堀江 敏幸さんの文章は美しい。表現がクリアでいて奥深い。修飾語が絶妙に絡み合っており深い想像を膨らませてくれる。現代の小説家の中でも随一と言える文章だと思う。単純にわかりやすい文章ではないが、その分読み応えのある文章だと思う。
さて、この「熊の敷石」は芥川賞を受賞した作品でもある。純文学としてその地位を確立した作品であり、短いながらも読みごたえがある。舞台背景はヨーロッパ。作者が旅をして写真家と巡り合い、その写真やその友達、歴史などが深くねじり合いながら作品に深みを加えてくれる。
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熊の敷石 (講談社文庫) 文庫 – 2004/2/13
堀江 敏幸
(著)
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堀江敏幸の文章は、いろっぽいのだ。――川上弘美(「解説」より)
芥川賞受賞作
「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。 フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった。 芥川賞受賞の表題作をはじめ、人生の真実を静かに照らしだす作品集。
ヤンはそこでふいに立ち上がってレンジのほうへいき、やかんを火にかけ、そのままなにも言わず2階にあがって、大きな写真立てを持って下りてきた。私にそれを差し出し、もういちどレンジに戻って火を調節しながら、珈琲か紅茶かと訊いてくる。(「熊の敷石」より)
芥川賞受賞作
「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。 フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった。 芥川賞受賞の表題作をはじめ、人生の真実を静かに照らしだす作品集。
ヤンはそこでふいに立ち上がってレンジのほうへいき、やかんを火にかけ、そのままなにも言わず2階にあがって、大きな写真立てを持って下りてきた。私にそれを差し出し、もういちどレンジに戻って火を調節しながら、珈琲か紅茶かと訊いてくる。(「熊の敷石」より)
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2004/2/13
- 寸法10.8 x 0.8 x 14.8 cm
- ISBN-104062739585
- ISBN-13978-4062739580
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2004/2/13)
- 発売日 : 2004/2/13
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 192ページ
- ISBN-10 : 4062739585
- ISBN-13 : 978-4062739580
- 寸法 : 10.8 x 0.8 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 214,823位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年、同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年、『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞。おもな著書に、『郊外へ』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人―回送電車III―』『未見坂』ほか。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年4月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
誰かに一度読まれた形跡が見当たらない程に新本と変わらない手触りでした。
2014年10月23日に日本でレビュー済み
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作者はフランス文学者だそうで、2000年下半期芥川賞を受賞したタイトル作は仏北部ノルマンディー地方の寒村を舞台にした作品。
そういえば翻訳調とも言えなくはないし、フランスの地名がバンバン出てくるのであった。フランスは未体験の私だが、ノルマンディーの風景やモン・サン・ミッシェルぐらいは知識としてあるので、そう困ることはない。
冒頭は、めくるめく夢の描写で始まるのだが、何ともイメージしがたい描写で面食らう。
翻訳の仕事でパリに滞在している日本人の「私」と、ユダヤ人のヤンの再会を軸に話が進むのだが、そのうち、マクシミリアン=ポール=エミール・リトレだの、ホルヘ・センプルンだの、アウシュヴィッツでなくブーヘンヴァルトだの、プリモ・レーヴィだの、ブルーノ・ベッテルハイムだのが会話に出てくるレベルの人間関係には、なかなか同調できる人はいないのじゃないか。ユグノーとカソリックの関係がわかる人もいないだろうし。そういう意味では、なかなかにペダンチックな要素をもった小説ではある。
終わりも唐突だし。審査で票が割れたのも宜なるかな。
「砂売りが通る」のほうが、イメージしやすくて好ましい作品と感じた。
そういえば翻訳調とも言えなくはないし、フランスの地名がバンバン出てくるのであった。フランスは未体験の私だが、ノルマンディーの風景やモン・サン・ミッシェルぐらいは知識としてあるので、そう困ることはない。
冒頭は、めくるめく夢の描写で始まるのだが、何ともイメージしがたい描写で面食らう。
翻訳の仕事でパリに滞在している日本人の「私」と、ユダヤ人のヤンの再会を軸に話が進むのだが、そのうち、マクシミリアン=ポール=エミール・リトレだの、ホルヘ・センプルンだの、アウシュヴィッツでなくブーヘンヴァルトだの、プリモ・レーヴィだの、ブルーノ・ベッテルハイムだのが会話に出てくるレベルの人間関係には、なかなか同調できる人はいないのじゃないか。ユグノーとカソリックの関係がわかる人もいないだろうし。そういう意味では、なかなかにペダンチックな要素をもった小説ではある。
終わりも唐突だし。審査で票が割れたのも宜なるかな。
「砂売りが通る」のほうが、イメージしやすくて好ましい作品と感じた。
2022年2月1日に日本でレビュー済み
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黒い湿った絨毯のような熊の背中を踏んでいた夢を見ていたという奇妙な書き出しではじまり、主人公が友人ヤンの住んでいるパリで経験した事が書かれています。どのエピソードも心を打たれるものがありますが、私が一番好きなところは熊のぬいぐるみ事です。ヤンの大家さんのカトリーヌと彼女の息子ダヴィッドのことをヤンの話から知ります。「カトリーヌはダヴィッドがお腹にいる時に大きな黒いボタンの目をつけた熊のぬいぐるみを作った。赤ん坊が生まれて両目がないとわかったとき、カトリーヌはボタンをはずして、ばってんで閉じた」「鼻も口もある動物の顔の中で、目だけが糸を交差させたさりげない措置で封印されていた。その目のおかげで、熊はダヴィッドを庇護しつつ同時に庇護されているような両義性を獲得していたのだった」 悲しいとか可哀想というだけでは表せない何かに胸を衝かれました
2013年9月8日に日本でレビュー済み
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満足
中古品とは思えない状態で、届きすぐ読みはじめられました。
中古品とは思えない状態で、届きすぐ読みはじめられました。
2020年5月25日に日本でレビュー済み
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ラ・フォンテーヌの寓話「熊の敷石」は、すぐれた投げ手である熊が、友人の老人の昼寝中の蝿を追い払うために敷石を投げつけ老人を即死させてしまう、‘ 無知な友人ほど危険なものはない、賢い敵の方がずっとましである ’という訓話です。
私の友人ヤンは、ペタンクのすぐれた投げ手、その他、カマンベール投げの話が挿入され、何を相手に投げるのか、投げてよいものとは考えさせる部分です。
ヤンとは、直接触れることのできない距離を要請する小さな‘貝の火’を共有している、それでも「なんとなく」胸につかえる話をする、私とヤン。私はヤンにとって、ラ・フォンテーヌの熊ではないか、話す必要のないものを相手に話させて、傷をさらけ出させる輩は、素知らぬ顔の冷淡な他人よりも危険な存在ではないだろうかと、投げるべきものを取り違えているのではないかと自問する私。
人との付き合いにおいて、相手の身の上に深く踏み込んでいいものか、それとも人は聞いて欲しくて話すのか、僕も身の処し方がわからない時があり、僕も大切な人に敷石を投げた熊の部類です。
堀江氏はユーモアを交えながら明るく描いていますが、書かれている内容は身につまされるものでした。
通読して振り返ると、冒頭の部分がやはり素晴らしい。そして構成も。
《 冒頭の、ひしめく熊の背中を踏んで走るという突拍子もない状況への驚きと恐怖、喉の渇きを覚えて口にした泉の水の甘さと冷たさに疼く虫歯の痛み、それは熊の恐怖さえも忘れるほどの激しい痛み、そんな夢から、物語はスタートする。
眼球のない赤ちゃんのための目がばつ印で閉じられた熊のぬいぐるみ、そして熊の敷石の寓話の意味が提示される、「私はヤンにとって、ラ・フォンテーヌの熊ではないか」自問しながらも、甘いパイを食べて、また虫歯の痛みに耐えかねているシーンで終わる 》
さりげなく書かれていながら、よく練られた構成で、この作品が芥川賞受賞作であることに僕は納得です。
私の友人ヤンは、ペタンクのすぐれた投げ手、その他、カマンベール投げの話が挿入され、何を相手に投げるのか、投げてよいものとは考えさせる部分です。
ヤンとは、直接触れることのできない距離を要請する小さな‘貝の火’を共有している、それでも「なんとなく」胸につかえる話をする、私とヤン。私はヤンにとって、ラ・フォンテーヌの熊ではないか、話す必要のないものを相手に話させて、傷をさらけ出させる輩は、素知らぬ顔の冷淡な他人よりも危険な存在ではないだろうかと、投げるべきものを取り違えているのではないかと自問する私。
人との付き合いにおいて、相手の身の上に深く踏み込んでいいものか、それとも人は聞いて欲しくて話すのか、僕も身の処し方がわからない時があり、僕も大切な人に敷石を投げた熊の部類です。
堀江氏はユーモアを交えながら明るく描いていますが、書かれている内容は身につまされるものでした。
通読して振り返ると、冒頭の部分がやはり素晴らしい。そして構成も。
《 冒頭の、ひしめく熊の背中を踏んで走るという突拍子もない状況への驚きと恐怖、喉の渇きを覚えて口にした泉の水の甘さと冷たさに疼く虫歯の痛み、それは熊の恐怖さえも忘れるほどの激しい痛み、そんな夢から、物語はスタートする。
眼球のない赤ちゃんのための目がばつ印で閉じられた熊のぬいぐるみ、そして熊の敷石の寓話の意味が提示される、「私はヤンにとって、ラ・フォンテーヌの熊ではないか」自問しながらも、甘いパイを食べて、また虫歯の痛みに耐えかねているシーンで終わる 》
さりげなく書かれていながら、よく練られた構成で、この作品が芥川賞受賞作であることに僕は納得です。
2016年7月4日に日本でレビュー済み
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堀江さんの名前は前から知っていたが、手を出すのは初めてになる。
まず単純な結論から記してしまうと作品全体を通して透明感のある文体がみずみずしい。その美しい文章で小説はあざとい小細工も無くのたりのたりと進んでゆく。
だが一つ疑問がある。様々なレビューが掲載されているが、僕はこの小説の純文学としての芯をがっちり掴む事ができなかった。そのあたりのポイントを他の読者の皆さんはどう考えているのだろうか・・・?それとともに、やはりストーリテリングが緩い。美しい文章ではあるが著者の作風では大量の売り上げを担保する事は困難だろう。芥川賞受賞時の文藝春秋を入手する事も難しいので選考過程がどうだったのかも知る事は出来ない。
表題作だけのレビューになるが、個人的な小説観としては、文章に加えて素直に心揺さぶる様な展開や描写がもっと欲しかった、というのが正直な読後感だ。
まず単純な結論から記してしまうと作品全体を通して透明感のある文体がみずみずしい。その美しい文章で小説はあざとい小細工も無くのたりのたりと進んでゆく。
だが一つ疑問がある。様々なレビューが掲載されているが、僕はこの小説の純文学としての芯をがっちり掴む事ができなかった。そのあたりのポイントを他の読者の皆さんはどう考えているのだろうか・・・?それとともに、やはりストーリテリングが緩い。美しい文章ではあるが著者の作風では大量の売り上げを担保する事は困難だろう。芥川賞受賞時の文藝春秋を入手する事も難しいので選考過程がどうだったのかも知る事は出来ない。
表題作だけのレビューになるが、個人的な小説観としては、文章に加えて素直に心揺さぶる様な展開や描写がもっと欲しかった、というのが正直な読後感だ。
2013年5月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書にはタイトルの「熊の敷石」他、2作品、合計3作品が収録されいる
著者は仏文の専門家のようで、どの作品もフランスが舞台であったりからめられてたり・・・
正直
読んでいて退屈だった・・・
ゆっくり時間が流れるフランス映画は読んでいても飽きないけど
それを文章にするとどうなのかな・・・・
読み終わってさほどの感動もない
著者は仏文の専門家のようで、どの作品もフランスが舞台であったりからめられてたり・・・
正直
読んでいて退屈だった・・・
ゆっくり時間が流れるフランス映画は読んでいても飽きないけど
それを文章にするとどうなのかな・・・・
読み終わってさほどの感動もない