2008年出版のエッセイ集です。有栖川氏の小説はかなり読みつくしてしまい、仕方ないのでエッセイにも手を出し始めました。この方の文章は親しみやすく、日本語として読みやすいことを最優先に考えてあって、一人よがりではなく、そして関西人らしいユーモア含みなのが好きです。
大雑把に区切るとミステリ、映画、日常、阪神タイガースと４つのパートに分かれています。どれもおもしろかったです。
印象的な話がいくつかあり、たとえば台湾での初出版を記念して訪台された時のこと。台湾でもかなりの日本のミステリが翻訳されていることやあちらでもすぐれた作家が出てきていること、そしてあの幻のミステリ雑誌「幻影城」を主宰されていた島崎博氏との対談。氏が台湾人だったというのは初めて知ってびっくりでした。
また、東野圭吾作「容疑者Xの献身」が本格ミステリ大賞を受賞したことに対して、二階堂黎人氏が「あれは本格ではない」と、笠井潔氏は「本格の精神を置き忘れている」と批判したことに対して真向から反論されているのが興味深かったです。私などは感動しながら楽しく読めればいいと思っていて、本格とは何か？という定義などは二の次な方なのでそこまで偏狭なことを言わなくてもいいのではと思ってしまいました。
紹介されているミステリや映画では、いくつか読みたいもの見たいものが出てきました。
また、日常に関するエッセイでは自分と数々の共通点を見出し、余計に親しみが増してしまいました。前から、同じ世代、関西人、京都で青春を過ごした、猫好き、本というものが大好きなどはわかっていましたが、他にもハードロック・ファンとか、ペーパードライバーであるとか、理系科目が苦手とか、実はアニメが苦手で「ここまで幼稚にせんでもええのに」と子供の頃から思っていたとか、賭け事に興味がないとか、ゴルフはやらない、温泉ファンではない、子供の頃に巨人ファンだったとかいちいち「おたくもそうなんですね」と言いたくなってしまいました（笑）。ミーハーですみません。
阪神タイガースに対する熱愛にはなかなかついていけませんが、一勝一敗に一喜一憂されているのが微笑ましかったです。今年は優勝できたので大喜びされたことでしょう。パレードも見に行かれたかも？
これからも新作を期待しています。がんばってください。
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