"女たち。このわけのわからない、しかしいとおしく、人生を華やかにしてくれる美しい生き物たちは、その甘やかで柔らかい表情や仕草の裏で、何か途方もなく懸命に生きているらしいのだ。"2003年発刊の本書は著者デビュー作にして、田山花袋『蒲団』へのオマージュ溢れる一冊。
個人的には『蒲団』。田山花袋、そして日本の自然主義文学の代表作を下敷きにした作品がある事を知って、興味を感じて手にとりました。
さて、そんな本書は『蒲団』作中の時雄と芳子と田中の三角関係を自然と思い出させるかのように。田山花袋研究者のディブ、その愛人となる日系女子大生のエミ、エミのボーイフレンドのユウキが配置されている些か【複雑な三角関係】を軸に様々な人物たちが登場しながら物語が進んでいく一方で、合間にディブが『蒲団の打ち直し』と、まさかの『蒲団』の時雄の『妻側から見た小説』が【テキストとして独立して挟まれている】のですが。
まずはやはり『蒲団』ラストの蒲団くんかくんかから人によっては【匂いフェチのキモ中年小説】とも『誤解されている』作品の魅力をディブの研究者としての学会での発表や『蒲団の打ち直し』といった小説で代弁させるかのように文学史上の意義も含めて大いに語らせている点に好感を覚えました。
一方で、ディブが『まるでサンドバッグになったかのように、ディブは女たちからボコボコと本音をぶちまけられた』と作中で述べているように、幾重にも複雑な三角関係が展開する中で、すべての【登場人物女性の声を聞く唯一の男性】となるディブ。『現代の竹中時雄』と著者に生み出された人物には『蒲団』発表から100年以上が過ぎて、変化した【現代社会における男性の立場】が描かれている気がして、同じく男性の1人として複雑な心境になりました。
田山花袋『蒲団』既読な方、好きな人にオススメ。また著者のデビュー作として興味ある人にもオススメ。
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FUTON (講談社文庫) 文庫 – 2007/4/13
中島 京子
(著)
『蒲団』読む人、書く人、生きた人。百年という時間
日系の学生エミを追いかけて、東京で行われた学会に出席した花袋研究家のデイブ・マッコーリー。エミの祖父の店「ラブウェイ・鶉町店」で待ち伏せするうちに、曾祖父のウメキチを介護する画家のイズミと知り合う。彼女はウメキチの体験を絵にできるのか。近代日本の百年を凝縮した、ユーモア溢れる長編小説。
日系の学生エミを追いかけて、東京で行われた学会に出席した花袋研究家のデイブ・マッコーリー。エミの祖父の店「ラブウェイ・鶉町店」で待ち伏せするうちに、曾祖父のウメキチを介護する画家のイズミと知り合う。彼女はウメキチの体験を絵にできるのか。近代日本の百年を凝縮した、ユーモア溢れる長編小説。
- ISBN-104062757184
- ISBN-13978-4062757188
- 出版社講談社
- 発売日2007/4/13
- 言語日本語
- 寸法10.8 x 1.6 x 14.8 cm
- 本の長さ384ページ
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2007/4/13)
- 発売日 : 2007/4/13
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 384ページ
- ISBN-10 : 4062757184
- ISBN-13 : 978-4062757188
- 寸法 : 10.8 x 1.6 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 151,505位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年8月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
田山花袋の『蒲団』を読んでから、これを読むことをおすすすめします。
裏『蒲団』と言うべき部分だけでも試みとしておもしろく、小説としても十分楽しめますが、
そこに層のようにストーリーが重なっている点も良かったです。
やっぱり恋はどこか滑稽、なんですね。
個人的には、「東京」という街の解釈も興味深く読みました。
裏『蒲団』と言うべき部分だけでも試みとしておもしろく、小説としても十分楽しめますが、
そこに層のようにストーリーが重なっている点も良かったです。
やっぱり恋はどこか滑稽、なんですね。
個人的には、「東京」という街の解釈も興味深く読みました。
2010年8月24日に日本でレビュー済み
ふたつの物語が、並行して書かれています。
若くてあほな日本女子学生に翻弄される日本文学教授のアメリカ人男性と、
彼が妻の立場から書き直した『蒲団』⇒『Futon』。
若くてあほな女性に振り回される男性が、ふたつの物語に共通していること。
そのほかの共通点は、著者のあとがきを読んで、「なるほどな〜」
と思った次第です。
文学的な遊びがちりばめられている作品。元になっている『蒲団』を
未読でも、十分楽しめます。
いろんなことがミステリアスに終了しているところがいいのですが、
でもそこをもうちょっと知りたかった…と思ったので、☆3つ。
若くてあほな日本女子学生に翻弄される日本文学教授のアメリカ人男性と、
彼が妻の立場から書き直した『蒲団』⇒『Futon』。
若くてあほな女性に振り回される男性が、ふたつの物語に共通していること。
そのほかの共通点は、著者のあとがきを読んで、「なるほどな〜」
と思った次第です。
文学的な遊びがちりばめられている作品。元になっている『蒲団』を
未読でも、十分楽しめます。
いろんなことがミステリアスに終了しているところがいいのですが、
でもそこをもうちょっと知りたかった…と思ったので、☆3つ。
2019年10月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これが初の作品だったとは知らずに読みました。力作です。田山花袋の蒲団は未読ですが、オリジナルがどうあれ、こちらも不思議な魅力ある出来栄えだと思います。明治と現代を行ったり来たりするので、初めはちょっと混乱しましたが。中島さんは、やはり古い時代を書かせるとうまいです。
2011年8月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他のレビューに書かれているように、達者な著者の余裕さえかんじさせる筆力。実際の「ふとんのうちなおし」は、時にリメイク以上の出来となるので、それも含めて、この表現に楽しく打ちのめされた。学会の様子など、随所に笑える箇所が散りばめてあって、大いに楽しんだ。一読したあとで、「うちなおし」の箇所だけを通して読むことを勧める。
2015年1月28日に日本でレビュー済み
中島氏の小説は初めてでしたが、こちら、とても面白く読みました。少々辛く☆1つ減らして4つにつけたのは、エミをめぐる男性の彼女の肉体的魅力についての描写が、他の部分が秀逸なのに比べあまりにもとってつけたようにキザ(恥ずかしいくらい...)」だったことです。
しかし、日本近代文学に造詣の深い方、中島氏のように「蒲団」の、時雄の奥様について興味をそそられてきた方については存分に楽しめる内容だと思います。夏目漱石の「こころ」の静も「しゃべらせてみたい」キャラクターの一人ですが、時雄の奥様も同じくらい「どんな人なんだろう」「どんな気分だったんだろう」と思わせるキャラクターです。文庫で出版されていますし、心よりお薦めいたします。
しかし、日本近代文学に造詣の深い方、中島氏のように「蒲団」の、時雄の奥様について興味をそそられてきた方については存分に楽しめる内容だと思います。夏目漱石の「こころ」の静も「しゃべらせてみたい」キャラクターの一人ですが、時雄の奥様も同じくらい「どんな人なんだろう」「どんな気分だったんだろう」と思わせるキャラクターです。文庫で出版されていますし、心よりお薦めいたします。
2010年12月21日に日本でレビュー済み
小さいおうち
で直木賞を受賞した中島京子のデビュー作。
デビュー作ながら達者なこと!
ライター時代に培った文章力・取材力・構成力、アメリカ滞在体験、それに天性の創造&想像力が総動員されて、発表当時は話題になった作品です。
日本文学研究者のアメリカ人デイブが、田山花袋の 蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫) の打ち直し(書き直し)をします。
同時進行する3組の男女関係(中年男と、年相応の恋人のいる若い女)
小説内小説「huton」に登場する、中年作家とその女弟子。
主人公デイブとジャパニーズアメリカンの女子大生。
そして95歳のウメキチの場合は、彼の朦朧とした記憶の中に生きている若い娼婦。
中年男は3人とも、身勝手で浅はかな若い女に恋をします。もちろん結末はハッピーエンドではありません。想いを寄せられる女たちは、恋する男がこうだと勝手に思い描いたような女ではない。それぞれ自分の流儀で、おバカななりに一所懸命人生を生きています。
この小説で腑に落ちないのは、デイブが「蒲団」を打ち直す動機。研究者として高く評価している明治の作品を、改めてリメイクする動機がよくわからないのです。必然性がない。さしてフェミニストではなさそうなのに、わざわざ妻の視点から書直すのが、不可解です。「蒲団」を打ち直ししたかったのは、なにより作者自身で、それをまあ、デイブに託したわけなんだけれど…。
いろいろ女性について認識を新たにしたデイブが、改めて「huton 」を最初の1行から書き出すところで小説は終わります。
デビュー作ながら達者なこと!
ライター時代に培った文章力・取材力・構成力、アメリカ滞在体験、それに天性の創造&想像力が総動員されて、発表当時は話題になった作品です。
日本文学研究者のアメリカ人デイブが、田山花袋の 蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫) の打ち直し(書き直し)をします。
同時進行する3組の男女関係(中年男と、年相応の恋人のいる若い女)
小説内小説「huton」に登場する、中年作家とその女弟子。
主人公デイブとジャパニーズアメリカンの女子大生。
そして95歳のウメキチの場合は、彼の朦朧とした記憶の中に生きている若い娼婦。
中年男は3人とも、身勝手で浅はかな若い女に恋をします。もちろん結末はハッピーエンドではありません。想いを寄せられる女たちは、恋する男がこうだと勝手に思い描いたような女ではない。それぞれ自分の流儀で、おバカななりに一所懸命人生を生きています。
この小説で腑に落ちないのは、デイブが「蒲団」を打ち直す動機。研究者として高く評価している明治の作品を、改めてリメイクする動機がよくわからないのです。必然性がない。さしてフェミニストではなさそうなのに、わざわざ妻の視点から書直すのが、不可解です。「蒲団」を打ち直ししたかったのは、なにより作者自身で、それをまあ、デイブに託したわけなんだけれど…。
いろいろ女性について認識を新たにしたデイブが、改めて「huton 」を最初の1行から書き出すところで小説は終わります。
2010年11月1日に日本でレビュー済み
花袋の名作『蒲団』を中心に物語が展開する。
だが、蒲団の新しい解釈には納得できない。
一流の文学作品が三流の通俗的な風俗小説になってしまった。
だが、蒲団の新しい解釈には納得できない。
一流の文学作品が三流の通俗的な風俗小説になってしまった。