いずれも，昭和末ころのレトロ・ブームに便乗する形で書かれた，懐古的な内容の短篇集。以下，気に入った数編を取り上げる。
「イエスタデイ」「続・イエスタデイ」
高校〜浪人時代に，仲間３人で同人誌を作っていたころの話である。「大人のための文章教室」講談社現代新書でも，自分の文章を厳しく批評してもらうことが文章上達の秘訣と書いていたので，多分，筆者の実体験に近い内容だと思われる。新書と合わせて読むと，文章上達のための訓練の実際を知るという意味で役立つのでは。
「時間線下り列車」
関西への出張で新幹線に乗った北川洋一。列車は，段々とレトロなものに変わっていき，やがては黒い煙をもうもうと吐き出して走る機関車になった・・・。
不思議な話ではあるのだが，ストーリー展開がうまくて，自然と読み進んでしまう。とても懐かしい，ほっとする作品であり，この短篇を読むためだけでも本書を買う価値はあると思う。
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