いやあ、面白いのなんのって、ボッシュシリーズ屈指の面白さです。
特にエンディングの素晴らしさはシリーズNo1でしょう!
これまで三人称で書かれてきたシリーズですが、本作ではボッシュの一人称による文体となっており、まずその点で驚かされます。
これまで書き続けられてきた人気シリーズの文体をガラリと変えてしまうというのは、勇気のいることだったのではないかと思いますし、読者としてもこれまで慣れ親しんでいたシリーズの雰囲気が大きく変わってしまうのではないかと不安を感じつつ読み始めた本書、結論から言うと、そんな不安は全くの杞憂でした。
警察をやめ、私立探偵の免許を取得したボッシュの一人称というのは、マイクル・コナリーが敬愛するレイモンド・チャンドラーの探偵小説の雰囲気を意識したものかもしれません。
警察引退後、生活費としては必要とする以上の年金をもらい、心配事もなく何の問題もなく暮らすボッシュ。だが、何かが欠落しており、心の奥底で求めるものがあることを感じている。
未解決のまま手を離した現役時代の事件。
「この世における私の使命は、バッジがあろうとなかろうと死者の代弁をすることなのだ」
しかしどんなドアでも開けることができるバッジを持たないボッシュの調査は、そうすんなりとは進まない。
予想外の妨害にも合う。
それでもこれまで培ったコネクションも最大に活かし、粘り強く調査をすすめる。
ゆったりと始まった本作、中盤から後半にかけた怒涛の展開にもう目が離せません。
そしてあの感動的なエンディング。
素晴らしい。
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暗く聖なる夜(上) (講談社文庫) 文庫 – 2005/9/15
男は女を想い 1人で戦う決心をした。彼に勝算はあるのか!?
ミステリーを愛する林家正蔵師匠も絶賛!「腕前に舌をまいた」
ハリウッド署の刑事を退職し、私立探偵となったボッシュには、どうしても心残りな未解決事件があった。ある若い女性の殺人と、その捜査中目の前で映画のロケ現場から奪われた200万ドル強盗。独自に捜査することを決心した途端にかかる大きな圧力、妨害……事件の裏にはいったい何が隠されているのか?
その歌はわたしの知っている歌であり、彼女はそれを巧みに歌った。その声はそよ風のように柔らかかった。その歌の元々の歌い手はこの世の苦悩のすべてをそのかすれ声に乗せて歌っていたのだが。
青い空が見える 白い雲も見える 明るく、清らかな昼 暗く、聖なる夜 そしてわたしは、ひとりでこう思うのだ なんと素晴らしい世界だろう、と――<本文より>
ミステリーを愛する林家正蔵師匠も絶賛!「腕前に舌をまいた」
ハリウッド署の刑事を退職し、私立探偵となったボッシュには、どうしても心残りな未解決事件があった。ある若い女性の殺人と、その捜査中目の前で映画のロケ現場から奪われた200万ドル強盗。独自に捜査することを決心した途端にかかる大きな圧力、妨害……事件の裏にはいったい何が隠されているのか?
その歌はわたしの知っている歌であり、彼女はそれを巧みに歌った。その声はそよ風のように柔らかかった。その歌の元々の歌い手はこの世の苦悩のすべてをそのかすれ声に乗せて歌っていたのだが。
青い空が見える 白い雲も見える 明るく、清らかな昼 暗く、聖なる夜 そしてわたしは、ひとりでこう思うのだ なんと素晴らしい世界だろう、と――<本文より>
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2005/9/15
- ISBN-104062751844
- ISBN-13978-4062751841
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2005/9/15)
- 発売日 : 2005/9/15
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 304ページ
- ISBN-10 : 4062751844
- ISBN-13 : 978-4062751841
- Amazon 売れ筋ランキング: - 198,235位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2011年9月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ロサンジェルス市警の孤高の刑事、ハリー・ボッシュを描くシリーズ第9作は、2003年発表、2005年邦訳−−と紹介してきたのですが、今回からは、「元」刑事となります。
と言うのも、前作「シティ・オブ・ボーンズ」のラストで、刑事の職を引退してしまったから。
本作品は、刑事を辞めたボッシュの一人称で描かれます。
ハードボイルドでは、お馴染みの一人称形式ですが、このシリーズでは初めて。
冒頭は、映画制作者、アレクザンダー・テイラーを訪ねるシーンから。
引退し、現在52歳となったボッシュには、現役中に未解決となった事件が心に残っていた。
それは4年前のこと。
テイラーの経営する映画制作会社の若き女性社員、アンジェラ・ベントンが自宅前の玄関で、絞殺死体で発見されたのだ。
その事件後、今度は映画撮影に本物の200万ドルを使おうとしたところ、その現金が強奪される事件が起こる。
しかし、ボッシュは途中で事件からはずされてしまったのだった…。
これまでは警察のバッジを付けていたことで、行いやすかった「捜査」が、私立探偵となり警察組織という権威を活用できなくなった訳で、その点をどのようにクリアして、事件を追及していくのか、ということが本作品のひとつの読みどころだと思います。
しかし、そこは刑事時代に築いた人間関係をうまく活用し、捜査を進めていきます。
「孤高」の刑事は、「孤独」ではなかったのです。
本作品は、初期の作品と比べると、二転三転する「意外性を狙ったストーリー」は弱くなっていますが、作品を積み重ねることによって生まれてきたボッシュの人間性が、他の登場人物と絡み合い、上質の人間ドラマに仕上がっているところが、高評価できる点です。
ラストに明かされる「ある事実」が、次作以降への期待を高めさせる良作でした。
と言うのも、前作「シティ・オブ・ボーンズ」のラストで、刑事の職を引退してしまったから。
本作品は、刑事を辞めたボッシュの一人称で描かれます。
ハードボイルドでは、お馴染みの一人称形式ですが、このシリーズでは初めて。
冒頭は、映画制作者、アレクザンダー・テイラーを訪ねるシーンから。
引退し、現在52歳となったボッシュには、現役中に未解決となった事件が心に残っていた。
それは4年前のこと。
テイラーの経営する映画制作会社の若き女性社員、アンジェラ・ベントンが自宅前の玄関で、絞殺死体で発見されたのだ。
その事件後、今度は映画撮影に本物の200万ドルを使おうとしたところ、その現金が強奪される事件が起こる。
しかし、ボッシュは途中で事件からはずされてしまったのだった…。
これまでは警察のバッジを付けていたことで、行いやすかった「捜査」が、私立探偵となり警察組織という権威を活用できなくなった訳で、その点をどのようにクリアして、事件を追及していくのか、ということが本作品のひとつの読みどころだと思います。
しかし、そこは刑事時代に築いた人間関係をうまく活用し、捜査を進めていきます。
「孤高」の刑事は、「孤独」ではなかったのです。
本作品は、初期の作品と比べると、二転三転する「意外性を狙ったストーリー」は弱くなっていますが、作品を積み重ねることによって生まれてきたボッシュの人間性が、他の登場人物と絡み合い、上質の人間ドラマに仕上がっているところが、高評価できる点です。
ラストに明かされる「ある事実」が、次作以降への期待を高めさせる良作でした。
2016年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マイクル・コナリーにはまり、たくさんの作品を持っています。今回、中古を手に入れましたがお安く、とても綺麗な状態でした。
2006年1月27日に日本でレビュー済み
’05年の海外翻訳ミステリー部門で、「週刊文春ミステリーベスト10」では第1位に、「このミステリーがすごい!」では第2位となった作品。
クリントン元米大統領も愛読する“現代最高峰のハードボイルド・シリーズ”とうたわれるハリー・ボッシュ・シリーズの第9作である。
物語はハリウッド警察署を早期退職したボッシュが4年前の現役時代に捜査に当たり、迷宮入りした殺人事件と現金強盗事件をあらためて独自に調べ、真相に迫るというものだ。
ロス市警やFBIから「手を引け」と警告されたり、妨害を受けるなか、彼は元刑事から手がかりを得て、映画プロデューサー、弁護士、保険調査官、元銀行員などに対して孤独な捜査を続ける。
私は、犯罪をその事象から「論理」的に解決してゆく「本格パズラー」のファンなので、ボッシュのように手がかりを求めて地道に「足」で捜査し、ついに真犯人たちの方からボッシュの自宅に襲撃に来て派手なクライマックスを迎える、というパターンは少しとまどった。
それでも短い章立てで進むストーリーはスピード感・臨場感にあふれ、知らないうちにボッシュに感情移入しながら、どんどん読み進むことができた。
また何よりもボッシュ自身が冷酷非情な一匹狼ではなく、「ジャズを好み、別れた妻へ今なお愛情を抱く、孤高の詩人」という哀感すら漂う描かれ方をしているところが印象的だった。
本書は事件を通して、ボッシュという人物・人格を浮かび上がらせているところが高い評価を受ける所以なのだろうと思う。
クリントン元米大統領も愛読する“現代最高峰のハードボイルド・シリーズ”とうたわれるハリー・ボッシュ・シリーズの第9作である。
物語はハリウッド警察署を早期退職したボッシュが4年前の現役時代に捜査に当たり、迷宮入りした殺人事件と現金強盗事件をあらためて独自に調べ、真相に迫るというものだ。
ロス市警やFBIから「手を引け」と警告されたり、妨害を受けるなか、彼は元刑事から手がかりを得て、映画プロデューサー、弁護士、保険調査官、元銀行員などに対して孤独な捜査を続ける。
私は、犯罪をその事象から「論理」的に解決してゆく「本格パズラー」のファンなので、ボッシュのように手がかりを求めて地道に「足」で捜査し、ついに真犯人たちの方からボッシュの自宅に襲撃に来て派手なクライマックスを迎える、というパターンは少しとまどった。
それでも短い章立てで進むストーリーはスピード感・臨場感にあふれ、知らないうちにボッシュに感情移入しながら、どんどん読み進むことができた。
また何よりもボッシュ自身が冷酷非情な一匹狼ではなく、「ジャズを好み、別れた妻へ今なお愛情を抱く、孤高の詩人」という哀感すら漂う描かれ方をしているところが印象的だった。
本書は事件を通して、ボッシュという人物・人格を浮かび上がらせているところが高い評価を受ける所以なのだろうと思う。
2013年7月28日に日本でレビュー済み
久しぶりに面白い海外物ミステリーシリーズに出会った。結構有名なハリー・ボッシュシリーズ(恥ずかしながら全く知らなかった)で
ある。発刊されているシリーズの最新作を読んだわけだが、ハードボイルトでありながら、ありがちのとっつきにくさがないのは
やはり主人公ボッシュの温かみとどことなく出てくる人間臭さのせいか。それと筋運びが良い。今回も女性殺人事件と
200万ドル強奪事件を追うボッシュ。強盗に襲われ半身不随となった同僚刑事が事件のきっかけを匂わす。失踪した
女性捜査官の残したヒント、そういった全てが謎ときとして不自然な形ではなくどんどん紐解かれていく。この作者の筆力
を最後まで感じさせる。一気に読んでしまった。今後このシリーズはどんどん読んでいくことになろう。
注:このレビューは数年前に自分の備忘録で書いたものです。その後コナリーは僕の大のお気に入りになっています。
ある。発刊されているシリーズの最新作を読んだわけだが、ハードボイルトでありながら、ありがちのとっつきにくさがないのは
やはり主人公ボッシュの温かみとどことなく出てくる人間臭さのせいか。それと筋運びが良い。今回も女性殺人事件と
200万ドル強奪事件を追うボッシュ。強盗に襲われ半身不随となった同僚刑事が事件のきっかけを匂わす。失踪した
女性捜査官の残したヒント、そういった全てが謎ときとして不自然な形ではなくどんどん紐解かれていく。この作者の筆力
を最後まで感じさせる。一気に読んでしまった。今後このシリーズはどんどん読んでいくことになろう。
注:このレビューは数年前に自分の備忘録で書いたものです。その後コナリーは僕の大のお気に入りになっています。
2015年1月7日に日本でレビュー済み
警察を退職し私立探偵となったボッシュ。彼はずっと心に引っかかっていた、手を伸ばして救いを求めるかのような姿勢で発見された若い女性の殺人事件再捜査に着手します。しかし古巣であるロス市警やFBIから圧力がかかり、かつての同僚すら手を引くよう彼を諌めます。
名高いボッシュシリーズの中でも一番の名作と誉れ高い本作。シリーズで初めて用いられるボッシュの一人称は、殺人事件を解決することで被害者の尊厳を守ろうとする彼の想いを強く読者に意識させます。どんな圧力にも屈することなく、真実を明らかにしようと魂を打ちこむボッシュの姿は、探偵というよりまるで求道者のような崇高さを感じさせます。絡まった糸をほぐすように少しずつ詳らかにされていく事件の真相にも目が離せません。
名高いボッシュシリーズの中でも一番の名作と誉れ高い本作。シリーズで初めて用いられるボッシュの一人称は、殺人事件を解決することで被害者の尊厳を守ろうとする彼の想いを強く読者に意識させます。どんな圧力にも屈することなく、真実を明らかにしようと魂を打ちこむボッシュの姿は、探偵というよりまるで求道者のような崇高さを感じさせます。絡まった糸をほぐすように少しずつ詳らかにされていく事件の真相にも目が離せません。
2021年9月19日に日本でレビュー済み
前作でロス市警を退職したボッシュが自らかかわった未可決事件を、私人として警察官時代のコネをフル活用して解決する物語。しかし、冷静に考えると、ベースにある犯罪(強盗)にくらべて、その犯罪の露見を防ぐための犯罪(FBI殺し、警官殺し、ボッシュ襲撃)のリスクが大きすぎないか?
2003年の刊行なので9・11後のテロ対策と絡んでくる、というか絡めたために、さらに死者が増えていく。悪い奴の大半が死ぬか、死んだも同然となるが、かえって安易に殺害された女性たちのことを想うと何ともやりきれない。
最後にボッシュの娘(マディー)が初登場、これで少し救われた気分になれる。(ボッシュ53歳)
2003年の刊行なので9・11後のテロ対策と絡んでくる、というか絡めたために、さらに死者が増えていく。悪い奴の大半が死ぬか、死んだも同然となるが、かえって安易に殺害された女性たちのことを想うと何ともやりきれない。
最後にボッシュの娘(マディー)が初登場、これで少し救われた気分になれる。(ボッシュ53歳)
2011年4月22日に日本でレビュー済み
A・J・クイネルが亡くなったのでクリーシー・シリーズはもう読めない。スカダー・シリーズは枯れすぎてしまった。フロスト・シリーズはなかなか続編が出てくれないので、イライラさせられてばかりだ。スワガー・シリーズは続いてはいるが、初期の頃の興奮はない。こうなると頼りはボッシュ・シリーズだけではないだろうか。
このボッシュ・シリーズ、それまでは三人称で書かれていたが、本書は一人称になり、よりハードボイルドの結構が際立ってきた。
一人称の成功はラストに如実に顕れ、これ以上はないだろうというほどのラストになっている。
個人的にはシリーズNO1の作品といってよいだろう。
このボッシュ・シリーズ、それまでは三人称で書かれていたが、本書は一人称になり、よりハードボイルドの結構が際立ってきた。
一人称の成功はラストに如実に顕れ、これ以上はないだろうというほどのラストになっている。
個人的にはシリーズNO1の作品といってよいだろう。