実在したチベットの転生活仏パンチェンラマ10世は、死後布を巻かれ金箔を貼られミイラにされていたが、なぜか蘇り、金ピカのミイラのビジュアルのまま現地の少年と共に冒険をし、巨悪を目論む大陸の共産国と戦う…という壮大なフィクションです。
短くまとめると何が何だか分からないですが、これを最後まで読ませる著者の筆力は物凄いです。
そして、ダライラマと同じ転生活仏というよくわからない存在を私達にも共感できる聖俗を行き来する存在として描いており、何度もくすりとさせられます。この活仏はモモというチベット料理にいつまでもこだわったり、急に女性に見境なく触ったりします…ただ最後は、宗教指導者兼政治指導者らしく、巨悪を叩き一時の平和をチベットにもたらします。
最後の演説のシーンには、涙させられました。いつでもどこにでも現れる姿は、現世に再訪されたお釈迦様や困った人をたちどころに助ける観音菩薩のようです。ちなみにパンチェンラマは阿弥陀如来の化身だとチベットでは真剣に信じられているようです。ただ神通力ではなく、人とトラック等で移動しているのが余計に良いです。
仏教やチベット問題についての知識がある方は複雑な気持ちになりながらも楽しめると思います。そうでなくても十分楽しめ、考えさせられる作品です。

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転生 (講談社文庫) 文庫 – 2011/4/15
篠田 節子
(著)
2011年度芸術選奨受賞作家。謎の死を遂げたパンチェンラマ十世が、突然蘇った。卑しい男の魂が転生してしまったのか、この活仏(かつぶつ)は意地汚くて女好き。動くミイラと化したラマは、当局の目を避け、小僧のロプサンを連れてインドへの道を急ぐが……。核の脅威が迫るチベット高原でラマはある行動に出る。(講談社文庫)
2011年度芸術選奨受賞作家
チベットを守れ! 黄金色のラマが西蔵高原をかけぬける
謎の死を遂げたパンチェンラマ十世が、突然蘇った。卑しい男の魂が転生してしまったのか、この活仏(かつぶつ)は意地汚くて女好き。動くミイラと化したラマは、当局の目を避け、小僧のロプサンを連れてインドへの道を急ぐが……。核の脅威が迫るチベット高原でラマはある行動に出る。<巻末付録・チベット取材記、解説・夢枕獏>
2011年度芸術選奨受賞作家
チベットを守れ! 黄金色のラマが西蔵高原をかけぬける
謎の死を遂げたパンチェンラマ十世が、突然蘇った。卑しい男の魂が転生してしまったのか、この活仏(かつぶつ)は意地汚くて女好き。動くミイラと化したラマは、当局の目を避け、小僧のロプサンを連れてインドへの道を急ぐが……。核の脅威が迫るチベット高原でラマはある行動に出る。<巻末付録・チベット取材記、解説・夢枕獏>
- 本の長さ480ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2011/4/15
- 寸法10.8 x 1.8 x 14.8 cm
- ISBN-104062767759
- ISBN-13978-4062767750
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2011/4/15)
- 発売日 : 2011/4/15
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 480ページ
- ISBN-10 : 4062767759
- ISBN-13 : 978-4062767750
- 寸法 : 10.8 x 1.8 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 871,518位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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東京都生まれ。東京学芸大学卒。1990年『絹の変容』で第三回小説すばる新人賞を受賞。97年『ゴサイタン―神の座―』で第十回山本周五郎賞を、『女たちのジハード』で第百十七回直木賞を受賞。2009年『仮想儀礼』で第二十二回柴田錬三郎賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 スターバト・マーテル (ISBN-13: 978-4334926977)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年1月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この手の宗教ものは篠田さんは本当にピカイチと思います。
パンチェンラマと中国の問題、
そしてダライラマのインドの亡命政府・・・
すごい触れてはやばいんじゃないのって話を
バチェンラマがミイラに乗り移ってゾンビ化したという、
コメディフィクションにすることによって、
反対に深く切り込めたのだなと。
で。
この本は、チベット問題にある程度の興味のない人には
ちんぷんかんぷんと思います。
でも、面白い人にはとんでもなく面白いと思います。
パンチェンラマと中国の問題、
そしてダライラマのインドの亡命政府・・・
すごい触れてはやばいんじゃないのって話を
バチェンラマがミイラに乗り移ってゾンビ化したという、
コメディフィクションにすることによって、
反対に深く切り込めたのだなと。
で。
この本は、チベット問題にある程度の興味のない人には
ちんぷんかんぷんと思います。
でも、面白い人にはとんでもなく面白いと思います。
2010年8月4日に日本でレビュー済み
もっとも好きなをひとり挙げなさい、と言われたら
自分は答えるであろう篠田節子。
ファンタジーなのに人間の本質的なところをうまく書くのがうまい作家だと思う。
しかも今回の題材はチベット。
自分の長い旅行暦のなかでも特に思い入れが強い国だったので、
かなり期待していた。
結果的には期待をし過ぎたからか、
思ったほどは世界に入り込めなかった。
題材となっているパンチェンラマの問題はチベットに行ったことのある人なら
必ず考えさせられる問題だし、ダライラマのインドの亡命政府にも
行ったこともあるので、非常に親近感?の沸く内容ではあった。
それでも篠田節子が得意としているファンタジーを織り込みながらも、
現実感との組み合わせ方がイマイチのような気がして、
話の持って行きかたもちょっと???ということが多かった。
とはいえここまで触りにくいチベット問題について取り上げて
小説を書いたことはさすがだと思うし、まったく興味のない人でも
読みやすくは出来るていると感じた。
自分は答えるであろう篠田節子。
ファンタジーなのに人間の本質的なところをうまく書くのがうまい作家だと思う。
しかも今回の題材はチベット。
自分の長い旅行暦のなかでも特に思い入れが強い国だったので、
かなり期待していた。
結果的には期待をし過ぎたからか、
思ったほどは世界に入り込めなかった。
題材となっているパンチェンラマの問題はチベットに行ったことのある人なら
必ず考えさせられる問題だし、ダライラマのインドの亡命政府にも
行ったこともあるので、非常に親近感?の沸く内容ではあった。
それでも篠田節子が得意としているファンタジーを織り込みながらも、
現実感との組み合わせ方がイマイチのような気がして、
話の持って行きかたもちょっと???ということが多かった。
とはいえここまで触りにくいチベット問題について取り上げて
小説を書いたことはさすがだと思うし、まったく興味のない人でも
読みやすくは出来るていると感じた。
2020年11月25日に日本でレビュー済み
感想を述べるのが、なかなか難しい作品でした。冒頭のスラップスティックさが、もっと持続するのかと思っていたら、チベット問題はシリアスで、パンチェンラマもどんどんまともになってくる。
著者が伝えたかったのはいうまでもなく、中国によるチベット及びチベット人の取り扱いの酷さであり、入り口を喜劇的にすることで多くの読者を政治的主題に引きずり込むという意味では、大成功作でしょう。
しかし、愉快痛快娯楽作として読むには無理があり、結果として笑うことも感動することも、私にはできませんでした。解説でも述べられているとおり、本書登場の「奇跡」はミイラ蘇りの一点のみで、それなりに重たい気分になることを覚悟した上で読むべき本だと思います。
著者が伝えたかったのはいうまでもなく、中国によるチベット及びチベット人の取り扱いの酷さであり、入り口を喜劇的にすることで多くの読者を政治的主題に引きずり込むという意味では、大成功作でしょう。
しかし、愉快痛快娯楽作として読むには無理があり、結果として笑うことも感動することも、私にはできませんでした。解説でも述べられているとおり、本書登場の「奇跡」はミイラ蘇りの一点のみで、それなりに重たい気分になることを覚悟した上で読むべき本だと思います。
2013年3月15日に日本でレビュー済み
チベットとパンチェンラマに対する興味が沸いた。
原子力に対する警告もその通りだと感じた。
物語の途方も無い展開に、はらはらどきどきしながら読んだ。
最後の収束のさせ方は、それで何がいいたかったのか少し見失ったかもしれない。
3度読んだら、おもしろみが涌くかも。
参考資料のURL一覧を作りかけ
[...]
すぐに出てこない資料を捜索中。
原子力に対する警告もその通りだと感じた。
物語の途方も無い展開に、はらはらどきどきしながら読んだ。
最後の収束のさせ方は、それで何がいいたかったのか少し見失ったかもしれない。
3度読んだら、おもしろみが涌くかも。
参考資料のURL一覧を作りかけ
[...]
すぐに出てこない資料を捜索中。
2010年12月30日に日本でレビュー済み
レビューが微妙だったので期待してなかったのですが チベットとか ラマとか?ナニコレって
でも 読み始めて あれ、 面白いって思いました 痛快
篠田ファンより
でも 読み始めて あれ、 面白いって思いました 痛快
篠田ファンより
2011年9月30日に日本でレビュー済み
篠田節子はもうチベットには永久に行けないだろう。。。
表面上は、
まるで、主人公達がナチスに追われるレジスタンスのように
中国の監視から逃げるアクションロードムービー小説です。
“自分のミイラにされた体に再び魂が戻ったパンチェン・ラマ10世”は、
寺の小僧少年ロプサンと
ヒマラヤ登山のベースキャンプに物資を運ぶ仕事をしている
中年トラック運転手のサムドゥと
携帯電話を持ち長髪をなびかせバイクを乗り回す
若者サンポの3人に助けられながら、
復活した当初は食欲と色欲に笑いましたが、
中国の目をかいくぐりチベットの各地で説法をして行きます。
途中、彼らは中国の荒唐無稽な超自然破壊の計画を知り、
命がけで阻止しようと大活躍します。
ここは、かなり手に汗を握ります。
最後は、ロブサンと同様に優しいパンチェン・ラマ10世との別れに涙するでしょう。。。
映画化したら面白そうです。
でも、随所に彼の言葉にかえて
作者は現在も続いている中国のチベットに対する非業に激しく抗議しているので、
現地での撮影は無理でしょうね。
表面上は、
まるで、主人公達がナチスに追われるレジスタンスのように
中国の監視から逃げるアクションロードムービー小説です。
“自分のミイラにされた体に再び魂が戻ったパンチェン・ラマ10世”は、
寺の小僧少年ロプサンと
ヒマラヤ登山のベースキャンプに物資を運ぶ仕事をしている
中年トラック運転手のサムドゥと
携帯電話を持ち長髪をなびかせバイクを乗り回す
若者サンポの3人に助けられながら、
復活した当初は食欲と色欲に笑いましたが、
中国の目をかいくぐりチベットの各地で説法をして行きます。
途中、彼らは中国の荒唐無稽な超自然破壊の計画を知り、
命がけで阻止しようと大活躍します。
ここは、かなり手に汗を握ります。
最後は、ロブサンと同様に優しいパンチェン・ラマ10世との別れに涙するでしょう。。。
映画化したら面白そうです。
でも、随所に彼の言葉にかえて
作者は現在も続いている中国のチベットに対する非業に激しく抗議しているので、
現地での撮影は無理でしょうね。
2011年9月5日に日本でレビュー済み
チベットの指導者は観音菩薩の化身とされるダライラマと、阿弥陀如来の化身とされるパンチェンラマがおり、お告げにより地方に行き探し出された子供が選ばれる。1956年中国がチベットに進駐し、あらゆるものを破壊し、その様子が作者に「弥勒」を書く動機となったらしい。当時のダライラマ14世はインドに逃れ、パンチェンラマ10世は国内に残り、中国に反対する言動によってか、不可解な病死となる。
この作品は、そのパンチェンラマ10世のミイラが復活する話だ。復活しても一辺死んだ身なので、撃たれても平気だ。そしてパンチェンラマを崇めるチベットの人々に守られ、各地に出没騒動となる。パンチェンラマの人間臭い設定が面白い。やがてヒマラヤを核で壊し、インドの空気をチベットに入れる無茶な計画を知り、これを阻止する活躍が後半となる。とにかく荒唐無稽といってもよい壮大な活劇だが、基調は信心深いチベット人と乱暴な侵略者中国の姿であり、情勢は現在も何ら変わっていない。
作者は「弥勒」の時は取材しなかったが、今回は現地を訪問している。こんな作を出したからには、もう中国には入れないのではないか。晩年の毛沢東の誤った文化大革命は正されたが、チベット進攻は色々理屈を付け正当化している中国。ダライラマも最近は勢いが無くなって来ており、作者はパンチェンラマに「亡命者に何が出来るのだ」と言わせている。
活仏を信じる遅れた国を、変えてやろうとした中国の気持ちは分らないでもないが、所詮他国の事では。今チベットを初め周辺民族の抵抗に手を焼いているが、資源や原爆実験場とも絡み、悪化の一途を辿る情勢は複雑で解けそうになく、中国の自壊を待つしかないのであろうか。
この作品は、そのパンチェンラマ10世のミイラが復活する話だ。復活しても一辺死んだ身なので、撃たれても平気だ。そしてパンチェンラマを崇めるチベットの人々に守られ、各地に出没騒動となる。パンチェンラマの人間臭い設定が面白い。やがてヒマラヤを核で壊し、インドの空気をチベットに入れる無茶な計画を知り、これを阻止する活躍が後半となる。とにかく荒唐無稽といってもよい壮大な活劇だが、基調は信心深いチベット人と乱暴な侵略者中国の姿であり、情勢は現在も何ら変わっていない。
作者は「弥勒」の時は取材しなかったが、今回は現地を訪問している。こんな作を出したからには、もう中国には入れないのではないか。晩年の毛沢東の誤った文化大革命は正されたが、チベット進攻は色々理屈を付け正当化している中国。ダライラマも最近は勢いが無くなって来ており、作者はパンチェンラマに「亡命者に何が出来るのだ」と言わせている。
活仏を信じる遅れた国を、変えてやろうとした中国の気持ちは分らないでもないが、所詮他国の事では。今チベットを初め周辺民族の抵抗に手を焼いているが、資源や原爆実験場とも絡み、悪化の一途を辿る情勢は複雑で解けそうになく、中国の自壊を待つしかないのであろうか。