長編としては短い部類だが、読み応えは充分。
主人公が失恋する冒頭から、次に主人公が置かれた状況を説明し、ひょんなことから預かった大金を浪費しようと決意するまでの流れが簡潔かつスピーディ。
その後、彼が出会う6人の女性はそれぞれが魅力的で、個性が多彩に描き分けられているので、テンポよく読み進められる。
そして、彼女たちとの、まるで棺に片足を突っ込んだも同然な人間ならではの自暴自棄が生み出す濃密な悦楽は迫力十分。
終盤では一転して棺の中から生還を果たした主人公だったが、それまでの自暴自棄ゆえの凄みが失われ、元の小心者の凡人に戻ってしまうという皮肉がいかにも冷徹な作者らしい。
ラストもこれ以上にないほど皮肉に満ちていて、かつ説得力がある。
解説にある「すべての人間の惨状と美しさを同時に描く」という一節は、言い得て妙。
ミステリ濃度は薄めだが、山田風太郎らしさが発揮されたサスペンス小説です。
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棺の中の悦楽 (文庫コレクション大衆文学館 や 1-4) 文庫 – 1996/6/1
山田 風太郎
(著)
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1996/6/1
- ISBN-104062620480
- ISBN-13978-4062620482
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商品の説明
著者について
大正11(1922)年、兵庫県生まれ。東京医大卒。在学中に「宝石」の懸賞小説に入選し推理文壇に登場。昭和24年、『眼中の悪魔』『虚像淫楽』で探偵作家クラブ賞受賞。その後、伝奇小説へ向い、奇想をこらした『山田風太郎忍法全集』15巻は大ベストセラーとなり、忍法ブームを作った。やがて、明治開化ものに進出、『幻燈辻馬車』『明治波濤歌』などで独自の世界を築く。医学生としての敗戦前後の生活体験を克明に記した『戦中派不戦日記』も貴重な記録。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1996/6/1)
- 発売日 : 1996/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 255ページ
- ISBN-10 : 4062620480
- ISBN-13 : 978-4062620482
- Amazon 売れ筋ランキング: - 595,452位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1922年、兵庫県生まれ。東京医科大学卒業。47年、「宝石」新人募集に応募した「達磨峠の事件」がデビュー作。48年「眼中の悪魔」で第2回探偵作家 クラブ賞短編賞を受賞。その後「甲賀忍法帖」を始めとした忍法帖シリーズなどを精力的に発表した。2000年、日本ミステリー文学大賞受賞。01年7月死 去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 八犬傳 下(新装版) (ISBN-13: 978-4331614044)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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