プルトニウムについての、最高の入門書である。プルトニウムの基礎的知識から、原爆、原子力発電、核燃料サイクル、等についての、著者の説明と記述に、夢中にさせられた。著者の説明は、実に秀逸で、原爆開発を巡る逸話、技術的視点から見た核拡散防止の難しさ、アメリカのプルトニウム政策の変遷、などについての著者の説明、記述は、理科系と文科系の双方の視点を持ち合わせた、この著者ならではの物と成って居る。プルトニウムについて、いかなる意見を述べるにも、先ず、この本を読んでから述べる方が、賢明であると、私は、思ふ。
(西岡昌紀・内科医/長崎に原爆が投下された日から60年目の日に)

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プルトニウム―超ウラン元素の正体 (ブルーバックス) 新書 – 1995/7/17
友清 裕昭
(著)
核燃料の「暴れ馬」の生い立ちと素性
エネルギー資源に乏しい日本が、自主資源として期待をよせているプルトニウム。その本格的利用のための研究開発に対して、世界が厳しい目を向けている。プルトニウムは、優れた核燃料であると同時に、原子爆弾の材料であり、最悪の毒物でもあるからだ。この危険なプルトニウムの利用は止めようという世界の趨勢のなかで、日本政府はその本格的利用を目指しているという。その是非を判断するのは国民1人1人である。それならば、何よりもまず、この超ウラン元素の正体を、正確に知ることが先決であろう。
エネルギー資源に乏しい日本が、自主資源として期待をよせているプルトニウム。その本格的利用のための研究開発に対して、世界が厳しい目を向けている。プルトニウムは、優れた核燃料であると同時に、原子爆弾の材料であり、最悪の毒物でもあるからだ。この危険なプルトニウムの利用は止めようという世界の趨勢のなかで、日本政府はその本格的利用を目指しているという。その是非を判断するのは国民1人1人である。それならば、何よりもまず、この超ウラン元素の正体を、正確に知ることが先決であろう。
- 本の長さ238ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1995/7/17
- ISBN-104062570777
- ISBN-13978-4062570770
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年9月25日に日本でレビュー済み
p.49(誤)「それが飛ぶ速度の二乗に比例」→(正)「二乗に反比例」など。大きく間違ってはいないが、(元)朝日新聞記者だけあって、危険を煽る方向へのバイアスが強いです。批判的な啓発書として参考にするには良いが、きちんと学ぶにはやはりきちんとした教科書が良いと思います。※元々1995年の古い本ですが、Kindle版は2014年にもかかわらず間違いが訂正されていないのはどうかと思います。古いブルーバックスはままこれがあります。
2022年8月24日に日本でレビュー済み
プルトニウムおよび,それを用いたテクノロジーについて,ざっと並べた本.
著者は朝日新聞記者だが,東大工学部原子力工学科卒でもあり,経歴だけ見た限りでは,おかしなことを書くような人物とは思われず.
ただ,いかにもブン屋が興味を持ちそうなことについて書いてあるという印象.
▼
歴史:
超ウラン元素を求めていて核分裂を見つけ,核分裂を研究していて超ウラン元素が見つかったという皮肉な結果(p.14)
微量しかない物質を分析して,バリウムが含まれていることを突き止めることができたのは,化学者だったからこそ(p.21)
鞄を持って,よたよたと階段を上る軍人(p.32-33)
▼
性質:
半減期が非常に短いため,原子炉の中で起こっている核反応を考えるときには無視できるウラン239やネプツニウム239(p.35-36)
同位体の比率で分かる,「出身」の違い(p.40)
試みに製作された,原子炉級プルトニウムの核兵器(p.42)
軍事用と発電用を兼ねた原子炉(p.42-44)
同じエネルギーを持った放射線が人体に当たったとき,非常に狭い範囲に集中的に強烈なエネルギーを与えることになるアルファ線(p.47)
LETとは?(p.48-49)
線質係数は,ICRFが経験的に推量したものに過ぎず(p.51)
最初は影響を過小評価していて,外部からの批判は無視し,次々と新事実が積み重なってくるに及んで,ようやく許容基準を厳しくするという行為の繰り返し(p.51)
プルトニウムの人体影響を考えるときには必要な,同位体全体の存在比と比放射能を同時に考えること(p.53)
「27マイクロ・グラム沈着で,100%が肺癌に」(p.56-57)
ロスアラモスでの人体実験(p.58)
「雇用関係が切れた後は,プルトニウムによる臨床的症状を調べるための,特別な医学検診は受けていない」(p.61)
▼
第2章は原子炉理論基礎.
他書でも良く見られる記述:
発電炉では,中性子はだいたい秒速3000m(p.72)
水素は中性子を無駄に吸収するため,燃料を濃縮ウランにする必要がある軽水炉(p.76)
使えるウラン資源が,一挙に60倍に増える,高速増殖炉を使った場合(p.79-80)
兵器級の比率となる,ブランケットのプルトニウム(p.87)
熱交換器は加圧水型軽水炉のアキレス腱(p.92-93)
転換炉とは?(p.93-94)
チェルノブイリ事故の原因の一つ,キセノン135(p.96-98)
全ての工程を隔離,遠隔操作で行わなければならない再処理(p.99)
リン酸ビスマス法とは?(p.99-100)
再処理の工程は?(p.100-106)
引火点が低いことの問題(p.102-106)
溶解槽に穴が開くトラブル(p.106)
そのまま大気中に放出される,希ガスとトリチウム(p.107-109)
レッド・オイルとは?(p.109)
ガラス固化体の発熱量(p.110)
▼
第3章は核兵器関連.
核査察についての記述もあるが,概要のみで詳細とは言えず,尺のせいか,内容的にも不十分:
コンパクトにするため,減速材が使えないのが核爆弾(p.115)
臨界量の一つの目安,「有意量」(p.116-117)
マンハッタン計画において,時間節約のため,原子炉が完成すると同時に完成された再処理施設(p.120-125)
ナチ製原子炉(p.129-132,134-140)
アルソス・ミッションとは?(p.132-134)
バルーク案とは?(p.143)
工業力が遅れていた中国が,原爆実験に成功したことで,一気に広がった,核兵器保有国が次々と新たに誕生するのではないかという危機感(p.146)
日本国内でも賛否渦巻いた,NPT批准(p.149-150)
垂直拡散については「努力」だけ(p.150)
商業用核物質転用が,核兵器秘密開発の近道(p.154)
「時宜にかなって」の意味するところ(p.155)
要求することができることを「再確認」(p.161)
行方不明のプルトニウム(p.163-164)
▼
第4章では主として,アメリカに振り回される日本の状況が;
当初,再処理に積極的ではなかった電力会社(p.167)
再処理には日米共同決定を必要とする,という新条項(p.168-169)
東海再処理工場のホット・テストを巡る日米交渉(p.169-170)
高速増殖炉開発促進を綱領とするレーガン候補(p.171)
包括合意方式とは?(p.171-172)
英仏側は何のリスクも負わない再処理委託(p.175)
日本のプルトニウム大量輸送に,様々なクレームをつける米議会(p.176-178)
輸送の安全性問題(p.180-182)
プルトニウム利用のスロー・ダウン(p.188)
日本の核武装に対する,海外の懸念(p.189)
暴落に近いウラン価格(p.198-199)
「経済的利点」が満たされそうにない状況(p.200)
ISFMとは?(p.200)
高速増殖炉開発を断念する欧州(p.201-203)
プルトニウム239廃棄の難しさ(p.205-210)
軍用転用防止のため,公開原則を貫くことは不可能に(p.213-214)
防護上の秘密(p.215-218)
▼
ただ,ソースがたとえばコーフィールドの本一冊,IPPNW(核戦争に反対する国際医師の会)のデータのみ,というのは危なっかしい.
カレン・シルクウッド事件を扱ったくだり(p.219-223)も,陰謀論臭がしないでもないため,できればクロスチェックを.
▼
批判的視点が欲しいなら.
【関心率45.15%:全ページ中,手元に残したいページが当方にとってどれだけあるかの割合.当方にとっての必要性基準】
著者は朝日新聞記者だが,東大工学部原子力工学科卒でもあり,経歴だけ見た限りでは,おかしなことを書くような人物とは思われず.
ただ,いかにもブン屋が興味を持ちそうなことについて書いてあるという印象.
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歴史:
超ウラン元素を求めていて核分裂を見つけ,核分裂を研究していて超ウラン元素が見つかったという皮肉な結果(p.14)
微量しかない物質を分析して,バリウムが含まれていることを突き止めることができたのは,化学者だったからこそ(p.21)
鞄を持って,よたよたと階段を上る軍人(p.32-33)
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性質:
半減期が非常に短いため,原子炉の中で起こっている核反応を考えるときには無視できるウラン239やネプツニウム239(p.35-36)
同位体の比率で分かる,「出身」の違い(p.40)
試みに製作された,原子炉級プルトニウムの核兵器(p.42)
軍事用と発電用を兼ねた原子炉(p.42-44)
同じエネルギーを持った放射線が人体に当たったとき,非常に狭い範囲に集中的に強烈なエネルギーを与えることになるアルファ線(p.47)
LETとは?(p.48-49)
線質係数は,ICRFが経験的に推量したものに過ぎず(p.51)
最初は影響を過小評価していて,外部からの批判は無視し,次々と新事実が積み重なってくるに及んで,ようやく許容基準を厳しくするという行為の繰り返し(p.51)
プルトニウムの人体影響を考えるときには必要な,同位体全体の存在比と比放射能を同時に考えること(p.53)
「27マイクロ・グラム沈着で,100%が肺癌に」(p.56-57)
ロスアラモスでの人体実験(p.58)
「雇用関係が切れた後は,プルトニウムによる臨床的症状を調べるための,特別な医学検診は受けていない」(p.61)
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第2章は原子炉理論基礎.
他書でも良く見られる記述:
発電炉では,中性子はだいたい秒速3000m(p.72)
水素は中性子を無駄に吸収するため,燃料を濃縮ウランにする必要がある軽水炉(p.76)
使えるウラン資源が,一挙に60倍に増える,高速増殖炉を使った場合(p.79-80)
兵器級の比率となる,ブランケットのプルトニウム(p.87)
熱交換器は加圧水型軽水炉のアキレス腱(p.92-93)
転換炉とは?(p.93-94)
チェルノブイリ事故の原因の一つ,キセノン135(p.96-98)
全ての工程を隔離,遠隔操作で行わなければならない再処理(p.99)
リン酸ビスマス法とは?(p.99-100)
再処理の工程は?(p.100-106)
引火点が低いことの問題(p.102-106)
溶解槽に穴が開くトラブル(p.106)
そのまま大気中に放出される,希ガスとトリチウム(p.107-109)
レッド・オイルとは?(p.109)
ガラス固化体の発熱量(p.110)
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第3章は核兵器関連.
核査察についての記述もあるが,概要のみで詳細とは言えず,尺のせいか,内容的にも不十分:
コンパクトにするため,減速材が使えないのが核爆弾(p.115)
臨界量の一つの目安,「有意量」(p.116-117)
マンハッタン計画において,時間節約のため,原子炉が完成すると同時に完成された再処理施設(p.120-125)
ナチ製原子炉(p.129-132,134-140)
アルソス・ミッションとは?(p.132-134)
バルーク案とは?(p.143)
工業力が遅れていた中国が,原爆実験に成功したことで,一気に広がった,核兵器保有国が次々と新たに誕生するのではないかという危機感(p.146)
日本国内でも賛否渦巻いた,NPT批准(p.149-150)
垂直拡散については「努力」だけ(p.150)
商業用核物質転用が,核兵器秘密開発の近道(p.154)
「時宜にかなって」の意味するところ(p.155)
要求することができることを「再確認」(p.161)
行方不明のプルトニウム(p.163-164)
▼
第4章では主として,アメリカに振り回される日本の状況が;
当初,再処理に積極的ではなかった電力会社(p.167)
再処理には日米共同決定を必要とする,という新条項(p.168-169)
東海再処理工場のホット・テストを巡る日米交渉(p.169-170)
高速増殖炉開発促進を綱領とするレーガン候補(p.171)
包括合意方式とは?(p.171-172)
英仏側は何のリスクも負わない再処理委託(p.175)
日本のプルトニウム大量輸送に,様々なクレームをつける米議会(p.176-178)
輸送の安全性問題(p.180-182)
プルトニウム利用のスロー・ダウン(p.188)
日本の核武装に対する,海外の懸念(p.189)
暴落に近いウラン価格(p.198-199)
「経済的利点」が満たされそうにない状況(p.200)
ISFMとは?(p.200)
高速増殖炉開発を断念する欧州(p.201-203)
プルトニウム239廃棄の難しさ(p.205-210)
軍用転用防止のため,公開原則を貫くことは不可能に(p.213-214)
防護上の秘密(p.215-218)
▼
ただ,ソースがたとえばコーフィールドの本一冊,IPPNW(核戦争に反対する国際医師の会)のデータのみ,というのは危なっかしい.
カレン・シルクウッド事件を扱ったくだり(p.219-223)も,陰謀論臭がしないでもないため,できればクロスチェックを.
▼
批判的視点が欲しいなら.
【関心率45.15%:全ページ中,手元に残したいページが当方にとってどれだけあるかの割合.当方にとっての必要性基準】