ウェブ2.0についての本である。
情報システムの処理形態は集中処理と分散処理に分けることができる。集中処理は中央にコンピューターを置き、これに制御、演算などを行わせる。分散処理は、それぞれのコンピューターはネットワークで結ばれているが、各々が制御、演算、記憶、入力、出力を独立して実行する。今は分散処理が主流だが、銀行のATMなどは集中処理で運用されている。集中型のほうが、管理コストが安い。そして、全体を制御しやすいのだ。
著者は最初に、SOAを取り上げている。まず、プログラムの説明がある。コンピューターが理解できるのは機械語だけである。しかし、これは人間にとって分かりにくく、効率が悪いため、BASIC、COBOL、Fortranのような高級言語が考え出された。いわゆるプログラミング言語である。このような高級言語のプログラムをコンパイラやインタプリタという翻訳機にかけて機械語に変換し、動作させている。私は高級言語そのものがパソコンを動かしていると思っていた。
しかし、プログラムは巨大化、肥大化していく。初心者レベルのコンピューター利用者を取り込むために、親切な要素を加えてプログラムを肥大化させてきた。そのため、プログラムはチームで書くものになり、コードを他人が読めるものにする必要が出てきた。そこで登場したのが構造化プログラミングである。プログラムを書くときの基本原則の一つで、プログラムを読みやすくしている。
そしてSOAだが、これは「サービス指向アーキテクチャ」のことである。「サービスに立脚してシステムの構造を作っていこう」というほどの意味だ。SOAの「サービス」とは、「機能の提供を特定の場所で行う」「コンピューター(プログラム)に対して機能を提供する」という2つの意味しかない。サービス指向では、あるサービスの大本にアクセスしてその機能を使わせてもらう。末端のパソコンにはそのサービスは入っていない。バナー広告とグーグル・アドセンスの例がわかりやすい。バナー広告では自分の選んだ広告を表示する。新しいバナーが登場すると、バナー画像のリンクを更新する必要がある。しかし、グーグル・アドセンスでは利用者はグーグル・アドセンスのサービスを呼び出せば、最適な広告を勝手に表示してくれる。グーグル・アドセンスのほうがSOA的である。SOAを取り入れると、速やかに、コストをかけずに世の中の現状にマッチしたシステムを作ることができる。
次にウェブ2.0の説明がある。ウェブは論文の閲覧システムとして開発された。論文やマニュアルには他文書へのリンクが多い。いちいち他文書を探さなくていいように、必要な文書を電子化してコンピューター上に保存してハイパーリンクを張ったのである。しかし、ウェブには限界もあった。リンクを張られたほうはそのことが分からない。リンクを張り返すこともできないし、リンクされた文書が移動すると、ハイパーリンクが途切れてしまう。そこで生まれたのがウェブ2.0である。HTMLという言語にてこ入れをして、本来ウェブが目指していた姿に再構築する。情報を構造化するのである。
その分かりやすい例がブログである。トラックバックによって簡単に双方向のリンクが張れる。SNSやウィキペディアといったサービスも可能になった。ウェブ2.0は一過性のムーブメントだと著者は言う。そして今、ウェブ3という概念も出てきている。ウェブの進歩は止まることがないが、少しでもいい方向に進んでほしいと感じた。
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構造化するウェブ―ウェブの理想型を実現する技術とは (ブルーバックス) 新書 – 2007/11/21
岡嶋 裕史
(著)
ウェブ2.0の本質と未来が見えてくる! SOA、ウェブサービス、ウェブ2.0など、言葉だけが一人歩きしがちなネット業界の新しい動き・その技術を平易に解説。ウェブの系譜がこの1冊でわかる。
- 本の長さ195ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2007/11/21
- ISBN-104062575779
- ISBN-13978-4062575775
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2007/11/21)
- 発売日 : 2007/11/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 195ページ
- ISBN-10 : 4062575779
- ISBN-13 : 978-4062575775
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,247,575位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2024年1月22日に日本でレビュー済み
2007年出版。サービス指向アーキテクチャを中心としてWebの近未来を論じている。RESTに負けたSOAPや消失したUDDI、全く耳にすることの無いWSDL等、枯れた技術・概念が多い。2007年時点でティム・バーナーズ・リーのセマンティック・ウェブ構想の限界が指摘されていたのだから、オントロジー研究は大変だったに違いない。ただし今はGPTが内在的な形ではないとはいえセマンティック・ウェブを実現しつつあるのだろう。現代のウェブプログラミングは、本書にあるASPやCGIとは比べ物にならないほど進化した。
2007年12月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
コンピュータ、情報システムの発展の歴史を目的指向(サービス指向)で
整理しながらSOAという技術を解説している。その準備の上に、本書の肝
であるWeb2.0という流れを「ウェブが構造化」する流れだというフレー
ムで斬っている。
本書は、いわゆるレガシーシステムやWeb以前のWindowsなどの
ソフトウェア技術者であったが、そのあたりから先については技術(知識)
のキャッチアップがとまってしまっている人が、SOAの心を理解する目的
で手に取るとなるほど、見通しが良くなるのでないか。ただし、技術的に
厳密な議論がなされているわけではない。
整理しながらSOAという技術を解説している。その準備の上に、本書の肝
であるWeb2.0という流れを「ウェブが構造化」する流れだというフレー
ムで斬っている。
本書は、いわゆるレガシーシステムやWeb以前のWindowsなどの
ソフトウェア技術者であったが、そのあたりから先については技術(知識)
のキャッチアップがとまってしまっている人が、SOAの心を理解する目的
で手に取るとなるほど、見通しが良くなるのでないか。ただし、技術的に
厳密な議論がなされているわけではない。
2008年2月4日に日本でレビュー済み
オブジェクト指向から、ウェブ2.0関連の技術、SOAまでのウェブ関連技術を
構造という視点で整理した本です。HTML,CSSなどWebの基礎技術、
ウェブサービスの要素技術、ウェブ2.0に含まれる各種の技術、
セマンティックウェブなどの技術を、技術が出てきた背景や意味、
技術そのものを説明した本でした。
そして、今後のWebの方向性が軽く述べられています。
ボリュームとしては、SOA、ウェブ2.0の技術解説が多かった印象です。
基本的な所から、高度な内容まで、丁寧に説明されている印象です。
比ゆ等を用いて、やさしく説明されています。
多種多様にわたる技術について、頭を整理するのに役立つか、
とおもいます。
構造という視点で整理した本です。HTML,CSSなどWebの基礎技術、
ウェブサービスの要素技術、ウェブ2.0に含まれる各種の技術、
セマンティックウェブなどの技術を、技術が出てきた背景や意味、
技術そのものを説明した本でした。
そして、今後のWebの方向性が軽く述べられています。
ボリュームとしては、SOA、ウェブ2.0の技術解説が多かった印象です。
基本的な所から、高度な内容まで、丁寧に説明されている印象です。
比ゆ等を用いて、やさしく説明されています。
多種多様にわたる技術について、頭を整理するのに役立つか、
とおもいます。
2009年6月7日に日本でレビュー済み
ウェブやネットの中身は、
利用者にとってよくわからないもので、
ウェブ2.0といわれても
便利になるのかな?という程度です。
本書は、言語や技術の進化を
わかりやすく解説することで、
普段わからない技術の裏側を垣間見させてくれます。
本書に紹介されていた参照文献も
あわせて読んでみたいと思います。
利用者にとってよくわからないもので、
ウェブ2.0といわれても
便利になるのかな?という程度です。
本書は、言語や技術の進化を
わかりやすく解説することで、
普段わからない技術の裏側を垣間見させてくれます。
本書に紹介されていた参照文献も
あわせて読んでみたいと思います。
2010年3月18日に日本でレビュー済み
わかりやすい文章でWebの近未来を展望しています。
サービス指向SOAの説明はわかりやすいのですが比較しているオブジェクト指向の説明がかなり違っている気がします。SOAとの対比としてオブジェクト指向を上げているのですが、オブジェクト指向がWebアプリケーションの開発方法の一つとして説明されていて非常に一面的で本来のオブジェクト指向の思想とは違っていてかなり違和感を感じました。
SOAをわかりやくす説明するためにあえてそのような説明にしているこかもしれません。
現役でWeb開発をしている人には退屈です。どちらかと言うと専門家ではない素人がわかったような気になるための本だと思います。
サービス指向SOAの説明はわかりやすいのですが比較しているオブジェクト指向の説明がかなり違っている気がします。SOAとの対比としてオブジェクト指向を上げているのですが、オブジェクト指向がWebアプリケーションの開発方法の一つとして説明されていて非常に一面的で本来のオブジェクト指向の思想とは違っていてかなり違和感を感じました。
SOAをわかりやくす説明するためにあえてそのような説明にしているこかもしれません。
現役でWeb開発をしている人には退屈です。どちらかと言うと専門家ではない素人がわかったような気になるための本だと思います。
2009年9月13日に日本でレビュー済み
WEBは、HTMLという構造化言語で記述するのが基本です。
そのため、WEBは最初から構造を持っています。
タイトルの「構造化するウェブ」という意味が、どういう意図なのかが分かりませんでした。
最初から構造的なものを、誰が、いつ、どうやって構造化し、どうなるのでしょうか。
タイトルを変更すれば、ネットワークに関する入門書として有用だと思われます。
ただし、SOAという略号がフルスペルと定義がありません。
ウェブ同様、意味が分らずに使っているのでしょうか。
そのため、WEBは最初から構造を持っています。
タイトルの「構造化するウェブ」という意味が、どういう意図なのかが分かりませんでした。
最初から構造的なものを、誰が、いつ、どうやって構造化し、どうなるのでしょうか。
タイトルを変更すれば、ネットワークに関する入門書として有用だと思われます。
ただし、SOAという略号がフルスペルと定義がありません。
ウェブ同様、意味が分らずに使っているのでしょうか。
2008年2月26日に日本でレビュー済み
ウェブ2.0、SOAなどの非常に分かりやすい入門解説書。解説および比喩は秀逸であり新人でも十分に理解できると思われます。
ウェブ2.0は一般的なコトバとなってきましたが、SOAはIT業界以外の一般PC利用者にとっては聞いたこともない方が多いのではないかと予想します。そういう観点から、読者ターゲットとしては恐らくIT関連の新入社員かなぁ、と思うのですがPCに詳しい方であれば業界関係者以外の読者でも十分に理解可能な平易な内容です。
解説書としては非常に優れているのですがまとめとしてはちょっと物足りないと感じますので星マイナス1とさせていただきました。
ウェブ2.0は一般的なコトバとなってきましたが、SOAはIT業界以外の一般PC利用者にとっては聞いたこともない方が多いのではないかと予想します。そういう観点から、読者ターゲットとしては恐らくIT関連の新入社員かなぁ、と思うのですがPCに詳しい方であれば業界関係者以外の読者でも十分に理解可能な平易な内容です。
解説書としては非常に優れているのですがまとめとしてはちょっと物足りないと感じますので星マイナス1とさせていただきました。