靖難の役の最中、建文帝は「自分が皇帝になってはいけなかったのではないか?」と思っていたでしょうし、朱棣は「やっぱり自分が皇帝にならなきゃいけなかったんじゃないか?」と思っていたでしょうし、あの世の朱元璋も「朱棣を皇帝にしなきゃいけなかったんじゃないか?」と思っていたでしょう。
結果論から言うと、永楽帝とティムールが決戦することは有りませんでしたが、ティムールが中国を狙っていることは朱元璋も知っていたので、ティムールに対抗できる朱棣(永楽帝)ではなく、建文帝を後継者にすることに朱元璋自身が疑問を感じていたはずです。
朱元璋からすれば、人知を超えた大いなる力(運命)の導きによって、正解(永楽帝)を選択したくても、無理矢理に不正解(建文帝)を選択させられたと思っていたかも知れません。
永楽帝の場合は、自分が順当に第二代皇帝になっていれば、自分に処刑されずに済んだ人たちを処刑せざるを得ない状況(運命)に疑問を感じていたかも知れません。
この少し後の時代に現れた王陽明や李卓吾は、もしかしたら方孝孺の最期について「靖難の変に関しては、永楽帝の完全なる正当防衛だが、それが方孝孺に理解できなかった原因は、方孝孺が旧来の儒教的価値観に洗脳されていたからだ。第二の方孝孺を出さないためにも、曲解された儒教的価値観の誤りを正さなければならない」と、思っていたかも知れません。
誰もが様々な矛盾に対して疑問を抱きながらも、誰も抗うことが出来ずに強制的に不正解を選択させられ、強制的に世界の再構築を余儀なくされてしまうという、まさしく運命としか言いようがない「人知を超えた力の意図」について、深く考えさせられる作品でした。
もしも宇宙が再構築されるようなことがあれば、その前に靖難の役と同様の出来事が宇宙規模で起きるのかも知れませんね。
*幸田露伴版は読んでません。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
田中芳樹の運命二人の皇帝 (シリーズ・冒険 3) 単行本 – 2002/5/1
田中芳樹が幸田露伴の名作『運命』に果敢に挑む!
少年時代に熟読したあの興奮がよみがえる。
人気作家8人の翻案による冒険小説傑作シリーズ!
中国・明の時代、甥の健文帝と叔父の永楽帝が皇帝の座をめぐってくりひろげる戦争と冒険の物語。はかりしれぬ運命のもとで2人の冒険心が雄々しいドラマを奏でる
少年時代に熟読したあの興奮がよみがえる。
人気作家8人の翻案による冒険小説傑作シリーズ!
中国・明の時代、甥の健文帝と叔父の永楽帝が皇帝の座をめぐってくりひろげる戦争と冒険の物語。はかりしれぬ運命のもとで2人の冒険心が雄々しいドラマを奏でる
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2002/5/1
- ISBN-104062701138
- ISBN-13978-4062701136
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
田中芳樹が幸田露伴の名作「運命」に挑む! 中国・明の時代、甥の建文帝と叔父の永楽帝が皇帝の座をめぐってくりひろげる戦争と冒険の物語。はかりしれぬ運命のもとで二人の冒険心が雄々しいドラマを奏でる。
著者について
■田中芳樹/幸田露伴(たなかよしき/こうだろはん)
【田中芳樹】
1952年、熊本県に生まれる。学習院大学大学院修了。修士論文のテーマは、幸田露伴の『運命』。1977年第3回幻影城新人賞を受賞。1988年には星雲賞を受賞。SFから中国歴史小説まで、幅広い作品群を執筆。『銀河英雄伝説』シリーズ、『創竜伝』シリーズなどのほか、中国歴史小説の『風よ、万里を翔けよ』『紅塵』『中国武将列伝』など多数。
【幸田露伴】
1867~1947年。近代日本を代表する作家。1889年「風流伝」で文壇に認められ、「五重塔」などの代表作を生む。その後、小説から遠ざかるが、1919年発表の史伝「運命」によってふたたび高い評価を得た。第1回文化勲章受章。
【田中芳樹】
1952年、熊本県に生まれる。学習院大学大学院修了。修士論文のテーマは、幸田露伴の『運命』。1977年第3回幻影城新人賞を受賞。1988年には星雲賞を受賞。SFから中国歴史小説まで、幅広い作品群を執筆。『銀河英雄伝説』シリーズ、『創竜伝』シリーズなどのほか、中国歴史小説の『風よ、万里を翔けよ』『紅塵』『中国武将列伝』など多数。
【幸田露伴】
1867~1947年。近代日本を代表する作家。1889年「風流伝」で文壇に認められ、「五重塔」などの代表作を生む。その後、小説から遠ざかるが、1919年発表の史伝「運命」によってふたたび高い評価を得た。第1回文化勲章受章。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2002/5/1)
- 発売日 : 2002/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 248ページ
- ISBN-10 : 4062701138
- ISBN-13 : 978-4062701136
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,916,535位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1952年10月22日、熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。1978年在学中に「緑の草原に…」で、幻影城新人賞受賞。1988年「銀河英雄伝説」にて第19回星雲賞受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 野望円舞曲〈9〉 (ISBN-13: 978-4199052019 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.9つ
5つのうち3.9つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
10グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年8月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
露伴の原書「運命」を読んだが、理解し難い部分があり、先ずこのリライト本を読んでから、その上で原書に再挑戦する目的でこの本を購入しました。本書はとても解りやすく既に読了しましたが、原書の再挑戦はこれからです。
2014年11月23日に日本でレビュー済み
昔の中国、明の時代のお話です。心優しくて聡明な皇帝「建文帝」と、有能で覇気のあるおじ「燕王」との対決とその後を描いています。
主に若い読者向けに書かれた物語のようですね。ですが、私は30歳前に初めて読み、30歳過ぎた今でも心に残っている名作だと思います。
タイトル「運命」が示すように、大きな歴史の中で精一杯生きる人々の姿を丁寧に描写しています。厳格な祖父から帝位を引き継ぎ、皇帝という至尊の座にありながら周囲に振り回され、おじとの望まない戦争をせざるをえない建文帝。一方、朝廷の策略によって追い詰められ、同時にそれをしたたかに利用して戦争を起こし、皇帝の座を狙う燕王。この二人の主人公と、それを取り巻く人々の姿は、とても見応えがあります。彼らが、大きな運命の中で、どのように生き、死んでいくのか。物語の最後の章「帰還」は見事な締めくくりだったと思います。
若い人向けに書かれていることもあり、歴史などの予備知識が少なくても十分楽しめる内容になっています。あまり有名な作品では無いような気がしますが、もったいないと思います。人類史の壮大な出来事の過程と、人間を知るという楽しみを堪能しましょう。
主に若い読者向けに書かれた物語のようですね。ですが、私は30歳前に初めて読み、30歳過ぎた今でも心に残っている名作だと思います。
タイトル「運命」が示すように、大きな歴史の中で精一杯生きる人々の姿を丁寧に描写しています。厳格な祖父から帝位を引き継ぎ、皇帝という至尊の座にありながら周囲に振り回され、おじとの望まない戦争をせざるをえない建文帝。一方、朝廷の策略によって追い詰められ、同時にそれをしたたかに利用して戦争を起こし、皇帝の座を狙う燕王。この二人の主人公と、それを取り巻く人々の姿は、とても見応えがあります。彼らが、大きな運命の中で、どのように生き、死んでいくのか。物語の最後の章「帰還」は見事な締めくくりだったと思います。
若い人向けに書かれていることもあり、歴史などの予備知識が少なくても十分楽しめる内容になっています。あまり有名な作品では無いような気がしますが、もったいないと思います。人類史の壮大な出来事の過程と、人間を知るという楽しみを堪能しましょう。
2006年8月30日に日本でレビュー済み
明初の動乱「靖難の役」の時代という、中国の歴史小説としてはマイナーな時代を題材にしている。しかし、そんな時代の物語であろうと非常に読みやすく描きあげているのは、田中芳樹氏の力量というべきだろう。
建文帝と燕王(永楽帝)の争いが主題であるが、才器が燕王に到底及ばなかった建文帝になぜかシンパシーを感じてしまうところも、田中マジックのなせる業だろうか。
建文帝と燕王(永楽帝)の争いが主題であるが、才器が燕王に到底及ばなかった建文帝になぜかシンパシーを感じてしまうところも、田中マジックのなせる業だろうか。
2005年10月3日に日本でレビュー済み
本作品は、子供向けの痛快 世界の冒険文学18「運命 二人の皇帝」の再編集・文庫版。時代は、歴史小説では、あまりスポットを当てられない中国明代初期。政変劇「靖難の役」での、対照的な二人の皇帝の生涯を中心に描いた作品。原作者は、文豪・幸田露伴。田中先生が、大学院の修士論文の題材にされた作品でもある。田中先生の原点とも言える作品なので、田中作品のファンは勿論の事、歴史小説好きの方には、是非、一度読んで頂きたい作品です。
2002年6月19日に日本でレビュー済み
一応対象年齢の低めの設定なのだろうが、
目的意識に疑問を感じることもある。
読みやすい「運命」という感じでもないし・・・。
「運命」からはなれて、独自の靖難の変を描いたほうが
良かったのではないかと思う。
もっとも、永楽帝の物語としては、他に作品がそうないので
入門書としては読みやすくお勧めである。
目的意識に疑問を感じることもある。
読みやすい「運命」という感じでもないし・・・。
「運命」からはなれて、独自の靖難の変を描いたほうが
良かったのではないかと思う。
もっとも、永楽帝の物語としては、他に作品がそうないので
入門書としては読みやすくお勧めである。
2002年8月16日に日本でレビュー済み
明の時代の帝位をめぐる争いを描いた小説。
子供向けに書かれた本(?)のためか、やさしい言葉で書かれ、描写も筋も荒削りなものとなっています。
しかし、その分、迫力ある中国の歴史もの、合戦ものが、単純に楽しめました。
子供向けに書かれた本(?)のためか、やさしい言葉で書かれ、描写も筋も荒削りなものとなっています。
しかし、その分、迫力ある中国の歴史もの、合戦ものが、単純に楽しめました。