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雲をつかむ話 単行本 – 2012/4/21
人は一生のうち何度くらい犯人と出遭うのだろう――。
わたしの二ヵ国語詩集を買いたいと、若い男がエルベ川のほとりに建つ家をたずねてきた。彼女へのプレゼントにしたいので、日本的な模様の紙に包んで、リボンをかけてほしいという。わたしが包装紙を捜しているうちに、男は消えてしまった。
それから一年が過ぎ、わたしは一通の手紙を受け取る。
それがこの物語の始まりだった。
- 本の長さ258ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2012/4/21
- ISBN-104062176300
- ISBN-13978-4062176309
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商品の説明
著者について
1960年、東京生まれ。早稲田大学卒業。ハンブルグ大学修士課程、チューリッヒ大学博士課程修了。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、1996年シャミッソー文学賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunmamuraドゥマゴ文学賞、『容疑者の夜行列車』で谷崎潤一郎賞、伊藤整文学賞、2005年ゲーテ・メダル、2009年坪内逍遙賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞など受賞多数。
主な著書に『ゴットハルト鉄道』『旅をする裸の眼』『海に落とした名前』『ボルドーの義兄』などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2012/4/21)
- 発売日 : 2012/4/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 258ページ
- ISBN-10 : 4062176300
- ISBN-13 : 978-4062176309
- Amazon 売れ筋ランキング: - 391,278位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 98,153位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
【著者紹介】
多和田葉子(たわだ・ようこ)
小説家、詩人。1960年3月23日東京都中野区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。
1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞を受賞。2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞。2018年『献灯使』で全米図書賞翻訳文学部門受賞。
著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『百年の散歩』『地球にちりばめられて』などがある。
ヨーロッパ、アメリカ、アジアでこれまで700回以上の朗読会を開いている。アメリカではスタンフォード大学、コーネル大学、マサチューセッツ工科大学など1999年以降多数の大学に招かれ、数日から数ヶ月滞在。著作は日本語でもドイツ語でも20冊以上出版されており、フランス語訳、英訳の他にも、イタリア語、中国語、ポーランド語、韓国語、ロシア語、オランダ語、スェーデン語、ノルウェー語などの翻訳が出ている。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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(引用)
目の前に男の顔がある。肌の色はくすんでいるが、瞳の中では滝に打たれる石のように飛沫が激しく動いている。わたしと目が合うと、幼友達でも見つけたようにその表情がパッと開いた。初対面である。誰かに似た顔。思い出せない。乾いて紅色に燃える唇が開いて、息といっしょに、ぼっぼっと音節をぶつけてくる。口のまわり、目尻、額の皺たちの活動も活発で、小刻みに小さな波が岸に打ち寄せてはまた引いていく。(引用終わり)
そして、描かれるのは人が他人を理解する事の困難性である。国籍、文化、言語あるい個性を越えて(危険の香りがする)他人を理解出来るという(ヒロインの)思い込みが、実は自身の精神的危険を招くという警鐘と自戒の念が込められている。人生は退屈で平凡なものであって良い(むしろその方が良い)という趣旨かもしれない。
「犬婿入り」と比べると、文体上の実験は少なく(言語に対する多少のクスグリはあるが)、構成上の実験を試みたという印象が強い。実験を試みる程のテーマとは思えない気もするが......。題名通り、読む側もフワフワした意識で臨むのが良いのではないか。何しろ、本当に「雲をつかむような話」なのだから。