無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
とんかつの誕生: 明治洋食事始め (講談社選書メチエ 179) 単行本 – 2000/3/1
岡田 哲
(著)
あんパン、ライスカレー、コロッケ、とんかつ
明治維新。それは1200年の禁を破る「食べ物革命」だった。天皇の肉食、政府・知識人の西洋料理キャンペーン、そして反西洋食騒動。とまどう庶民はやがて、自分の口に合う牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケを生み出していく。「洋食の王者」とんかつが誕生するまで、食卓60年の疾風怒濤を生き生きと描く。
明治維新。それは1200年の禁を破る「食べ物革命」だった。天皇の肉食、政府・知識人の西洋料理キャンペーン、そして反西洋食騒動。とまどう庶民はやがて、自分の口に合う牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケを生み出していく。「洋食の王者」とんかつが誕生するまで、食卓60年の疾風怒濤を生き生きと描く。
- 本の長さ252ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2000/3/1
- ISBN-104062581795
- ISBN-13978-4062581790
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
明治維新とは1200年の禁を破る「食べ物革命」だった。庶民が自分の口に合う牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケを生み出し、「洋食の王者」とんかつが誕生するまでの、食卓上60年の疾風怒涛を描く。
著者について
1931年、横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1956年から90年まで、日清製粉株式会社勤務。小麦粉の製造・研究などに携わる。1994年から97年まで、NHK放送大学で食文化史の講座を担当。
主な著書に、『コムギ粉の食文化史』(朝倉書店)、『日本の味探究事典』『世界の味探究事典』『食の文化を知る事典』『コムギ粉料理探究事典』(いずれも、東京堂出版)などがある。
主な著書に、『コムギ粉の食文化史』(朝倉書店)、『日本の味探究事典』『世界の味探究事典』『食の文化を知る事典』『コムギ粉料理探究事典』(いずれも、東京堂出版)などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2000/3/1)
- 発売日 : 2000/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 252ページ
- ISBN-10 : 4062581795
- ISBN-13 : 978-4062581790
- Amazon 売れ筋ランキング: - 666,269位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 895位講談社選書メチエ
- - 16,117位クッキング・レシピ (本)
- - 18,537位日本史 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年10月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
レポートの提出にあたって購入しました。明治の食の歴史を学びたいのならこの本かと思います
2009年10月22日に日本でレビュー済み
世界の主たる料理文化は、基本的に宮廷文化の一環として花咲いたものである。
フランス料理も中華料理もインド料理も、いずれも王侯貴族の食事ために開発されている。
ところが世界のメジャーな料理文化の中で、際立って異質な成り立ちをしたものがある。
他ならぬ日本料理である。
スシもテンプラも刺身も、江戸期の庶民がつくりあげたものであり、支配階級たる武士たちはほとんど関与していない。
日本の王侯貴族たる将軍家では、逆に一汁一菜の質素極まる食事をしていた。
日本食は、成り立ちからして庶民のものであった。
こういう歴史が、日本人をして「西洋料理の日本化」という取り組みに熱中させることになる。
本書で紹介される「あんパン」の発明者・木村安兵衛が典型である。
「ご一新」前は「二本差し」であった士族が、寝食を忘れ家産を傾けて「たかが食い物」の開発に熱中するのである。
「食」に高い関心を持つ文化背景がなければ、こういうことはあり得ない。
日本人において「食」の文化価値は極めて高い。
例えば日本人の、特に女性ブログには、やたらに「食べ物」の記事が多い。
「食べ物」について語れば、みなが関心を持ってくれるからである。
本書の終わりの方に筆者はこう書いている。
「庶民の総力によって料理を作りつづける、世界でもまれな日本の食の文化」
満腔の共感を捧げたい。
フランス料理も中華料理もインド料理も、いずれも王侯貴族の食事ために開発されている。
ところが世界のメジャーな料理文化の中で、際立って異質な成り立ちをしたものがある。
他ならぬ日本料理である。
スシもテンプラも刺身も、江戸期の庶民がつくりあげたものであり、支配階級たる武士たちはほとんど関与していない。
日本の王侯貴族たる将軍家では、逆に一汁一菜の質素極まる食事をしていた。
日本食は、成り立ちからして庶民のものであった。
こういう歴史が、日本人をして「西洋料理の日本化」という取り組みに熱中させることになる。
本書で紹介される「あんパン」の発明者・木村安兵衛が典型である。
「ご一新」前は「二本差し」であった士族が、寝食を忘れ家産を傾けて「たかが食い物」の開発に熱中するのである。
「食」に高い関心を持つ文化背景がなければ、こういうことはあり得ない。
日本人において「食」の文化価値は極めて高い。
例えば日本人の、特に女性ブログには、やたらに「食べ物」の記事が多い。
「食べ物」について語れば、みなが関心を持ってくれるからである。
本書の終わりの方に筆者はこう書いている。
「庶民の総力によって料理を作りつづける、世界でもまれな日本の食の文化」
満腔の共感を捧げたい。
2021年8月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
料理の本に嵌まってて、そういうののお勧めに出てきたから購入したのです。で、少しがっかり。
私は料理を食べるのが好き。でも時間とかお金とか健康とかの問題で、美味しい料理を好きなように食べていくことが出来ない。だから本の中の料理の描写を読んで、読書の中で料理を味わう「エア美食」に夢中なのです。
それでこの作者さんは、タイトルからしてとんかつの美味しさを熱く語って来るのかと思ってたんですが……別にそんな事はなかった。真面目な歴史家で、料理を通して日本の歴史を語っているだけです。
食べるのが好きなんでは無いと思いました。
本を通して料理を味わう。それが出来るのは本当に料理好きな作者の書いたものだけです。文章力を超えた、作者の食への執念が読者にも伝わり、読者の精神が作中に一体化して作中の料理を味わうことが出来る。
残念ながら本書ではそんな体験は出来ませんでした。「歴史9:料理1」くらいの動機で読めば面白いのかもしれませんね。
私は料理を食べるのが好き。でも時間とかお金とか健康とかの問題で、美味しい料理を好きなように食べていくことが出来ない。だから本の中の料理の描写を読んで、読書の中で料理を味わう「エア美食」に夢中なのです。
それでこの作者さんは、タイトルからしてとんかつの美味しさを熱く語って来るのかと思ってたんですが……別にそんな事はなかった。真面目な歴史家で、料理を通して日本の歴史を語っているだけです。
食べるのが好きなんでは無いと思いました。
本を通して料理を味わう。それが出来るのは本当に料理好きな作者の書いたものだけです。文章力を超えた、作者の食への執念が読者にも伝わり、読者の精神が作中に一体化して作中の料理を味わうことが出来る。
残念ながら本書ではそんな体験は出来ませんでした。「歴史9:料理1」くらいの動機で読めば面白いのかもしれませんね。
2022年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本には独自の“洋食”なるものが存在する。
それは西洋諸国では味わえない“洋食”であり、これは最早アレンジの枠を通り越している…その代表格が、恐らく「とんかつ」であろう。
それでは一体、この世界にも例を見ない不思議な洋食は如何にして生まれたのか…それを解き明かしたのが本書である。
本書は前半で牛肉とパン、後半でとんかつ、コロッケ、カレーライスを繙いているが、西洋の食文化を導入するに当たっての明治政府の取り組み、当時生まれた珍妙メニューや食事マナーの苦労、今も残る老舗、更には著名人達の西洋の食生活に対する考え等を紹介しているので、日本に於ける「西洋料理→日本独自の洋食」の流れが具に解り、正しく「洋食の誕生」の瞬間を目撃出来るといっても過言ではない。
特に、本書を読むと当時の日本に於ける「肉食の導入」のハードルの高さと、それを乗り越えて初めて“洋食への道”が開けたという事が理解出来る上に、日本でも決して肉食が皆無であった訳では無いにも拘らず“牛を食す”事は特別に難しい課題でもあり、且つ、その難題を征服するに当たっての「工夫」こそが洋食を生み出し、和食を世界遺産にまで押し上げた原動力である事が解り、何やら感慨深かった。
因みに、本書の主役でもある「とんかつ」についてはルーツ、日本と欧米の揚げ物の相違、明治時代の養豚政策、カツの中でも豚肉が最も好まれるようになった経緯、かつ丼が登場した歴史的背景、キャベツに代表される西洋野菜、ウスターソースの登場等々、とんかつの誕生と発展とを丁寧に辿っているので、成程、諸外国の料理にルーツを持ちながらも”和風西洋料理”として独自発展する洋食の歴史が良く理解出来る。
また、メイン・ディッシュを頼んだ際に「パンにしますか、ライスにしますか」と言うチョイスがあるのは日本独特である事を改めて指摘している点は大いに首肯させられたし、その他、「パン=主食」の考えを捨てた所にあんぱん成功の原点がある事、嘗ての「カフェ」は今の概念と異なる事、お蕎麦屋でかつ丼やカレーを提供するようになった不思議等々、今では当たり前過ぎて疑問にも思わなかった事柄にも、実はちゃんとした理由があった事を紹介しているのも興味深く、改めて「洋食」の奥深さを認識した次第である。
今、日本の食文は世界から注目を集めている。
現に、イタリア人の知人が「日本に美味しいパスタ屋がある」というので聞いてみたら、和風パスタを提供する大手チェーンの店だったと言う事があったし、それどころか、中国人がラーメン・餃子に舌鼓を打ち、日本のカレー屋がインドに進出する…今ではオリジナルからかけ離れた「和風の外国料理」が世界を席巻している有様だが、この背景には明治時代の「西洋に追い付け、追い越せ」の意気込みの元に、何とか食文化も西洋に並ぼうとした涙ぐましい努力があった事を本書は語っている。
「日本を否定し、西洋かぶれした明治政府」という意見もあるだろうが、少なくとも彼等が日本の食生活を大きく変え、それが今や世界に誇れる文化になった事を思えば、彼等にも大きな功績があった事は認めてあげても良いであろう。
それは西洋諸国では味わえない“洋食”であり、これは最早アレンジの枠を通り越している…その代表格が、恐らく「とんかつ」であろう。
それでは一体、この世界にも例を見ない不思議な洋食は如何にして生まれたのか…それを解き明かしたのが本書である。
本書は前半で牛肉とパン、後半でとんかつ、コロッケ、カレーライスを繙いているが、西洋の食文化を導入するに当たっての明治政府の取り組み、当時生まれた珍妙メニューや食事マナーの苦労、今も残る老舗、更には著名人達の西洋の食生活に対する考え等を紹介しているので、日本に於ける「西洋料理→日本独自の洋食」の流れが具に解り、正しく「洋食の誕生」の瞬間を目撃出来るといっても過言ではない。
特に、本書を読むと当時の日本に於ける「肉食の導入」のハードルの高さと、それを乗り越えて初めて“洋食への道”が開けたという事が理解出来る上に、日本でも決して肉食が皆無であった訳では無いにも拘らず“牛を食す”事は特別に難しい課題でもあり、且つ、その難題を征服するに当たっての「工夫」こそが洋食を生み出し、和食を世界遺産にまで押し上げた原動力である事が解り、何やら感慨深かった。
因みに、本書の主役でもある「とんかつ」についてはルーツ、日本と欧米の揚げ物の相違、明治時代の養豚政策、カツの中でも豚肉が最も好まれるようになった経緯、かつ丼が登場した歴史的背景、キャベツに代表される西洋野菜、ウスターソースの登場等々、とんかつの誕生と発展とを丁寧に辿っているので、成程、諸外国の料理にルーツを持ちながらも”和風西洋料理”として独自発展する洋食の歴史が良く理解出来る。
また、メイン・ディッシュを頼んだ際に「パンにしますか、ライスにしますか」と言うチョイスがあるのは日本独特である事を改めて指摘している点は大いに首肯させられたし、その他、「パン=主食」の考えを捨てた所にあんぱん成功の原点がある事、嘗ての「カフェ」は今の概念と異なる事、お蕎麦屋でかつ丼やカレーを提供するようになった不思議等々、今では当たり前過ぎて疑問にも思わなかった事柄にも、実はちゃんとした理由があった事を紹介しているのも興味深く、改めて「洋食」の奥深さを認識した次第である。
今、日本の食文は世界から注目を集めている。
現に、イタリア人の知人が「日本に美味しいパスタ屋がある」というので聞いてみたら、和風パスタを提供する大手チェーンの店だったと言う事があったし、それどころか、中国人がラーメン・餃子に舌鼓を打ち、日本のカレー屋がインドに進出する…今ではオリジナルからかけ離れた「和風の外国料理」が世界を席巻している有様だが、この背景には明治時代の「西洋に追い付け、追い越せ」の意気込みの元に、何とか食文化も西洋に並ぼうとした涙ぐましい努力があった事を本書は語っている。
「日本を否定し、西洋かぶれした明治政府」という意見もあるだろうが、少なくとも彼等が日本の食生活を大きく変え、それが今や世界に誇れる文化になった事を思えば、彼等にも大きな功績があった事は認めてあげても良いであろう。
2020年10月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
5点というのはアレなので、4点にしましたが、満足です。
洋食の歴史に興味ある方なら必読です!
洋食の歴史に興味ある方なら必読です!
2018年4月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前、テレビを見ていたら、「とんかつ」はお隣の国韓国にはないとのこと。韓国は肉食のタブーは存在しない。
とんかつは天麩羅の調理方法を応用したものだという。ならば、中国はとツッコミたくなる。唐揚げはあっても、パン粉の衣をつけるという発想が中華料理にはい。
とんかつは和食の洋食部門であるらしい。
とんかつは天麩羅の調理方法を応用したものだという。ならば、中国はとツッコミたくなる。唐揚げはあっても、パン粉の衣をつけるという発想が中華料理にはい。
とんかつは和食の洋食部門であるらしい。
2014年11月11日に日本でレビュー済み
本書は2000年のテキスト『
とんかつの誕生―明治洋食事始め
』の文庫化。
「この本の内容は、文明開化を背景にした洋食物語である。……しかし、『とんかつ』や
『あんパン』という、モノの世界だけにこだわらないようにしたい。どのようにして
あんパンがつくりだされ、とんかつが誕生したのか、料理維新に情熱を燃やしながら、
これらの仕事に取りくんできた人たちを、つぎつぎに登場させてみたい。今日と同じ
ように、モノよりココロが中心であったこの時代の先人たちを見詰めなおすことにより、
現代の暮らしの本当の豊かさについて、改めて考えてみたいのである」。
西洋料理としての「ホールコートレット」に範を取りつつも、それとはあくまで似て非なる
洋食としての「とんかつ」、洋食にもさまざまあれど、なぜあえて「とんかつ」なのか、は
読み進むにつれてその理由が明らかとなる。
そこには日本における肉食の歴史があり、多量の油で揚げる調理技術の発達があり、
ナイフとフォークを用いるのではなく、包丁に入れた状態で客席に供され、米飯とともに
箸で食する和の食卓との融合に注がれた工夫があり――「ポークカツレツ」を経由しつつ、
完成に至るまでに重ねられた時間は実に60年にも及ぶ。そんな歴史の結晶ゆえにこそ、
傑作は他に数あれど、「とんかつ」であらねばならない。
人間に欠かさざる衣食住に明治維新がいかなる影響をもたらしたか、という生活史の
実践例として読めば、なかなかに説得力のある議論が提示されてはいるようには思う。
日々の生活に密着したものなだけに、難解な用語や概念を振りかざすことなく、終始気楽に
さらりと読めるその文体にも非常に好感は持てる。
とはいえ、例えば導入としての肉食禁忌からの解放や食用家畜の歴史に絞るだけでも
一冊の本が優に書けてしまうわけで、さまざまな要素の複合体としての「とんかつ」という
テーマ選択の必然か、どうしても全体に展開が簡潔との印象は拭えない。
一例を挙げれば、筆者が「とんかつ」成立のための重要なファクターとして強調する
ウスターソースだが、そのために割かれた記述はわずかに2ページ弱、イギリスに由来を
持ちつつも似ても似つかぬ日本独自のもの、ということが伝わる程度で、製法の特性や
開発の歴史といった中核にはとうとう触れず終い。資料が足りないからなのだろうか。
「日本の食の生い立ちには、幾度かの劇的な外来文化との遭遇がある。……そのつど、
食材として、コムギ粉が大きく取り込まれている」との自説のためにも「あんパン」を
取り上げたかったとの衝動は分かるし、和洋折衷との命題に見事に即してもいるし、
その描写がつまらないとも思わない。
けれども、「とんかつ」をひとまず本書の主題とした以上、それよりも重点的に記さねば
ならないポイントがあるように思えてならない。
「この本の内容は、文明開化を背景にした洋食物語である。……しかし、『とんかつ』や
『あんパン』という、モノの世界だけにこだわらないようにしたい。どのようにして
あんパンがつくりだされ、とんかつが誕生したのか、料理維新に情熱を燃やしながら、
これらの仕事に取りくんできた人たちを、つぎつぎに登場させてみたい。今日と同じ
ように、モノよりココロが中心であったこの時代の先人たちを見詰めなおすことにより、
現代の暮らしの本当の豊かさについて、改めて考えてみたいのである」。
西洋料理としての「ホールコートレット」に範を取りつつも、それとはあくまで似て非なる
洋食としての「とんかつ」、洋食にもさまざまあれど、なぜあえて「とんかつ」なのか、は
読み進むにつれてその理由が明らかとなる。
そこには日本における肉食の歴史があり、多量の油で揚げる調理技術の発達があり、
ナイフとフォークを用いるのではなく、包丁に入れた状態で客席に供され、米飯とともに
箸で食する和の食卓との融合に注がれた工夫があり――「ポークカツレツ」を経由しつつ、
完成に至るまでに重ねられた時間は実に60年にも及ぶ。そんな歴史の結晶ゆえにこそ、
傑作は他に数あれど、「とんかつ」であらねばならない。
人間に欠かさざる衣食住に明治維新がいかなる影響をもたらしたか、という生活史の
実践例として読めば、なかなかに説得力のある議論が提示されてはいるようには思う。
日々の生活に密着したものなだけに、難解な用語や概念を振りかざすことなく、終始気楽に
さらりと読めるその文体にも非常に好感は持てる。
とはいえ、例えば導入としての肉食禁忌からの解放や食用家畜の歴史に絞るだけでも
一冊の本が優に書けてしまうわけで、さまざまな要素の複合体としての「とんかつ」という
テーマ選択の必然か、どうしても全体に展開が簡潔との印象は拭えない。
一例を挙げれば、筆者が「とんかつ」成立のための重要なファクターとして強調する
ウスターソースだが、そのために割かれた記述はわずかに2ページ弱、イギリスに由来を
持ちつつも似ても似つかぬ日本独自のもの、ということが伝わる程度で、製法の特性や
開発の歴史といった中核にはとうとう触れず終い。資料が足りないからなのだろうか。
「日本の食の生い立ちには、幾度かの劇的な外来文化との遭遇がある。……そのつど、
食材として、コムギ粉が大きく取り込まれている」との自説のためにも「あんパン」を
取り上げたかったとの衝動は分かるし、和洋折衷との命題に見事に即してもいるし、
その描写がつまらないとも思わない。
けれども、「とんかつ」をひとまず本書の主題とした以上、それよりも重点的に記さねば
ならないポイントがあるように思えてならない。