幼稚園児が学芸会で演じたら可愛いだろうな、と思える四匹の猫のキャラクターの物語です。
天使の羽根のような、ふわふわの翼がはえている子猫の物語です。
「『ねえ、ハンク』とスーザンは言いました。『この羽って、すごくふわふわしてる』」（72頁）
翼がはえている子猫って、普通の猫ではありません。化け猫でしょう。
なのに、この本に描かれている子猫たちの絵はとてもキュートで、かわいい。子猫たちの会話もかわいい。
村上春樹さんの翻訳もすてきです。
「いんげん」と「にんげん」なんて、口がよく回らない、かわいい子供の言い間違いみたいな村上訳は、最高で極上。
と言いながら、村上訳について、ちょっとコメント。
「ハリエットは切羽つまったようにみゃおうと一声鳴いて、そのままふわりと宙に飛び上がり」（16頁）
「みゃおう」ではなくて、切羽つまって空に飛ぶときには＜そりゃー＞と訳してほしかったです。
オヤジギャグっぽく、マンガっぽく。寒々しくて、村上さんにはできませんよね。分かってます。
「『旅行バトだよ』とジェームズは即座に答えました。＊
ハリエットはみゃおうと笑いました」（23頁）
「旅行バトだよ」では、なんとなく伝書バトっぽくて、つまらない。
思い切って意訳して、＜股旅してるタビーびとだよ＞（私訳）と訳してほしかったです。
この本では、空飛び猫もにんげんも対等な仲間なんですから。
股旅してるトラ猫の寅さん、なんて、映画みたいで粋な訳ではありませんか。
タビー家の子猫たちなら、私訳をしやく（飛躍）したダジャレとして笑って許して脱力してくれると思うんですけど。無理ですよね。まじめな子供たちに向かって、ふざけてはいけません。
この本に登場するにんげんも子猫も、「見たところ良い人（猫）たち」（60頁）のようです。
だけど、見かけだけでは、わからんぞー。猫もにんげんも化けるからのー。
この本の「猫から目線」では、にんげんを一匹、二匹と数えるし。にんげんは猫を一人、二人とかぞえるし。本当に、村上訳の数の単位って、おもしろい。原文は、どんな英語なのでしょう？
それにしても、「みゃおう」って、みょおうな笑い方ですね。
「ひいひいという泣き声が聞こえてきました」（42頁）
この「ひいひい」は、原語では hehe ですか？ ｍemeという猫の鳴き声もあるみたいなので。
猫におしっこをさせるときは sheshe なのでしょうか？
英語の原本をますます読んでみたくなりました。
「ううううと唸った」（64頁）
「うううう」という唸り声のオノマトペは、原文ではどう綴っているのか、何回繰り返しているのか、知りたいです。
この本では、猫語の猫の「声」が、「ごろごろ」といった使い古されたオノマトペではなく、「あれれれ」とか「まあまあ！」みたいな、にんげんの（猫の）日本語に翻訳されているのが良かったと思います。うれしいニャン。
＜猫語翻訳のお手本とした村上訳＞
「『あれれれ』とそれを見ていたジェームズが声を出しました」（71頁）
「『まあまあ！』と、ようやく冷たいローストビーフの最後のひと切れをたいらげたセルマが言いました」（71頁）
猫語の「ごろごろ」を、お手本に従って、にんげん語に訳してみましたニャン。
村上訳 「『ごろごろごろ』とハリエットは言いました」（67頁）
拙訳 ＜『ほほほんとうに？』とハリエットは言いました＞
村上訳 「『ごろごろ』とロジャーは言いました」（69頁）
拙訳 ＜『ぼぼくたちは？』とロジャーは言いました＞
村上訳 「『ごろごろ』とロジャーは言いました」（70頁）
拙訳 ＜『あありがとね』とロジャーは言いました＞
拙訳は、ただ単にどもっているだけみたいですね。
おあとがよろしいようで。
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