本書は乱歩の明智小五郎登場の短編すべて、およびジュヴナイルの「怪人二十面相」の一部、さらに「黒手組」の脚本版を一冊にまとめたものである。
「怪人〜」はあの明智と二十面相が駅ビルで対面する場面だけが抜粋されているが、あとは「何物」から「月と手袋」までの八短編と「脚本黒手組」が収載されている。
ファンにはいちいち作品名を挙げる必要はないだろう。
最初の登場作「D坂〜」では浴衣を着ていた明智だったが、のちにはスマートな洋装になる。
巻末の久世光彦のエッセイに書かれているように、まさしく二人の明智がいるようだ。
乱歩の作風はその間、それほど変化しているわけでもない。
だからこの明智の変貌ぶりには、たしかに考察の余地がある。
収録作品の中では、「何物」がやはりマイベストである。
初読のときの、あの動機に対するショックの大きさは、今でも忘れられない。
あの状況なら、私でも同じことをしたかもしれないと、犯人にいたくシンパシーを感じたものだった。
明智ものはどれも面白いし、短編だけにキレが良い。
乱歩は実に良く海外作品を読んでいたのが、本書を読むと良く分かる。
「凶器」のあの図なんてロースンだし。
こういうテーマ別に乱歩の短編をまとめる、というのは面白い試みだ。
膨大な短編群をくくるのはなかなか難しいとは思うが、またこの様な企画ものが刊行されるのを楽しみにしたい。
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明智小五郎全集 (文庫コレクション大衆文学館 え 1-1) 文庫 – 1995/6/1
もじゃもじゃの髪をかきむしり、難事件を鮮やかに解く名探偵明智小五郎。『D坂の殺人事件』でデビュー以来、乱歩の本格推理や少年ものに登場、天才的な推理力で絶大な人気を獲得する。本書は、近代的名探偵の代名詞でもある明智小五郎が関わった全短篇に、未刊行の脚本『黒手組』を加え、さらに、明智小五郎を描いた初出誌の挿絵も添えて名探偵の独特のイメージと魅力を多面的に再現するユニークな企画。
- 本の長さ453ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1995/6/1
- ISBN-104062620138
- ISBN-13978-4062620130
商品の説明
著者について
明治27(1894)年名張市生まれ。本名平井太郎。早大政経学部卒。商社員、古書業等10数種の職を体験し、大正12年『二銭銅貨』でデビュー。大正14年『D坂の殺人事件』で明智小五郎が初登場。以後昭和初期まで多くの推理、妖美小説を書くが、戦争中は大半が禁止処分とされた。戦後は海外推理の紹介、後進の育成に熱を入れる。探偵作家クラブ(現日本推理作家協会)を作り初代会長に。昭和40(1965)年没。「江戸川乱歩賞」に名を残す推理界の巨人。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1995/6/1)
- 発売日 : 1995/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 453ページ
- ISBN-10 : 4062620138
- ISBN-13 : 978-4062620130
- Amazon 売れ筋ランキング: - 866,957位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、「D坂の殺人事件」などの探偵小説を 次々発表。怪奇小説、幻想小説にも優れた作品が多い。代表的なシリーズに、「怪人二十面相」「少年探偵団」などがある。日本の小説界に多大なる業績を残 す。65年没(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 大槻ケンヂが語る江戸川乱歩 私のこだわり人物伝 (ISBN-13:978-4041847213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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