本書は「セックス・ワーカー」と題されている。そして、また、著者の肩書は、ジャーナリストだ。だから、わたしは、セックス・ワーカーの女性たちの、その人間について客観的に著述されたルポルタージュだとおもって、本書を手にとった。
このようだったので、よみ始めてから違和感があった。本書はきわめて主観的な記述がおおいのだ。もちろん、女性たちの発言は「」(カギかっこ)つきなので、そこは客観的ではある。しかし、本書に一貫してあるのは、セックス・ワーカーの女性たちの人間についての客観的な観察ではなく、著者自身の人生についての見かたなのだ。つまり、本書は、著者「小野一光」の私小説なのだ。女性が体を売るということについての、そのような社会の姿にたいして、著者が自分の価値観、社会的な価値観、事実とのあいだで、葛藤しており、そのことについての問いが、本著の一貫したテーマだ。
著者自身が、本書のなかでのべているが、あえてここに批判をかく。
さきに、わたしは本書を私小説だと規定した。私小説であるならば、タイトルに「セックス・ワーカー」と冠するのは、他人のふんどしで相撲をとっているようだ。正々堂々とはしていないだろう。著者は、「このようなことで飯をくっている云々」と本書のなかで自嘲ぎみにのべてはいるが。「私とセックス・ワーカーたち」とでも、すべきであろう。本書を手にとる人にたいして、誤解をあたえるし、不誠実だ。本書は、セックス・ワーカーの社会学的な資料的価値に軸があるものではないのだ。
もうひとつ。著者の文体の癖や、客観的にみているふりをした記述が、感情的にうけつけない人もいるかもしれない。私小説であるのもかかわらず、ときに「わたしはジャーナリストだ」という主張によって、妙に冷めたふりをして、意識的に客観的になるからだ。本書のなかで、著者は「取材において裏取りをおこたるという失敗をおかしたからには、わたしは今後ジャーナリストとは名のらないし、その資格もないのだ」というようなことをのべている。まさに、そこに、私小説的な臭さがある。
いろいろ批判もしたが、内容的には「駄本」ではなく、良本の部類だろう。セックス・ワーカーたちの実態もすこしはみえるし、著者についても現代人をかんがえる資料のひとつになったからだ。
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セックス・ワーカー: 女たちの東京二重生活 (講談社文庫 お 87-1) 文庫 – 2001/4/1
小野 一光
(著)
- 本の長さ314ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2001/4/1
- ISBN-104062731436
- ISBN-13978-4062731430
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2001/4/1)
- 発売日 : 2001/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 314ページ
- ISBN-10 : 4062731436
- ISBN-13 : 978-4062731430
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,037,606位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2015年10月17日に日本でレビュー済み
2006年1月17日に日本でレビュー済み
女子大生を含む、10人の風俗嬢達。彼女達の心理や心の葛藤がおもしろい。本当に風俗が好きで働いている子もいて驚かされた。実話なので、ちょっとびっくり。
2001年5月6日に日本でレビュー済み
この本を、タイトルから考えて面白半分、冷やかし半分の気持ちで読むものではない。この本に登場している10人の女性は、風俗嬢という一面の他に、学生・OL・人妻という顔を持ち、それぞれを使い分けて生きる苦悩を持って生きている。その苦悩の一端をインタヴューを通じて書き記した物なのだ。
この本を読む男性の方々は、心して読まれるように。そこに書かれている苦悩が分かれば、風俗遊びもそれなりの覚悟を持つ必要のあることが分かるだろう。 風俗は、遊ぶ側とサービスする側との、真剣勝負であることを教えられる一冊・
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