本作は、まだアマゾンにレビューが無く、ネットでもあまり感想がないようなので、それ程凄い作品というわけではないのですが、ニーズにマッチする方もおられるかも知れないので、レビューを書くことにしました。
本作は、殺人犯の容疑者と事件を捜査する検事との間でやりとりされるメール文だけから構成されています。この手の小説では、いつの間にか別の人物のメールが紛れ込んでくるとか、そもそもやりとりしていたのは容疑者でも検事でもなかった、というような、メタミステリ落ちになるのではないか、とひっかけられないよう疑いながら読みましたが(メールアドレスが一文字違ってないか、とかまでチェックしてしまいました)、そういうひっかけはまったく無く、そういう意味では、ミステリに手練れた読者にはいまひとつな作品なのかも知れません。背景にある事件の全体像も、本書が書かれた2004年当時はあまり世間一般では知られていなかったかも知れませんが、今となっては、開始早々見当がついてしまうような内容です。しかし、意外な真相はありますので、ミステリーとして駄作なわけではありません。
トリッキーな部分があまりたいしたことが無い、ということになると、本作のポイントは、舞台となるミラノや容疑者の逃亡先である南フランスやベルギーといった社会の横顔と、その光と影を描いている部分ということになるわけですが、こうした部分を、新聞報道や学者の社会問題分析本、正統派社会派小説や文学作品で読むと、どうしても、「普通の人の視野にも同じようなものが見えているのだろうか」と疑問に思ってしまったりするので、寧ろこのような軽目のミステリーだからこそ、比較的普通の人の等身大の目線というものを垣間見れるような気がします。本書を読む価値があるとすれば、このような点ではないでしょうか。
容疑者から送られるメールは、通常のメールにはありえない程の殆ど手紙のような分量で、なぜ事件と関係なさそうな長文を延々と書いてくるのか、小説家と間違えてるんじゃないのか、なんで検事も大人しく読んでいるのか、などなど立ち上がり慣れるまで若干読み進める努力が必要でしたが、今になって思えば、そうした長文の描写が舞台となる社会を活写していて、ミステリーとしていまひとつではあるものの、風俗小説としては悪くないのではないかと思います。
こういうレビューでご興味を持たれる方がおられるかどうかわかりませんが、もう少しネット上で感想があっても良い作品なのではないかと思い、レビューを書かせていただきました。
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僕の検事へ 逃亡殺人犯と女性検事の40通のメール 単行本 – 2007/6/14
A. ペリッシノット
(著),
中村 浩子
(翻訳)
すべてメールで語られる犯罪心理ミステリー友人を殺害し逃亡中の犯人と担当女性検事のeメールのやりとりが始まる。犯人は理由を検事につづり、検事はメールを元に捜査を進めるが、新たな事件が……。
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2007/6/14
- ISBN-104062141434
- ISBN-13978-4062141437
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2007/6/14)
- 発売日 : 2007/6/14
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 255ページ
- ISBN-10 : 4062141434
- ISBN-13 : 978-4062141437
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