東山魁夷の画業の素晴らしさは、多くの人が知るところですし、著名でありかつ親しみをもって愛でられた偉大な国民的画家であるのは間違いありません。全国各地をスケッチして残した作品をほぼ年代順に掲載しています。冒頭に戦後初期の代表作の「道」や、そのスケッチと下図も9点掲載してありました。
65ページの「花明り」の円山の桜と満月の対比が素晴らしい空間を形作っており、精神性の深さを感じ取りました。風景をそのまま描くのではなく、心象風景として単純化しながら、モティーフを鮮明に浮かび上がらせる作品で、見る者の心を深く捉えています。
80ページに見開きで掲載してある「年暮る」の静謐な世界は日本画の王道をいくもので、京都の町並みに降りしきる雪の景色は素晴らしいものがあります。静寂の中に往く年を惜しむ気持が込められていました。その作品が多くの方に愛されるのは、シンプルでありながら明確なメッセージが込められているからでしょう。
年代順に掲載してありますので、偉大な画家の歩みをたどれるようになっています。画風の確立の過程では多くのものを吸収しながらオーラを増していったわけで、その歩みもまた興味深いものがありました。音のない世界でありながら、自然界の空気や温度まで感じ取れるような深い精神性のある作品を生み出し続けた巨匠の凄みに触れることができました。
自然界の息吹を絵画に表す場合、画家の心象風景というプロセスを経て再構築して提示されるわけで、その過程において余分なものをそぎ落とし、シンプルなモティーフとし、それを絵画として具現化しています。その純化の過程が見事ですから、かくも格調高い作品群が生まれたのでしょう。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
美しい日本への旅 単行本 – 2008/3/15
ダブルポイント 詳細
祝!生誕百年。愛蔵決定版全集
「残照」「道」ほか日展出品作を中心に日本の風景、「京洛四季」「東京十二景」ほか
(1931~1986年までを収録)
3巻同時発売予定
「残照」「道」ほか日展出品作を中心に日本の風景、「京洛四季」「東京十二景」ほか
(1931~1986年までを収録)
3巻同時発売予定
- 本の長さ128ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2008/3/15
- ISBN-104062802414
- ISBN-13978-4062802413
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2008/3/15)
- 発売日 : 2008/3/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 128ページ
- ISBN-10 : 4062802414
- ISBN-13 : 978-4062802413
- Amazon 売れ筋ランキング: - 628,162位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 661位日本人画家の本
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2008年9月27日に日本でレビュー済み
1年少し前に東京の国立博物館の企画展と山種美術館で、「道」「花静」「花明り」を見た時の心象が鮮明に蘇りました。そしてこの画集で初めてみた「郷愁」は、海外で暮す私の心を正に郷愁で満たしました。
日本の風景を描いた134点(1970年代までの前期のもので、可能な限り東山さんの文献からその絵に即した言葉が引用されている)を収録していますが、きっと心の琴線(思い出に残る心象)に触れる絵や心を安らかにしてくれる絵にめぐり合えると思います。
以下に、兄に続き戦中に父を、戦後すぐ母と弟を亡くし天涯孤独となった東山さんの言葉を抜粋します。
「私の描くのは人間の心の象徴としての風景であり、風景自体が人間の心を語っている。(略)人はもっと謙虚に自然を、風景を見つめるべきである。たとえば、庭の一本の木、一枚の葉でも心を込めて眺めれば、根源的な生の意義を感じ取る場合がある」
日本の風景を描いた134点(1970年代までの前期のもので、可能な限り東山さんの文献からその絵に即した言葉が引用されている)を収録していますが、きっと心の琴線(思い出に残る心象)に触れる絵や心を安らかにしてくれる絵にめぐり合えると思います。
以下に、兄に続き戦中に父を、戦後すぐ母と弟を亡くし天涯孤独となった東山さんの言葉を抜粋します。
「私の描くのは人間の心の象徴としての風景であり、風景自体が人間の心を語っている。(略)人はもっと謙虚に自然を、風景を見つめるべきである。たとえば、庭の一本の木、一枚の葉でも心を込めて眺めれば、根源的な生の意義を感じ取る場合がある」
2008年3月21日に日本でレビュー済み
とにかく不思議な絵を描く画家である。1908年の生まれで1999年に他界されているから、天寿を全うされたことになるのであろうか。独特な光の用い方である。かなり写実的な絵なのに、この光の用い方で別世界に誘ってしまう。まるでこの世のものとは思えないのである。この世からあの世を垣間見るとこんな風に見えるのだろうか。さりとて気味悪さなどは微塵もなく、やけにすがすがしいのである。淡々としておられるのだが、すべてを包み込むような暖かさが静かに漂っているのである。もうここまでくると仙人の絵とでも言うしかない。生誕100年を記念して、この画家の作品が未亡人の手によって全3巻にまとめられて出版されたことを心から喜びたい。編年順に並べられており、取材地もなるだけ正確にという努力がされているので、鑑賞にいい手がかりを与えてくれるものと信じる。