鶴岡真弓の書いた「黄金と生命」を読み終えて、思わず「ううん・・」と感嘆のうなり声を発してしまったが、これだけの内容の本を仕上げる日本人がいたと知り、心から嬉しいという幸福感に包まれたと白状したい。この本はヨーロッパの読者に向けて書かれたといって良く、もしもヨーロッパの言葉にでも訳されて、選ばれた良質の読者に読まれたらいいと思った。
最近の日本についての評判は地に堕ちており、余りにもお粗末な人間が政治を弄び、世界から嘲笑と顰蹙を買っている日本は、日本人と名乗るのが恥ずかしいほどで、未熟で愚劣な連中に弄繰り回されて情けない限りだ。そういった日本の悲しい現状に対して、本書は世界スタンダードをクリヤーする水準のもので、ケルト文化を足掛かりに文明史に取り組み、ユーラシア大陸の次元で歴史の英知対決しただけあり、これだけの該博な人物がいたのかと日本人が再評価されそうで、大いに名誉を回復し得るのではないかと思った。
錬金術の歴史と信用について扱った本書は、シンボルとしての光り輝く黄金と信用を論じ、時間差を操る魔術がが生み出す価値のずれが、経済的な価値の虚像を描き出すシステムとして、芸術家らしい時間の遠近法として分り易く見せてくれる。
本書を読み終えた記念に巻末に読後感として、私は熱気に包まれて次の文章を書きつけた。
日本人のイマジネーションの欠如のために
天の溶鉱炉の産物で太陽の黄金である
プルトニウムを地上に持ち込もうと試み
金儲けのためのマネーとして金メッキを施し
欲張り爺が死の灰を地上にまき散らした
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黄金と生命 ― 時間と練金の人類史 単行本 – 2007/4/25
鶴岡 真弓
(著)
ヒトは永遠の光を探求する旅に出た
人類史を読み解く壮大なオデッセイ
農耕、神話、宗教、哲学、科学、国家、貨幣……
限りある命を乗り越えるための技と知=錬金術の軌跡を追い、1万年以上、魂を突き動かした光源=「万物の王」の正体に迫る。
私たちの心のなかでは、「近代」はもちろん、「中世」も「古代」も「先史時代」も、さらには、象徴的思考の生まれた「後期旧石器時代」すら生きつづけ、今でも力を発揮しているのだ。あたかも、ゲーテの「万物の範型(シェーマ=イデア)を生み出す世界」、時空を超越して存在する「戦慄すべき世界」のように。――<「エピローグ」より抜粋>
人類史を読み解く壮大なオデッセイ
農耕、神話、宗教、哲学、科学、国家、貨幣……
限りある命を乗り越えるための技と知=錬金術の軌跡を追い、1万年以上、魂を突き動かした光源=「万物の王」の正体に迫る。
私たちの心のなかでは、「近代」はもちろん、「中世」も「古代」も「先史時代」も、さらには、象徴的思考の生まれた「後期旧石器時代」すら生きつづけ、今でも力を発揮しているのだ。あたかも、ゲーテの「万物の範型(シェーマ=イデア)を生み出す世界」、時空を超越して存在する「戦慄すべき世界」のように。――<「エピローグ」より抜粋>
- 本の長さ485ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2007/4/25
- ISBN-104062139723
- ISBN-13978-4062139724
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2007/4/25)
- 発売日 : 2007/4/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 485ページ
- ISBN-10 : 4062139723
- ISBN-13 : 978-4062139724
- Amazon 売れ筋ランキング: - 900,733位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,118位文化人類学一般関連書籍
- - 26,340位哲学・思想 (本)
- - 60,280位歴史・地理 (本)
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2012年10月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2007年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ケルト芸術とケルト文化を紹介してきた第一人者・鶴岡真弓氏による「生命としての黄金」を解き明かす、初めての人類史規模の書です。
人間はなぜ輝く金属・黄金を追い求めてきたのか?それは死すべきヒトが「永遠の生命」を自分に引き寄せたいという切なる願いからである、と本書は語り出します。
つまりこの世で「最強・最高・最輝」の金属・黄金とは、人間の「欲望」に応えるものではなく、人間の「最後の希望」に応えるために大地に埋まっている。輝く金属はたんなる「モノ」ではなく「生き物=生命」そのものだったのですね。
6000年前に黄金に出会う人間の長い歩みは、近代にはついに「貨幣」となって「有限の生命時間」を乗り越えるというところが圧巻です。
この生命探求のドラマは、神話や伝説で説明し、導入されていくところは、ほんとうにわかりやすく、すでに知っていたお話が、黄金と金属のシークエンスに変換され、発見の連続のうちに、読みすすめることができるのです。
少年のアーサー王が剣を石から抜き取って王となったエピソードから始まり、ゲーテの『ファウスト』が探求した黄金の胎児、私自身にいたる永劫回帰の旅である!神話と歴史、科学と哲学、学問とエンタテイメントが、素敵に交錯し一気に読みました。『指輪物語』つまり「ロード・オヴ・リング」や、ミッキーマウスの「魔法使いの弟子」の共通性も氷解しました。
西洋中心の、世界的な「黄金」の邁進力が、おおきな展開点を迎えた現在の世界と、生命の問題とを、ひとつづきのイデア、イメージとしてかんがえていく、その詰めの醍醐味が最高にしめされている本として、若いイメージの伝道者から、経験あるビジネスマンまで、幅広い読者に薦めたい、もじどおりゴールデンな一書だと思います。
人間はなぜ輝く金属・黄金を追い求めてきたのか?それは死すべきヒトが「永遠の生命」を自分に引き寄せたいという切なる願いからである、と本書は語り出します。
つまりこの世で「最強・最高・最輝」の金属・黄金とは、人間の「欲望」に応えるものではなく、人間の「最後の希望」に応えるために大地に埋まっている。輝く金属はたんなる「モノ」ではなく「生き物=生命」そのものだったのですね。
6000年前に黄金に出会う人間の長い歩みは、近代にはついに「貨幣」となって「有限の生命時間」を乗り越えるというところが圧巻です。
この生命探求のドラマは、神話や伝説で説明し、導入されていくところは、ほんとうにわかりやすく、すでに知っていたお話が、黄金と金属のシークエンスに変換され、発見の連続のうちに、読みすすめることができるのです。
少年のアーサー王が剣を石から抜き取って王となったエピソードから始まり、ゲーテの『ファウスト』が探求した黄金の胎児、私自身にいたる永劫回帰の旅である!神話と歴史、科学と哲学、学問とエンタテイメントが、素敵に交錯し一気に読みました。『指輪物語』つまり「ロード・オヴ・リング」や、ミッキーマウスの「魔法使いの弟子」の共通性も氷解しました。
西洋中心の、世界的な「黄金」の邁進力が、おおきな展開点を迎えた現在の世界と、生命の問題とを、ひとつづきのイデア、イメージとしてかんがえていく、その詰めの醍醐味が最高にしめされている本として、若いイメージの伝道者から、経験あるビジネスマンまで、幅広い読者に薦めたい、もじどおりゴールデンな一書だと思います。
2007年8月8日に日本でレビュー済み
実際に中世から17世紀頃までに書かれた錬金術書を読めば分かる事ですが(例えば白水社のヘルメス叢書など)、中国の煉丹術に外丹法と内丹法とがあるように、西洋の錬金術にも2つの潮流があります。一方には、あくまで形而上の領域で「精神的な」あるいは「神秘学的な」錬金術を行う人々が、もう一方には卑俗の金属を使ってある種の化学実験を行う人々がいました。現代の書物の中に「錬金術」という言葉が登場したとき、どちらの意味で使われているかはその時々の状況で異なります。その本の著者がオカルト思想家や芸術家なら、前者の意味で使っていることが多いようですし、歴史家の場合は後者の意味が多いように見受けられます。
この本で取り上げられている「錬金術」は、後者の「卑俗の錬金術」を指しているようです。「神秘学的」錬金術については触れていませんので、それに関する考察を期待する方にはお薦めできません。読者を混乱させないように意図的に触れなかったのかもしれませんが、「神秘学的」錬金術に関する記述があまりにも見事に抜け落ちているので、著者の錬金術に関する知識に偏りがあるのではないのか?と、つい勘繰りたくなってしまいました。
「卑俗の錬金術」と「貨幣経済」の関係についての一連の論考は、これはこれで面白いと思いますが、その分、錬金術に関する記述の偏りが気になるところです。
この本で取り上げられている「錬金術」は、後者の「卑俗の錬金術」を指しているようです。「神秘学的」錬金術については触れていませんので、それに関する考察を期待する方にはお薦めできません。読者を混乱させないように意図的に触れなかったのかもしれませんが、「神秘学的」錬金術に関する記述があまりにも見事に抜け落ちているので、著者の錬金術に関する知識に偏りがあるのではないのか?と、つい勘繰りたくなってしまいました。
「卑俗の錬金術」と「貨幣経済」の関係についての一連の論考は、これはこれで面白いと思いますが、その分、錬金術に関する記述の偏りが気になるところです。
2007年8月8日に日本でレビュー済み
ケルト研究の第一人者鶴岡女史の現時点における最高傑作。
文化人類学・哲学・文学・美学・史学・経済史といった諸分野を横断的に渉猟する著者が手がけた、
金(きん)とそれに魅せられた者や無から有を作りださんとした者達をめぐっての一大歴史エセーである。
フレイザー「金枝篇」すら連想させる怒濤のエピソード引用は読者をグイグイ引き込み、
狂言回しのごとく登場するゲーテ「ファウスト」へのレファレンスは論考に奥行きを与えている。
それでいてちっともペダンティックなところがなく非常に読みやすい。
随所に登場する挿絵・図版もエソテリックで、永らく手元に置いておきたい一冊である。
気になった点がひとつ。共同体と貨幣との関係といったある意味ラディカルな論点に目配りしているのは流石だが、
貨幣経済の歴史的な推進者はほかならぬユダヤ人であったという事実に思いを致すと、
「インド=ヨーロッパ語族」の活動をメインに据える本書の構成は破綻するのではなかろうか?
このへんかなり重要な問題を感じたので☆は4とした。
文化人類学・哲学・文学・美学・史学・経済史といった諸分野を横断的に渉猟する著者が手がけた、
金(きん)とそれに魅せられた者や無から有を作りださんとした者達をめぐっての一大歴史エセーである。
フレイザー「金枝篇」すら連想させる怒濤のエピソード引用は読者をグイグイ引き込み、
狂言回しのごとく登場するゲーテ「ファウスト」へのレファレンスは論考に奥行きを与えている。
それでいてちっともペダンティックなところがなく非常に読みやすい。
随所に登場する挿絵・図版もエソテリックで、永らく手元に置いておきたい一冊である。
気になった点がひとつ。共同体と貨幣との関係といったある意味ラディカルな論点に目配りしているのは流石だが、
貨幣経済の歴史的な推進者はほかならぬユダヤ人であったという事実に思いを致すと、
「インド=ヨーロッパ語族」の活動をメインに据える本書の構成は破綻するのではなかろうか?
このへんかなり重要な問題を感じたので☆は4とした。
2008年3月23日に日本でレビュー済み
ケルト研究の第一人者で、ユーロ=アジア世界横断の民族デザイン思想史の研究者
としても知られる、鶴岡真弓氏の待望の最新作。待っていました。
西洋文明の「邁進力」の謎を、「生命表象としての黄金」をキーに、読み解くオデッセイです。
狭い錬金術史を扱う本では元よりなくて、「生命の心性史」に挑まれた、新しい試みです。
「黄金」とは、金品の欲望のシンボルではなく、死すべきヒト(有限の生命をもつ私たち人間)が太古から
生み出した「生命への思い」のシンボルだった。
この指摘から始まる、第1部。アーサー王の剣の「鋳ぬき」や、ジークフリートの剣の鍛えを、
共に、大地から命を産ませしめる「産婆」のはたらきとして、描き出し、
金銀銅鉄の神話と冶金術の関係の記述も、とてもわかりやすく楽しい。
聖書のアダムの話から始まる第2部、近代経済システムをゲーテの『ファウスト』から批判的に
読み解かれる第3部。
私たちが何を「黄金」と呼ぶのか。これほど分かりやすく解いたものは、かつてない
と思います。熱い本、たくさんの図版!どのページからでもパッと開いて読める、
まさに「黄金の羅針盤」だと思います。
としても知られる、鶴岡真弓氏の待望の最新作。待っていました。
西洋文明の「邁進力」の謎を、「生命表象としての黄金」をキーに、読み解くオデッセイです。
狭い錬金術史を扱う本では元よりなくて、「生命の心性史」に挑まれた、新しい試みです。
「黄金」とは、金品の欲望のシンボルではなく、死すべきヒト(有限の生命をもつ私たち人間)が太古から
生み出した「生命への思い」のシンボルだった。
この指摘から始まる、第1部。アーサー王の剣の「鋳ぬき」や、ジークフリートの剣の鍛えを、
共に、大地から命を産ませしめる「産婆」のはたらきとして、描き出し、
金銀銅鉄の神話と冶金術の関係の記述も、とてもわかりやすく楽しい。
聖書のアダムの話から始まる第2部、近代経済システムをゲーテの『ファウスト』から批判的に
読み解かれる第3部。
私たちが何を「黄金」と呼ぶのか。これほど分かりやすく解いたものは、かつてない
と思います。熱い本、たくさんの図版!どのページからでもパッと開いて読める、
まさに「黄金の羅針盤」だと思います。
2007年5月10日に日本でレビュー済み
おもしろい!一万年以上を一気に旅できる、黄金(=生命)探求の旅!
この本は、「あとがき」から、あるいは後ろの章から読むと、さらによくわかる!
第三部の「マネー(貨幣)篇」で、近代人こそが最強の錬金術を手にしたことを知り、
第二部の「アルケミー(錬金術)篇」に永遠の生命を探求した人々に出会い、
第一部の「メタル篇」で、ヒトの根源的な、命=大地=宇宙の力への直観に、涙する。
映画を見ているような楽しさに、冒険の旅、文明の旅、思索の旅、ができました。
この本は、「あとがき」から、あるいは後ろの章から読むと、さらによくわかる!
第三部の「マネー(貨幣)篇」で、近代人こそが最強の錬金術を手にしたことを知り、
第二部の「アルケミー(錬金術)篇」に永遠の生命を探求した人々に出会い、
第一部の「メタル篇」で、ヒトの根源的な、命=大地=宇宙の力への直観に、涙する。
映画を見ているような楽しさに、冒険の旅、文明の旅、思索の旅、ができました。
2008年12月30日に日本でレビュー済み
水銀の如く、液体になった黄金をイメージしました。
生命の根源の輝きを象徴する金属としての黄金。その黄金を希求して止まない人間の宿命とそれらの痕跡を、官能的に表現した作品であると感じました。
いまだに西洋文明の基層に沈殿する錬金術的世界観を、通読することによって体感することができる内容の本であると思います。
生命の根源の輝きを象徴する金属としての黄金。その黄金を希求して止まない人間の宿命とそれらの痕跡を、官能的に表現した作品であると感じました。
いまだに西洋文明の基層に沈殿する錬金術的世界観を、通読することによって体感することができる内容の本であると思います。