は、『其れ自体勝手に』繰り返す」と言うが、
就職氷河期が過ぎ去り、大学を出たら就職と言う1980年代的な状況が
繰り返されて居る昨今ではあるが、パーソナリティは「自分自身の人生に
対する態度の表れ」であり、キャラクターが「他者・社会に対する態度の表れ・
その行動パターン」であるのとは対比的であり、詰まる所「生き方の問題」
に為るのだ。恐らく、最近流行りの「ワクワク」とかの類もそれと関わるのだろうが、
それにしても、他人に自分の評価を下して貰って一生を生きよう、
と思って居る人間に本当に「ワクワク」等と言うものがあるのか、疑問である。

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なぜイヤなやつほど出世するのか 単行本 – 2004/7/21
- 本の長さ262ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2004/7/21
- ISBN-104062124157
- ISBN-13978-4062124157
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
イヤな奴に限ってなぜか出世する。それには理由があるのだ…。「ナルシシスト人格」「エロティック人格」「強迫型人格」「マーケティング人格」の4つの人格タイプで決まる、ビジネスマンの運命とは? 人格タイプ別診断付き。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2004/7/21)
- 発売日 : 2004/7/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 262ページ
- ISBN-10 : 4062124157
- ISBN-13 : 978-4062124157
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,043,041位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,653位ビジネスライフ (本)
- - 38,613位投資・金融・会社経営 (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2008年8月31日に日本でレビュー済み
カリスマ性のあるトップにどのように対応したらよいか心理学の見地から解説されてます。
ありそうで意外になくとても新鮮でした。
ナルシストと言い切ってるところがまた面白く心当たりがありながらも笑いながら読めました。
パターン別に4つ紹介されておりチェックシートで選べるようになっており選択肢を選ぶとき自分の好みというか無意識に働く抵抗力と願望を加味してしまわないか?とてもむずかしかったです。
半分遊び感覚で付き合ったほうが良いかも、
なお本書はスタンリー・ビング氏の『What would Machiavelli Do?』にソックリです、気に入られたのならそちらも拝見すると良いかも。
包み隠さず最初からイヤなやつと言い切っているところがまたいいですね(笑)。
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半分遊び感覚で付き合ったほうが良いかも、
なお本書はスタンリー・ビング氏の『What would Machiavelli Do?』にソックリです、気に入られたのならそちらも拝見すると良いかも。
包み隠さず最初からイヤなやつと言い切っているところがまたいいですね(笑)。