「按摩西遊記」を読んだ。夫馬基彦氏著。ベトナム・ニューヨーク・そして西安・トルファン・・そしてカシュガルへの旅の4編が収められている。ベトナムは著者が20代、ベトナム戦争のまただ中に出会った人や場所をたずねながら贖罪の心をも感じている風景。ニューヨークはあの大事件の真っ只中、その喧騒に組み込まれず日々、細々と自分達の生活の火をともし続けている民族や人たちを。そして西遊記は、50肩の痛さそれぞれの土地の按摩体験記を交えながらの紀行小説風だ。
しかし、ただ単なる旅行記ではない。
「ベトナム編」。そこには懐かしさはなく、若かった頃の自分自身を冷静に見つめる眼がある。その視点は広く世界を歩いてきた著者の確かな世界観と言うか、人生観を感じる。同じことが「ニューヨーク・ミュージアム・ピープル」にも表れている。この編は、著者の幅広い知識と細かな取材(物・人)からの説得力が感られる。
著者の歩んできた人生の価値観が感じられる短編集だ。
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按摩西遊記 単行本 – 2006/6/9
夫馬 基彦
(著)
五十肩をかかえた元ヒッピーの旅の短篇集。かつて、世界を旅してまわった作家も、いまや五十肩・六十肩?の年齢になった。そして行く旅では、按摩にかかりながらの感慨がユーモア溢れる筆致で描かれる。
- 本の長さ229ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2006/6/9
- ISBN-104062134470
- ISBN-13978-4062134477
商品の説明
著者について
作家。連句人。日本大学芸術学部文芸学科教授。
中央公論新人賞。芥川賞候補連続3回。著書多数。
中央公論新人賞。芥川賞候補連続3回。著書多数。
日本ペンクラブWiP(獄中作家)委員会副委員長。
HP 風人通信 発信中。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2006/6/9)
- 発売日 : 2006/6/9
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 229ページ
- ISBN-10 : 4062134470
- ISBN-13 : 978-4062134477
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,533,318位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 36,225位日本文学
- - 40,676位エッセー・随筆 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2006年7月4日に日本でレビュー済み
飄々とした文体、時に饒舌な文章に乗せられて、見知らぬ土地も、昔から知っているような気になって、ともに旅を続けながら、読み進めていった。そして、人が恋しく、なつかしく、いとおしくなっていったから、不思議であった。
「五十肩のベトナム戦争」は、若き日に「テト攻勢」に遭遇した著者が30数年ぶりに故地を訪ね回る話である。混乱の中で生き別れたひとりの人物を探している風もあるが、彼のその後はついにわからず、ましてや逢えもせず、五十肩の激痛とともに、旅は終わる。これは鎮魂のうたげである、と思った。時代の波は、かくもいとおしいものであるのか、と思い知らされる。
表題作「按摩西遊記」は、玄奘三蔵法師の西域の旅をなぞる、紀行の体(てい)をまとっているが、読後の余韻が最も深い「哲学小説」であった。語り口の絶妙さ、文章の力に引き込まれて、何回も笑いながら読んでいったが、笑いははやがて、時の痼り、とでもいうべきものに変容していった。うがってみれば、その痼りと五十肩を懸けているとさえ思えてきた。時の重みも、人が担うべきものか。そんな人間存在へのかぎりない優しさがにじみ出ている。夫馬基彦氏の真骨頂、が出ている。
「五十肩のベトナム戦争」は、若き日に「テト攻勢」に遭遇した著者が30数年ぶりに故地を訪ね回る話である。混乱の中で生き別れたひとりの人物を探している風もあるが、彼のその後はついにわからず、ましてや逢えもせず、五十肩の激痛とともに、旅は終わる。これは鎮魂のうたげである、と思った。時代の波は、かくもいとおしいものであるのか、と思い知らされる。
表題作「按摩西遊記」は、玄奘三蔵法師の西域の旅をなぞる、紀行の体(てい)をまとっているが、読後の余韻が最も深い「哲学小説」であった。語り口の絶妙さ、文章の力に引き込まれて、何回も笑いながら読んでいったが、笑いははやがて、時の痼り、とでもいうべきものに変容していった。うがってみれば、その痼りと五十肩を懸けているとさえ思えてきた。時の重みも、人が担うべきものか。そんな人間存在へのかぎりない優しさがにじみ出ている。夫馬基彦氏の真骨頂、が出ている。