名著である。
三ツ矢サイダーの歴史が知りたければ本書をオススメする。
また、なんとなく炭酸って好きなんだよねぇ〜っていう人でもパラパラめくって楽しめる本だ。
私はかけ出しの炭酸飲料ライターだが、
一読して本書のような本を書きたいと思った。
その理由と本書が名著である理由を三つ厳選して挙げる。
①徹底的な取材・調査に基づく事実主義
②どんどん先を読みたくなる構成と面白歴史秘話
③サイダーおじさんここにあり!筆者の愚直なサイダー愛
一つ一つ説明していく。まず一つ目について。
著者の立石氏は毎日新聞の社会部の記者をしていた人物。現在はノンフィクション作家として活動しているそうだが、本書執筆までの取材期間はなんと1000日を超えるという。
記載されているだけで主要参考文献の数は121冊だ。古くは1898年『日本料理法大全』(石井治兵衛・博文館)という120年前の本から調べている。すごいよ、立石パイセン!
二つ目、本書は非常に読みやすい構成になっている。
商品説明欄に章立てが載っていないので記すことにしよう。
プロローグ
第一章 夏目漱石と宮沢賢治
漱石、大吐血と平野水
冷蔵庫に常備していた
「胃傷病者」に効き目あり
賢治メニュー「天ぷらそばと三ツ矢サイダー」
食べ方早く、量も多く
「一杯」はビールではなく、サイダー
庶民には手が届かない超高級品
子供のころからラムネを飲んでいた
平野サイダーは三ツ矢サイダー
第二章 サイダーを生んだ大航海時代
第三章 サイダー日本上陸
第四章 三ツ矢誕生伝説
第五章 ビール会社興亡記
第六章 戦艦大和とサイダー
第七章 三ツ矢、ゼロからの再起
第八章 コーラの来襲と荒波を越えて
第九章 炭酸飲料異聞
第十章 三ツ矢サイダーが愛される理由
エピローグ
なんとサイダーだけで十章である。各章の見出し項目も全て書こうと思ったが、あまりに多いので一章のみで断念してしまった。
構成としては基本的に時代の流れの順に書かれているが、最初に興味をそそりやすい夏目漱石と宮沢賢治を持ってきている。筆者はサイダーが高級品であることを記した上で、サイダーと全く関係ない二人の月収まで調べて記している。変態だ。
私のお気に入りは第二章のトリビアだ。直接的な内容になってしまうが一つだけなので書いてしまう。
大航海時代、西欧諸国は新大陸を目指して長い船旅に出るわけだが、当然のことながら食糧や水分が大量に必要である。しかし、水は細菌に弱く腐ってしまうのだ。
そこで代わりに登場するのが、炭酸水である。実は炭酸水には強力な殺菌力があり、ペットボトル中のO157菌を99.9%も死滅させてしまうという。かの有名なコロンブズもマゼランも炭酸水を飲んでゲップしていたのだ。
そして最後の著者の愚直なサイダー愛についてはキーワードがある。それは「安心・安全」である。これは2004年の120周年を機に使われた三ツ矢サイダーのキャッチコピーだ。著者はこのフレーズを本書の始めと結び、プロローグの6ページと本編の最終214ページに引用している。三ツ矢サイダーはこれからも飲み続けられるだろう。
本書を読むと三ツ矢サイダーを飲みたくなることだけは約束する。
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なぜ三ツ矢サイダーは生き残れたのか-夏目漱石、宮沢賢治が愛した「命の水」の125年 単行本 – 2009/3/24
立石 勝規
(著)
ロマンと苦闘に満ちた「三ツ矢サイダー」 文豪・夏目漱石や宮沢賢治が愛した飲み物はサイダーだった。誕生は大航海時代に遡るサイダーが、なぜ、日本上陸から125年たった今も生き残れているのか
- 本の長さ232ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2009/3/24
- ISBN-104062153564
- ISBN-13978-4062153560
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2009/3/24)
- 発売日 : 2009/3/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 232ページ
- ISBN-10 : 4062153564
- ISBN-13 : 978-4062153560
- Amazon 売れ筋ランキング: - 229,612位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 66,400位文学・評論 (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年12月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
主人の父親は、昔、清涼飲料水販売卸の小さな商店を営んでいました。小さなトラックで、各商店や縁日などに配達。たくさんのラムネなどをケースに入れ、炎天下の中、よちよち歩きの孫を助手席に乗せて配送に行くことが、唯一の楽しみだったようです。家の倉庫には、三ツ矢サイダーオリジナルグラスもたくさん置かれていたこと、記憶しています。「いつでも、どこでも、三ツ矢サイダーとラムネは人気者だったね。」と、よく語っていました。先月、旅行帰りに、すっかり社会人へと成長した息子と主人と3人で、やぶ屋さんに立ち寄る機会に恵まれました。店内には、天ぷらそばと三ツ矢サイダーを前に「さあ、食うぞ」と意気込むばかりの宮沢賢治さんのイラストが描かれたポスターが、掲示されていたようです。お店の方に「天ぷらそばと・・・三ツ矢サイダーを」と注文すると、サイダーの名前を口にしただけで、女性店員さんは、顔いっぱいに、笑みを浮かべました。生まれてはじめて、食した、天ぷらそばと、三ツ矢サイダーの組み合わせ。もう今では、岩手から帰宅後も、夕飯のそばの日は「さぁ、今夜は賢治セットの日だ」などと、買い物カゴの中には、しっかり三ツ矢サイダーが、鎮座しています。夏目漱石にとっては、命の水。宮澤賢治にとっては、愛好の飲み物。我が家にとっては、三ツ矢サイダーは、おじいちゃん、孫へと繋がる大切な家族の絆となっています。
2009年6月22日に日本でレビュー済み
誰もが知る二人の文豪(夏目漱石、宮沢賢治)と『三ツ矢サイダー』の知られざるエピソードの数々を導入部におくことで、万人に親しめる物語になっている。また、「三ツ矢サイダーの125年史」は、類い希な日本の清涼飲料水史に他ならない。明治期以降現在まで販売され続けているロングセラー商品「三ツ矢サイダー」を切り口に、随所にトリビアを絡め、日本のソフトドリンクの歴史を俯瞰出来るようになっている。これは、調査報道の世界にいた元毎日新聞記者(後に、アサヒ飲料顧問)の面目躍如といったところである。これはまた、飲料技術者の健闘記でもある。重層的物語的おもしろさと、貴重な史料的価値を併せ持つ持つ希有な一冊といえる。