7編のお話があるのだが、それぞれが非常に短くすぐ読めてしまう。だから一冊読みきってしまうのに一時間かからないくらいなのだ。だが、それだけスラスラ読めてしまうにも関わらず、本書から受ける印象は、決して軽いものではない。
まずなんといっても言及しておきたいのが冒頭の「オートバイ」だ。はっきりいって、岸田今日子は知っているが、なんといっても女優が本業の人が書いたものなんでしょ、と高をくくって読んでいたらガツンと派手にお見舞いされてしまった、という感じ^^。これはほんと素晴らしいお話で、まあ読んでみてとしか言えないのが、なんともモドカシイ。これを読んでこの人の魅力に目覚めない本好きはいないのではないだろうか。
あとに続く作品もみな素晴らしい。何度も書くが非常に短い作品ばかりなので、あらすじは書かないでおくが、それぞれお茶目と残酷と官能が一斉に鳴り響くような素敵な物語ばかりで、魅了されてしまう。この感覚は、あの皆川博子にも通じるものがあると思うのである。
というわけで、なんとなく手に取った本だったが、大変おいしゅうございました。満足でございました。この人の本はもっと読んでいこうと誓ったのでございました。
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二つの月の記憶 単行本 – 2008/1/18
岸田 今日子
(著)
あの女優が遺した珠玉の掌篇ミステリー集 一年前に亡くなった岸田今日子が「メフィスト」誌上に連載していたミステリーは、伝説の編集者である故・宇山日出臣氏が絶賛した傑作ばかり。才気あふれる掌篇集
- 本の長さ110ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2008/1/18
- ISBN-104062143992
- ISBN-13978-4062143998
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2008/1/18)
- 発売日 : 2008/1/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 110ページ
- ISBN-10 : 4062143992
- ISBN-13 : 978-4062143998
- Amazon 売れ筋ランキング: - 809,871位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 18,543位日本文学
- カスタマーレビュー:
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2008年7月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者の作品を読むのは初めてなのですが、この不思議な愛の世界と言うか、エロスの世界と言うか、とにかく、独特のファンタスティックな世界に取り込まれてしまった感じがします。
それほどこの文章は、麻薬のような不思議な魅力に溢れています。
逆に言えば、作者のピュアな精神の現れとも言えるかも知れません。
この作品集には、「オートバイ」「二つの月の記憶」「K村やすらぎの里」「P夫人の冒険」「赤い帽子」「逆光の中の樹」「引き裂かれて」と7編の短篇が収められています。
この中で作者の独自な世界を最も感じさせてくれるのは、やはり表題作の「二つの月の記憶」でしょう。
子供たちの遊びの世界が作る現実とは離れた別世界の中で、子供たちのピュアな気持が表現されています。
現実の世界ではヴァーチャルなものであって夢の世界のことなのですが、タッちゃんの肩に小さく刻まれた「ユリいのち」と言う刺青だけがリアルな事実として残されていると言うお話です。
短篇としての魅力という点で最も気に入ったのは、写真家の話を扱った「逆光の中の樹」で、話の落ちとそこへもってゆく展開が非常に魅力的です。
それほどこの文章は、麻薬のような不思議な魅力に溢れています。
逆に言えば、作者のピュアな精神の現れとも言えるかも知れません。
この作品集には、「オートバイ」「二つの月の記憶」「K村やすらぎの里」「P夫人の冒険」「赤い帽子」「逆光の中の樹」「引き裂かれて」と7編の短篇が収められています。
この中で作者の独自な世界を最も感じさせてくれるのは、やはり表題作の「二つの月の記憶」でしょう。
子供たちの遊びの世界が作る現実とは離れた別世界の中で、子供たちのピュアな気持が表現されています。
現実の世界ではヴァーチャルなものであって夢の世界のことなのですが、タッちゃんの肩に小さく刻まれた「ユリいのち」と言う刺青だけがリアルな事実として残されていると言うお話です。
短篇としての魅力という点で最も気に入ったのは、写真家の話を扱った「逆光の中の樹」で、話の落ちとそこへもってゆく展開が非常に魅力的です。
2008年8月19日に日本でレビュー済み
愛は、尊くて、貴くて、水の上の月のように揺れやすく、掴めないもの。
7つの短編のどれもが、性の匂いの裏側で死の臭いがする。
まるで、性を憎んでいるかのようだ。自分の女性をもてあまし、自分を女性にした男性への恨みが感じられた。夫と子どものいる家庭の中で満足している女性にはわからない、満たされぬ愛情と欲望を抱えた傷の痛みが感じられた。
欲望ではなく、愛情を欲していたのに。だけど、愛情は欲望よりも致命的だ。愛は恋人を殺す。恋人を殺さないためには、自分を殺さなくてはならなくなる。
著者の中では、愛は報われない死をもって完成される。したがって、著者の死によって刻印付けられているこの本も、実は愛に満ちている。
独特の文章で、すうっと内的な世界や過去の世界、異界へとひきこまれる。読む人には、成熟した大人の女性だからこそ持つ毒に、酔ってもらいたい。
7つの短編のどれもが、性の匂いの裏側で死の臭いがする。
まるで、性を憎んでいるかのようだ。自分の女性をもてあまし、自分を女性にした男性への恨みが感じられた。夫と子どものいる家庭の中で満足している女性にはわからない、満たされぬ愛情と欲望を抱えた傷の痛みが感じられた。
欲望ではなく、愛情を欲していたのに。だけど、愛情は欲望よりも致命的だ。愛は恋人を殺す。恋人を殺さないためには、自分を殺さなくてはならなくなる。
著者の中では、愛は報われない死をもって完成される。したがって、著者の死によって刻印付けられているこの本も、実は愛に満ちている。
独特の文章で、すうっと内的な世界や過去の世界、異界へとひきこまれる。読む人には、成熟した大人の女性だからこそ持つ毒に、酔ってもらいたい。
2008年6月29日に日本でレビュー済み
七つの短編が入っている。こんな文章は初めてである。
「え?あ、そういうことか…、いや、しかし…」と何度も独り言をつぶやかずにはいられない、初めて訪れた異世界の空気。
七つの作品はどれもいつのまにか岸田さんの世界に包まれた後あっと気づいたときには魂を奪われていたような不思議な光を放っている。
最も魂を抜かれたのは「K村やすらぎの里」と「P夫人の冒険」の2編だろうか。
「K村やすらぎの里」では、あの宗教テロ事件をあたかも実行犯のようにあまりにリアルに語ったかと思えば、それが夢なのか現なのかは忽然ともやのなかに消えていく。
「P夫人の冒険」では家畜の雌ブタであるP夫人の情念があまりになまめかしく描かれ、思わず酩酊を食らってしまうような一編であった。
ムーミンではない、岸田今日子さんのブルーな世界にいつまでも浸っていたくなる危険に満ちた一冊。
「え?あ、そういうことか…、いや、しかし…」と何度も独り言をつぶやかずにはいられない、初めて訪れた異世界の空気。
七つの作品はどれもいつのまにか岸田さんの世界に包まれた後あっと気づいたときには魂を奪われていたような不思議な光を放っている。
最も魂を抜かれたのは「K村やすらぎの里」と「P夫人の冒険」の2編だろうか。
「K村やすらぎの里」では、あの宗教テロ事件をあたかも実行犯のようにあまりにリアルに語ったかと思えば、それが夢なのか現なのかは忽然ともやのなかに消えていく。
「P夫人の冒険」では家畜の雌ブタであるP夫人の情念があまりになまめかしく描かれ、思わず酩酊を食らってしまうような一編であった。
ムーミンではない、岸田今日子さんのブルーな世界にいつまでも浸っていたくなる危険に満ちた一冊。