「27兆円の巨大産業がなくなってしまう」--。こう関係者は危惧している。厚生労働省が今国会に提出した改正厚生年金保険法の成立で、厚生年金基金と呼ばれる企業年金制度が今後、存続を危ぶまれ、資産運用など関連ビジネスが縮小を余儀なくされるのだ。
厚年基金とは、国の厚生年金の一部と企業独自の企業年金を一体で運用し、給付する企業年金。加入者数は厚生年金加入者約4人に1人で、440万人。もちろんすべてが消えてなくなるわけではない。一部は別の企業年金制度へ移行するケースも考えられるためだ。
しかし、主に中小企業が加入する大半の厚年基金は解散を余儀なくされる見通し。厚年基金が解散すると、企業独自の企業年金の給付がなくなる。国の厚生年金は基金に代わって国が支給するようになる。果たしてどれだけの人が理解しているだろうか。金額的には軽微なものかもしれない。でも、今までもらっていた年金の一部が基金が解散してしまうとなくなってしまうのだ。
本書は、こうした厚年基金の世界を20年以上眺めてきた「年金情報」編集長永森秀和氏の労作。本書はこれまでの同編集部の取材メモやデータの集大成で、真似できる代物ではない。
「年金情報」は1990年創刊の専門情報誌で、主な購読者は年金基金などの機関投資家、投資顧問会社など運用会社。同誌は2012年2月に発覚したAIJ投資顧問による年金資産消失事件で脚光を浴びた。同誌が09年2月、米国の巨額金融詐欺事件になぞらえて、AIJを名指しこそしなかったものの、日本のマドフ事件になりかねねいと警告するコラムを掲載していたためだ。
筆者は「あなたの年金は消えていないか」と問いかけている。AIJ投資顧問による年金資産消失事件以後、さまざまな場面で資産消失が連鎖しているためだ。気づいていない人に気づかせる狙いもあるのだろう。今も程度の差こそあれ、資産消失はくすぶり続けており、今後大きな資産消失が顕在化すると予告する。筆者は多くの関係者が責任を認識し恥をかく覚悟のうえで、ここは膿を出し切る決意が必要と指摘している。同編集部は一時AIJを人気ランキング1位として記事を掲載したこともあり、おそらく自身への自戒もこめているのだろう。
本書の最大の特徴は、何人もの関係者が実名で登場している点だ。筆者の部下である編集部の記者陣、年金基金の役員など。編集部の関係者が2009年ごろ、金融当局や国税当局と接触して意見交換していたことなど、当時の生々しいやりとりを克明に記録している。また、一部の厚年基金役員はAIJを不審に思っており、セミナーなどで公言していたという。
読み所は随所にあり、飽きさせない。筆者や編集部の取材に基づく事実に加え、筆者独自の視点で事件をわかりやすく整理しているためだ。これは新聞やテレビではなかなかできないことだ。筆者の長年の経験による賜物だろう。たとえば、なぜAIJのような無名の新興投資顧問会社が1000億円以上の年金資金を集めることができたのか、そのからくりを明らかにしている。事件の背景を熟知する筆者による事件後の浅川和彦社長や元幹部へのインタビューも興味深い。
事件を改めて考えさせるきっかけにもなる。筆者はAIJ事件は、AIJという悪質な運用会社(加害者)が年金基金(被害者)をだましたという基本的な構図にも疑問を投げかける。編集部の入手した極秘資料によると、AIJ傘下のアイティーエム証券の営業マンが厚年基金などに過剰な飲食接待をしていた実態が明らかになっている。同事件を捜査した警視庁や東京地検はこうした厚年基金汚職を不問とし、AIJ幹部らの詐欺事件の立件を優先したということがわかる。この極秘資料が表に出れば、事件は加害者と被害者の線引きすらあやふやにしかねない。厚年基金の役職員はみなし公務員に該当し、こうした接待や賄賂が収賄罪にとわれかねない。
筆者はまた、AIJ以外の年金資産消失にも触れている。長野県建設業厚生年金基金の資産消失で、24億円の巨額横領を皮切りに、AIJへの委託で67億円、別の未公開株投資でも数十億円の損失が発生していることが明らかになった。編集部はその2年前から同基金に着目し、取材していたという。同事件については、被疑者が海外逃亡しており、わからないことが多く、参考になる。
筆者はAIJに始まる運用不祥事、贈収賄、横領、さらには厚年基金制度の廃止に至る資産消失の「真犯人」について、実は明確な回答を示してない。強いてあげるとすると、筆者は「おぼろげで無自覚な当事者たち、そんな悪意なき群集といえるかもしれない」とあいまいに述べている。そして「そうした群集たちが当事者意識に目覚め、老後の安心を掴み取る覚悟を持たなければ、やがてまた言葉巧みな詐欺師を招きいれてしまうかもしれない」と結んでいる。
私も筆者同様、AIJ被害基金や年金行政の変わり身に驚かされた一人だ。一部のAIJ被害基金は、加入員や受給者にAIJの財政に与える影響や、解散で生じる年金減額の意味合いについてあいまいな説明を繰り返している。責任の所在すら議論しない。受給者らに「リテラシー」がないのをいいことに。彼らは今後自らに降りかかる資産消失の意味合いをまだわかっていないのではあるまいか。
また、国民の老後の安心を提供する大義を背負う厚生労働省が「あっけなく中小企業の厚年基金制度を廃止に追い込む一方で、代替となる受け皿制度を今後検討する」という点について「究極の年金詐欺」としているのはまったく同感だ。資産消失は今もどこかで起きつつあり、知らぬ間にかすめとられていることに警鐘を鳴らす。その上で本書は役立つ示唆を与えてくれるだろう。
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年金詐欺 AIJ事件から始まった資産消失の「真犯人」 単行本 – 2013/6/21
永森 秀和
(著)
AIJ事件とは、投資顧問会社が保有していた年金資産2000億円を消失させるという前代未聞の詐欺事件だった。情報誌『年金情報』編集部は、早くからAIJ投資顧問の不自然な運用成績に目を付け、潜行取材を続けていた。その結果は誌面にも発表して、業界に警鐘を鳴らしたが、事件は容易に表面化しなかった。事態がようやく動き出したのは2012年2月。AIJに処分が下り、浅川和彦社長らが詐欺容疑などで逮捕された。
政府はこの事件を受けて、2012年9月、突然、厚生年金基金制度の廃止を決定した。国民の「老後の安心」を支える責任がある厚労省、年金官僚たちは、なぜ「豹変」したのか。その背景には、AIJ事件によく似た構図の資産消失事件や、運用に失敗して財政を悪化させている多数の厚生年金基金の存在があった。
日本の年金制度は大丈夫か。厚生年基金制度廃止は「年金制度の終わりの始まり」ではないのか。『年金情報』編集長として、AIJ事件など年金消失事件の深層を取材し、年金制度について知り尽くした著者が書いた、これからの年金受給者、年金受給者必読の書。
●本書の「読みどころ、ポイント」
・AIJ事件をめぐるAIJ投資顧問vs.『年金情報』編集部の「壮絶な情報戦」
・「野村證券史上一番の天才」浅川和彦、「24億円横領、107億円消失」年金基金事務長ら、詐欺師の「意外な素顔」
・MRI事件など、これからも次々と明らかになる資産消失事件の裏側がわかる
・浅川和彦求刑が、6月20日過ぎに予定されている
・年金制度取材20年の「著者」が年金制度とは何か、その仕組みをわかりやすく解説
・いまこの国の官僚が、「年金制度をどう変えていこう」としているかが、みえてくる
政府はこの事件を受けて、2012年9月、突然、厚生年金基金制度の廃止を決定した。国民の「老後の安心」を支える責任がある厚労省、年金官僚たちは、なぜ「豹変」したのか。その背景には、AIJ事件によく似た構図の資産消失事件や、運用に失敗して財政を悪化させている多数の厚生年金基金の存在があった。
日本の年金制度は大丈夫か。厚生年基金制度廃止は「年金制度の終わりの始まり」ではないのか。『年金情報』編集長として、AIJ事件など年金消失事件の深層を取材し、年金制度について知り尽くした著者が書いた、これからの年金受給者、年金受給者必読の書。
●本書の「読みどころ、ポイント」
・AIJ事件をめぐるAIJ投資顧問vs.『年金情報』編集部の「壮絶な情報戦」
・「野村證券史上一番の天才」浅川和彦、「24億円横領、107億円消失」年金基金事務長ら、詐欺師の「意外な素顔」
・MRI事件など、これからも次々と明らかになる資産消失事件の裏側がわかる
・浅川和彦求刑が、6月20日過ぎに予定されている
・年金制度取材20年の「著者」が年金制度とは何か、その仕組みをわかりやすく解説
・いまこの国の官僚が、「年金制度をどう変えていこう」としているかが、みえてくる
- 本の長さ253ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2013/6/21
- ISBN-104062184567
- ISBN-13978-4062184564
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商品の説明
著者について
1965年生まれ。格付投資情報センター(R&I)編集部長兼「年金情報」編集長。R&I入社後、格付アナリスト、日本経済新聞記者(出向)を経て、92年から資産運用と退職金給付制度の専門誌「年金情報」の編集に携わり、2000年に同誌編集長就任。
07年に「ファンド情報」を創刊、09年まで同誌編集長を兼務。07年より編集部長。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『企業年金の真実』(2003年、R&I、共著)、『企業年金再生』(2011年、日本経済新聞社)がある
07年に「ファンド情報」を創刊、09年まで同誌編集長を兼務。07年より編集部長。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『企業年金の真実』(2003年、R&I、共著)、『企業年金再生』(2011年、日本経済新聞社)がある
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2013/6/21)
- 発売日 : 2013/6/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 253ページ
- ISBN-10 : 4062184567
- ISBN-13 : 978-4062184564
- Amazon 売れ筋ランキング: - 247,233位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 18,121位投資・金融・会社経営 (本)
- - 49,434位ノンフィクション (本)
- - 71,453位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2013年6月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
企業年金は昔仕事で関係したことがあり、興味があった。記事の中に家族が登場しているので、購入した。
2013年9月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「真犯人は、あなたです。」
よくある推理小説のフレーズ。タイトルからして前代未聞の詐欺事件に深く切り込み、真相が明らかになる期待を抱く。複雑な人物関係や厚生年金基金制度の難解さ、運用における金融の専門用語が出てくるものの、読み進めるうちに、いつの間にか視線は筆者と同一化している。まるで自分が真相を解き明かそうと取材を進めているかのように。事件記者さながらにさまざまな人物と会い、情報を収集し、核心へと迫っている。「年金情報」という組織があるにせよ、筆者の努力、執念がなければ大成しなかったに違いない。
一番のクライマックスは、浅川容疑者と筆者が対峙する場面。
子供の頃にみた「ウルトラセブン」でちゃぶ台を挟んで、メトロン星人とウルトラセブンが会話する場面が想起された。夕日が差し込むアパートの一室で、事件の核心に迫る会話をする凶悪星人と正義の味方。
公判でも見せたことのない真顔で浅川が吐露した台詞こそ、この事件の全てを物語っている気がする。
おっと詳細は、買って読んでからのお楽しみ。
本書を買って読んだあと、是非声に出して貰いたい。
「資産消失の真犯人は・・・」
よくある推理小説のフレーズ。タイトルからして前代未聞の詐欺事件に深く切り込み、真相が明らかになる期待を抱く。複雑な人物関係や厚生年金基金制度の難解さ、運用における金融の専門用語が出てくるものの、読み進めるうちに、いつの間にか視線は筆者と同一化している。まるで自分が真相を解き明かそうと取材を進めているかのように。事件記者さながらにさまざまな人物と会い、情報を収集し、核心へと迫っている。「年金情報」という組織があるにせよ、筆者の努力、執念がなければ大成しなかったに違いない。
一番のクライマックスは、浅川容疑者と筆者が対峙する場面。
子供の頃にみた「ウルトラセブン」でちゃぶ台を挟んで、メトロン星人とウルトラセブンが会話する場面が想起された。夕日が差し込むアパートの一室で、事件の核心に迫る会話をする凶悪星人と正義の味方。
公判でも見せたことのない真顔で浅川が吐露した台詞こそ、この事件の全てを物語っている気がする。
おっと詳細は、買って読んでからのお楽しみ。
本書を買って読んだあと、是非声に出して貰いたい。
「資産消失の真犯人は・・・」
2013年7月2日に日本でレビュー済み
「年金情報」という専門誌の編集長である筆者が、厚生年金基金制度をめぐる諸問題に切り込んだ労作です。
編集部記者たちが実名で登場し、日々の奮闘ぶりが記されます。AIJ事件がなぜ起きたか、厚生年金基金の今後のあり方に関心を持っている方にはおもしろいと思います。大変勉強になりました。
ただ、せっかく一生懸命取材したであろうネタなのに、匿名やあいまいにぼかしている箇所が多く、パンチに欠けます。取材源の秘匿との関係もあるんでしょう。あとがきにもありますが。
何も知らない人が一から読んで理解するには難しいと思います。一定の知識を前提に書いてあり、読んでいて苦しい箇所はありました。複雑な制度や投資スキームを解説する上で図はあったほうが理解を助けると思うのですが、それも少なかったです。
良書ですが、読み終えたときに全体を通して整理されていない印象はぬぐえませんでした。
編集部記者たちが実名で登場し、日々の奮闘ぶりが記されます。AIJ事件がなぜ起きたか、厚生年金基金の今後のあり方に関心を持っている方にはおもしろいと思います。大変勉強になりました。
ただ、せっかく一生懸命取材したであろうネタなのに、匿名やあいまいにぼかしている箇所が多く、パンチに欠けます。取材源の秘匿との関係もあるんでしょう。あとがきにもありますが。
何も知らない人が一から読んで理解するには難しいと思います。一定の知識を前提に書いてあり、読んでいて苦しい箇所はありました。複雑な制度や投資スキームを解説する上で図はあったほうが理解を助けると思うのですが、それも少なかったです。
良書ですが、読み終えたときに全体を通して整理されていない印象はぬぐえませんでした。
2013年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
制度的な問題点をきちんと指摘した好著。丁寧なインタビューに支えられた事実の重みが説得力を加えている。
2013年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
オリンパス巨大不正事件に火をつけた辣腕フリー経済ジャーナリスト、山口義正氏が書評にて「AIJ事件を3年も前から予見していた専門誌編集長による問題の書、渾身の一冊!多くのAIJ関連本のなかでも、その丁寧な取材ぶりには頭が下がる。名誉棄損の訴訟リスクと背中合わせのスクープが細かく描かれており、前代未聞の疑惑を報じた舞台裏を詳細に知ることができる。加えて本書の最もとんがった部分は後半にこそある。年金詐欺はAIJだけではなく、年金を受け取る仕組みそのものを奪い去ろうとする霞が関官僚に対して、年金改悪を告発し、彼らの急所を深々とえぐっている。」と絶賛していたので、さっそく購入してみた。前半のノンフィクションとしてのAIJ事件の経緯から、後半の年金問題に潜む根深い年金改悪の動き、山口氏の書評どおり、いやそれ以上に読み応えのある一冊であった。AIJ事件は、この本を原作にぜひ経済ドラマにして欲しいと思った。
2017年9月24日に日本でレビュー済み
規模、内容共に作り話に思えてしまう事件。よくこのような本を出せたと関心せざるを得ない内容となっており、年金神話に隠れている年金業界の闇を感じるような文面も混ざっていた。
現在の日本の年金にはもらえて当たり前と思ってる人が一定数いるが、そのような神話はもう存在しないということを再確認する意味でもこの本の重要性は高いと思う。
現在の日本の年金にはもらえて当たり前と思ってる人が一定数いるが、そのような神話はもう存在しないということを再確認する意味でもこの本の重要性は高いと思う。
2013年12月5日に日本でレビュー済み
AIJ投資顧問の浅川和彦は、巨額年金資金約2,000億円を逸失し、AIJに2012年2月業務停止命令処分がなされた。 資金運用の成績を偽り、実額を越える値でファンドを拡販し続けたペテン師だ。 5人兄弟(三男二女)の次男として横浜で生れ、実家は鉄工所だ。 神奈川県立希望ヶ丘高校から横浜市立大学を卒業し、1975年に件のノルマ證券に入社した。 このノルマ證券出身で大不祥事を起こす輩は何故か多い。 ここで出世すれば良かったものの、妻の実家の資産を担保に2億円借入し、不動産投資、バブル崩壊、多額の損失と転落した。 結局はノルマ證券退社、損失取り返しにペイン・ウエバー証券、一吉証券とお決まりの渡り鳥となり、人生を狂わす歯車は動き出した。 AIJの主要顧客は厚生年金基金で、しかも中小零細企業の寄せ集めの総合型だ。 理事長や理事は傘下企業の経営者でお飾り素人。 権限は全て厚労省OBや社会保険庁OBの常務理事が握っているのが一般的なパターンだ。 AIJは開店当初からマイナスであったようで、それを完全にウソの数字で月別運用実績表を作成・配布していた。 プラスの月ばかり、「運用好調な元気な会社」で通っていたというから凄い。 AIJの顧客基金の年金支給対象者は約90万人、資金は企業や個人の余裕資金ではない。 社員の老後の年金資金だから罪は途轍もなく重い。 そのカネでAIJグループは常務理事に過剰接待が常態化していた。 中には中部地区の常務理事で「たかり屋」もいたらしい。 常務理事への濃厚な接待やキックバックの蜜月で共犯めいた関係が出来上がった。 浅川のハッタリを利かせた天才的な営業手腕に、AIJに関し問題含みの外部情報を得ても、金融庁は検査に入っていない。 個人投資家ならいざ知らず、年金基金は機関投資家という位置付けで、検査の優先順位の違いがあったようだ。 年金基金側も積立不足を埋めてもらえば、運用成績さえ良ければ、それで構わないという「お任せ」「丸投げ」運用なのだ。 旧社保庁天下りは制度管理に強いが、運用管理は素人だ。 厚生年金保険法では、「理事は基金に対して連帯して損害賠償の責めに任ずる」とある。 受託者である「年金基金」と「運用者」は揃って受託者責任があるのを、年金基金は忘れていそうだ。
長野県建設業厚生年金基金の坂本芳信もAIJの顧客だった。 この基金は常務理事が永年空席で、事務長の坂本が全権限を握ってAIJに委託し、挙げ句に自分は24億円をつまんでしまった。 尚、厚生年金基金の役職員はみなし公務員として、収賄罪で逮捕される。 例えば三井物産連合厚生年金基金/釣沢裕・元常務理事だ(2013年12月4日)。 これまで厚生年金基金の常務理事で思い当たる方々は身辺に注意されたい。
長野県建設業厚生年金基金の坂本芳信もAIJの顧客だった。 この基金は常務理事が永年空席で、事務長の坂本が全権限を握ってAIJに委託し、挙げ句に自分は24億円をつまんでしまった。 尚、厚生年金基金の役職員はみなし公務員として、収賄罪で逮捕される。 例えば三井物産連合厚生年金基金/釣沢裕・元常務理事だ(2013年12月4日)。 これまで厚生年金基金の常務理事で思い当たる方々は身辺に注意されたい。