「がん 生と死の謎に挑む」(立花隆著)の中に紹介されていたので読んでみた。
著者がこの本を書いたときの年齢は85歳。生涯を通じて「がんはなぜ生じるか」を
追求してきた。でもいまだによくわからない。諸説あるがよくわからない。決定打が
ないのである。著者は渾沌とした現状をありのままに教えてくれる。これは基礎的な
学術書であり、どうしたらがんを予防できるかといったたぐいの本ではない。
この本はおおきくふたつの部分からなっている。
(1)がんを作るものはなにか。 (発がん物質)
(2)それがなぜがんをつくるか。(がん発生のメカニズム)
(1)は発がん物質発見の過去100年間の歴史であり、予備知識は不要でわかりやすい。
(2)は学術的で少しむつかしい。化学の構造式がでてきたりする。
英国ドル博士のがんの原因分類(1981年)によると
食物・栄養 35%
タバコ 30%
職業から(アスベストとか) 4%
アルコール 3%
放射能・日光 2%
環境汚染 2% ・・
となっていて圧倒的に毎日の食事習慣や喫煙ががんの原因とされている。特にタバコは
決定的にいけない。著者はタバコでもアスベストでも厚生労働省は、国民の健康よりも
企業、業界、経済を優先させる立場をとったと怒っておられる。
むつかしくて十分理解できなかったが、面白かったのはやはりがんの発生メカニズム。
著者はフロンティア理論でノーベル化学賞をとった福井謙一研究室出身。
そのフロンティア理論を適用してがん発生のメカニズムを解明しようと国立がんセンター
研究所に移ってきた。「発がんメカニズムの研究で大事なのは細胞内の発がんの場を
はっきりさせること」らしい。つまりDNAなのかタンパク質なのか。ことばを替えると
突然変異なのか分子異常なのか。物理学(量子力学)において光が波動なのか
粒子なのかで論争したように、がん発生についてもDNAなのかタンパク質なのか決定打が
ない。著者はおそらく両者がからみあっているんだろうと推察している。
最近の研究、がん幹細胞説やフリーラジカル発がん説(著者はこの立場にある)の
状況を見ているとまだまだ先は遠いなと思う。がんの発生メカニズムもわからない
くらいだから、(効くのかどうかわからない)副作用の強い抗がん剤からがん患者が
解放されるのはまだまだ先のようだ。
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がんはなぜ生じるか―原因と発生のメカニズムを探る (ブルーバックス) 新書 – 2007/12/21
永田 親義
(著)
発がんメカニズムの解明に挑んだ! がんを作るものは何か。それがなぜがんを作るのか。がん研究の歴史と最新研究の成果を整理し、まとめた一冊。発がんメカニズムを正しく理解するために必須の書。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2007/12/21
- ISBN-104062575817
- ISBN-13978-4062575812
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2007/12/21)
- 発売日 : 2007/12/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 272ページ
- ISBN-10 : 4062575817
- ISBN-13 : 978-4062575812
- Amazon 売れ筋ランキング: - 746,959位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,805位ブルーバックス
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2008年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
フリーラジカル発がん説を提唱した国立がんセンター研究所生物物理部長による書。多くの発癌性物質や、発がんメカニズムについての諸説などを8章にわけて述べている。250ページ程度の内容で、中高生以上が数日かけて読破可能な分量。
全体としては、情報量は豊富であると思う。また、一般人を意識して、なじみやすいように発癌物質について多くのページを割いている。しかし、1冊の書としての完成度については以下の難点からやや疑問がのこる。説明手順として各論から入って、DNAの説明などの総論的な説明や発癌の機序は後半に展開されているが、物事を体系的に理解させようと言うのであれば、まず癌についてやその定義、遺伝子について説明し、癌抑制遺伝子や癌遺伝子などに言及した上で、それらを誘発する因子である発癌物質を例示すべきであろう。第一章の「がんとは一体何か」はたった数ページで明確な定義づけさえ行われていない。また、発癌化学物質を26種類としているが、国際機関であるIARCの報告をではもっと多くの物質が紹介されている。物質ごとに疫学データを紹介しているものから動物実験を詳細に紹介しているものまで、記載がばらばらで一貫性がない。移民の発癌データから遺伝的要因はないと断言している部分のように、論文の推測をそのまま紹介していたり、癌による死亡数データから発癌パターンを述べていたり、複数の因子が異なるデータを比較するなど雑な論理展開も目立つ。さらには、突然変異の確率が10の-5乗であることと発癌に必要な変異が5回との推測から、人体でこれが重複して発癌することを否定的にとらえているが、それでは先に紹介した2段階発癌説と矛盾すること、または最初に変異修復遺伝子自身に突然変異がおこると次回からの変異が飛躍的に高確率になる可能性や、3回の遺伝子操作で人工的に癌細胞をつくった有名な実験データなどは無視されている。さらには、著者自身のライフワークであるフリーラジカルにページを割いているために、きわめて重要なp53などは数行しか出てこない。疫学中心の論理展開が多い点も最新とは言い難い。
著者の理念はよく理解できるにせよ、上記問題点を多々感じた書。バランスの悪さや論理展開の誤りなど、総合的に判断し、星3つが妥当と思う。臨床経験のある医学博士との共著であれば、上記問題点は改善すると思う。
全体としては、情報量は豊富であると思う。また、一般人を意識して、なじみやすいように発癌物質について多くのページを割いている。しかし、1冊の書としての完成度については以下の難点からやや疑問がのこる。説明手順として各論から入って、DNAの説明などの総論的な説明や発癌の機序は後半に展開されているが、物事を体系的に理解させようと言うのであれば、まず癌についてやその定義、遺伝子について説明し、癌抑制遺伝子や癌遺伝子などに言及した上で、それらを誘発する因子である発癌物質を例示すべきであろう。第一章の「がんとは一体何か」はたった数ページで明確な定義づけさえ行われていない。また、発癌化学物質を26種類としているが、国際機関であるIARCの報告をではもっと多くの物質が紹介されている。物質ごとに疫学データを紹介しているものから動物実験を詳細に紹介しているものまで、記載がばらばらで一貫性がない。移民の発癌データから遺伝的要因はないと断言している部分のように、論文の推測をそのまま紹介していたり、癌による死亡数データから発癌パターンを述べていたり、複数の因子が異なるデータを比較するなど雑な論理展開も目立つ。さらには、突然変異の確率が10の-5乗であることと発癌に必要な変異が5回との推測から、人体でこれが重複して発癌することを否定的にとらえているが、それでは先に紹介した2段階発癌説と矛盾すること、または最初に変異修復遺伝子自身に突然変異がおこると次回からの変異が飛躍的に高確率になる可能性や、3回の遺伝子操作で人工的に癌細胞をつくった有名な実験データなどは無視されている。さらには、著者自身のライフワークであるフリーラジカルにページを割いているために、きわめて重要なp53などは数行しか出てこない。疫学中心の論理展開が多い点も最新とは言い難い。
著者の理念はよく理解できるにせよ、上記問題点を多々感じた書。バランスの悪さや論理展開の誤りなど、総合的に判断し、星3つが妥当と思う。臨床経験のある医学博士との共著であれば、上記問題点は改善すると思う。
2011年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2部にわけて、
がんを発生させる物質(What?)と、がんはなぜ発生するのか(Why?)について書かれています。
がんを発生させる物質は、化学品、医薬品、環境物質、大気汚染、放射能、日光、ウイルス、アスベスト、タバコ、ピロリ菌、食物、酸化ストレス、アルコール、食塩、遺伝、など、数十もの物質について書かれています。
がんはなぜ発生するか?については、突然変異説、中でもDNAか、細胞質か、さらに、その誘発要因として、何があるか? 逆に突然変異のない説で、染色体異常説、分化異常説、そして、フリーラジカルの説(著者の説)、など、様々な説が記載されています。
がんの研究が今どうあるのかについて、整理されて理解することが出来ます。
ただ、同時に、結局、何もわかっていないのだなということもよく理解することが出来ます。
がんを発生させる物質(What?)と、がんはなぜ発生するのか(Why?)について書かれています。
がんを発生させる物質は、化学品、医薬品、環境物質、大気汚染、放射能、日光、ウイルス、アスベスト、タバコ、ピロリ菌、食物、酸化ストレス、アルコール、食塩、遺伝、など、数十もの物質について書かれています。
がんはなぜ発生するか?については、突然変異説、中でもDNAか、細胞質か、さらに、その誘発要因として、何があるか? 逆に突然変異のない説で、染色体異常説、分化異常説、そして、フリーラジカルの説(著者の説)、など、様々な説が記載されています。
がんの研究が今どうあるのかについて、整理されて理解することが出来ます。
ただ、同時に、結局、何もわかっていないのだなということもよく理解することが出来ます。
2015年7月31日に日本でレビュー済み
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ちょっと期待と違っていたので星一個へらしました。
なんといっていいのか。。。科学的というよりは、統計学者がいろいろなデータをもとに
推論しているような印象です。
もっと具体的な仕組みを求めていたので。。。
なんといっていいのか。。。科学的というよりは、統計学者がいろいろなデータをもとに
推論しているような印象です。
もっと具体的な仕組みを求めていたので。。。
2010年4月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
がんの原因と発生のしくみについて,研究の歴史とともに,現在の状況を解説する。
原因については,確かな発がん物質から,それに準ずるもの,かかわるものまで,一つずつ丁寧に解説していく。また,アスベストについては,特別に1章もうけている。アスベスト対応の問題点にも触れている。
がん発生のしくみについては,体細胞の突然変異によるものと思っていたら,さらにさまざまな原因説があることをはじめて知った。がんの研究は一筋縄ではいかないことを感じた。
著者が言う山登りのたとえのように,さまざまなルートで,ふもとから登ってきているが,7合目くらいから先が雲に隠れ,ときどきわずかに見える程度というのが,現在の研究の実態なのかもしれない。
それらの情報がしっかりつまった本と言える。情報の確かさについては,いまひとつわからない点もあるが,資料をあげながらのていねいな解説には好感がもてる。
なお,がん研究は,まだまだ途上とはいえ,いろいろな成果はあげてきてると思う。得てきた情報で,実際に行動できることも多くある。危険を避けたり,治療に生かしたりすための情報は,研究が進んだことで非常に多くなっているのではないか。
原因については,確かな発がん物質から,それに準ずるもの,かかわるものまで,一つずつ丁寧に解説していく。また,アスベストについては,特別に1章もうけている。アスベスト対応の問題点にも触れている。
がん発生のしくみについては,体細胞の突然変異によるものと思っていたら,さらにさまざまな原因説があることをはじめて知った。がんの研究は一筋縄ではいかないことを感じた。
著者が言う山登りのたとえのように,さまざまなルートで,ふもとから登ってきているが,7合目くらいから先が雲に隠れ,ときどきわずかに見える程度というのが,現在の研究の実態なのかもしれない。
それらの情報がしっかりつまった本と言える。情報の確かさについては,いまひとつわからない点もあるが,資料をあげながらのていねいな解説には好感がもてる。
なお,がん研究は,まだまだ途上とはいえ,いろいろな成果はあげてきてると思う。得てきた情報で,実際に行動できることも多くある。危険を避けたり,治療に生かしたりすための情報は,研究が進んだことで非常に多くなっているのではないか。
2008年7月13日に日本でレビュー済み
「がんをつくるものは何か」と「それがなぜがんをつくるか」と分けて考え、前者を前半部で、後者を後半部で論じている。前半は読みやすく、また論点も明快で、ためにもなる。それに比べて、後半は、がんのメカニズムそのものよりもがん研究について書かれているので、やや物足りなく感じた。「がんは突然変異かどうか」の研究の推移についてかなりのページが割かれているが、一般の関心とはずれがあるようにも思う。とはいうものの、専門的な内容の説明をされてもおそらく難しくて理解しがたいであろうから、とにかく「がんのメカニズムについてこう考えられてきて、まだはっきりしたことはわからない」ということがわかるだけでいいのかもしれない。がんは、生き、老い、死んでいくという生命の根本の問題でもあり、それを解明することは不可能なのではという感じもしてしまう。しかし、この本からは、まだまだ難しい問題はたくさんあるものの「がん」は解明されていくものだという筆者の前向きな姿勢が感じとれた。