松本零士の大四畳半青春ルサンチマンコミック『男おいどん』は十代前半だった頃のオレのバイブルだった。このコミックに感化されてシマシマでカパカパのサルマタを履くようになった。食堂に行くとラーメンライスばかり注文した。とりあえず無根拠でも威勢だけは良くして生きようと思った。感化された訳は決してないがその後風呂無し四畳半に数十年住んだ。そんな大昔にハマって今はすっかり忘れていたコミックをなぜ今全巻電書で大人買いしたかと言うと、最終巻にこれまで読んだことの無かったエピソード「元祖・男おいどん」「聖サルマタ伝」が収録されていたからである。それと全巻購入だと安かったのでついでで購入したわけだ。
未読だったエピソード2編はきちんと「男おいどん」していて十分に楽しめたが、残りの正編を再読してみたところ、十代の頃と感想が180度変わり、「こいつ普通にダメな奴じゃないか」と思えてしまい、逆にそれが衝撃だった。いや、そもそもダメ人間をペーソスでもって自虐的に面白おかしく描いた作品なので、「ダメな奴」が最初から描かれていることに間違いはないのだが、それに共感ではなく拒否感を感じてしまったことに驚いたのだ。
これはオレがいい年した大人になったからなのだろう。10代から40代ぐらいまで「ダメな奴」だった自分を否定して何とか今の「そんなにダメでもない奴」にまでは成長したオレにとって、このコミックの主人公は「既に乗り越えてしまったオレ自身」ということなのだろう。だから作品を否定したい訳では全くなく、「あの頃はこうとしかできなかったけど、でもずっとそのままじゃ駄目だったんだよ」と感じたという事なのだ。いわば青年期に書いた黒歴史的な日記帳を年を取ってから読み返してしまった時の居心地の悪さ、でもあの時のオレのリアルはあれしかなかった、と理解できてしまう事の仄かな悲しさ、それが今のオレにとっての『男おいどん』だった。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
男おいどん 1 (講談社漫画文庫 ま 2-3) 文庫 – 1996/9/1
松本 零士
(著)
九州男児「おいどん」こと大山昇太は4畳半に住んでいる。押し入れにはパンツが山と積まれ、サルマタケという奇妙なキノコが生える始末。だが彼の極貧生活においてはこのキノコさえも貴重な食料である。
昼間に工場でバイトし、夜間高校に通う彼だが失敗がもとでクビ、中退、失恋と次々に試練が重なる。そんな折、向かい部屋に西尾令子が来た。思いやりのある彼女に魅かれていくおいどんだが……。
昼間に工場でバイトし、夜間高校に通う彼だが失敗がもとでクビ、中退、失恋と次々に試練が重なる。そんな折、向かい部屋に西尾令子が来た。思いやりのある彼女に魅かれていくおいどんだが……。
- 本の長さ343ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1996/9/1
- ISBN-104062602768
- ISBN-13978-4062602761
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1938年生まれ。1954年「漫画少年」の『蜜蜂の冒険』でデビュー。以後、少年・少女誌などに多くの作品を発表する。主な作品に『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』『戦場まんがシリーズ』(第3回小学館漫画賞受賞)『1000年女王』『ケースハード』などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1996/9/1)
- 発売日 : 1996/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 343ページ
- ISBN-10 : 4062602768
- ISBN-13 : 978-4062602761
- Amazon 売れ筋ランキング: - 757,203位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年2月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年11月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
様々教訓が詰まった松本零士の描く青春讃歌がここにあります。
2002年8月15日に日本でレビュー済み
この本の主人公おいどんはとても純朴な青年です。でも純朴であるがためにうまく社会でやっていけない。しかしおいどんを温かい目で見てくれる大人達もいます。古き良き時代のさみしさと温かさが混ざった奥深い一冊です。
2023年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
親が好きで子供の頃によく読んでいました。ラーメンライス、サルマタケ、福岡弁etc なんとも言えない主人公の魅力、改めて読み直して名作だと思います。
2021年6月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子供の頃読んでたのでなつかしくて購入しました。
久しぶりに読んで汚いなぁ情けないなぁと思いましたが現在の漫画に無いようなパワーを感じて読後は元気が出ます。
下宿のおばさんやラーメン屋さんたちの優しさにも昭和らしいあたたかさを感じます。
久しぶりに読んで汚いなぁ情けないなぁと思いましたが現在の漫画に無いようなパワーを感じて読後は元気が出ます。
下宿のおばさんやラーメン屋さんたちの優しさにも昭和らしいあたたかさを感じます。
2024年3月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この作品の主人公は、「いつか自分にも良いことが起こる」と毎回信じているのは良いが、努力が乏しい。アルバイトで金を稼ごうとしてさまざまなトラブルを起こしてしまうが、責任をとろうともしない。そりゃさまざまな美女に相手にしてもらえないのも当然だ。私自身もそんなに見てくれは良くはないので、本作の主人公に共感するようなことも思春期にはあったかもしれない。ただ、見てくれは悪くても努力して、いやなことがあっても仕事をしているし、明日のために今日も寝る、だけといったことにはなってない。歳とったせいだろうか、共感できないんだ、もう。周囲の大人、下宿のおばあさんなどの人情は昭和だなと思う。昭和の青春を描いた貴重な作品ではあるが、この作品から何かを学べるかというと私は皆無である。むしろ、自分が他力本尊ではなく、自ら努力して明日をつかもうとしたことを思い出すし、多くの人はそうではないかと思う。松本美女のセクシーさには心惹かれる。
ただ、ここが松本零士作品と思うのは、主人公が毎回報われることなく、四畳半で悔しさや悲しさに耐えながら寝ることだ。他の作家でも努力しない主人公は散見されるが彼らは努力しないにもかかわらず、原因も明確にならないまま、かわいい女の子の好意を得ることが多い。本作の主人公はそういうことがほとんどない。これは週刊誌を読む青年層が共感しやすいようにという工夫だったであろう。大山が幸せになってしまうと読者が取り残されてしまうからだ。そこまで考えた時、創作の世界の中に生きる登場人物とはいえ、大山に深く共感を感じてしまうのである。
ただ、ここが松本零士作品と思うのは、主人公が毎回報われることなく、四畳半で悔しさや悲しさに耐えながら寝ることだ。他の作家でも努力しない主人公は散見されるが彼らは努力しないにもかかわらず、原因も明確にならないまま、かわいい女の子の好意を得ることが多い。本作の主人公はそういうことがほとんどない。これは週刊誌を読む青年層が共感しやすいようにという工夫だったであろう。大山が幸せになってしまうと読者が取り残されてしまうからだ。そこまで考えた時、創作の世界の中に生きる登場人物とはいえ、大山に深く共感を感じてしまうのである。
2021年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は小学生の頃にこの漫画に出会った。この漫画を読んで私もいつか上京して四畳半に住むのだと思っていたものだが、よくよく考えると、私は東京出身で生まれも育ちも東京なのであった。そもそも私には上京という行為ができる状況ではなかったのだ。私はこの事実に愕然とした。いつか男は立身出世のために田舎から上京し一国一城の主となることを目指すものだとずっと考えていたからだ。だがどうだろう、私にはそもそも上京するための田舎が無いのだ。正確に言えば、東京が私にとっての田舎になるのだが、東京が田舎というのは一般的にどうもしっくりこない。私はそこで”田舎の喪失”を明確に感じたのである。今後の日本にこの感覚を当てはめてみよう。コロナ禍においてリモートワークなどで職場が東京などの都心にある必要がなくなってきている。したがって就職のための上京というのが、恐らく減ってくるのだと思う。つまり、田舎に居ながらにして立身出世ができる世の中になりつつあるのだ。これがどういうことかというと、東京の価値の低下、逆に言えば地方(田舎)の価値の上昇ということになる。これは日本の均質化であり、東京に行く価値や魅力は今後薄れていく。そうしたらどうだろうか。その時私はついに東京を田舎と呼べる日が来るのか。はたまた、田舎を持たず東京都民としての矜持をも持たぬ廃人になるのか。見物である。
2014年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当時、この漫画に共感した人が沢山いたんですね。
1巻のおいどんは、ちょっとあどけない表情をしたりしてカワイイです。
松本零士の描く、哀愁のあるトビきりの良い女が見たくて読んでいます。
毎回最後の1ページが心に響きます。
おいどん、がんばれ。
1巻のおいどんは、ちょっとあどけない表情をしたりしてカワイイです。
松本零士の描く、哀愁のあるトビきりの良い女が見たくて読んでいます。
毎回最後の1ページが心に響きます。
おいどん、がんばれ。