野沢尚さんが2004年に自殺されて、もう20年近い年月が経つ。とにかく大ヒット作を若くして多く出した大人気脚本家だったけど、水面下では脚本を大きく変えられたり、無理な事を強要されて降板されたりと、辛苦を味わった方ではないかと思う。野沢さんの作品は描かれる女性が本当に魅力的だ。最近のメンヘラみたいなグズがいない。『水曜日の情事』も『眠れる森』も、子供時代や環境に恵まれなかったヒロインは決して泣き言を言わず、人のせいにせず、受け止める真の強さがある。
前置きが長くなったが、実はこの作品が初めて読んだ野沢さんの本だ。未完だと言われるが、これはこれで完成と言ってもいいのではないか、と思える。冒頭の説明ではネットを通じて集められた5人の男女が、ある場所に集められ、1人ずつ自身の秘密を話す。最初の告白者は男性、2人目は女性、どちらのラストも鳥肌が立つものだった。この2人目の話が終わったところで、この本は終わってしまう。残りの3人はどのような秘密をお持ちだったのか、聞きたかったと思うのは野暮かもしれない。おそらく同じように、重苦しく、人にはとても話せない心の闇があるのは明白だからだ。そうでなければ、わざわざこの場所には来ないだろう。
この作品の中の告白者である男女より、最初の告白者が語る元恋人が非常に魅力的な女性だった。女医だったそうだ。この告白者にはもったいないくらいの女性だったが、同時にこの告白者では釣り合わず、持て余してしまうほど重いカルマがあった。その女性も先ほど述べた野沢さんの作品に出る魅力的な女性たちのように、美しく、いさぎよく覚悟のある女性だった。
読み始めたら、あっという間に読み終わった。2時間もかからなかったと思う。中毒性のある作品で、昨夜読んでから、まだ抜け出せない。
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ひたひたと 単行本 – 2004/9/16
野沢 尚
(著)
聞いてください。誰にも言えない、私の秘密を。
野沢尚 最後の小説
閉ざされた部屋に集まった5人の男女が、自らの心の闇を1人ずつ告白し合う——著者の急逝により、この物語は2人目の告白で終わってしまったが、著者が目指した高みは、読む者の胸に激しく迫る。
巻末に北方謙三氏の弔辞を併録。
野沢尚 最後の小説
閉ざされた部屋に集まった5人の男女が、自らの心の闇を1人ずつ告白し合う——著者の急逝により、この物語は2人目の告白で終わってしまったが、著者が目指した高みは、読む者の胸に激しく迫る。
巻末に北方謙三氏の弔辞を併録。
- 本の長さ180ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2004/9/16
- ISBN-104062126117
- ISBN-13978-4062126113
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2004/9/16)
- 発売日 : 2004/9/16
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 180ページ
- ISBN-10 : 4062126117
- ISBN-13 : 978-4062126113
- Amazon 売れ筋ランキング: - 230,109位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,607位日本文学
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年6月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
テレビドラマ「青い鳥」で野沢尚氏に感動し、野沢氏の著した小説や脚本のドラマを見る度に、
若くして逝った作者の才能がもったいないと感ぜずにはいられません。
遺作となった本作品は貴重だと思います。
若くして逝った作者の才能がもったいないと感ぜずにはいられません。
遺作となった本作品は貴重だと思います。
2004年10月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
野沢氏の遺作となった作品、タイトルの「ひたひたと」と「十三番目の傷」が納められている。読後とてつもない胸苦しさに襲われてしまった。
人の心の深淵部に存在するで有ろう闇の様なものを垣間見た気がする。
野沢氏本人にも、まさにひたひたと押し寄せていた何かを想像しないでは居られない作品でした。
未完で終わってしまった事が残念でなりません。
人の心の深淵部に存在するで有ろう闇の様なものを垣間見た気がする。
野沢氏本人にも、まさにひたひたと押し寄せていた何かを想像しないでは居られない作品でした。
未完で終わってしまった事が残念でなりません。
2012年4月5日に日本でレビュー済み
魅力的な登場人物、起伏あるストーリー、偏執的でありながらも何故か共感してしまうセリフの数々…。心の闇を抱え生きる現代の孤独な人間がここにいる。でもここまでの話を書ける人がなんで死んじゃったんだろうな?
2007年6月6日に日本でレビュー済み
登場する二人の父親の姿が痛々しい、突然の息子の自殺にすべてをかけてその理由を探ろうとする父親、娘と会う事もできずにただひたすらに読まれる事のない手紙を書き続ける父親、二人の父親の姿がまだ脳裏に焼き付いている、あるドラマでこんな台詞があった『あなたのせいよ、だってあなたは一人で生きているんじゃないものね、あなたはこの世界に関わっているの、どうしようもなく関わっているのよ』この『群生』を読んでそんなあるドラマの台詞を思い出した。
2011年7月11日に日本でレビュー済み
「ひたひたと」と「群生」の2作が収められています。
「ひたひたと」は、主催者と秘密をもつ5人の6人がある場所に集まり、1人1人が持つ秘密を明かし共有していくはずだったのだが、残念ながら2人目までで物語が途切れてしまっている。
とはいえ、2人までのストーリーは、それぞれが短編のようにできているし、引きこまれるような内容になっていて面白い。
おそらく5人全員の秘密が明かされたところで主催者がなんらかのまとめというか、なぜこの5人なのか?なぜこの集まりが開かれたのか?などが明かされるはずだったのだろうが、そこまでいかず未完となってしまったのが非常に残念。
もう1つ収められている作品「群生」。
荒削りな印象を受けるのは、まだ作品が完成していないせいかと思う。
ある程度、各個人の背景なども書かれているので、登城人物それぞれがどのような人物なのかがわかるし、これだけ読んでも、十分いい作品と感じる。
素晴らしい作品を作り続けてきた作家さんだけに亡くなられてしまったことが非常に残念です。
「ひたひたと」は、主催者と秘密をもつ5人の6人がある場所に集まり、1人1人が持つ秘密を明かし共有していくはずだったのだが、残念ながら2人目までで物語が途切れてしまっている。
とはいえ、2人までのストーリーは、それぞれが短編のようにできているし、引きこまれるような内容になっていて面白い。
おそらく5人全員の秘密が明かされたところで主催者がなんらかのまとめというか、なぜこの5人なのか?なぜこの集まりが開かれたのか?などが明かされるはずだったのだろうが、そこまでいかず未完となってしまったのが非常に残念。
もう1つ収められている作品「群生」。
荒削りな印象を受けるのは、まだ作品が完成していないせいかと思う。
ある程度、各個人の背景なども書かれているので、登城人物それぞれがどのような人物なのかがわかるし、これだけ読んでも、十分いい作品と感じる。
素晴らしい作品を作り続けてきた作家さんだけに亡くなられてしまったことが非常に残念です。
2011年12月15日に日本でレビュー済み
まさに「ひたひたと」という言葉がピッタリなホラー作品。
哀愁と寂寥感が作品全体に漂っている。
野沢尚は人間の光と闇を描く、天才だった。
哀愁と寂寥感が作品全体に漂っている。
野沢尚は人間の光と闇を描く、天才だった。
2007年6月18日に日本でレビュー済み
野沢氏の作品は「破線のマりス」、「リミット」、「呼人」を読んでおり好きな作家の一人だったのですが、亡くなっていたとは知りませんでした。
本著は未完の連作「ひたひたと」と着手寸前だった「群生」が収録されています。
「群生」は「罪と罰」がテーマの重い作品ですが、どうも著者の死に結び付けて考えてしまい著者は、この作品で本当は何を言いたかったのかなぁ、と愚考してしまいました。
こんなに長いレジュメを書いて、細部を整えて作品にするんですね。
著者の息遣いが聞こえてくるようです。
是非一読してみて下さい。
本著は未完の連作「ひたひたと」と着手寸前だった「群生」が収録されています。
「群生」は「罪と罰」がテーマの重い作品ですが、どうも著者の死に結び付けて考えてしまい著者は、この作品で本当は何を言いたかったのかなぁ、と愚考してしまいました。
こんなに長いレジュメを書いて、細部を整えて作品にするんですね。
著者の息遣いが聞こえてくるようです。
是非一読してみて下さい。