450ページ近くある、ノンフィクションで、
びっしりと文章の詰まった本書なので、
年末年始の長い時間をかけて読みました。
そもそもの動機は、福岡ハカセの本で取り上げられ、
福岡ハカセが初めて訳をやった本だったからです。
本書では人間パーツ商品化の現在として、
臓器から始まり、胎児、受精卵、卵子・精子、遺伝子まで、
利益と特許を巡り、繰り広げられる産業構造が記されています。
ノンフィクションなので、その生々しい現場の姿は、
目を覆いたくなるような現実もありました。
そしてそれだけでなく、文化史的にどうして商品化することになったか、
その背景を探っていきます。
人は神から与えられた大地、時間などを分断し、
その対価を求めるようになっていきます。
特に時間の分断は、「脳死」という勝手な尺度も作ります。
その動機は、新鮮な臓器を取り出すためです。
その対峙する「脳始」も同じロジックてつくりだします
もちろん再生医療の細胞を手にいれるためです。
著者はこのどんどんエスカレートする人間部品産業の行く末を、
危惧懸念をもって予言していきますが、初版の出た1993年から、
約20年経過し、予言通りの道を進みます。
そのため2011年に加筆、改訂版の発行の運びとなりました。
福岡ハカセが「動的平衡」の思想体系を確立するための、
原著になった本というのが、ここでの問題提起にあるというのが、
よくよくわかる本なのです。
福岡ハカセ・ファンの方は必読の書ともいえます。
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すばらしい人間部品産業 単行本 – 2011/4/15
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購入オプションとあわせ買い
「私の問題意識はこの本から始まった」 福岡伸一
★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?
血液、臓器から、胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた……。
人間部品産業(ヒューマンボディショップ)のリアルな実態に警告を発した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版! 福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。
人間は「人間部品の商品化」に答えを出せるのだろうか?
★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?
血液、臓器から、胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた……。
人間部品産業(ヒューマンボディショップ)のリアルな実態に警告を発した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版! 福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。
人間は「人間部品の商品化」に答えを出せるのだろうか?
- 本の長さ445ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2011/4/15
- ISBN-104062162873
- ISBN-13978-4062162876
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商品の説明
著者について
アンドリュー・キンブレル
Andrew Kimbrell
弁護士、市民運動家、執筆者として、およそ四半世紀にわたり活躍中。1997年には食品安全センター(Center for Food Safety=本拠・ワシントンD.C.)を創設、事務局長を務める。環境保護、持続可能な農業のあり方を訴えている。おもな著書に”Your Right to Know”(邦題:『それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?』・筑摩書房刊)がある。
福岡 伸一
ふくおか・しんいち
1959年東京生まれ。生物学者。京都大学卒。米国ハーバード大学研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2007年に発表した『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)は、サントリー学芸賞、および新書大賞を受賞し、ベストセラーとなる。おもな著書に『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)、『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(木楽舎)、『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋)、『できそこないの男たち』(光文社新書)などがある。
Andrew Kimbrell
弁護士、市民運動家、執筆者として、およそ四半世紀にわたり活躍中。1997年には食品安全センター(Center for Food Safety=本拠・ワシントンD.C.)を創設、事務局長を務める。環境保護、持続可能な農業のあり方を訴えている。おもな著書に”Your Right to Know”(邦題:『それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?』・筑摩書房刊)がある。
福岡 伸一
ふくおか・しんいち
1959年東京生まれ。生物学者。京都大学卒。米国ハーバード大学研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2007年に発表した『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)は、サントリー学芸賞、および新書大賞を受賞し、ベストセラーとなる。おもな著書に『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)、『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(木楽舎)、『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋)、『できそこないの男たち』(光文社新書)などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2011/4/15)
- 発売日 : 2011/4/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 445ページ
- ISBN-10 : 4062162873
- ISBN-13 : 978-4062162876
- Amazon 売れ筋ランキング: - 815,189位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 124,922位ノンフィクション (本)
- - 222,094位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年4月14日に日本でレビュー済み
血液や精子・卵子、そして遺伝子と言った、人体の構成要素や人を人たらしめるものの利用や売買に対して、倫理的な観点から疑問を投げかけた本。バイオテクノジーや中絶胎児の利用など、その技術を適用するかどうかの判断が一部の人間にまかされており、きちんと管理されていないことの危険性に関する主張が特に印象に残った。また、これらの技術を一方的に非難するだけでなく、そのメリットにも言及しており、公平な態度を取っているところも、この本(と著者)に対する信頼性を上げていると思う。
一方で、副作用がある、効果が明確でない、お金がかかる、と言ったことを問題として挙げている部分が多い。現時点でこれらの弊害があるにせよ、それらが無くなれば倫理的な問題が無くなる訳ではない以上、主張のバランスが悪い印象がある。これらの弊害ばかりが列挙されると、非難することが目的化しているように見えてしまい、かえって倫理的な観点からの主張が弱く見えてしまう。
同じく、倫理的な観点が重要なはずなのに、「倫理」に対する著者のロジックがほとんど無く、個別の事例から「何となく問題がありそう」と感じた段階なのに、本文では何の論理もないままに「倫理的に問題である」という結論になっているように見えるのが残念。倫理観は時代や文化でも異なるはずなので、ロジックが無いとやや説得力に欠け、単に煽っているように見えてしまう。
良い本だけにやや辛口になってしまったが、個々の事例も興味深く、非常に考えさせられる内容であり、生命とは何か、技術と倫理の問題、などを考えるきっかけになる良い本だと思う。
一方で、副作用がある、効果が明確でない、お金がかかる、と言ったことを問題として挙げている部分が多い。現時点でこれらの弊害があるにせよ、それらが無くなれば倫理的な問題が無くなる訳ではない以上、主張のバランスが悪い印象がある。これらの弊害ばかりが列挙されると、非難することが目的化しているように見えてしまい、かえって倫理的な観点からの主張が弱く見えてしまう。
同じく、倫理的な観点が重要なはずなのに、「倫理」に対する著者のロジックがほとんど無く、個別の事例から「何となく問題がありそう」と感じた段階なのに、本文では何の論理もないままに「倫理的に問題である」という結論になっているように見えるのが残念。倫理観は時代や文化でも異なるはずなので、ロジックが無いとやや説得力に欠け、単に煽っているように見えてしまう。
良い本だけにやや辛口になってしまったが、個々の事例も興味深く、非常に考えさせられる内容であり、生命とは何か、技術と倫理の問題、などを考えるきっかけになる良い本だと思う。
2018年8月26日に日本でレビュー済み
作家の森博嗣が、本書の新書版である『生命に部分はない』をお薦めしていたので
読んでみました。
輸血の歴史から始まり、臓器移植・堕胎された胎児の利用・不妊医療における
精子や卵子の売買と代理母契約、更には受精した胚の凍結保存や遺伝子診断が
優生学の復活につながりかねない様子・現代の遺伝子工学が新たな種を創り出そうと
競争している様子などを、ていねいに概観しています。
必要に応じて歴史を紐ときながら、主に米国におけるこれらのビジネスの実態と、
その問題点が裁判の形で提起されて判例によって社会的な方向性が作られていく様子が
とても興味深く描かれています。
著者はこれらのテクノロジーの流れに批判的なので、描写が一方の視点に偏っている
という批判はそのとおりです。批判があるにもかかわらず、著者の言う「人間部品産業」が
ますます盛んになっているのは、結局、病気を治したいとか、より良い体を持ちたいとか、
子供を授かりたいとか、食糧問題を解決したいとか、多くの人が共感する理由があるからで、
それらの対立する視点からの記述があれば、本書にもっと奥行や深みが出たでしょう。
若干古い本なので、遺伝子工学の最新状況は別書に譲るとしても、これらのテーマを概観
するには、現在でも色あせていない良書だと思います。
読んでみました。
輸血の歴史から始まり、臓器移植・堕胎された胎児の利用・不妊医療における
精子や卵子の売買と代理母契約、更には受精した胚の凍結保存や遺伝子診断が
優生学の復活につながりかねない様子・現代の遺伝子工学が新たな種を創り出そうと
競争している様子などを、ていねいに概観しています。
必要に応じて歴史を紐ときながら、主に米国におけるこれらのビジネスの実態と、
その問題点が裁判の形で提起されて判例によって社会的な方向性が作られていく様子が
とても興味深く描かれています。
著者はこれらのテクノロジーの流れに批判的なので、描写が一方の視点に偏っている
という批判はそのとおりです。批判があるにもかかわらず、著者の言う「人間部品産業」が
ますます盛んになっているのは、結局、病気を治したいとか、より良い体を持ちたいとか、
子供を授かりたいとか、食糧問題を解決したいとか、多くの人が共感する理由があるからで、
それらの対立する視点からの記述があれば、本書にもっと奥行や深みが出たでしょう。
若干古い本なので、遺伝子工学の最新状況は別書に譲るとしても、これらのテーマを概観
するには、現在でも色あせていない良書だと思います。
2013年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あまりにも絶賛レビューばかりなので。
売血に始まり臓器マーケット、人工授精、クローンや幹細胞など、17世紀から2000年代にいたるまで広範な事例をよく調べて書かれた本だとは思います。しかし、何かあるごとに「市場原理主義者が人間部品産業を推進する」というようなマルクス主義的者な一言がたびたび顔を出したり、または「人々が信仰心を失った(=信仰が篤い時代はそうではなかった)」というようなキリスト教的なコメントが事ある毎に出てきます。やがて後半では丸々一章がアダム・スミスと自由市場の批判に、そしてさらにもう一章が産業革命の批判に費やされており、「農地囲い込みによって行き場を失った農民は都市へ出て工場労働者として悲惨な労働環境に身を委ねるしか無かった」という、もはや歴史的には誤りであることが分かっている女工哀史のような記述や、人間における処女懐胎が20世紀に実際に起きた、というようなトンデモ記述もあるハチャメチャぶりです。そして別の1章では「ガリレオの大罪」として「西欧社会の自然に対する考え方が、『母なる地球』から近代科学的な機会論的見方に変質していった裏に、ガリレオが重要な役割を果たして」おり、そのために「いま一度新たにその罪を問われている」のだとしています。著者によれば「記憶であるとか、想像力、個性、嗜好といったものは、ガリレオによって主観的な測定不能なものとして捨て去られてしまった」のだと。物質が原子によって構成されていることに対して疑問を投げかけるような記述まであります。
また、「経済学者は現代の神のように振る舞う」とし、自由市場を信奉する経済学者たちは臓器の胚も胎児も何でも商品にしようとする、などとんでもない言いがかりまで出てきます。経済学者にもいろいろな立場がありますし、市場が解決できない問題について政府の規制が必要であるという点は、おおかれ少なかれどんな経済学者でも意見が一致するところでしょう。
著者が掲げる「人体の過度な部品化」に対する問題意識そのものに異を唱えるものではありませんが、著者自身は非常に偏った立場から意見を唱えている、という点については頭に入れておく必要があります。16章まではまだそこそこ面白く読めましたが、個人的には17章より後は「トンデモ本」でした。
売血に始まり臓器マーケット、人工授精、クローンや幹細胞など、17世紀から2000年代にいたるまで広範な事例をよく調べて書かれた本だとは思います。しかし、何かあるごとに「市場原理主義者が人間部品産業を推進する」というようなマルクス主義的者な一言がたびたび顔を出したり、または「人々が信仰心を失った(=信仰が篤い時代はそうではなかった)」というようなキリスト教的なコメントが事ある毎に出てきます。やがて後半では丸々一章がアダム・スミスと自由市場の批判に、そしてさらにもう一章が産業革命の批判に費やされており、「農地囲い込みによって行き場を失った農民は都市へ出て工場労働者として悲惨な労働環境に身を委ねるしか無かった」という、もはや歴史的には誤りであることが分かっている女工哀史のような記述や、人間における処女懐胎が20世紀に実際に起きた、というようなトンデモ記述もあるハチャメチャぶりです。そして別の1章では「ガリレオの大罪」として「西欧社会の自然に対する考え方が、『母なる地球』から近代科学的な機会論的見方に変質していった裏に、ガリレオが重要な役割を果たして」おり、そのために「いま一度新たにその罪を問われている」のだとしています。著者によれば「記憶であるとか、想像力、個性、嗜好といったものは、ガリレオによって主観的な測定不能なものとして捨て去られてしまった」のだと。物質が原子によって構成されていることに対して疑問を投げかけるような記述まであります。
また、「経済学者は現代の神のように振る舞う」とし、自由市場を信奉する経済学者たちは臓器の胚も胎児も何でも商品にしようとする、などとんでもない言いがかりまで出てきます。経済学者にもいろいろな立場がありますし、市場が解決できない問題について政府の規制が必要であるという点は、おおかれ少なかれどんな経済学者でも意見が一致するところでしょう。
著者が掲げる「人体の過度な部品化」に対する問題意識そのものに異を唱えるものではありませんが、著者自身は非常に偏った立場から意見を唱えている、という点については頭に入れておく必要があります。16章まではまだそこそこ面白く読めましたが、個人的には17章より後は「トンデモ本」でした。
2011年4月20日に日本でレビュー済み
機械産業で勝利を収めた二十世紀を「物理学の時代」とするなら、二一世紀は「生物学の時代」であるそうだ。「胎児組織を実験用マウスに移植」、「代理母をめぐって違憲訴訟」、「実験室で異常動物誕生」、「エイズウィルスをマウス遺伝子に導入」、「政府が遺伝子配列に特許申請」など、さまざまな問題をはらんだ見出しが紙面を賑わす。人間部品産業とも呼ばれる昨今のこの実態。本書はその全体像を浮かび上がらせ、その是非を問うた一冊である。
そのタイトルから誤解される向きもあるかもしれないが、本書は生命の商品化を礼賛する類の本ではない。この邦題も、オルダス・ハクスリーの反ユートピア小説「すばらしい新世界」になぞらえて付けられものである。一九九二年に出版された歴史的名著に、新エピソードが追加された改訂版。二十年近くを経て改訂版を出す著者の、終わりなき思想戦である。
◆本書の目次
Part1 人体と部品のあいだ
1 血は商品か
2 臓器移植ビジネス
3 胎児マーケット
Part2 赤ちゃん製造工場
4 赤子産業
5 生命の種
6 卵子の値段
7 胚は人間といえるだろうか?
8 出産機械の誕生
9 パーフェクト・ベビー
Part3 遺伝子ビジネス
10 遺伝子をデザインする
11 他人に差をつける薬
12 人間の遺伝子操作
13 機械化された動物
14 生命に特許を
15 人間性の独占
16 クローンウシをあなたの手に
Part4 人間部品産業との闘い
17 移動機械と神の見えざる手
18 機械論的な「からだ」
19 人間モーター
20 貪欲主義
21 悪魔の工場
22 岐路に立つ
23 「からだ」についての思考改革
Part3までのおどろおどろしい人間部品産業の実態の数々、血液の商品化にはじまり、世界中で行われている臓器売買、公然と横行する精子・卵子の売買、代理母契約、胎児・赤ちゃんの商品化、生体試料の販売合戦、遺伝子・細胞などの特許化など枚挙にいとまがない。そして本書の本質は、そのレポートを受けた後のPart'W以降にある。すなわち、人間部品産業がどのような歴史的背景を経て成立されるようになったのかという考察である。
著者はその原点にガリレオの名を挙げる。ガリレオの信念とは、自然界は、形而上学的な見方や精神論から解明できるものではなく、定量的な測定や厳密な数学的解析を通してのみ理解できるというものである。最終的には原子論へと至るガリレオの哲学は、人間の経験の全体像を、観測可能で、物質と運動のことばで説明できる、ごく限られた部分に置き換えた。こうして生命を解体し、機械論的な姿に整形し直された新しい科学のもと、デカルトによる動物の機械論的解釈、ラ・メトリーの人間機械論が結実し、人間部品産業が誕生する素地を生み出したということなのである。
また、「神の見えざる手」に代表される自由競争主義、自由市場原理も、人間部品産業のもう一つのエンジンである。つまり個人が自らの欲望を何物にも妨げられるずに追求することによって、意識するしないにかかわらず、公共の利益を生み出すとされる考え方である。この言い分に則ると、人間部品が自由に取引されることによって、より多くの臓器がより安く供給され、需要のあるところに公平に分配されるということになるのだ。
これらマイケル・サンデルの「Justice」にも出てきそうなジレンマを生み出すお題に対して、著者のスタンスは明解である。それは、商品の定義が、売買を目的として生産された部品であるということにある。人間自身を形成するものや、人間の労働は、決して売買を目的として生産されたものではないということなのだ。
生命の商品化というテーマに対して、前時代の思想史的な見地や、隣接する市場経済としての見地から分析し、人間部品産業の中に、文明の罪を見出す考察は実に鮮やかである。さらに最終章の「からだ」についての思考改革に関する言及も見逃せない。これからの「からだ」に対する向き合い方として、共感と無償供与というキーワードを提示している。ここに、本書が今このタイミングで改訂された、大きな理由が隠されているような気もする。ソーシャルメディアの台頭で注目されている共感型社会、Free経済がもたらす新たな価値として、関連付けてみながら考えてみるのも有意義なことであるだろう。
そのタイトルから誤解される向きもあるかもしれないが、本書は生命の商品化を礼賛する類の本ではない。この邦題も、オルダス・ハクスリーの反ユートピア小説「すばらしい新世界」になぞらえて付けられものである。一九九二年に出版された歴史的名著に、新エピソードが追加された改訂版。二十年近くを経て改訂版を出す著者の、終わりなき思想戦である。
◆本書の目次
Part1 人体と部品のあいだ
1 血は商品か
2 臓器移植ビジネス
3 胎児マーケット
Part2 赤ちゃん製造工場
4 赤子産業
5 生命の種
6 卵子の値段
7 胚は人間といえるだろうか?
8 出産機械の誕生
9 パーフェクト・ベビー
Part3 遺伝子ビジネス
10 遺伝子をデザインする
11 他人に差をつける薬
12 人間の遺伝子操作
13 機械化された動物
14 生命に特許を
15 人間性の独占
16 クローンウシをあなたの手に
Part4 人間部品産業との闘い
17 移動機械と神の見えざる手
18 機械論的な「からだ」
19 人間モーター
20 貪欲主義
21 悪魔の工場
22 岐路に立つ
23 「からだ」についての思考改革
Part3までのおどろおどろしい人間部品産業の実態の数々、血液の商品化にはじまり、世界中で行われている臓器売買、公然と横行する精子・卵子の売買、代理母契約、胎児・赤ちゃんの商品化、生体試料の販売合戦、遺伝子・細胞などの特許化など枚挙にいとまがない。そして本書の本質は、そのレポートを受けた後のPart'W以降にある。すなわち、人間部品産業がどのような歴史的背景を経て成立されるようになったのかという考察である。
著者はその原点にガリレオの名を挙げる。ガリレオの信念とは、自然界は、形而上学的な見方や精神論から解明できるものではなく、定量的な測定や厳密な数学的解析を通してのみ理解できるというものである。最終的には原子論へと至るガリレオの哲学は、人間の経験の全体像を、観測可能で、物質と運動のことばで説明できる、ごく限られた部分に置き換えた。こうして生命を解体し、機械論的な姿に整形し直された新しい科学のもと、デカルトによる動物の機械論的解釈、ラ・メトリーの人間機械論が結実し、人間部品産業が誕生する素地を生み出したということなのである。
また、「神の見えざる手」に代表される自由競争主義、自由市場原理も、人間部品産業のもう一つのエンジンである。つまり個人が自らの欲望を何物にも妨げられるずに追求することによって、意識するしないにかかわらず、公共の利益を生み出すとされる考え方である。この言い分に則ると、人間部品が自由に取引されることによって、より多くの臓器がより安く供給され、需要のあるところに公平に分配されるということになるのだ。
これらマイケル・サンデルの「Justice」にも出てきそうなジレンマを生み出すお題に対して、著者のスタンスは明解である。それは、商品の定義が、売買を目的として生産された部品であるということにある。人間自身を形成するものや、人間の労働は、決して売買を目的として生産されたものではないということなのだ。
生命の商品化というテーマに対して、前時代の思想史的な見地や、隣接する市場経済としての見地から分析し、人間部品産業の中に、文明の罪を見出す考察は実に鮮やかである。さらに最終章の「からだ」についての思考改革に関する言及も見逃せない。これからの「からだ」に対する向き合い方として、共感と無償供与というキーワードを提示している。ここに、本書が今このタイミングで改訂された、大きな理由が隠されているような気もする。ソーシャルメディアの台頭で注目されている共感型社会、Free経済がもたらす新たな価値として、関連付けてみながら考えてみるのも有意義なことであるだろう。